月別アーカイブ / 2015年07月

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さる7/19(日)にヒューマンアカデミー神戸校で講演会が行われました。お越し下さった皆さま、学校スタッフの皆さま、司会をしてくれた真理藻ちゃん、ほんとうにどうもありがとうございました。

講演会はその場に応じて、毎回微妙に内容を変えているのですが、今回は参加者の方々の質問が、ほんとうに興味深いものばかりでした。とても楽しかったです。唯一、惜しむらくは、時間の都合上、すべての質問をお読みできなかった点ですので、かわりにここでお答えして行こうと思います。


色付けで肌の色がいつもおかしくなります。どうしてますか?(RHさん)


「だから僕は塗ってません!(キッパリ)」というのは半分本気で半分冗談です(笑) 真面目にお答えしますと「肌色」という単語のイメージに引っ張られ、それこそが答えだとつい間違えてしまいますが、あれは本当は肌の色というより皮膚の色であって、実際には唇や頬やまぶたなど、その下に薄く透けている赤みがかった部分(血液の色)や、角質の黒ずんだ部分や影など、1色で肌を表現するのは、漫画(キャラクター)以外では非常に難しいのですよね。RHさんもそれで塗る度にイメージよりペタンとなり過ぎて、「アレ?」となってると思われます。打開策としては、絵を絵として見るのではなく、本当の人間や写真を観察して、必要に応じ色を変えてゆくと、肌らしくなってきます。黄色や赤や茶色や黒だけで完成し、終わって見ればもしや「肌色」が一番必要ないのかもしれませんよ。「ダシの素」より実際に昆布や鰹節を煮る方が味に深みが出るように。がんばって色々試してみて下さい。


ASIAN KUNG-FU GENERATIONとは、以前から交流がおありでしたか?どのような経緯でCDジャケットの依頼があったのでしょうか?どんなお気持ちでしたか?(HYさん)

大学の友人の紹介で、インディーズデビュー以前からの交流があり、お金にならない時も、ライブポスターやシールを作っていたので、CDジャケットを描かせてもらえることになった時も「あ、次はお金もらえるんだ(笑)」と思ったくらい自然な流れだったことを憶えています。ま、自分のことはどうでも良く、とにかく旧友として、「どんな手段を使ってでも、このCDを一人でも多くの人目につくものにしてあげたい!」という一心は、今も続いております。それ以上の詳しいことは↓をお読み下さい。




CDジャケットを描く時は「こう描いてほしい」等の要望がきたりしますか?(KOさん)

イラストやデザインの仕事は、そういうケースの方が多いと思いますが、僕の場合は「お任せで」という仕事が多いので、レコード会社、アーティス含め滅多に要望を頂いたことはありません。だからそのぶん、人一倍、CDはよく聴き、小説ならよく読み、責任も重くのしかかってきます(笑) また直接的な絵の内容ではなく、「ターゲット層(見て欲しい年齢・性別)」「商品発売の意味・ねらい」などまでは作品から読みとれませんので、できるだけ詳しく提示してもらい、イメージを共有します。


業界で一番辛かった事は何ですか?(SBさん) 

どの仕事も同じだけたいへんな作業にしないと先方に失礼にあたりますので、全部たいへんでしたし、全部やりがいがありました。また、労働に見合ったお金をきちんと頂いているので「辛い」ということはありません。


イラストレーターの仕事はどういうプロセスで行っているのですか?(KMさん)

例えば小説の表紙の場合を例にしますと次のような感じです。

1.出版社からメールor電話で仕事依頼
2.内容の確認(「○○先生のこんな内容の小説」等)
3.制作期間/制作費の相談
4.原稿を読む(表紙に描くべき要点を絞ってゆく)
5.1~3種ほどラフイメージを描き、出版社と作者に送る
6.意見を聞きイメージのすり合わせ(「A案でここをこうして欲しい」等)
7.本描き(下書き→ペン入れ→PC彩色…全1~2週間)
8.完成品データをクライアントとデザイナーにメールで提出
9.デザイン確認(文字が入り本の形に落とし込まれたもの)
10.印刷・出版

こんな感じです。大体これで1~3カ月くらいの期間のお話です。なお7以外は待ち時間も多いので、別の仕事の7と同時進行しています。


黒の主線をきちんとひいてらっしゃいますが、ユニバーサルデザインは意識されていますか?(CAさん)

これはまず最初に「ユニバーサルデザイン」という単語の意味を説明しなければなりませんね。これは年齢・性別・国籍・障がいの有無などにかかわらず、最初からできるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインすること、されたものを指す単語です。

