40歳になって、快楽への耐性(慣れ)が出来たことや、若い人の文化がその親世代のリバイバルも多いので「もうまったく新しい刺激には出会えないのかな…」と退屈になる日も多い。そんな中、マーベルやピクサーを含めた最近のディズニー映画を見ると、ストーリーはもちろんだけど、まるで海のように、(ターゲットの)広さと(表現の)奥深さって両立できるんだなぁとその姿勢や結果に感動する。そしてまだ文化に対して、あたらしい感動ができたこと自体に毎回驚く。

イラストレーターを志しはじめる前の若い時は、「メジャーな作品=(全て)浅い」と感じ、それなら逆にと、漫画も音楽も映画も絵画もゲームも、マイナーやインディの作品ばかり需要していた。そこにこそ「深さ」があると思ったからだ。いや、そうでなければ困ったからだ。当時の何者でもない自分にとっては。というのも、その行為自体は、深さの追求というよりも、まだ発展途上で自分らしさを確立したい自分の自己投影であって、親しみやすさに近かったのだと思い出す。そして、その当時に指していた「深い⇔浅い」も、今考えると「過激⇔穏やか」という単なるパッと見の表層の模様で、とく中身である深度には関係なかったような気がする。当時好きだったマイナーな作品の表現の水面は、ただグロかったり、ただエロかったり、ただ抽象的だったりで、マグマのようにグツグツと泡部いている。でも実際、膝くらいまでしかない浅い川だったりした。もちろん、マイナーで深いものもたくさんあったけど、また、インターネットで知の集約ができて以後は、そういった知られてないけど良いものは、だいたい浅瀬に浮上し、買う買わない、好き嫌いは別にして、みんな知ってる存在になった気がする。音楽でいうと、個人的ではない「隠れた名盤」など、だんだん存在しえなくなってきてるのかと思うと、それもそれで探す楽しみが減ったようで寂しい気もするけど。

逆を考えると、多数決のように、ターゲット層の広いメジャー作品は、表現はわかりやすく噛み砕き、モラルは厳しめになりらざるを得ないが、それらとテーマ(深い⇔浅い)はまったく別のところにあることに気付いていなかった。すなわち広さと深さの両立も可能であると、例えば最近のディズニー映画『ズートピア』はすんなり教えてくれる。

「差別とは何か?」という、これだけ聞くととても難しそうなテーマを持っている映画だが、子供が見たら擬人化された動物たちのルックに可愛さを覚え、「がんばれー!」って感情移入できるストーリーで、観終わったら感動できる。けど、大人が見ても、世界観がユニークで、考えさせられる作りだ。絵のことを言うと、これまでのディズニー映画のディフォルメと、昨今のCGのリアルさとが違和感なく幸せな共存をしていて、目が気持ちいい。各動物の特徴を活かした繊細な動きや設定も見事だ。

また、実写版『ジャングルブック』は、ジャングルの動物たちに育てられた人間の子の話で、ズートピアと同様の「差別とは何か?」を踏まえ、さらにその先の「しあわせとは何か?」というテーマに突っ込んでいるが、一見すると、ほんとうにかわいくてただただワクワクする映画だなのが驚きの一作だ。

『ズートピア』同様、日本語吹替も素晴らしかった。スタッフロールではじめて「え、この芸能人だったの?ウソでしょ!?」と疑った程。そして観終わるとやっぱり、少し過去を振り返って、背筋を正そうとなる。すごいのは、それらのテーマが、我々の生活を決して否定する姿勢ではないので、罪悪感には苛まわず、ただただ前向きに考えさせる点。『ズートピア』と『もののけ姫』が好きな方はぜひ。また同時に、ほぼ同じ設定なのに違った着地を見せる『ピートと秘密の友達』もセットで見たい。


マーベルの一連の映画もほんとすごい。最新作『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』はもう言葉で説明できないほどすごい。インフィニティすごい。インフィニティすき。

