高校時代、地元で活動してた好きなバンドのボーカルがライブ前メンバーに、
「ライブ中だけでいいから、俺のことを誰よりも愛してくれ!」
と言っているのを見た。

勇気が出ないときにそう言ってもらえたら、なんて心強いだろうかと、ぼくは思った。

音楽は最終手段で、何もかもやりつくして最後に残されるものだから、祈ることによく似ている。祈るときとは怯える時だ。自分の何かが揺さぶられ脅かされている瞬間だ。

「これから始まるライブの間、世界の誰よりもおれのこと愛してね」
と、昔どうしてもビビってしまったとき、アベくんに言うと、顔で「そういうの苦手だよ」というのを一応作って「まかせろ」と彼は言った。

望んだ通りに世界の終わりがこないのならば、神様どうか、こぼれるほどの手紙を書かせて。
またすぐに虚無がくる。でも生きている意味はあるよ。きみが泣くと世界で一番かなしい。価値なんだ。生きている人間だけが、何も失くなってしまったものの価値を抱きつづけることが出来る。

おれの乳首がうっすら透けるシャツを買う。気付くと長いことバンドをやっている。古い曲をやると、自分がメンバーと、その歌を書いた時間を共有していて、その延長線上に自分が垂直に立っていることに感動する。

明日はライブだ。世界で一番愛してるメンバーと演奏することがおれの見つけたものだ。
つまり戸惑うことを辞めた決断がいつか自分を壊す傷になっても大丈夫なのだ。