ポロロン♪

元日の朝、7人の神様達は幸せの花が咲く種を
一軒、一軒まわって蒔いていました。

「お、ここの部屋はとてもきれいだな」
「しっかり大掃除をしたんじゃな」

ポロロン♪ ポロロン♪

神様達はそれぞれ種を巻いていきます。

蒔かれた種はその家の家族が徳を積んでいくと自然に花が咲き、
咲いた綺麗な花からは幸せの香りが溢れだします。
その香りに包まれた家族は
その日から幸せな一年を過ごせると言い伝えがありました。

「うんうん、この家は少し散らかってはいるものの、大掃除をしようとした形跡がある」
「まだ小さい子供が3人もいるんだ。さすがに完璧に整えるのは難しいだろ」

そう言って神様達は種を撒くに相応しい家かどうかを決めながら歩いていました。


「さぁ、次の家はここよ」
「今年は比較的綺麗な家が多くて気持ちがいいのぉ」
「ワシらが来るという言い伝えのために
大掃除に励んだ者もいると思うが、
結果的に綺麗になるというのは素敵なことじゃ」

そう言って302号室のドアを空けました。
すると、目の前にはテレビで話題になるようなゴミなのか、服なのか
とにかく何がなんだか分からない大きな山が視界に入りました。

「うわ!?なんやこれ!?」
「なんかウサギ小屋みたいな臭がするぜ?」
「こんな家初めて見たわ!」

神様はそれぞれに驚きと衝撃を口にしました。

「お、おい!お前さん、ちょっと中に入って種撒いてきてくれよ」
「そ、そうね!玄関じゃいろんな邪気が邪魔して種ごと枯れちゃうかもしれないしね!さぁ、アナタ行ってきて?」
「え!?え!?僕ですか!?嫌ですよ!こんな家入りたくないですよ!」

神様は自分たちも入りたくないため、一番種を持ってきている神様に種を撒いてくるよう言いました。

「嫌です!嫌ですよ、絶対!」
「こら!神様が差別しちゃダメでしょ?」
「いやいや!だってあからさまに入っちゃ行けない雰囲気出てますもん」
すると一人の神様が「この家の人って、この町の言い伝えを知ってるはずなのに掃除してないんでしょ?ってことは俺らの入室を拒んでるんじゃね?」と言い出しました。
「どういうこと?」
6人の神様の注目が集まります。

「神が来るのを分かってたのに掃除をした形跡がまったくない……。ということは、俺らの訪問を待っていなかったんじゃないか?」
「あ!なるほど!!だから敢えて掃除をしなかったと」
「そう。するとここで無理に訪問しても「招かれざる客」になってしまう。
いくら俺らが人間に見えない姿で、見えない種を蒔いているとしても、頼んでないのに勝手に入り種を巻くのは如何なものかと思うんだよね。俺らは不法侵入団でも、送り付け詐欺でもない。それならこの家のドアはそっと閉じておいたほうが賢明じゃねぇか?」
「確かにそうね!」と、さっきまで他の神様に訪問を押し付けていた神様が
大きく頷いてドアをしめました。
「ふー!危なかった!危うく種を巻くところだったわ」
「しっかし、その発想はなかったわ!「神様の訪問を拒否」するなんて……」
そう言って次の部屋へ向かった。
「そういえばこの部屋の5歳の女の子、大掃除を誰よりも一生懸命やってたよ」
「特に、みんながやりたがらないトイレ掃除を丁寧にやってたわ」
「おお!そうか、そうか!その歳で偉いなぁ」
「でも、大掃除を頑張ったのは「大掃除をするとサンタさんが来る」と母親に言われたかららしいですけどね」
それを聞き神様一同は笑った。
「残念ながらワシラはサンタさんではないが、その心意気に金の種をおいていこうかね」

ゴロロロロン♪

少し大きな種が部屋の奥へ転がっていた。
「ワシらはサンタではないが、しっかり徳を積んで自分の力で「お金のなる木」を育てるんじゃぞ」

そう言って玄関のドアを静かに締めた。