月別アーカイブ / 2021年08月

 アフガニスタンからアメリカが撤退し、民主主義とはなんであるかが強く問われる事態となっているわけですが、日本を取り巻く環境もまた一変して、米中対立から台湾海峡有事で日本が再び冷戦の最前線に立たされる恐れが出てきている昨今であります。

 世界の政治と対立の歴史というダイナミズムについて、とりわけ近代世界史を知り、その中の日本とは何だったのかを思い致すのに最適なテキストが本書『日本人のための第一次世界大戦史』(板谷敏彦・著)であります。

 読め。



【Amazon】はこちら→ 日本人のための第一次世界大戦史 (角川ソフィア文庫)

 舞台装置として、いまでも喧伝される世界経済の大いなる結びつきと、進展するブロック経済、発展する鉄道や海軍力など輸送手段の拡大、メディアの役割、モザイクのような国家ごとが目指すむき出しの国益の姿… さまざまなものが、第一次世界大戦の話のはずなのに相似形として現代日本の迷える姿にダブってきて、これはこれで身につまされるところが大なのであります。

 歴史を学ぶことの大切さなんてものは誰もが口にする陳腐なものですが、どれだけ技術が進歩して、現代社会が過去とは全く異なる社会を構築したのだと誇ったところで、それを動かす人間そのものは太古の昔からそう大きくは変わっていません。これだけ貿易が進展し豊かになった世界が大規模な戦争など起こすはずがないと思っていた二か月後にはサラエボ事件が発生してそれをトリガーに大戦争が始まり、それもテクノロジーが進歩したがゆえにマシンガンと塹壕による膠着で長期間にわたる死者多数の悲劇が起きてしまったというのは大事なことだと思うわけですよ。

 航空優勢という概念が戦局を大きく変えた第二次世界大戦から局地的な戦争を経て80年、いまや世界は情報(サイバー)戦、デジタル通貨、航空宇宙といった知的財産を絡めた新たな領域での争いに発展し、いまや人が死ななくてもすでに戦争状態なんじゃないかとも言えるほどの緊張感のある世界観が広がっているのが現状です。

 翻って、いまの知識を持ってこの本が解き明かす第一次世界大戦の状況を俯瞰できたら… まるで、あらゆる要素が、社会も技術も政治思想も国民国家も文化にいたるまで、本当にすべての構造が吸い込まれるように「戦争」という一大イベントのために存在していたんじゃないかと思うぐらいに、国家・社会のシステムとシステムとが相互に優劣を競う、そんなカタルシスさえ感じさせてくれます。

 一口に国家の興亡と言えば簡単に聞こえますが、そういう優劣を露わにする各種要素は、人口から教育、産業構造、統治機構の出来の良し悪しと、あらゆる面で平和な時代からの「総力戦」の結果だったのだ、ということを思い知らされます。読んでいて、読む側が「本当に、いまの日本のこの状況で良いのか」というじっとりとした焦燥感に襲われるのも、本書が読者に鋭く問う歴史の深みであることは論を俟ちません。

 また、あくまで本書は「入門書」です。各項目について、非常に、非常にコンパクトにまとめられ、メインストリームの構造は読者に程よい理解を促してくれるという意味で大変良い「考えるための下地」を与えてくれます。ですが、各項目の細かい部分については解釈や意味づけにおいてもっと幅広な議論があり、詳しく知りたい、考えたいという人にとっては、やはり類書をきちんと紐解き、自分なりの解釈まで落とし込めるようにしておくべきでしょう。

 とりわけ、第一次世界大戦前夜の金融市場や各国政治体系、そこにいたるまでどのような政策議論があり、国益に関する考え方を持っていたのかについては、個別に知っておいたほうがいいかもしれません。イギリス、ドイツ、フランス、ロシアやオーストリア=ハンガリー、オスマントルコ、イタリアなど主要各国のバックグラウンドを知っておくことで単に当時のヨーロッパ情勢がどうであったのかだけでなく、現代にいたる対立の構造の歴史を示唆するに余りあります。

 私の好きなボードゲームに「ディプロマシー(Diplomacy)」というまさに第一次世界大戦前夜の欧州をモチーフにした傑作があるのですが、いまだに英語圏のプレイヤーとは年に数回、大学でメール対戦をするほど、世界的にも教養として定着している内容です。あなたの社会知識をより深いものにするために、読んで損はない一冊です。









 

 テレビ局も商売なので、いわゆる「コア視聴率」が下落すれば見た目の指標が良くても番組が打ち切りになるのは仕方がないと思うんですが、俺たちの東京スポーツが例の「張本勲の老害問題」を軸にサンデーモーニング打ち切り説を活字にしてくれました。

〝張本失言〟でTBS「サンデーモーニング打ち切り説」加速 コア視聴率低迷に追い打ち(東スポWeb) #Yahooニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/0037a06edcc8735fb13245e4a827fb7ac6d998a1

 ありがとう、東京スポーツ。

 ひとくちに「コア視聴率」と言っても、テレビ局や広告代理店がベタッと統一的な数値を出しているわけではなく、スポンサーサイドからの要望に基づいてT層(10代)とF1~F2層、M1~M2層を指すにせよ、あるトイレタリー製品大手の場合はF1既婚者層(想定)をコアにしたり、別の自動車メーカーはF1M1とM2をという風に、計上する属性が異なることもあります。ただ、総じてどのくらいのコアなのかはスポンサーによって異なるとはいえ、ざっくりとした一般的指標として概ね中学生以上から50歳未満の視聴者を、テレビ局のスポンサーは重視しますよということ以上のことは対外的には明らかにされていません。

