月別アーカイブ / 2016年09月

愛犬・ぽんちゃんが人間以外で唯一なついていた、近所のハッピーちゃん(ゴールデン・雄・10才)が昨日亡くなったことを、彼の家の前を通りかかった時、飼い主のおばちゃんから教えてもらった。

おばちゃんはすごく寂しそうなのに、毅然とした態度で、その時のことを説明してくれて、ハッピーちゃんのとても穏やかな性格は、やはり家庭の中で育まれたんだなと強く感じた。

ぽんちゃんはその事実が受け入れられないというよりは、わからない様子で、玄関先でいつも通りクンクンと「外へ出て来て遊ぼうよ!」とハッピーちゃんを呼び続けていた。「また来ますね」とおばちゃんに言って、後にした。

散歩のつづきをしながら、「言葉や概念を介さないダイレクトな世界に生きている彼らにとって、死とはどういうものなのだろう。別れとはどういうものなのだろう」と考えた。ぽんちゃんは、ハッピーちゃんの匂いが彼の家の前から、おしっこをかける電柱から、だんだんとなくなってゆき、時間差で「あ、もうここにはいないんだ」と気付くだろう。

ただ、犬は「今を生きている」というから、最近見かけなくなっていて、「寂しかった」ではなく、生きていた一昨日も、昨日も、今日も、明日も同じくらい「寂しい」のだと思う。それはとても優しく、時折頭の中で生きてしまう我々人間より、ずっとたくましいなと思った。

その日の散歩でぽんちゃんはいつも以上におしっこをたくさん出していた。「ハッピーちゃんの分も!」と言わんばかりに、もう出ないのに、片足を上げていた。僕は今の彼をただじっと見ている。

「どうして君は毎日朝晩飽きもせず、こんなにも同じ道を歩くのが好きなんだ?」

まるではじめて訪れた町にいるみたく、ワクワクとした態度で昨日と同じ道を散歩をしている愛犬・ぽん太を見ていて、ふと疑問に思った。

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僕の方が繰り返す景色に飽きてしまい、別の道に行ってみるも、その後、「やっぱり引き返そう」と彼はリードを引っ張る。思い返せば、むかし実家で一緒に暮らしていた同じく柴犬のタクも、三度の飯より散歩が大好きだったので、当然のこととして"犬は散歩が好きなもの"と何の疑問も持たずにいたが、よくよく考えて見ると、その理由はいったい何なのだろう。

最初に思いつくのが"散歩"の文字通り「歩くため」、つまり運動不足の解消やストレスの発散だ。多くの犬と同様に、特に室内犬である彼の場合も、それもあるだろうが、「だったら」と遠くにある広い公園まで行き、長いリードに変えて自由にさせても、どうも走ることが好きではないようだ。気付いたら「おいで~」と僕ばかり彼の周りを円を描くようにして走っている。どちらがリードを持っているのかもはやわからない。

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そしてそんな無闇やたらな発散というより、「絶対こっちの道じゃなきゃヤなんだよ」とリードを引っ張る姿勢から、何らかの特定の目的があるかのように思える。そしてその目的に気が済むと、座りこむ。しばらくしてもどうしようもない時は、「これが果たして散"歩"と呼べるのだろうか」と思いながら、抱き抱えて帰路につく。

2つ目に思い付いたのが「用を足すため」。前述した「何らかの目的」が多くの場合、おしっこやうんちだからだ。しかし、それももちろん理由の1つには違いないのだろうが、ぽん太の場合は家の中にもトイレがあり、外でのおしっこは憶えていない(まったくしない)赤ん坊の時期から、すでに散歩に行くのが大好きだったので、これも決め手と呼ぶには少し頼りないだろう。

さて、家にいる時の彼は何をしているのかというと、大抵寝ている。退屈なのかなと、特に犬の番組が多いスカパーの"ナショジオ・ワイルド"チャンネルをつけても、これがテレビの中の犬にはまったく反応しない。そしてタイミングよく「犬の視力は思ったより良くない」とナレーションが言った。なんと。これまた"動物はみな視力が良いもの"と勝手に思い込んでいた。実は犬は、人間よりも近くのものが見えていないらしい。(それとは別に遠くの動くものを認識する動体視力は優れている) つまり人間は「赤い服着て、銅像の前にいるよー」と待ち合わせするように、「AはBではなく、間違いなくAである」と判断するとき、主に視覚を用いるが、犬の場合の判断基準はそれ以外の、嗅覚(におい)、聴覚(音)、味(味覚)、触覚(感触)になるのだろう。

