まさかこんなに早く再会できるとは思わなかった。
8月の初旬にサンフランシスコで開催された『J-POP SUMMIT 2015』 というイベントで、サイン会に参加してくれたことをきっかけに「また会おうね~」と海の向こうの友達になったケビン。それから約1カ月後、日本のTVゲームファンである彼は友人のマットと一緒に東京ゲームショーで来日し、僕の暮らす大阪にも寄ってくれたので、以前イラストに描いた場所を中心に、観光案内させてもらうことにした。

「大阪には以前一度だけ来た事があるが、オタク友達の付き添いでUSJのワンピースショーにしか行けなかった(笑)」と彼は高校時代に習ったと言う流暢な日本語で話す。「僕も学生時代英語を習っていたけど、こんな風にぜんぜん話せないよ。なんでそんなに日本語上手なの?」と聞くと、韓国系アメリカ人の彼は「家では韓国語を使っていて、韓国語と日本語は文字の見た目は違うけど、敬語や文法の構造がすごく似ているんです」と言う。そして大学時代に仙台にも1年、留学生として暮らしていたそうだ。
その間、友人のマットはうつむいていて、ケビンのように日本語を喋れないから引け目を感じているのかなぁ…と心配して手元を見ると、3DSをプレイしていただけだった。僕と目が合い、もう1つカバンの中から3DSを出した。日本版と海外版だ。見た目は同じでも、DVDのリージョンコードみたく日本でしか発売されていないソフトは、日本の3DSでしかプレイできないからだ。「わかるだろ?ガチだぜ!」と言わんばかりにマットはニッコリ微笑んだ。

さて、そんな海外のオタク友達2人と歩いていると、行き慣れた大阪のオタク街・日本橋も面白い角度で光を反射する。日本だと「ゲームとアニメと漫画とフィギュアとアイドルと特撮と玩具が好き!」というように、幕の内弁当的趣味の人はたくさんおり、日本橋や秋葉原はまさにそれを体現したバラエティに富んだ街だと言えよう。僕もトランスフォーマーを買いに行ったのに、途中のゲームセンターや書店でうろちょろ、手には予定にはなかったドラゴンボールのフィギュアを抱えていることはよくある。しかしその意味ではケビンもマットものり弁。ゲームにしか興味の対象がないので、かっこいいガンダムのプラモデルや、かわいい美少女フィギュアの前をガンガンスルーして、ゲーム探偵団やスーパーポテトなどのTVゲーム専門店に直行する。もうGoogleマップを無視してマリオカートの如くドリフトでショートカットをキメるレベル。
2人がどれくらいゲームに夢中なのかと言うと、通天閣や串カツや道頓堀やたこ焼きや大阪城にも行った中、一番テンションが上がっていたのが、途中のゲームセンターでルイージマンションをプレイした時で、テンションが上がり過ぎて、小銭入れを忘れてきたくらいだ。

その後、宗右衛門町のつるとんたんで夕食。写真はケビンの注文した鴨南うどん。
器は江戸時代の三度笠くらいの大きさの豪快さなのに、味は本当に繊細なつるとんたんのうどん。大阪ご旅行の際にはおススメです。NGK前や北新地、梅田大丸の地下にもあります。
そこでゲーム好きの日本の友人とも合流して、 ゲーム話に花を咲かせていると、そこにも面白い違いが見られた。ケビンやマットは、我々でも知らないような日本のゲームメーカーやゲームクリエイターの名前をたくさん知っていたこと。「大阪だとカプコン以外にもプラチナゲームズもバニラウェアもあるね!」「キャッスルバニアを作った五十嵐孝司のサインを持ってる!」「メタルギアの小島秀夫の今後の動向が気になっている」などはザラで、僕らが教えてもらうほど。
それがアニメでも音楽でもゲームでも映画でも、もちろんイラストでも、さすがに「神さまが作った」とまでは信じていないが、そこに制作スタッフや制作工程を意識することなく、ついつい黒魔法の類で自分の目の前に突然現れたもののように、商品や作品に対して接してしまうことがある。だから作品の外見やタイトルは知っていても、制作スタッフの人名は話題には上がりにくい。
そう言えば、タカラトミーでトランスフォーマーの玩具を作っている大西裕弥さんからも、「海外に行った時は"ユーヤオーニシ!!"とたくさんサインを求められた事にすごく驚いた」とおっしゃっていたし、僕も作品露出度的には皆無に等しいアメリカで、まさかあんなにもたくさんの方がサイン会に参加してくれて、自分の名前を知ってくれていたことに驚いた。
イケメン大西さん。季刊エス最新号で4Pに渡って対談をさせて頂きました。玩具好きも、プロダクトデザインを学ばれている方も、会社に所属しながらクリエイトに携わりたい方もぜひ。
彼らが特別に博学なだけなのかもしれないし、それだけアメリカでは幼少の頃からの芸術教育が根付いており、野菜や果物農家の方と同じように、作品や商品も人間が作ったものとして捉えているのかもしれないが、つい「あの国が!」「政治が!」「社会が!」「学校が!」「デザイン界が!」などとぼんやりとしたイメージで捉え、その中にそれぞれの人の存在している事を忘れながら語ってしまう僕にとって、非常に学ぶことが多い時間だった。だってケビンもマットも、僕の持っていたアメリカ人のイメージとはぜんぜん違う性格だったもの。「またアメリカへ行きたいな」。そう言って大阪の姉妹都市であるサンフランシスコの友人2人を見送った。
8月の初旬にサンフランシスコで開催された『J-POP SUMMIT 2015』 というイベントで、サイン会に参加してくれたことをきっかけに「また会おうね~」と海の向こうの友達になったケビン。それから約1カ月後、日本のTVゲームファンである彼は友人のマットと一緒に東京ゲームショーで来日し、僕の暮らす大阪にも寄ってくれたので、以前イラストに描いた場所を中心に、観光案内させてもらうことにした。