『アイアンマン』や『キャプテンアメリカ』『ハルク』『マイティソー』『ガーディアンズオブギャラクシー』『ブラックパンサー』『ドクターストレンジ』『スパイダーマン』…etc、ヒーローと言う共通点だけで、まったく毛色もテーマも違った作品たちが違和感なく一堂に会している様は、豪華な幕ノ内弁当の箱をパカッと開いて見せられたように見事な手腕だ。そして、集合もの、コラボものではどうしてもキャラクター紹介に徹し、ストーリーが薄くなってしまいがちなところを、何十人もの主役が出演する映画としては短すぎる上映時間内に、すべてに"らしい見せ場"を作り、かつストーリーは止まることなくきちんと進行していく。これも広さと深さの共存だろう。敵のボス・サノスを巡る物語が、これまた勧善懲悪ではないところも、早くも自作への期待が高まる。

これらは公開規模により莫大にかけられる制作費や、監督さえも複数立て、互いに意見を出し合い、表現の行き過ぎに歯止めを聞かせる姿勢、また圧倒的な人員(スタッフ数)の違いもあるが、やはり違うのは、意識なのだろうなぁと思う。ぜんぜん諦めてないっていう。それっていちばん簡単そうで難しいんだな。例えば子供の前で、「努力すれば何でも叶う!」と説く研究家がいたとして、「じゃああなたが今日からオリンピック選手目指して」とお願いで返すと、「今仕事で忙しいから、またね」とだいたいははぐらかすだろう。ほんとはみんな何かを諦めている。でも、だからこそ日々の生活や継続ができる。

そんな夢を追いかける若い時に話を戻すと、知る人ぞ知るインディーズのアーティストがメジャーになったら聴かなくなってしまったりもした。それは才能が世の中に認めるほど大きくなったという、とても喜ばしいことのはずのに、自分の元から去ってしまったと感じた。けどいつだって去ったのは自分からだったなぁ。その人を応援していたんじゃなくって、どっちかって言うと、自分を応援していたのだろう。誰も応援してくれない(と思っていた)ので、自分くらい味方じゃないと、心がポキッと折れそうなほど、心細かったのだ。

ディズニーの映画を観おわると毎回、その頃の決して甘さなどなく、出張帰りのお父さんの靴下のような、ただただ酸っぱいだけの記憶が蘇り、鼻の奥がツンとする。それでもまだディズニーの新作に期待してしまうほどには辛くはなしに、楽しみの方が大きい。そんな作品、自分もいつか作れるんだ、ともう一度信じようと思う。だから昨日は仕事をせずに、ずっと映画を観ていました。という長い言い訳でした。はい。

おはようございます。

来年は久々にカレンダーを出します。2019年版だから今年末くらい。

ほんとうは毎年出したい気持ちもあるのですが、決まり事になるとどんどん麻痺して「また来年もあるしこれでいっかー」って流れ作業になるのが、将来的な目線で考えるととても恐ろしいので、エネルギーが溜まった時に、超必殺技のように出すことにしています。

そこで、収録する絵や、デザインはもちろん、例えば日付の部分にもミシン目を入れて、使い終わったら綺麗にポスターとして使える仕様や(そうなると好きな絵で1年を過ごすことも可)、裏面をぬりえにするなど、何かひと工夫して、手に取って下さった方の1年がもっと楽しめるようにできないかと、出版社や印刷所に色々とアイデアを提案するのですが、やはりそこで問題になってくるのはコスト(費用)。ミシン目を1つ増やすと、また塗り絵用の裏写りしない紙にすると、お金がかかって値段が高くなっていちゃうんですよね。画集ではないので、1200円(税込)くらいなら「こんなもんだよね」と思えるけど、じゃあ上記のアイデアも入れて、金箔も貼って、化粧箱に入れて「2000円!!(税別)」と言われると、カレンダーとしてはちょっと高いなぁって、消費者の僕は思ってしまう。

それを回避する方法が1つあって、生産数を増やすこと。1個作るより、同じものを100個作る方が安くなるのは、スーパーで大きいお肉を買ったことある人なら知ってる通り。ただ、イラストレーターのカレンダーだと、「初版100万部刷りました!」なんてのは非現実的で、半年後、書店からの返品により出版社の倉庫がパンパンになってしまいます。