ナレーションが続く。「犬は匂いによって地理を憶えている」と。なんと。対象物だけでなく、匂いで方向までわかるとは。もちろん人間も鼻がついているので、いい匂いがする家の前を通ると、「あ、ここの晩御飯はカレーだな」とか、「アスファルトが湿気くさいから、もうすぐ雨が降りそうだな」くらいには臭覚は使うが、目をつむって家に帰れるほどには信頼できないだろう。そんなにもぽん太にとって匂いが大切だとは思ってもいなかった。そう考えると、人間にはリアリティとして事足りるテレビ画面の中の犬も、犬にとっては何の匂いもしないただのガラス板だから、彼が興味を持てないのも頷けた。同様に、僕が飽きてしまう景色も、そもそも彼の中でははなから意味を持っていなかったのだろう。

そのように、彼らにとって匂いとは紛れもない情報なのである。だから散歩とは情報収集や交換の場だったのだ。本来は名前という記号を持たない仲間や空間、すなわち社会そのものの。だとすると、僕とあなたが今まさにしていることにとてもよく似ていないだろうか。そう、"インターネット"だ。

毎日同じパソコン(ケータイ)の画面で、ブログが更新されていないかチェックする。新しい記事を読み、目の前にいないその人を、より具体的に想像する為のパズルピースにする。コメントを残す。

上記は視覚、つまりとりわけ文字が情報源である人間の場合だ。若い方の場合は、ブログをTwitterやFacebook、LINE、Youtubeチャンネルなど、よりリアリティを感じるページに置き換えて捉えて欲しい。そして犬の場合はこうだ。

毎日同じ道で、おしっこが更新されていないかチェックする。新しいおしっこ跡を嗅ぎ、目の前にいないその犬を、
より具体的に感じる為のパズルピースにする。 おしっこをかける。

どうだろう。僕にはまったく同じことをしているように感じる。だから人間にとって良いとされる「清潔で何の匂いもしない部屋」も、彼にとっては「目隠しをしてインターネットを楽しみなさい」、という退屈極まりないものなのだろう。
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すると背後から「よくもまぁ毎日朝晩飽きもせず、同じ無臭の板(画面)を眺めているもんだね」という声が聞こえた気がしたので、ここで記事を終え、PC画面を消し、散歩に行ってまいります。僕は勘違いしていたよ。ごめん。ぽんちゃん、お気に入りのブログ、今日は更新されてたらいいね。皆さまからのおしっこ、お待ちしております。クンクン。 
 
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今日から9月です。少し気が早いですが、いよいよ今年もあと4カ月、2017年の背中がうっすら見えてきましたね。今年も北は北海道から南は沖縄まで、ほんとうにたくさんの場所で講演会をさせて頂きました。ありがとうございます。コチラは先日のアミューズメントメディア総合学院でのレポート。そして残るは4県。

中村佑介講演会スケジュール

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■9/10(土)@名古屋トライデントデザイン専門学校 / 13時30分~ 受付中
■9/17(土)@神戸ヒューマンアカデミー神戸校 / 13時~ 受付中
■10/1(土)@ 大阪アートヤード『中村佑介のイラスト教室』  受付中作品締切は9/15


名古屋は、サイン会やイベントでのトークショーでは毎年伺っておりますが、学校での本格的な講演会は3年ぶりくらいですね。嬉しいです。全会場、入場無料ですが、各リンク先から事前予約必要です。座席数に限りがございますので、希望者はお早めにお申し込み下さいませ。

この中でも特にご説明したいのは中村佑介のイラスト教室。LINEやTwitterFacebookなど各種公式SNSでは先に告知しておりましたが、そのイラスト教室が現在、第3期生を募集しております。

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このイラスト教室は、昨年から定期的に開校している学費無料のイラスト学校です。まずは開校の詳しい経緯を下記からお読みください。