中村佑介2016カレンダー (2015年10月23日発売/税込1200円)
「大阪には以前一度だけ来た事があるが、オタク友達の付き添いでUSJのワンピースショーにしか行けなかった(笑)」と彼は高校時代に習ったと言う流暢な日本語で話す。「僕も学生時代英語を習っていたけど、こんな風にぜんぜん話せないよ。なんでそんなに日本語上手なの?」と聞くと、韓国系アメリカ人の彼は「家では韓国語を使っていて、韓国語と日本語は文字の見た目は違うけど、敬語や文法の構造がすごく似ているんです」と言う。そして大学時代に仙台にも1年、留学生として暮らしていたそうだ。
その間、友人のマットはうつむいていて、ケビンのように日本語を喋れないから引け目を感じているのかなぁ…と心配して手元を見ると、3DSをプレイしていただけだった。僕と目が合い、もう1つカバンの中から3DSを出した。日本版と海外版だ。見た目は同じでも、DVDのリージョンコードみたく日本でしか発売されていないソフトは、日本の3DSでしかプレイできないからだ。「わかるだろ?ガチだぜ!」と言わんばかりにマットはニッコリ微笑んだ。

マットの海外版3DSのMii。アメリカは広いのですれ違い通信でなかなか出会えないそうだ。
さて、そんな海外のオタク友達2人と歩いていると、行き慣れた大阪のオタク街・日本橋も面白い角度で光を反射する。日本だと「ゲームとアニメと漫画とフィギュアとアイドルと特撮と玩具が好き!」というように、幕の内弁当的趣味の人はたくさんおり、日本橋や秋葉原はまさにそれを体現したバラエティに富んだ街だと言えよう。僕もトランスフォーマーを買いに行ったのに、途中のゲームセンターや書店でうろちょろ、手には予定にはなかったドラゴンボールのフィギュアを抱えていることはよくある。しかしその意味ではケビンもマットものり弁。ゲームにしか興味の対象がないので、かっこいいガンダムのプラモデルや、かわいい美少女フィギュアの前をガンガンスルーして、ゲーム探偵団やスーパーポテトなどのTVゲーム専門店に直行する。もうGoogleマップを無視してマリオカートの如くドリフトでショートカットをキメるレベル。
2人がどれくらいゲームに夢中なのかと言うと、通天閣や串カツや道頓堀やたこ焼きや大阪城にも行った中、一番テンションが上がっていたのが、途中のゲームセンターでルイージマンションをプレイした時で、テンションが上がり過ぎて、小銭入れを忘れてきたくらいだ。

アメリカは日本より家庭用ゲーム機が普及しているので、逆にゲームセンターが少ないという。
その後、宗右衛門町のつるとんたんで夕食。写真はケビンの注文した鴨南うどん。

そこでゲーム好きの日本の友人とも合流して、 ゲーム話に花を咲かせていると、そこにも面白い違いが見られた。ケビンやマットは、我々でも知らないような日本のゲームメーカーやゲームクリエイターの名前をたくさん知っていたこと。「大阪だとカプコン以外にもプラチナゲームズもバニラウェアもあるね!」「キャッスルバニアを作った五十嵐孝司のサインを持ってる!」「メタルギアの小島秀夫の今後の動向が気になっている」などはザラで、僕らが教えてもらうほど。
それがアニメでも音楽でもゲームでも映画でも、もちろんイラストでも、さすがに「神さまが作った」とまでは信じていないが、そこに制作スタッフや制作工程を意識することなく、ついつい黒魔法の類で自分の目の前に突然現れたもののように、商品や作品に対して接してしまうことがある。だから作品の外見やタイトルは知っていても、制作スタッフの人名は話題には上がりにくい。
そう言えば、タカラトミーでトランスフォーマーの玩具を作っている大西裕弥さんからも、「海外に行った時は"ユーヤオーニシ!!"とたくさんサインを求められた事にすごく驚いた」とおっしゃっていたし、僕も作品露出度的には皆無に等しいアメリカで、まさかあんなにもたくさんの方がサイン会に参加してくれて、自分の名前を知ってくれていたことに驚いた。
イケメン大西さん。季刊エス最新号で4Pに渡って対談をさせて頂きました。玩具好きも、プロダクトデザインを学ばれている方も、会社に所属しながらクリエイトに携わりたい方もぜひ。
彼らが特別に博学なだけなのかもしれないし、それだけアメリカでは幼少の頃からの芸術教育が根付いており、野菜や果物農家の方と同じように、作品や商品も人間が作ったものとして捉えているのかもしれないが、つい「あの国が!」「政治が!」「社会が!」「学校が!」「デザイン界が!」などとぼんやりとしたイメージで捉え、その中にそれぞれの人の存在している事を忘れながら語ってしまう僕にとって、非常に学ぶことが多い時間だった。だってケビンもマットも、僕の持っていたアメリカ人のイメージとはぜんぜん違う性格だったもの。「またアメリカへ行きたいな」。そう言って大阪の姉妹都市であるサンフランシスコの友人2人を見送った。