月別アーカイブ / 2016年08月

前述したように、自分のイラストとは縁遠いと思っていた「笑い」という要素で、もうひとつ道しるべとなった作品は謎解きはディナーのあとでです。

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『謎解きはディナーのあとで』単行本表紙

特に1巻の表紙では下にいる風祭警部の立振る舞いや表情など、このコメディ要素のある、キャラクター、また文章を通して、東川篤哉さんからは"肩の力を抜く"ということを学ばせて頂きました。

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『謎解きはディナーのあとで 3』挿絵より

それまでは"肩の力を抜く"イコール"不真面目"だと思い込み、仕事ではやってはいけないことだと思っていました。ですが、『謎解きはディナーのあとで』の毒舌やズッコケ要素は、いたってエンタテインメント性に富んでおり、ストーリーにおいても、なくてはならない要素となっているのが、ベストセラーとなった1つの要因に思います。ギャグ漫画家がほんとうに不真面目では勤まらないように。ですので、この「謎解き~」、並びに東川さんのおかげで、その後2010年頃からは、他のイラスト作品においても"真面目に楽しむ"ということが、絵の中でも出来るようになってきたのです。1冊目の画集Blueと2冊目のNOWはそこが最も大きな違いだと思います。
 
さて、今回ご紹介するコラボも、それが実った1作となりました。何重の意味でも。

こち亀

この度、ことこちら葛飾区亀有公園前派出所とコラボレーションさせて頂きました。佐久間さんに続き、あの"こち亀"とコラボできるなんて、過去の僕に言っても「またまた~笑」と信じないことでしょう。

これは9/17に刊行されるVS.こち亀という書籍の扉絵で、「おそ松さん」、「魔術師オーフェン」、「チア男子」、「ガールズ&パンツァー」、「ハルチカ」、そして「謎解きはディナーのあとで」とのコラボ小説6編が収録されています。

VS.こち亀特集ページ|http://j-books.shueisha.co.jp/pickup/vs_kochikame/

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そう、はじめにお見せした絵でもおわかり頂けるように、『こち亀』とのコラボであると同時に、『謎解き』の続編でもあるのですね。その名も「謎解きは葛飾区亀有公園の前で」(笑)。だから扉絵も徹底的にパロディにしました。

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パロディになっているだけでなく、もちろん今作の内容も存分に加味しているのですが、この絵を描いていて気付いたのが、「こち亀」の特に主役3名は、ほぼ色のみでキャラクター付けされていること。例えばドラゴンボールの孫悟空や、ドラえもんのスネ夫などと比べると、これらのキャラクターのシルエットにはほぼ特徴がなく、みんな普通のおじさん、おねえさん、おにいさんなんですよね。だから線画を描いている時は、何度描き直しても、「あんまり似てないかもしれない。大丈夫かなぁ…」と不安でしたが、服を青く塗ったら両さん、黄色なら中川、ピンクならきちんと麗子になった時に「スゲー。。。」とため息を漏らしました。

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『謎解きは葛飾区亀有公園の前で』|扉絵の下書き(左)と線画(右)

キャラクターとしては色で目立たせ、実際はどこにでもいそうなシルエット、だからこそ誰もが感情移入できて、「両津勘吉」ではなく「両"さん"」と親しみを持って、長年愛され続けているのだと実感しました。

内容に関しても、「一言でいえばこち亀ってどんな作品?」と聞かれても、「ギャグ漫画」「楽しい作品」などとジャンルは答えられても、あまりに長い歴史と、ギャグもあれば泣ける人情ものもあり、文科系もあれば体育会系もあり、新しさもあれば懐かしさもあるなど、広すぎるレパートリーに具体的な解答を出来る方はおそらくあまりいないのではないかと思われます。

そんな懐の広い作品だからこそ、今回は扉絵2点と挿絵3点で大いに遊ばせて頂いた次第です。

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『謎解きは葛飾区亀有公園の前で』|挿絵「両津巡査長と風祭警部」

もちろん執筆されたのは、東川篤哉さんご自身なので、最後に出た3巻から数えると、4年ぶりの新作ということになります。相変わらず、わかりやすく、楽しく、それでいて驚くような仕掛けが今回も施されていますので、こち亀ファンの方も、謎解きファンの方も、他コラボ5作のファンの方も、読書の秋のお供として、9/17に書店でお会いできれば幸いです。(9/5発売の週刊少年ジャンプで試し読みも掲載
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以上、20周年佐久間一行さんと、40周年秋本治先生という大きな大きな懐の上で、僕の絵が笑いに触れあうことができたというお話でした。ほんとうにありがとうございます。そしてあらためておめでとうございます。