【Terminal mag】中村佑介インタビュー
~イラストレーターとしての新しい取り組み~
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Twitterでの『イラスト講座』や書籍『みんなのイラスト教室』、また講演会で行っている作品添削との違いはひとつだけ。アドバイスだけでなく、それぞれに課題が出るという点です。僕はこれまで前述した場において、1000人以上のプロ志望の方の絵を見てきましたが、いつももどかしさを感じてきました。と言いますのも、"アドバイス"というのは、"まだ言葉になりにくいぼんやりしたイメージや、自分では気付けない弱点などを、平易で具体的な言葉に置き換えて提示すること"なので、耳に入った瞬間にパワーアップしたような気になるんですよね。でも実際は、「役に立った」気になるだけで、その場で現実的に絵が上手くなることはありません。

山登りをしている途中、AとB、2つの分かれ道があります。先に登って、降りてきた人が「Aの道の方が景色が綺麗だったよ」と教えてくれました。これがアドバイスですね。そこで「なるほど!役に立つ!!」と感じても、決して山頂が近づいた訳ではないのと同じです。

つまり、言葉はただの道しるべでしかなく、ほんとうに能力アップする為には、本人が実際に歩かなければいけないのですね。絵で言うと、描いてみることです。でもそれが一番むずかしい。というより面倒くさい(笑)。そこにいない人の言葉は、結局「明日でいいか」の棚に一番に置かれ、埃がかぶりやすいことは、僕もわかっています。だから"先生が実際に目の前にいる""課題の期限が決まっている"という、そんな学校では当たり前の2つのことって、それこそ自分が学生だった時は「授業はテレビ電話でいいじゃん」「締切になんて縛られたくない」って不必要に思っていましたが、成長の為にはほんとうに必要なことなのだと改めて痛感し、教室を開いたのでした。


さて、それではここからは、実際に当教室の生徒たちの作品とその成果を見て頂きます。(10代前半の方も多く混ざっている為、氏名・年齢ともに非公開とします)

1期生の作品

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画材が【色鉛筆】のみで筆圧が弱いと、どうしても紙の下地が出て、ラフに見えてしまうので、一度【水彩絵の具】を塗った上から、色鉛筆を重ねてもらいました。また、桜の枝と人物の大きさにも差をつけ、同じ絵でも華やかになったのがおわかり頂けると思います。

02
テーマやモチーフが散漫になっていたので、それを絞り、設定と書き込みをきちんとしました。止め絵が活き活きと動き出しそうで、もはや別人の描いた作品のようです。

03
画面全体がノッペリとしており、見どころも散らばっていたので、描く部分と描かない部分の差をつけ、色の場所も整理してもらいました。見応えも増えましたが、単純に見やすい絵になったと思います。

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いまひとつ、作家としての独自性と、テーマ(楽しさ)が伝わりにくかったので、一度描いた絵を切り張りして、反立体の絵にアレンジしてもらいました。新しい業を使い、このまま絵本に載っていても、おかしくないここまでのクオリティに仕上げてくるとは、僕も驚きました。

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絵の技術は申し分ないのですが、「だらしなさ」がテーマだったので、モチーフと配置をきちんと考え、よりだらしない絵にしてもらいました。これできちんとお母さんに叱ってもらえます(笑)それだけでなく元のものより、ストーリー性も出ました。夏休みの宿題、早くして欲しいですね。

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この方は上級編。イラストレーターという仕事は、自分の好きなモチーフや世界観を描くのではなく、クライアントやその商品のイメージを伝えることなので、自分の枠をはみ出して、本の表紙を制作してもらいました。元々上手かったので、技術の差はないですが、効果的に色を使用し、「何となくプロっぽくなった」のがおわかり頂けると思います。

2期生の作品
 
01
「背景が描けない」とのことでしたので、キャラクター画からその設定を読みとり、「下手でもいいから描いてみよう」と描いてもらいました。それがこんなに細かく、上手く描けるなんて、「描けない」は往々にして"重い腰"と"思い過ごし"なんですよね(笑) 可愛いだけじゃなく、前後の行動や時間までが感じ取れる"1枚"が描けるようになりました。

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画面を広く見せる構図と、「120%くらいで描いて見る人のちょうど80%」というモチーフのルールを教え、また単純に時間をかけて丁寧に描き直してもらいました。イメージはそのままに、見違えるような楽しく、見応えのある絵に変化しました。

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キャンバスの比率を変えて奥行きを出し、日常と非日常の割合を変えてより不思議に感じるように、また色の使い方を整理し、画面に一体感を出してもらいました。元も素晴らしかったですが、右の1枚なら原画を購入して、家に飾りたいです。