だからその方法を取るためには、僕のイラストや、イラストレーターとしての知名度をもっとアップする必要があり、今日明日にすぐ出来るのは、悪い意味で炎上する時くらいでしょう。で、そのためには、毎回毎回絵を描くごとに慣れに甘えず、気を抜かないこと。これは最初の話にもつながりますね。

とどのつまり、「いい作品を継続していく」という単純な答えに行き着くのですが、そう考えると、あらためてマクドナルドってすごいなって思います。

もう見慣れた風景なので、一見、マクドナルドは値段が安いから、全世界にたくさんの店舗が増えたと錯覚してしまうけど、よく考えたら、すごく単純な話、その逆で、おいしいから、「オレにも食わせろー!」とみんなが求め、店舗が増えて、結果的に安くできた。僕が子供の頃(80年代)は、ハンバーガー1つ230円でしたので、高級店とまではいかないまでも、ファーストフードというよりレストランに近い存在感で、だからこそよくマクドナルドで子供が誕生日会を開いてもらっていました。特別だったのですね。それでもみんなが求め続け、店舗と生産数を増やし、結果的に安くできた。それくらいおいしかったし、オリジナリティがあった。

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しばしば「初デートでマクドナルドや吉野家は考えられない」という声を聞くことがありますが、そういうときはこんなイフも考えてみてほしい。もし今、マクドナルドを体験したことのない世界だったとして、あのてりやきマックとポテトとシェイクを出してくれるお店を、自分の暮らす住宅街の片隅にたまたま発見しました。もちろん食べたことはありません。そしてまだ大量生産できないので、セットで値段はじゃあ750円としましょう。近所にはないアメリカンな内装。そして口にすると「こんなおいしいものが世の中に存在するのか!?」と、少なくとも僕は驚いて、もしたくさん貯金があったら、「ぜったい流行るよ!」と店長を口説いてチェーン展開を持ちかけるでしょう。吉野家も同じです。僕は値段の2倍以上、美味しし、価値のあるものだと思います。

逆に、高級食材=美味しいと錯覚している、ウニやうなぎやマツタケやキャビアやフォアグラが、余るくらい大量に収穫され、もやしくらいの価格でいつでも食べれるようになれば、今と同じようにありがたく、また美味しく感じるでしょうか。

個人の価値観や美意識って、そんな風に実は絶対的なものではなく、相対的にコロコロと変容してしまうんですよね。かくいう僕も、あんまり欲しくなかったものでも、「限定!」や「残り1点」と言われたら、急にそれが輝いて見えてしまう時があるので、よくわかります。

結局、久しぶりにブログを書いてまで、何の話をしたかったのかと言うと、カレンダーの仕様がどうなるかはまだわからないけど、一寸の希望を持って夜通し使うかわからない塗り絵の線画を作っていた中、朝が来て、お腹が空いてきて、とにかく今はマクドナルドが食べたいってことです。でもうちの近所だとちょっとだけ遠いから、億劫になってお腹を鳴らしてPCの前から動けない。今以上にマクドナルドが人気になって、もっと僕ん家の近くに来てくれたらなぁ。。。カレンダーのことも含め、どちらもすぐには実現できないけど、引き続きがんばっていくしかないですね。

あなたは『みだれ髪』を知っていますか?

そう、明治時代にうまれたあの歌集の金字塔、与謝野晶子さんの『みだれ髪』です。「もちろん知ってるよ、国語の教科書で呼んだもん」という方、僕もそう思っていました。すっかり理解している気になっていたのです。この表紙のご依頼を頂くまでは。

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という訳で、これまた近代歌集の金字塔『サラダ記念日』や『チョコレート革命』の著者である俵万智さんによる、『みだれ髪』現代語訳版の表紙を描かせて頂きました。デザインは、斬新なアイデアと繊細な仕上げで、数々の素敵な装丁を手掛けられてきた名久井直子さん。どこを取っても豪華すぎて鼻血が出そうな布陣ですが、実はご依頼当初はお断りさせて頂くことも念頭に置いていました。