そもそも"絵"と"笑い"というのは両立が難しいと思っていました。

と言うのも、絵は主に、「素敵」「上手い」「なるほど」といった理解や感心を勧めるのに対し、笑いは逆方向の、「ドジ」「下手」「ないない」といった不理解や卑下から産まれることが多いからです。漫画だと台詞や展開で、似顔絵なんかだと、元になった人物のディフォルメ具合で笑えたりするのですが、こと1枚の絵となると難しい。そんな中でも特に、自分のイラストレーションに描かれた無表情な少女と笑いは、接点がないように思います。笑っている絵はありますが、笑わせる絵を描くのはなかなか難儀だということです。

ま、これが作風といえば、それまでですが、僕自身がお笑い(芸人や漫画)が大好きなので、何とかしてその要素を自分の作品上でも昇華できないか、とずっと考えていたある日、きっかけはやはり単体のイラストではなくアニメーションでした。2010年に放映された『四畳半神話大系』


原作となった森見登美彦さんの同名小説が、まるで「うる星やつら」のようなハチャメチャな世界観だったので、髪型や輪郭、服装など、いつも自分のイラスト作品に描かれる日常的な登場人物よりも、少し非現実的で大げさなディフォルメのキャラクターをデザインをした。

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左から2番目の樋口師匠は、目つき、輪郭、髪型、ファッション、呼び名の相互作用で産まれるギャップで、観る人も思わず微笑んでしまうような造形に出来たと思います。そしてこの登場人物達の中でも、特に人気の「小津」というキャラクターは、主人公から「悪魔」と形容されるように、イジワルな性格で、見かけも妖怪のような設定だったので、その分、ファッションだけはチャーミングにして、愛されるキャラクターにすべくバランスを取ろうと思いました。その時にモデルにさせて頂いたのが、お笑い芸人の佐久間一行さん。

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こうして並べてみると、髪型、短パン、スカーフなど、アクセントカラーの黄色など、共通要素がおわかり頂けると思います。元々、僕が一方的にファンだったのですが、その後も偶然、アニメ作品『果汁グミ~メグミとタイヨウ』で、佐久間さんは主人公・タイヨウ役の声優を担当して下さいました。そんな風に一方的な想いや、間接的な関係を越えて、この度、芸歴20周年を迎えられる佐久間一行さんと、ついに直接、念願のコラボレーションをさせて頂ける事となりました。
 
ポストカード

これはコラボグッズの1つであるポストカードです。佐久間さんご自身と、佐久間さんの考えたオリジナルキャラクターたちや、大好きなザリガニと川魚が一緒に大行進しています。そして後ろには代表ネタの"井戸"も。僕が長年使わせて頂いている長野県のオノウエ印刷により、超高画質で上質な紙のポストカードになります。

また、絵との両立が難しいのがファッションです。正しくは「具体的に描き込まれた絵や、色の多い絵は衣服のデザインとして落とし込みにくい」です。例えばいくら好きな名画でも、それがプリントされたTシャツは着るのに躊躇します。主張がありすぎて、特に協調性を大切にする日本人には得意ではありません。つまり日常生活では、衣服の絵柄は、シルエットか単色が着やすいということですね。

そこで、もう1つのコラボグッズであるトートバッグは、1からシンプルな色で塗り直しました。
トートバッグ

佐久間さんの決め台詞「くるっと平和解決!」のイメージから、平和を感じる黄色を使用。サイズはSUZURIのトートバッグと同じ、縦37cm×横36cm×底マチ11cmとA4サイズもスッポリ入る、どんな用途にも使いやすい余裕のある大きさで、厚めの綿100%と、丈夫な素材です。なお、これらの商品は現在通信販売のみのご予約受付中で、9月下旬発送予定ですので、さっくんファンの方も、小津ファンの方も、以下のページからお取り寄せ頂き、ぜひご愛用下さい。

佐久間一行・芸歴20周年コラボグッズ
(ヴィレッジヴァンガード・オンラインストア)

あらためて、佐久間一行さん、芸歴20周年おめでとうございます。長年、ファンだった佐久間さんとお仕事をご一緒できたこと、そしてようやく、このような形で、自分の絵と笑いとの関係が持てたことが、この上なく嬉しかったです。そう、思わず笑っちゃうくらい。

後編へつづく

 

