超えて往(ゆ)け
頂点を極めれば眺望が変わる
天に手を伸ばし
地に足を付け
人に心を委ね
実直に積み上げた至誠は
不二の価値を宿し
やがて人類の大志となる
強烈な修練を積み重ねることができる人には、ある特徴がある。
「これは私のお役目なのです」
「私がいただいたこの力は、私だけのものではないので」
「できるできないではなく、この使命を全うするのみ」
強い意思だけではこうは言えない。
意思の後ろに何かあるのだ。
おそらくそれは自分だけのものではない、
「誰かの存在」
があるからこそ耐えられる。
例えば、ある外国人力士の物語。
遠く離れた日本へ相撲を取りにいくことが決まった。
少年の体は他の人に比べて小さく、
決して恵まれた体型ではない。
それでも長男として、
家の家計を助けるため、出発する事になる。
母はしかし、長男が出ていくというのに、
いつも通り家の仕事を淡々とこなし、
息子に対し、いつもと変わらない態度でいる。
いよいよ別れの朝、母は言う。
「さあ行っておいで。お前の強さを見せておいで。
お前のすごいところは、絶対に諦めないところだ。
どんなに大きな相手でも静かに闘志を燃やし、
必ず倒す。だからいいかい。
苦しくても泣いたらだめだよ。お前は強くなる。
強くなってから帰っておいで。」
息子は涙をこらえてうなずく。
駅に見送る家族、息子は荷物を持ってホームから汽車に乗り込む。
父も弟妹たちも、涙を見せすすり泣いている。
母だけが笑っている。
「お母さん。僕は、強くなって帰ってきます。約束です。」
そんな思いで母を見る。
母は、
「そう。その心。それを忘れるんじゃないよ。」
と笑顔で返す。
発車のベルが鳴り響き、動き出す。
名残惜しそうに手を振っている父。
笑顔の母は、ゆっくりと頷いている。
弟は兄を追いかけ走り出す。
それを見て妹もつんのめりながら走る。
レールが左に曲がり
駅の建物で皆が見えなくなるかならないか、のその一瞬。
母が動いた。それまで固くなって動かず、
笑顔だけを見せていた母が顔を歪ませた。
耐えきることができなかった。
顔をくしゃくしゃにして父の肩に顔を埋めたのだ。
口がへの字に曲がり、まゆが下がり、
目からは大粒の涙がこぼれ落ち、
大きな声で息子の名前を何度も叫んだ。
それを隠すために父の肩へ顔を押し付けたその姿。
息子の目に焼き付いた。
「お母さん!!お母さん!!僕は必ず強くなって帰るから!泣かないで。泣かないで。」
震える少年の肩には、そこで初めて何かが宿ることになる。
母の言葉を胸に抱き、母の崩れた泣き顔を思い出し、
どんなに辛くとも母の笑顔を再び見るまでは、
絶対に諦めない。
強くなって郷里に帰る。負けるもんか。
涙をこらえ、眉を上げ、真一文字の唇を噛み締め、
両手に力を入れ、自分の腿を打ち付け、
心の痛みよりも強い痛みを自ら起こし、
その場を凌ぐ。
母の言葉をなんども繰り返し思い出し、
自分の魂にまで落とし込む。
やがて心が強くなる。
心が強くなると、稽古の集中力も上がり、
体づくりのメニューもストイックにできるようになり、
何より諦めることがなくなる。
技の精度も上がり、先輩力士に立ち向かう場数が増え、
経験値も上がり、周りからもその相撲への情熱が認められ、
自分も強さを意識し、ますます強靭な身体を整えていく。
そしていつか、弟子を育てることができるほどの人格者となっていく。
最後は母との約束が果たされ、
郷里の誉となる。
頂点を極める人は、
人の心に寄り添うことができる共感力。
人の心を許すことのできる包容力。
人の心を燃えさせることのできる指導力。
人の心を動かすことのできる統率力。
これらの力を満遍なく持ち、
適宜、臨機応変自由に発揮できる。
大切な人の思いを受け取り、
それを力に変えて自らを律して動くことができるから強くなれる。
上わついた心をはねのけ、地に足をつけた平静な生活と、
やり切るまでは満足せず、精進を続けることで得られる結果は
誰も見たことのない景色を眺めることができる。
誰の為にここを耐え抜くか。
誰のおかげでここに居られるか。
誰を喜ばせたいか。
誰と一緒に笑い合いたいか。
その答えを探し、気高い心で実践でき得れば、
まだ見ぬ頂へと自らをいざなえる。
作品詳細
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※陶墨画の紹介と詩の解説
ここでご紹介する「陶墨画」は、西元祐貴の墨絵の世界観と
陶芸をコラボレーションさせた西元のオリジナルアートです。
全ての作品には、世界観を表した詩が付属します。
作品と詩を、一点ずつ解説付きでご紹介しております。
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