東京に、積もるくらいの雪が降った。

そういえば今日はバレンタインデーだったな。



ずっと会いたかった人に、今日会って来た。

何時間もお酒を飲みながら話したけど
言いたいことも、聞きたいことも、
全然尽きなかった。




「教室で亀が飼いたいって言ったお前の感性を、俺は信じているよ」



その人は言ってくれた。
今日、一番印象的だった言葉かもしれない。




小4の頃の一年だけ担任だった先生であり、
あたしに演劇の深い部分を見せ、体感させてくれた人。


16年前に言われたこと、あたしは今でも覚えている。




算数のドリルをちっともやってこなかった私は、
ある日先生に呼び出された。

ああ、怒られるんだろうなあーって
しょんぼりしながら頭を垂れて先生の前に立った。


「なんでドリルをやってこなかったんだ?」


真剣な顔でそう聞かれて、
あたしは多分、あれやこれやと言い訳したんだと思う。


先生はそんなあたしの愚かな言い訳を
ジッと聞いたあと、こう言った。


「俺は、ドリルをやってこなかった事を怒っているんじゃない。
 ドリルをやってこなかった事について言い訳している事に、怒っているんだ。
 わかるか?」



それを聞いて、
あたしはガーンとショックを受けた。
今までそんな切り口で怒られた事がなかったからだ。

そうか、言い訳をしたから怒られているのか。
言い訳は、かっこわるいんだ。
こんなに怒られるくらい、恥ずべきことなんだ。


そのとき、あたしは初めてそう思った。





とにかく、今まで会った事無いような先生だった。
今でも、あたしはこの人以外にこんな切り口の先生を見た事がない。

授業に演劇を取り入れ、
必要とあらば授業を中断し
その時その瞬間の生徒達に必要なことを与えることに、
全く心や時間を惜しまない人だった。

かっこつけた大義名分を振りかざすこともなく、
ただ真っすぐに、一人間として、生徒と向き合っていた。

それは、今考えても、
とても労力の要ることだと思う。



こんなに丁寧に人と、自分と向き合っている人を
あたしは知らなかった。





今日話したことや、聞いたことは、
とてもじゃないがまだ文章にまとめることができない。

もっと、もっと、時間をかけて、
ゆっくりと咀嚼する必要がある。





「お前の感性を信じろ。そこに、未来がある。」





あたしの感性。
あたしの大事な部分。



見落としがちなところ。
見落とされがちなところ。



一つの形にこだわらず、
縛られず、
ただ、真っすぐに。
真っすぐに、自分と、人と、向き合うこと。


覚悟を持って生きること。




自分の中の宇宙を知ること。

大いなる流れを感じること。

読み解いていくこと。




一つのものを得るためには、
必ず何か一つ捨てなくちゃならない。

だけど、捨てるときに、
「捨てる意味」をよく知っておくこと。

今は、あれを得なきゃいけないから、
惜しいけれど、これを捨てる。
だけど、また必ずこれを拾ってみせる。
手放すのは今だけだ。
また、必ず得てみせる。


そう思う心が、大切なのだということ。




それは、とてもよく理解できた。
なぜなら、今のあたしがそうだからだ。

必ず、取り戻す。

今すぐ、じゃなくても。


細い細い糸でも繋げておいて、
その時が来たら必ずたぐり寄せてみせる。




その人に会うと、言葉を聞くと、目を見ると、
不思議と心の中にふつふつと何かが湧いてくる。


エネルギーとしか言いようのないものが
体の中でふつふつと沸騰していくのが解る。


それを出したくてたまらなくなって、
体中がむずむずする。
毛穴が開いていく感じ。



「人は、出会うべくして出会う。俺も、お前も。
 不思議なもんだな。」




何時間か経って外に出てみると、
一面銀世界だった。

会う時は雨だったのが、
気がついたら雪になっていた。




昔、その人も、今あたしが住んでいる街に住んでいたらしい。



そのときよく通っていたという、ライブハウスに連れて行ってもらった。

よく通る道だったのに、
そんなところにライブハウスがあるだなんて
ちっとも知らなかった。



それは小さな小さなライブハウスで、
いかにも老舗って感じで
ステージでは、見知らぬおじさん達がジャズをやっていた。



あたしとその人はホットコーヒーとホットミルクティーを頼み、
演奏が終わるまでジッと耳を傾けていた。

生で演奏しているジャズを聴くのは、初めてだった。


あたしが普段出入りしているライブハウスとは
全く違った雰囲気の、異世界だった。
なんだか自分が全く違う世界にいるような気がした。




「ジャズと演劇は似ていると俺は思う。
 ジャズは、即興なんだよ。
 今、お前がいる世界とは少し違うと思うが
 そういうものを感じて欲しくてここへ連れて来た。」




と言って、
雪の中を歩きながらその人は言った。




なんだか、不思議な時間だった。
その人といる間、私はまったく違う世界に来た、みたいな気持ちになった。

今でも、その余韻が残っている。

見知った街、見知った部屋

でも、ここはどこだろう?


なんだかふわふわした気持ち。






とりとめもない文章だけど
今、感じてるこの気持ちを書き残したくて
ブログに書いた。







●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●









時間は巻き戻らない。




巻き戻って欲しくなんかない、と思う。




確かに、巻き戻ったら
やり直せるかもしれない。

苦い失敗から
逃げ仰せるかもしれない。





だけど、
巻き戻ってしまったら、
もう「今」に戻れない。


「今」が作る「未来」に
思いを馳せることができない。

「今まで」のあたしが培って来た経験も、
友達も、繋がりも、景色も、
白紙に戻ってしまう。




そんなのは嫌だ。

絶対に嫌だ。






だから、いつだって「今」を生きる。


「今」から見える未来に向かって進む。







写真:ひぃたん 「波打ち際 影 氷 光」