さて、僕がイラストを描く際にそれを意識していると言えばしておりますし、無視しているといえばしている。なぜなら、音や感触や言葉を必要としない絵というものは、それ自体がすでにユニバーサルデザインとも言えますよね。例えばどんな絵でも、感動や理解、また好みの有無は別として、とりあえずは視認できる。サイン会にはよく外国の方や聴覚が不自由な方も来られて、そんな時に「絵を描いていて良かった」と思います。

また一方で、音や感触や言葉を必要としない絵というものは、ユニバーサルデザインと相反するものではないかとも思う。例えば盲目の方だと言葉や点字で説明しても、同じものはなかなか伝えられない。

そんな中間に位置するのが、色盲・色弱の方、つまり色がみんなと違うように見える方達です。ただしそれらの方も彩度(色の種類や鮮やかさ)の差は感じにくくても、明度(色の濃さ)の差は感じとれますので、CAさんのご指摘通り、出来るだけはっきりとした輪郭線と、モノクロにした時の見やすさは意識して制作しております。

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イラストレーターになるにあたって気を付けておいたほうがいいこと、覚悟しておくこと、勉強しておくべきことは何ですか?(KSさん)

気を付けておいた方が良いことは、仕事するにあたって、まず最初にギャラの確認はしておくことです。お金の話を聞きにくいからと言って、1ヶ月かかりいざ描き終わったら、「1枚5000円です」と言われたら、ぐぅの音も家賃も払えませんからね。またその後に、「あなたにとっても良い宣伝になりますし」と言って来る会社の場合は、次は目には目を、いくら暇でも「スケジュールの都合で」と断わった方が、あなたの未来に差し支えないでしょう。

覚悟しておくことは、上記のように、最初はみんな儲からないので、手と脳を早く動かせるようにしておきましょう。それなら余程いい生活をのぞまない限り、バイトをしなくとも、数をこなし、何とか絵だけで食べていけるようになります。ちなみにギャラは人気だけでなく、年功序列、結婚、子供の有無でも自然と上がってゆきます。

勉強しておくべきことは、いくら好みではない商品でも、話題性以外で長く売れてるものは、消費者のうちにお金を出して買い、なぜ売れているのかをしっかりと味わうことです。そこでの勉強こそ、「あまり好みじゃなかったはずなのに、買っちゃいました」という将来のあなたの作品に対する評価へと直接つながってきます。日本人の7割以上がそもそも絵に興味がないことを忘れないでいて下さい。



以上が、当日にお答え出来なかった代表的な質問でした。あとは内容が重複しておりましたので今回は割愛させて頂きます。ということで、これからも講演会は各地で続きますので、参加予定の皆さま、おもしろい質問、お待ちしておりますね。それでは会場でお会いしましょう。


■7/25@愛媛■ 高校生・在校生限定
日時:2015年7月25日(土)10:30~14:00
入場料:無料(※要予約)
お問い合わせ:0120-495-338

■8/1@インターネット
会場:schoo
日時:2015年8月1日(土)19:00~21:00
入場料:無料
詳細:https://schoo.jp/class/2529

■8/2@東京
日時:2015年8月2日(日)13:00~16:00(※12時受付)
入場料:無料(※要予約)
詳細:
http://www.tca.ac.jp/creative/event/sp.html

■8/22@大阪
日時:2015年8月22日(土)12:00~
入場料:無料(※要予約)
詳細:
http://www.oca.ac.jp/event/special/201507/nakamura.html

■9/12@東京
会場:東京造形大学 4号館A教室
日時:2015年9月12日(土)14:30~16:00(13:30~入場可)
入場料:無料(※先着順)
お問い合わせ:info@room-composite.com
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■9/27@仙台
日時:2015年9月27日(日)13:00~
入場料:無料(※要予約)
お問い合わせ:0120-050-459

■10/24@那覇
日時:2015年10月24日(土)13:00~
入場料:無料(※要予約)
お問い合わせ:0120-55-7815

■11/14@大阪
日時:2015年11月14日(土)13:00~
入場料:無料(※要予約)
お問い合わせ:0120-06-8601

生まれてはじめて書店にて1冊まるまる立ち読みをした。
申し訳なく思い、別の本を2冊買って帰った。

公園に似た読者層が幅広いこのLINEブログという場において、今回の記事を書くかどうかとても迷ったが、だからこそお伝えしたいと思う。僕が一通り目を通したが買わなかった本のタイトルは元少年A著『絶歌』で、結果から言うと、「買うべき本ではない」と感じた。だからリンクも張らないし、この記事を読んで好奇心や話題性から本書を購入することなく、これ以上の悪影響の助長に少しでも歯止めをかけられる事を切に願う。「言われるまでもなく買わない」という方は、これ以上、当記事自体も読み進める必要はない。