佐久間一行単独ライブDVD~15周年全国ツアー くるっと平和解決~
佐久間一行
よしもとアール・アンド・シー
2011-11-16



四畳半神話大系 Blu-ray BOX
浅沼晋太郎
東宝
2014-06-18


先日、SUZURIで販売したグッズの利益全額653万2500円を、8/25付けで日本赤十字社『平成28年熊本地震災害義援金を通し熊本県、大分県へと送金したことを、ここにご報告致します。

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改めまして、グッズ購入者の皆様、SUZURI、並びに関係各社の皆様、告知に協力して下さった皆さま、ほんとうにどうもありがとうございました。そしてサイン会でいつもお世話になっている熊本、大分をはじめとした九州で被災された皆さまが、1日も早く安心した生活に戻れますように、心より応援、お祈り申し上げます。


2016年8月26日 イラストレーター 中村佑介

お盆もおわり、朝と晩はかなり涼しくなってきました。仕事柄、ほとんど外に出ない生活を送っていた僕も、愛犬・ぽん太と暮らし始めてからは、毎日その時間に散歩に出かけるので、こんな風に季節の機微に気付くようになりました。大きく雨が降った後はもう秋。

さて、本日はそんな芸術の秋にぴったりなCDのジャケットを2枚手掛けましたので、そのお知らせです。まず1枚目は9/21(水)リリースのゲントウキ誕生日
 
ゲントウキ
ゲントウキ『誕生日』/ジャケットイラスト

そう、あのゲントウキが約10年ぶりにニューアルバムを発表するのです。ゲントウキとの出会いはさらにさかのぼること15年くらい前。まだインディーズだった彼らのライブに衝撃を受け、一美大生だった僕は、その場で「何か描かせて!」とお願いしたのです。そして出来あがったのが、後に考えると、イラストレーターとしてはじめての
仕事となったコチラ▼のライブチラシ。

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ゲントウキ2001年のライブチラシ。共演には懐かしい名前もチラホラ。
 
その後、同じ大阪同士ということで友人としても親交を深め、メジャーデビューシングル『鈍色の季節』からシングル3枚、アルバム2枚のジャケットを描かせて頂きました。そしてベストアルバムを最後に、ゲントウキとしての活動はライブ以外はお休み、そしてボーカルの田中潤氏は、SMAPやMAY J.、土岐麻子さんなど、名立たるメジャーアーティスト達の楽曲を手掛ける作曲家として、幅広く活躍するようになります。元々大阪時代によく「僕は表に立つのも好きやけど、バート・バカラックのような作曲家になりたいんや」と言っていたので、いち友人としては自然な流れだと見つつも、やはりゲントウキのいちファンとしては、少なからず寂しさも感じていましたし、いちイラストレーターとしても、「またあのジャケットが描きたいなぁ」と思い続けていました。

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ゲントウキのこれまでのアートワーク群


そんな中、シティポップ、AOR、ソフトロック、ジャズ、ボサノバなど、"キリンジの好敵手"とまで評された当時の深い音楽性に加え、メジャー作曲家としての経験で、ひと回り大きくなって、ゲントウキは戻ってきてくれたのです。というより、ジャケットを描く為に、一足先に聴かせて頂きましたが、「パワーアップ」というより「新しく生まれ変わった」って感じ。だからタイトルも誕生日なのでしょう。ですから、これまでのファンの方も、はじめての方も、ぜひこの機会に、「はじめまして、お誕生日おめでとう」を共有できれば幸いです。アートワーク的にも特色や歌詞カードなど、面白い仕掛けをたくさんほどこしておきましたので、そちらも楽しみにしていて下さいませ。

ゲントウキ誕生日特設サイト



続いては、9/14(水)リリース、さだまさしさんのベストならぬワーストアルバム御乱心

御乱心

「あれ、この絵、前に見たことあるぞ!?」と気付いた方はスルドい。そう、以前リリースされた同じくさださんのベストアルバム天晴の左右対称のパロディになっているのです。

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 というのも、今回の『御乱心』は"ワースト"と銘打たれていますが、さだまさしさんのユーモア面にスポットを当てた裏ベストアルバム。礼儀正しくしていた女の子も姿勢を崩し、服をはだけ、部屋も遊びに乱れたい放題。こんな内容です。

もちろんベストに収録された数々の名曲も大好きですが、僕としましては、さだまさしさんは物心ついた時にはすでに、楽曲を知る前に、"おもしろい方"としてテレビやラジオでご活躍されていたのを拝見していましたで、実は今回のアルバムに収録されている肩肘張っていない楽曲群の方がイメージにはしっくり来てしまいました(笑) 