というのも、『みだれ髪』は前述したように誰もが知っている名作中の名作。名作とは優れているということ。それは流行にだけ留まらず、時代に流されない耐久度があったということ。だからこそ1901年に出版されてから、こうして100年以上経った今でもまた再版されるんですよね。同時に、その作品の顔である"表紙"を担当するということは、与謝野晶子さんと、これまで長年に渡り『みだれ髪』を語り継いできた読者の方々と同じだけ、短歌を深く理解する必要があります。しかしイラストレーションは、作品であると同時に、仕事。ということは締切があります。それは決められた時間内に、100年以上の魅力を解き明かさなければならないということです。そこに自信がなかった。でもそれ以上に、与謝野さん、俵さん、名久井さんへの興味が勝り、無責任にも「とりあえず読んでみます!」と言ってしまったのです。

よく「絵のアイデアはどこから得るのですか?」という質問が寄せられますが、それはすごく簡単。皆さまも、国語のテストで"この作品で作者が言いたかったことを25文字以内でまとめなさい"という問いに何度も答えたことがありますよね。また夏休みには読書感想文なんかもありました。それと同じで、"この作品で作者が言いたかったことを1枚の絵でまとめなさい"、これが表紙絵の第一目的です。さらにそれを見て「自分も読んでみたい!」と促すのが第2の目的。だから最初に僕自身が楽しむ必要があるのです。「短歌はあまり読んだことないけど理解できるのかなぁ。。。」そう思いながら、届いたサンプル本のページを開きました。そして次に気付いた時にはこうなっていました。

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僕は、いつも表紙絵を描くための読書の際は、付箋をその作品のポイントとして、特に気に入ったり、気になった部分、つまり絵のモチーフとして使えそうなページに貼っていくので、出来るだけ厳選してあまり多くないようにするのですが、読み終わったらこの束(笑)テスト勉強の時、参考書の全ページ、全文章に蛍光ペンのアンダーラインを引いてしまった、そんな感じ。それを絵のアイデアとして置き換えると以下のような感じでした。もうグチャグチャ=魅力が多すぎた、ということです。これが名作の持つエネルギーなんですね。

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ただ、読み終わって感じた率直な感想は、「むかし国語で習った印象とはまるで違う。。。」でした。『みだれ髪』は妻子ある与謝野鉄幹師匠への、当時ハタチだった与謝野晶子さんの恋する気持ち、そして結婚までの行為や道のりが、5・7・5・7・7の計31文字を通して赤裸々に綴られており、どちらかというと短歌の持つ一般的イメージの"風流"より"官能"、平たく言うと爽やかというよりエロかった。同じ文字数規制のあるTwitterでもし今の時代に発表していたら、間違いなく炎上するような内容でした(笑)当時もやはり問題視されていたようです。

しかもそれを、現代と比べると遥かに男尊女卑社会だった明治時代において発表していたなんて、「晶子ちゃん、なんてロックなんや!」と、尊敬と同時に親しみを覚えました。例えば椎名林檎さんやaikoさんや西野カナさんやmiwaさんがデビューした頃の衝撃。でも当時はCDもレコードもカセットもMP3もスマホもYoutubeもテレビすらありません。そんな時代の女の子たちが、何をやっても「女なのに」「女だから」と窮屈な"世の中で求められる女性像"より、"ほんとうのワタシたちの代弁者"として『みだれ髪』から、晶子さんから、日々の暮らしの中で、どれだけの勇気と元気をもらったことでしょう。

そこで、現代語訳版ということもありますが、明治文学だからって和装の女性ではなく、現代の女性を描いた方が、より今の読者に響くだろうと考えました。恋、愛、友だち、尊敬、官能、学問、戦争、季節…etc、全399首の『みだれ髪』には様々な要素がありますが、晶子さんが伝えたかったのは、一貫して受け身ばかりでなく、女性も自発的になりましょうということ。決して時代やノスタルジーではなく、生活においても、社会においても、男性と同じように女性が活躍できる未来だったからです。

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そこで女性像は、儚く可愛げな表情から、強く美しい表情に。髪型も『みだれ髪』と聞いて、誰もが想像するであろうロングヘアーが風でなびくイメージではなく、整えている部分があるからこそ、より浮き立つ乱れと、現代性を表現するためにポニーテールにしました。そして出来上がったのがこちらのラフスケッチです☟