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初刷10万部という破格の数字や、被害者のご遺族には無断で出版された事からも、この書籍が本当に出版社の言うような「社会的意義」を持たせたかったのなら、モラルのない売り逃げ炎上商売を目的としていなかったのなら、なぜ警察や心理学者、教育関係者だけが閲覧できる資料として役立てなかったのだろうという別の可能性を考えると、ただたださみしい。

僕はあの神戸事件の少年Aに対し、年代も近く、同じ兵庫県に住んでいた事からも、今に至る18年間、ずっとモヤモヤして気持ちを抱えていた。もしもロボットの誤作動のように「アイツは人間ではないから」と、自分たちと完全に隔離して考えられるなら、モヤモヤはせず、ただ被害者とご遺族の辛さに共感し、かなしみと怒りだけがこみあげてくるだろう。そのモヤの正体は、我々と少年Aの決して見たくはない小さな共通点を隠す霧なのではないかと考える。

幼児期に、小さな虫を踏んづけた事はなかっただろうか。小学生に上がり、好きな子にイジワルしたり、友達をわざと怒らせて、友情を試すような事はしなかっただろうか。中学生の頃に、ホラー映画を見たり、傷だらけで眼帯をつけたキャラクターの絵を落書きした事はなかっただろうか。高校生の頃に、親以外の人に特別な唯一の存在として認めてもらいたいと願ったことはないだろうか。また今も、自分だけが抱えている到底共感されないだろう世界観を、同じようにわかって欲しいと願う事はないだろうか。

ポエム調の表現を外し要約すると、元少年Aによる手記はまさにこんな感じの内容だった。事件と状況の特異性を切り離して考えると、かつて想像していたような異次元のものではなく、至ってオーソドックスなこどもの願望が大人の知識で語られていた。

少年Aが特殊だったのは2つ。その幼い欲望が世間との折り合いがつかず、止まったままである事。そしてその影響を第3者に与えたいというもの。僕は仕事柄、特にこの後者は、モラルや生産性がなく、人をイヤがる要素の方が多いと「迷惑行為」、その逆が「創作」と呼ばれているだけで、根底に流れているものは同じだと思っている。今や仕事になったから「お金(生活)のため」等と強がりも言えるが、子供の頃は、一銭にもならないのに、やらなきゃいけない宿題をさぼって先生に怒られてでも、何が何でも絵を描いて両親や友達に見せなくては、息が吸えないほど苦しく、孤独感に迫られたことを憶えている。今思い返すと、習った日本語(ことば)ではコミュニケーションできない感情を抱えていたのだろうと思う。

何もそれは特別なことではなく、絵を描かない方も、理由なくイライラしてヤツあたりしてしまったり、無意味に泣きたくなったり、妙に機嫌よく笑っちゃう日はないだろうか。「なんで?」と聞かれても「わかんないけど」としか返せないようなこと。表情や語彙に乏しかった僕の場合、それが絵だっただけなのだろう。そこから当時の少年Aがその手段を犯行以外に持てなかったのだと推測でき、「どうしても書かずにはいられませんでした」というあとがきも理解できる。

ただし、そんな個人的なことは被害者遺族にとっては何の理由にはならないという事が、まだ飲み込めていないのだから、少年Aは決して「元」なんかではなく30代の「少年A」のままで、社会適応としての更生プログラムは役に立たなかったと考えざるを得ないだろう。それぞれの価値観、関心、反面教師としての予防策もあるので「読むべきではない」とは言えない。ただ出版社は一般書として発売するべきではなかった。内容以前に、この本が誰もが目につく書店の店頭に「ベストセラー」として並んでいる事実自体が、まだ分別のつかない子供たちに与える「あ、許されるんだ」という悪影響の方が遥かに大きい。


少年Aに本当の償いの気持ちを持つことが出来たなら、本当に文学と向かい合う時が来たのなら、決して世間には明かさない偽名を使って、事件とは関係のないオリジナル小説で何が何でもヒット作を出し、その印税を被害者遺族への賠償金に当てて欲しい。

そして「世間との隔たり」を感じてどうしても絵を描いちゃう子供たちは、かわいそうな自分の為ではなく、次は一度、それでも近くにいてくれる家族や友人の喜ぶ顔を想像しながら、1枚描いてみて欲しい。喜んでもらえるだろうか? それなら次はどこをどうすれば良いだろう。そんな事を続けてイラストレーターになった今、あの頃よりずっと生きている感じがする。


以上が僕が「『絶歌』は買うべき本ではない」と考えた理由だ。ご遺族の方々をこれ以上苦しめないよう、子供たちへの悪影響を少しでも減らすよう、一刻も早く本を回収する決断をして欲しい。それが出来ないなら僕も今後、太田出版の書籍表紙を描くことは出来ない事を、ご了承頂きたい。

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