引き続き、『2016カレンダー』&『みんなのイラスト教室』サイン会ツアーは続いている中(今週末は秋田・千葉にて開催)、11/11に帯装画を描かせて頂いた『日本文学全集11巻』(河出書房新社)が発売されました。

ただし、春画のように、行為や裸体そのものを描いてしまうと、大型書店などでは置いてもらいにくくなりますので、今回は直接的表現を避け、一見綺麗なだけで、そこはかとなく匂わせる程度に留める必要があります。よく電気街で黒地に蛍光ピンクで「DVDアリマス」とだけ書かれた看板を見かけますが、まさにあんな感じで「わかってるでしょ?皆まで言わすな」という行間を読むような、大人向けの間接的表現です。
さて、まずはアイデアが思いつくまで、本をじっくり何度も読み返し、浮かんだイメージを絵や単語の網ですくい上げるようにメモしてゆきます。

①アイデアメモ
まさに走り書きでしかないので、この段階だと、なんのこっちゃわかりませんが、○で囲まれた部分を採用し、次の鉛筆の下書きくらいになると、だいたいの絵の概要は掴んで頂けると思います。
②ラフ・下書き
③ラフ完成

この『日本文学全集』シリーズは日本の各時代ごとの日本文学が読める全集で、第一期の最終巻である本書11巻には、江戸時代の代表的な、井原西鶴『好色一代男』、上田秋成『雨月物語』、山東京伝『通言総籬』、為永春水『春色梅児誉美』という4作品が収録されており、しかもすべて現代語訳されているので、たいへん読みやすいものとなっております。
今の我々にとっては、「文学」という言葉を見ると、手前にぼんやり「純」という文字が浮かび、敷居を高く捉えてしまいますが、どちらかというと、今作に収録されている作品群は、"純文学"というより"潤文学"というような、江戸時代の人達にとってのポルノ小説、またロマンス小説に近いものだったのではなかろうかと、はじめて読んで、ガラッと印象が変わりました。そこには一貫して、男が金を持って、全国の遊廓を遊び周り、女に挟まれ苦悩するという、いつの時代も変わらないシンプルな男の欲望と、複雑な女の愛のかたちが描かれており、江戸時代の男たちがしかめっ面で「ふむ、なるほど」ではなく、「ムフフ…いいなぁ。。。」と鼻の下を伸ばして夢見ている姿を想像すると、その時代も作品もグッと身近に感じることが出来ました。そこには現代語訳の力も大いに作用しており、原語を忠実に掘っていく方から、本質だけ残し、大胆なアレンジをする方まで4者4様。ほんとうにエロく、すこぶる美しく、とにかく面白かったです。
今の我々にとっては、「文学」という言葉を見ると、手前にぼんやり「純」という文字が浮かび、敷居を高く捉えてしまいますが、どちらかというと、今作に収録されている作品群は、"純文学"というより"潤文学"というような、江戸時代の人達にとってのポルノ小説、またロマンス小説に近いものだったのではなかろうかと、はじめて読んで、ガラッと印象が変わりました。そこには一貫して、男が金を持って、全国の遊廓を遊び周り、女に挟まれ苦悩するという、いつの時代も変わらないシンプルな男の欲望と、複雑な女の愛のかたちが描かれており、江戸時代の男たちがしかめっ面で「ふむ、なるほど」ではなく、「ムフフ…いいなぁ。。。」と鼻の下を伸ばして夢見ている姿を想像すると、その時代も作品もグッと身近に感じることが出来ました。そこには現代語訳の力も大いに作用しており、原語を忠実に掘っていく方から、本質だけ残し、大胆なアレンジをする方まで4者4様。ほんとうにエロく、すこぶる美しく、とにかく面白かったです。
そこで、内容を端的に表すために、僕も江戸時代のこれまた代表的文化である"浮世絵(うきよえ)"というより、"春画(しゅんが)"の現代版を描こうと思いました。浮世絵が江戸時代の芸能人や風景のプロマイド的役割を果たしていたことに対し、春画は、その爽やかそうな名前とは裏腹に、ズバリ無修正エロ本のようなもの。写真はなかったので、それらはすべて絵(版画)で、あの北斎や歌麿だって描いておりました。(※ご興味のある方は自己責任において、画像検索をしてみて下さい)
ただし、春画のように、行為や裸体そのものを描いてしまうと、大型書店などでは置いてもらいにくくなりますので、今回は直接的表現を避け、一見綺麗なだけで、そこはかとなく匂わせる程度に留める必要があります。よく電気街で黒地に蛍光ピンクで「DVDアリマス」とだけ書かれた看板を見かけますが、まさにあんな感じで「わかってるでしょ?皆まで言わすな」という行間を読むような、大人向けの間接的表現です。
さて、まずはアイデアが思いつくまで、本をじっくり何度も読み返し、浮かんだイメージを絵や単語の網ですくい上げるようにメモしてゆきます。

①アイデアメモ
まさに走り書きでしかないので、この段階だと、なんのこっちゃわかりませんが、○で囲まれた部分を採用し、次の鉛筆の下書きくらいになると、だいたいの絵の概要は掴んで頂けると思います。