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当時の衝撃や、女性の強さ、愛の深さを示すため、このようにテーマカラーは鮮烈な紅色だと決めていましたが、『みだれ髪』の"みだれ"、つまり官能面を表現するための下着姿は「淡い紫色にしたことにより、落ち着いた印象を持たせたものの、果たして一般書籍としては許されるものだろうか?」と、まずはこれを出版社に提出し、お伺いを立てました。(ラフはその為にあるものです) すると「作品の内容を尊重してこれで行きましょう!」との英断なお返事を頂き、このまま本描きへと進みます。

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ラフでの反省点や修正点を踏まえつつ、いつも通り、バロンケント紙に鉛筆で下書きをしてから(1日くらい)、決まった部分をペン入れ(3日くらい)。割とラフの時点で色付きで丁寧に描く方なので、変化のないように見えますが、並べて比べてみると、全体の収まりや、モチーフの位置や細部など、様々な違いが見えてくるかと思われます。

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そして線画が完成したら、スキャナーでパソコンにデータとして取り込み、フォトショップというソフトで色をつけていきます。これも3日間くらい。まずラフで決まっていた部分をさっと塗ってから、前述した本書のテーマと、本としての手に取りやすさを念頭に、細かな部分を着色、そして全体のバランスを考えて、色を調節したり、目立つべきではないモチーフの線を消したりして、絵は完成です。

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これまたラフと並べると、より「商品」として丁寧で華やか、「読書感想文」としてスッキリと要点がまとまったことがお解り頂けるのではないでしょうか。

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しかしこれだけでは1冊の「本」にはなりません。その後、名久井直子さんによる、タイトルや配置、紙選び、発色など、それはもう脳手術くらい神経の細やかなデザインが施されます。

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まるで元から決められていたような、長方形の中でのすべての要素のハマりの良さ、そして具象画が横にあるのに一番重要なタイトルがきちんと目立つ配置や文字選び、そんなデザインとしての完成度だけに留まることなく、"みだれ"の文字だけがほんとうに乱れていたり、絵を中央ではなく左に、文字を右に集めることによって、
元の『みだれ髪』表紙へのリスペクトとして、縦長の短冊のようなイメージに見せる、そんな遊び心にも「さっすが名久井さん!」と言葉を失うほどでした。

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これ☝が、1901年に出た元書『みだれ髪』の、藤島武二さんによる表紙です。この表紙との共通点を僕も絵の中にたくさん潜ませており、また名久井さんの上品な紙選びによる仕上げ、そして何より俵さんと与謝野さんによる内容ももちろん、この画面からはもうお伝えできませんので、つづきはぜひ本屋さんでお確かめ頂ければ幸いです。

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名作の現代語訳にして、久々のうれしいしおり紐つきハードカバーのお仕事に、人生でたいへん刺激的な一時でしたが、やっぱりいちばん気になるのはこれを見て、晶子さんがどう感じるかなんですよね。気に入ってもらえるといいな~ でも、そんなことより、俵さん、名久井さん、そして編集の高木さんという女性たちの手によって、この本が世に送り出された時点で、天国の晶子さんもニッコリ微笑まれていることでしょう。

最後にもう一度、あなたは『みだれ髪』を知っていますか?

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俵万智訳みだれ髪
河出出書房新社 2018/5/25刊

学問の世界には「人はDNAや思想の入れ物」という考え方があるようです。生物全体として進む大きな方向や、人間のそれまでの歴史というたいせつな中身を守るための、個人とはただの外箱という。そんな突拍子もないネタバレのようなことを聞くと、それまで一生懸命に積み上げてきた自分の容姿や人生に拍子抜けしちゃう人も、また、逆にこれまで抱えてた悩みがちっぽけに思え、明日に進める人もいるでしょう。まぁ、どちらにせよ"軽くなる"ということで、それはやっぱり我々がハコだからなのかもしれません。

僕の場合も思い当たるフシがあります。それはイラストレーターやデザイナーという職業は主に、中身ではなく、外側を作る仕事だからです。例えば最近でいえばチョコパイの仕事がわかりやすいと思います。
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ロッテ『チョコパイ~ティラミス 晩餐会のデザート仕立て』/パッケージ