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商業イラストレーターになる為には、グロテスクやエロチックといった飛び道具的表現を使わなくても、きちんと楽しめる絵を描けなければいけません。その為に、色の効果とモチーフの必然性を学んで頂きました。まさに右の女性みたく、見違えるように、洗練され、大人っぽくなりましたね。

05
動物に比べ、主役である人物のディフォルメの方が単調すぎて、絵から軽く浮いてしまっていたので、イメージはそのままに、瞳内と髪の毛の書き込みだけを変え、画面に一体感を出してもらいました。これで「動物が可愛い絵」ではなく、きちんと「可愛い絵」になりました。

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この方も上級編。前述したように、商業イラストレーターにとって必要な、普通の色と普通のモチーフを使って、児童書(「ズッコケ3人組」)の表紙を描いてもらいました。サブカルチャー好きな若者だけでなく、お母さんからお子様まで、見てもらえる年齢層が広がったのがおわかり頂けると思います。プロとしてすぐにでも仕事が出来る状態になりました。


以上、1期、2期生徒作品の一部を見て頂きました。このように、それぞれの活動と段階に合った課題を出しております。具体的な指導法と、制作過程につきましては、次号季刊エス第55号(9/15発売)の記事で詳しく紹介して頂いておりますので、ご興味のある方はそちらをお読み頂くとして、それぞれの変化はおわかり頂けたと思います。しかし、課題制作時間は1カ月。そんな短い期間で絵が上手くなる訳はもちろんありません。

生徒たちが変わったのは、技術ではなく、意識です。「○○の上手い描き方」や「早く仕上げる方法」などではなく、きちんと考える丁寧に仕上げるの2つ。だから実は、僕自身も、アドバイスの内容もたいして重要ではなく、教室という場と時間があるから、「ちゃんとしよう」「やってみよう」とお尻に火がつき、実行に移せた。ただそれだけなのですね。イラストレーションにとって、一番たいせつなのは、上手さではなく、伝わるように描くこと。その目的の為にただ技術はあるだけです。

そして、ここまで辛抱強く読んで下さったあなたは、十分に成長の可能性があります。人(クライアント)の話をよく聞くことが、イラストレーターの仕事において、最初の工程だからです。開催は10/1、締切は9/15。詳細は以下。それでは、作品のご応募お待ちしております。

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中村佑介のイラスト教室
イラストレーター・中村佑介が開校している「イラストがうまくなりたい!」「将来イラストレーターになりたい!」という方を対象とした教室です。2回の授業に分けて、アドバイスと課題を出します。生徒の年齢は問いません。入学希望者はイラスト作品3枚と記入事項を添えて、メールでご応募ください。 現在、10/1(土)開催の第3期生受講希望者・並びに見学枠を受付中です。9/15(月)締切。下記よりご応募ください。

概要
日時:2016 10月1日(土) 時間 : 1部クラス 16:00〜18:00 / 2部クラス 18:30〜20:30
会場:大阪・なんばartyard studio
費用:500円(※ドリンク代になります)
募集人数:生徒・見学者ともに20名まで(生徒は選考、見学者は先着順)

参加方法
当教室は完全予約制です。生徒希望者はイラスト作品の完成画像(漫画、絵画、下書きは不可)を添付し、下記必要事項明記の上、reserve@artyard.jpまでメールでご応募下さい。後日、合否のお知らせを返信致します。また見学は、座席数に限りがございますので、先着順で定員に達し次第、締め切らせて頂きます。

メール記入事項
【生徒の場合】
※9/15締切
件名 : 生徒希望『中村佑介のイラスト教室』
氏名:(本名)
年齢:
住所:
職業:
電話番号:
志望動機 :(できるだけ詳しく)
作品タイトルと説明:(できるだけ詳しく)
※最後に画像添付をもう一度ご確認下さい。 

【見学の場合】
件名 : 見学希望『中村佑介のイラスト教室』
氏名:(本名)
年齢:
電話番号:

注意事項
生徒の選出は、美大生、専門学校生以外を優先させて頂きます。
無料学校のコンセプト上、交通費や宿泊費がかかる関西圏外からの通学はご遠慮頂いております。
授業は長時間に渡りますので、見学者で座りたい方は座布団をご持参ください。
未成年者の方が参加される場合は、保護者同伴でも構いません。
サインや記念撮影は行いませんのでご了承ください。
当日の授業風景の撮影・録音・録画は自由です。



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