特にライブでは度々披露され、伝説となっている「シラミ騒動」が、ようやく第3楽章まで完全音源化されたのは、ファンとしてもほんとうに嬉しい限りです。この楽曲は、真面目と不真面目、MCと音楽、詩とメロディー、それぞれの隙間がなく、完全に一体化している、もっともさださんの魅力がぎゅっと詰まった芸術作品だと感じます。「そんな大げさな」という方は、騙されたと思って、どうぞ6分間だけお付き合い下さい▼。


 スゴイですよね(笑) 音楽のおもしろさが長い論文にせずとも、こんなにもコンパクトにまとまるなんて、1日も早く音楽の教科書に載せて欲しいです。また、2160円と、アルバムとしてはかなりお求めやすいので、肩の力を抜いて、ぜひ楽曲もジャケットもユーモアを存分に楽しんで頂ければ幸いです。

さだまさし御乱心~オールタイム・ワースト特設サイト

それでは、絵の中からも要求されているようなので、僕はまたぽん太の散歩に行ってきます。皆さまも引き続き、良い芸術の秋をお楽しみください。その時のおともになれますように。

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誕生日
ゲントウキ
ビクターエンタテインメント
2016-09-21


スマートフォン向けゲーム『Pokémon GO』の大ヒットの影響で、こんなにも蒸し暑い夏の昼夜にも関わらず、ぽん太の散歩中、ジョギングや犬を連れている人以外も、外でよくすれ違うようになった。公園なんて、「今日はお祭りだったの?」と錯覚してしまう程のにぎわいだ。これまで若者のサブカルチャーといえば、"おたく"という言葉が象徴するように、"家で、一人で"が基本だったので、テレビで「○○が大ヒット!」と言われても、「え、どこで?(周りにはいないけど)」という事の方が多かった。その意味では、一晩で個人の趣味の範囲が玄関を超え、町の景色を変えてしまったPokémon GOは、大ヒットでもホームランでもなく、もはや社会現象という方が正しいだろう。

今までのポケモンとの大きな違いは、指で操作するのではなく、実際に歩かないとモンスターに出会えないことだろう。それによって、確かに、これだけ"新しく町を歩く人"が出てくれば、歩きスマホをはじめとした様々な問題が起こる訳で、テレビではそのようなネガティブなニュースの方がよく見かける。筆者も、ポケモン世代ではない上に、そもそも古いスマートフォンが対応していないという、ハンパない気後れ感は否めないので、テレビの年配コメンテーターの方々の、わからない文化に対し、唯一残された「否定」という方法で、せめてつながっていたいという気持ちも理解できなくはないが、今回はそれよりも3つの驚きの方が大きかった。


まずは可能性のはなし。現在38才、かつて昭和に青春時代を送った僕の目には、日本は「早く大人になりたいな」と想わせてくれる希望ある国にうつっていた。それは日本で産まれた工業製品である"ウォークマン"と"ファミコン"が世界の娯楽文化を引っ張っていたからだ。「僕も早く大人になって、世界に通用するような仕事をしてみたい!」と思っていた。それからウォークマンはiPod(iPhone)に代わり、かつては一家に一台だった家庭用ゲーム機はマニアックな存在になり、ここ10年くらいは「何をしてももう無駄なのかなぁ…」という虚無感が漂っていた。そんな中の大事件だったのである。まぁ、実際にはPokémon GOの開発は、ナイアンテック社というアメリカの企業によるものだが、やはり日本産のキャラクター(ポケモン)が世界を圧巻しているこの景色は、単純に「やった!できるじゃんっ!!」と元気の方がたくさんもらえる。


次に宣伝方法。テレビをつけるとこれだけスマホゲームのCMがバンバン流れているにも関わらず、Pokémon GOはそれをせずにして成果を挙げた。民放番組は基本、「お金を出す代わりに、CMを流してね」という宣伝代でなりたっている。だから例えばA社が提供の番組では、A社の関連商品へのネガティブなコメントは流れないし、ペットボトルもラベルがはがされていたりして、他者の商品名は見えないようになっているという、番組自体も半分CMのような役割を果たしている面がある。

子供の頃はこのルールを知らなかったので、テレビで紹介されているものは世間の流行の後についてきているものだと思っていた。大人になってわかったのは実際は、「企業が売りたいものを、テレビが先に流行っているように見せかけ、世間は後からついていく」というケースが少なくないということだ。まだ公開されていない映画なのに、「泣けた!」「感動した!」というたくさんの観客を映したCMを流して、一般層が「乗り遅れる!」と観に行く寸法だ。