中身を作ったのはロッテと食品工場の方々であり、ここで僕はやはり外側、つまり箱を作りました。CDジャケットや本の装丁も同様に、中身は作っていなかったのです。だからといって、子供らしく「主役になれない!」や大人らしく「印税もらえない!」なんて、悲観的には捉えてはいません。これこそが夢であったし、この仕事に誇りをもっているからです。

例えばプロポーズ。もちろん結婚指輪はとてもたいせつですが、先に見えるのはケース。あのベルベットとシルクでできたパカッと開くリングケースにときめかない女性はあまりいないでしょう。また、もうすぐのクリスマス。こどもの頃、12/25に起きたら枕元に、緑の包装紙と赤いリボンに包まれたプレゼント。もしそれらが事務的な段ボール箱だったとしたら、もし裸の手渡しだとしたら、テンションは幾分か下がってしまいます。きらびやかな祝儀袋や、かわいいお年玉のぽち袋もそうですね。つまりパッケージというのは、単に中身をダメージから守るという"役に立つ"機能性だけでなく、"うれしくなる"や"たのしくなる"という装飾性としても、非常に重要な要素なのです。

そもそも絵というもの自体、線が引かれ色が塗られただけのただの紙という、既にそんな側面を持っていますが、「素材は変わっていないのに、装飾や梱包をするだけで、テンションが上がってしまうというのはまるで魔法や!」と、子供のころ、ビックリマン小梅ちゃんを見てうれしくなった僕はイラストレーターを目指しました。おー、どちらもロッテの商品ですね。そしてチョコパイも。(※詳しくは過去のブログ記事参照)


前置きが長くなりましたが、最近もそんなハコをいくつか作らせて頂きましたので、ここでご紹介しようと思います。まずは辞書。角川の漢和辞典新字源の特装版です。

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そう、あの「新字源」。歴史ある漢和辞典のベストセラーですね。学生時代に使っていた方、今もお家の本棚に並んでいる方も多いのではないのでしょうか。そしてこの度、23年ぶりに大改訂され新しくなりました。"10年かかりました"というリアル「舟を編む」のその制作期間もさることながら、同じ本が23年間書店に並んでいるって稀なこと。だって週刊誌なら一週間、新刊もほとんどが5年くらいで絶版や文庫化、スタンダードな漫画も新装版になったりしますものね。ということは著者や編集の方達は「また20年くらい変えれない…!!」という重圧の中、10年間を駆け抜けたのかと思うと、ほんとうに頭が下がります。詳しくは公式サイトをお読み下さいませ。

そんな由緒正しき本の大改訂な訳ですから、「1人でも多くの人に手に取ってほしい」という想いを込め、入口は広く、奥が深い新字源の内容と同様に、この特装版(通常版もあります)も、見た目もできるだけ漢字の持つ意味や楽しさ、美しさを全面に、敷居が低く見えるような絵にしました。デザインを手掛けて下さったのは、『夜は短し歩けよ乙女』『謎解きはディナーのあとで』でもご一緒させて頂いた高柳雅人さん。実際には絵が出来上がった後に文字(デザイン)は入れるのですが、まるでそこに元々その文字があったかのようなハマりのよさと、スタンダードなのにチャーミングな文字選びと配置は前2冊も共通していますよね。その手腕に、出来上がる度に僕は毎回驚いています。

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また手に取って下さった後も、皆さまのお家で末長く愛されるよう、どの角度から見てもかわいく、表紙だけでなくグルっと一回りだけでなく、上も下も実は中にも少し描きました。いろいろな景色の中に「新」と「字」と「源」が隠れています。



このように、僕が描かせて頂いた特装版と、これまで通り辞書らしい格式高いイメージの通常版は、箱と表紙、つまり外側が違うだけで、中身はまったく同じ内容なのに、違う気分になるんですよね。同じ料理なのに、お皿を変えたら味が変わったように感じるみたく、これってほんとうに人間の不思議で、ここにこそ、僕はイラストレーターやデザイナーという仕事の可能性ややりがいを感じています。

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他にも、ついにリリースされた劇場アニメ映画夜は短し歩けよ乙女のブルーレイ/DVDの通常版は世にもかわいい窓開き仕様だったり、