②ラフ・下書き
そしてペン入れをして、色をつけ、ひとまずラフの完成。『好色一代男』と『春色梅児誉美』の世界観を中心に構成。

あくまで編集部にイメージを確認してもらう為の設計図のようなものですので、定規も使っておりませんし、色も統一感にも欠けますが、春画の匂いは出てきました。そして編集部にもOKを頂いたので、「よし、まだイケる!」とアクセルを踏み込んで、いよいよ本描きに移ります。 すなわち2度目の下書き。先程の下書きより細かいですよね。ラフを下にあて、構図や描写をより良いものに仕上げてゆきます。


④本描き・下書き

④本描き・ペン入れ
隅々までかたちが決まったら、次はペン入れです。今回は江戸文学の淫靡さだけでなく、共存する繊細さも表現すべきなので、ラフ時より、より細いペン(0.1⇒0.05)を使います。

④本描き・ペン入れ
ラフ時より、細かく変えた部分、追加した部分もいろいろあるものの、線が細く、コンパスや定規を使っているので、より繊細なイメージになりましたよね。そしてラフの反省点を活かし、色塗りへ。
④本描き・色塗り/完成


④本描き・色塗り/完成
元々ラフ自体を精密に描く方なので、1枚単体で見ると、「あれ、どこが変わったの?」と解りにくいですが、こうして2枚並べてみると、違いがおわかり頂けると思います。

線やモチーフのことは先程述べましたが、色もラフの方は、それぞれの色が主張しすぎており、赤が一番目立ってしまっておりますが、本描きの方は、1枚の絵としての統一感があり、ピンクが一番感じる絵となりました。なぜなら、今回は土台である本の色が水色と決まっておりましたので、それなら赤よりもピンクの方がより相性が良いんですよね。
例えば■■なら不本意にも赤(帯)の方が目立ってしまいますが、■■なら本も帯も同列に引き立て合ってくれます。そして、繊細にばかりすると、逆に人間らしい体温や、女性特有の柔らかさが減ってしまうので、頬紅だけはパソコンでの着色ではなく、画用紙にカラーインクを使って滲ませました。なんとなく温度を感じますよね。

そして、デザインされ完成。

例えば■■なら不本意にも赤(帯)の方が目立ってしまいますが、■■なら本も帯も同列に引き立て合ってくれます。そして、繊細にばかりすると、逆に人間らしい体温や、女性特有の柔らかさが減ってしまうので、頬紅だけはパソコンでの着色ではなく、画用紙にカラーインクを使って滲ませました。なんとなく温度を感じますよね。

そして、デザインされ完成。

足首より先は、本をめくらないと見れないように、思わせぶりな絵を描きました。実際に書店で見て欲しいというのも勿論ありますが、前述したように直接的な表現をできない分、帯を外し(ふたつの意味で)、隠されたものを露わにするという読者の方々の行為までをも含めて、春画の世界を構築しました。
最近も『春画展』の開催により「春画はポルノか?芸術か?」という論争が巻き起こりました。
発表された時代も違いますし、受け手の倫理観や感覚は千差万別なので、どんな意見もありだとは思いますが、ここでの2択、まどろっこしい表現を使わなければ、とどのつまり「春画はエロいか?エロくないか?」というシンプルなものなんですよね。で、やはり表向きでは禁止されていた江戸時代にひっそり読んでいた人達、そしてそれに応えるため、あくまでポルノとして描いていた当時の絵師たちの気持ちを汲み取ると、僕としては「エロい!」と言いたい。その技術や情熱には芸術性はあれど、やっぱり春画自体は芸術ではなく、僕が美術館の館長なら、天国に向かって「モラルが崩壊した現代でも公の場で展示できないほど、あんたたち最高にエロいよー!!」と言ってあげたい。
さて、そうこうしている内に無事発売された『日本文学全集11巻』ですが、出版社より「中村さんスミマセン!」との連絡が。なんでも某新聞社から「広告を出すなら、そのわいせつな帯絵を外さないと載せられない」とのこと。あれだけ直接的表現を避け、一見綺麗なだけの絵を見て、「エロい!」と勘付く新聞社の眼力も相当なものですが、僕がそれを最高の褒め言葉として受け取ったことは言うまでもありません。
だからひそやかに、でもたしかに、おすすめです。
発表された時代も違いますし、受け手の倫理観や感覚は千差万別なので、どんな意見もありだとは思いますが、ここでの2択、まどろっこしい表現を使わなければ、とどのつまり「春画はエロいか?エロくないか?」というシンプルなものなんですよね。で、やはり表向きでは禁止されていた江戸時代にひっそり読んでいた人達、そしてそれに応えるため、あくまでポルノとして描いていた当時の絵師たちの気持ちを汲み取ると、僕としては「エロい!」と言いたい。その技術や情熱には芸術性はあれど、やっぱり春画自体は芸術ではなく、僕が美術館の館長なら、天国に向かって「モラルが崩壊した現代でも公の場で展示できないほど、あんたたち最高にエロいよー!!」と言ってあげたい。
さて、そうこうしている内に無事発売された『日本文学全集11巻』ですが、出版社より「中村さんスミマセン!」との連絡が。なんでも某新聞社から「広告を出すなら、そのわいせつな帯絵を外さないと載せられない」とのこと。あれだけ直接的表現を避け、一見綺麗なだけの絵を見て、「エロい!」と勘付く新聞社の眼力も相当なものですが、僕がそれを最高の褒め言葉として受け取ったことは言うまでもありません。
だからひそやかに、でもたしかに、おすすめです。