ま、だからこそ、テレビと企業はどちらも得をする50/50の関係性を保てるのだし、消費者としても結果、気に入ったのなら、商品や作品に触れる機会のひとつとしては良いと思うのだが、こと送り手としては、その方法だけでは、たくさんのお金を持った大企業からしかヒット商品は産まれにくくなってしまうと、特にCMを打つような資金は持たない個人のイラストレーターからすれば、可能性の限界を感じてしまう。

そんな中、インターネット、SNSの普及により、個人がメディアとなり、それぞれの宣伝・発表ができるようになったものの、例えばTwitterの企業公式アカウントのフォロワー数を見ても、テレビの視聴者数には遠く及ばない。「だけどSNS全体の利用者数ならどうか?」、それがPokémon GOの宣伝方法だ。プレイ画面にカメラマークがついており、スマホ越しではあるが、子供の頃に夢見た"町の景色に溶け込んだポケモン"の写真を、みんなSNSに投稿する。それがコミュニケーションだけでなく、自然と別の人への宣伝にもなる。なんて賢い。そして何より一番の宣伝はやはり、友達の家でなく、楽しそうにプレイしている知らない人達が、町で見えることだろう。このように、通常の宣伝方法をとっていないお得意様ではないことも、もしかしたらテレビでのネガティブなコメントにつながっているのかもしれない。


最後は収益方法。今やスマホゲームといえば、基本プレイ無料のものがほとんど。そして"課金"という方法によって、ゲームメーカーは成り立っている。時間を使ってがんばれば普通に遊べるけど、お金を払った方が有利になるのだ。例えばRPGで、最後までこんぼうだけで頑張るか(無料)、最初から伝説の剣を手に入れるか(有料)みたいな感じ。つまり通常の課金は、お金を払ったユーザーにのみ有利にはたらくのだが、Pokémon GOには「ルアー」というモンスターが出現しやすくなる課金アイテムがあり、それを使うと、実際に近所にいるユーザーも恩恵が受けられる。この方法を使えば、個人の優越感にとどまることなく、喫茶店の店主がルアーを使って、文字通りその場を釣り堀化させ、お客を楽しませることもできるだろう。

それでも、先ほどのルアーひとつ120円(30分)といったような、Pokémon GOの良心的価格の課金だけでは、これだけ世界中の人たちがプレイしているゲームを運営できるとは到底思えないので、ゆくゆくは特定店舗や、各都道府県にしかいないポケモンが現れるのじゃないかと予想している。例えば熊本に行かなきゃクマモンがゲットできないとなると、旅行を考えるひとつの選択肢にもなるし、考えただけでワクワクする。それがお店の集客や地域活性化につながると見込めると、払いたい企業や自治体はたくさん出てくるだろう。ユーザーではないところから収益をつのる方法…あれ、これってテレビに似てる。つまりPokémon GOが宣伝をしなかったのは、それ自体が宣伝ツールになるからなのかもしれない。


むかしは、「ゲームばっかりしてないで、子供は外で遊ぶべき!」と大人たちが口を揃えた。不健康になると。実際は、道路を増やし、空き地にビルを建て、子供たちの遊び場を減らしたのは、その大人たちであって、ゲームはその後に、行き場を失った都会の子供たちの最後の心の拠り所として現れたように思えるが、それでも長年ワルモノに仕立てられたゲームから、再び大人たちへ「健康的に外を歩くゲームならどう?」という痛快な提案のようにも感じる。 開発者であるナイアンテック社のジョン・ハンケさん(グーグルマップを作った人)の海外発表では、現状のゲームはまだ全体の10%程度で、これから収集だけでなく、ポケモンの肝である、対戦や交換なども追加されるとなると、世界の景色はもっと変わることだろう。

同時に、いくら無料でも、街角に立つ人が、何の宣伝も書かれていない無地のティッシュペーパーを配っていたら、もらうのに躊躇するように、我々は無料の商品は信じれないし、それだけでは商売(生活)が成り立たない事も知っている。だからこそ、このように新しい時代のゲームの在り方や、可能性を、それこそお気に入りのポケットモンスターたちのように、たいせつに育てていきたい。もちろん、モラルやマナーは大前提として。

そんなことをポン太をGOさせながら考えていると、彼は立ち止まりふんばった。僕はマナー袋に生温かいものをゲットして帰った次第である。
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