良いことがあった。

いつもは、「一日」のこびり付いて取れない油汚れの様な、人格という汚れを落とす為、熱くて強めのシャワーで流しさるだけ。
だけどこんな日は、お風呂に浸かって「1日」の色々を溶け込ませたくなる。

柄にも無く、お気に入りのバスソルトなんかを入れたりしちゃって、少しの薄明かりと、換気扇の音が心地良く、バキバキに固まった古いロボットの様な身体の、可動域が広がっていく感覚が、徐々に暖かくなる体温が、人を好きになっていく感覚に似てるなぁとか思いながら。

そんな恥ずかしい想いを、思考を、立ち込める湯気のせいにして手で振り払いながら、
暖かくなる顔を、お風呂のせいにして、
湯冷めしないよう、明日からまた頑張れるよう、

ゼンマイを巻いていく。

どうすれば良いのか分からなくなる。
自分はそうじゃないのに。
私はそうじゃないのに。
俺はそうじゃないのに。
僕はそうじゃないのに。

レンブラントの綺麗な108色の絵の具をパレットに出したはずなのに、気づいたら全部混ざって、黒くなって、その絵の具で、どれ程の絵を描こうと、輪郭が分かるだけで、彩り鮮やかな心は描けない。分からない。見えない。伝わらない。
水彩で描いてるつもりなのに、自分を見せなくさせる為に油絵みたいに何度も塗り潰して、天魔波旬な自分が障礙してくる。

周りから望まれているお前はそうじゃない。
どうすれば良いか分からない…
テクスチュアを高めていくほど、心が乾燥を早めていくことになるのに。

一緒に居るはずだった、、
という思いだけがふと蘇ってきて、その虚像に難なく思考を染め上げられる時がある。

引力みたいなものだったのだろうと、惑星の周りを回っている衛星みたいに、軌道に乗っかり何も考えず、思わず、当たり前のように過ごして来たが、トリビアルな変化に気づかず、瞬間的に軌道がズレ、彷徨う事になるこの現状が歯痒くも不可逆的である未来が心苦しい。

そんなものだったんだろう…
そういう風になる道だったのだろう…
そんな感情に即する言葉を探しながら、虚像に手を伸ばす確かな自分を感じながら、実情の不変さに嘆息しながら。

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