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こちらも待望のASIAN KUNG-FU GENERATIONのライブビデオ映像作品集13巻は、バンド結成20周年ということで、代表曲「リライト」の女の子たちが成人式を迎え、他のジャケットに登場した動物や花たちが祝っているという、シリーズとしての連続性をつけたりと、いろいろな手法を使い、同じ内容と材質の中で、愛着を持てるかたちにできるよう工夫を凝らしましたので、お手に取ってそれぞれの箱の中身をお楽しみ頂ければ幸いです。

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『映像作品集13巻 ~Tour 2016-2017 20th Anniversary Live at 日本武道館』/ジャケット

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『リライト』ジャケット(2004年)

冒頭に述べたように、歴史やDNAの観点から見ると、確かに我々も単なるハコのような存在なのかもしれません。でも大事なその中身を次の世代に渡すなら、裸のままじゃあまりにもそっけないから、どうせならできるだけ美しく包んでプレゼントととして贈りたい。後は開けてのお楽しみ。

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7/15~9/18までの2ヵ月間、大阪あべのハルカスで開催された15周年展も、来場者数2万5000人以上という大盛況のうち、無事終了することが出来ました。これもひとえに、迷いそうな乗り換えエレベーターを上り下りしつつ足を運んで下さった皆さま、そして15年分のわがままに快く付き合って下さった会場スタッフ、並びに関係者の皆さまのおかげです。ほんとうにどうもありがとうございました。

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そして会場でもご好評を頂いた、画集『BESTがついに一般書店での販売もスタートしました。

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詳しい仕様につきましては、コチラで紹介しておりますが、最新作まで15年分の作品を全267点と、盟友・石黒正数くんとの対談も収録して、『みんなのイラスト教室』と同じA5サイズで、15周年だから1500円(税別)と、サイズもお値段もコンパクトに仕上げましたので、これまでの大きな画集を持ってる方も、はじめましての方も、秋のかばんの中にぜひ一冊、忍ばせ、お供させて頂ければ幸いです。Amazonはコチラから。

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『みんなのイラスト教室』といえば、実際のイラスト教室も、大阪で10/8(日)に開催。生徒はすでに締め切っておりますが、一般参加合評会(作品を見てアドバイス)もありますので、関西近辺でイラストレーターを目指している方は、ぜひご予約の上、ご参加くださいませ。座席数に限りがありますので、先着順で定員に達し次第、締め切らせて頂きます。ご了承ください。詳細は以下。

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中村佑介のイラスト教室
【日時】2017年10月8日(日)生徒合評会:15~17時/一般合評会:18~21時
【会場】なんばアートヤード(地図はコチラ
〒556-0016 大阪府大阪市浪速区元町 1-2-25
最寄り駅 : JRなんば駅・四ツ橋線なんば駅
【お問い合わせ】☎06-6585-7212
【料金】無料(+ドリンク代500円)

【参加方法】reserve@artyard.jp まで以下を明記の上、✉でご予約ください。

・件名:10/8イラスト教室参加希望
・氏名:(本名)
・年齢: 才
・職業:(事務職、フリーター、学生…等)
当日イラスト作品を、アナログは原画で、デジタルはjpgをSDカード等に入れてお持ち下さい。あくまで完成イラストだけで、漫画、絵画、下書きは合評できませんので、ご了承ください。

授業は長時間に渡りますので、見学者で座りたい方は座布団をご持参ください。
未成年者の方が参加される場合は、保護者同伴でも構いません。
サインや記念撮影は行いませんのでご了承ください。
授業の撮影・録音・録画は自由ですが、未成年の生徒を考慮し、SNSなどでの公開は禁止します。

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また、それ以降の講演会は以下の通りです。詳細をご確認・ご予約の上、たくさんのご来場、お待ちしております。

中村佑介講演会
◆10/14(土)@北芸高校・名古屋校(中学生対象)終了しました
◆10/21(土)北芸高校・札幌校(中学生対象)終了しました
◆10/28(土)@東京・ターナーART&DIY FESTA 終了しました

◆11/4(土)@京都市立芸術大学 12時~
予約☛http://ws.formzu.net/fgen/S41570778/
入場料:前売り230円/当日250円)
公式サイト:http://www.kcua.ac.jp/event/geidaisai2017/

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