 ただ、確実に言えることはいままで視聴率面で重視されてきた3層、高齢者による視聴はカネにならないと割り切ったあとで、彼ら向けコンテンツがなくなってしまうことで、本格的にテレビの前に座っている時間が減少するという各局総視聴率低下問題が現実のものになりそうだということです。これは、裏を返せば大正義・NHK一人勝ちになる可能性も危惧されかねないのと、いままでテレビの前に曲がりなりにも座ってくれていた高齢者世帯を見捨てたとしても若者がテレビの前に帰ってきてくれるためにはネット視聴その他他の安価な娯楽との叩き合いになり、テレビ局という巨大な装置産業があっという間にビジネスモデルとして崩壊しかねない恐怖もまたあるわけですよ。

 他方、テレビ局も無策だったわけではなくて、テレビ視聴における満足度調査の観点から言えば、全局(!)のほぼ全時間帯で視聴質の観点では2015年以降軒並みプラスに転じ、特に35歳から39歳の男女を筆頭に多くの視聴者が「テレビ番組は面白くなった」「好きなテレビ番組がある」と回答するようになりました。テレビ局も、いままでのビデオリサーチのような若干曖昧な視聴率による指標で数字を競わされていた時代からネット全盛期になって、例えば見逃し視聴やSNS言及数といったコア視聴率とはまた違うロイヤリティのある視聴者はどこにいるかが可視化されたことで「視聴者に喜ばれる面白い番組作り」とテレビ制作者ならではの「作家性のある独特な映像作品」に対する健全な競争へとシフトしてきたことが「番組の質の面から見れば黄金期到来」と言っても過言ではない状況になっているわけです。

 ところが、時すでに遅しというか、ビデオリサーチ的にはT層、ネットマーケティング的には12+属性の男女はあまりテレビの前に座ってくれなくなりました。もはやネットはスマホで観るものとなり、ワンタッチで好きな動画を見られないいまのテレビ局のコンテンツは、ほぼ総じてWOWOWやCSと変わらない敷居の高さになってしまっているのが現状ではないかと思うのです。別の調査ですが、家族だけでなく友人や学校、職場での会話でテレビ番組のことを話題にする機会は割合として最低を更新し、特に芸能マスコミやバラエティ番組に対する関心は低迷しています。たぶん、テレビ局各局もその傾向は充分に分かっていながらも、コア視聴率を引き上げようにもスポンサーからの制作費の減少局面からいままで以上にリッチな制作費を捻出することができず、ネットでの番組告知も充分に行われていないので若い人からすればテレビ番組は存在していないも同然になりつつあります。

 そして、非コア層とされる高齢者向け番組は時間面も予算面も限られることになり、テレビ局としては、本当の意味で編成の能力で今後の経営が大きく左右されていくことでしょう。そして、先に地方テレビ局の統合や廃止も視野に入れながら、よりローカルか、より低予算か、よりコンテンツ性の高いもの、時事・スポーツといった共有体験を持たせられるものという風に、業界全体のコンテンツ攻勢が変容していくことでしょう。

 そういう業界構造の大きな変化の試金石が、まさか女子ボクシング金メダルを「結婚前のお嬢さんの殴り合い」という分かりやすい言葉で炎上した老害商法ど真ん中の張本勲による引き金でドミノ式に非コア向け番組改編の始まりになるのだとしたら、何とも皮肉なことです。

 むしろ、そんな雰囲気のキャストで長寿番組が成立していた前提が崩れるのは当然のことでしょうし、ではそういう番組を曲がりなりにも楽しんで来た(カネにならない)視聴者がどこに流れるのかというのは興味が持たれるところです。

 そう考えると、通販番組に対する地上波の依存度をもっと減らさせようとする考えも出てくるでしょうし、地上波も含めた電波オークションのような統合的な電波村政策についても思案するべき時期になったんじゃないのかなあと思わざるを得ません。はい。



 なんでこう東京オリンピックとコロナ対応、目前に迫った衆議院選挙でクソ忙しいときにこんな話がと思いますが、クソ忙しいからこそこういう話が出るのだということなのかもしれません。

公明・遠山清彦元議員の元秘書、貸金業法違反容疑 議員事務所捜索 | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20210804/k00/00m/040/391000c

[引用]

遠山元議員は緊急事態宣言中の深夜に東京・銀座のクラブを訪れたなどとして今年2月に議員辞職。元秘書はその後に同党の吉田宣弘衆院議員(53)=比例九州=の秘書になった。

 まあ確かに面倒な話ではあるんですが、公明党議員事務所のある議員会館へのガサ入れなどもあり、全体的にきな臭くなっています。貸金業法違反容疑で取り沙汰されている事業者は、いずれも公明党支持や特定の宗教の関係先ということでもなく、IR(滞在型リゾート;カジノ)関連ではあるものの少し遠い印象です。おそらくネタとしては長崎カジノに参入しようとして玉砕したピクセルカンパニーズ社の話との絡みだと思うので。

 むしろ、この方面のケツを持っていたのはアマナスグループの牧厚さんの関連で、言わずと知れたオールド自民党や元総理・鳩山由紀夫さんら親中派の交流団体「日中協力会」の世話役であります。

アマナスグループ
http://web.archive.org/web/20210805070432/https://www.amanasu.net/corporate/index.html

汪蕪生
http://web.archive.org/web/20190130184800/http://www.wws8.com/japan/profile/profile.html





 不思議な事業構造をしているアマナスグループですが、個人的にこのグループの産業廃棄物事業にはかつて照会があって見たことがありますが、だいたい中国への廃プラ・鉄くずのような資源ごみ輸出でも頑張っておられたようです。

アマナスエコフロンティア
http://web.archive.org/web/20170201220246/http://amanasu.net/business/ecofrontier/index.html

 また、バルチック詐欺(中国系の重油貿易を詐称した感じの面白グループ)にかかわりの深かったアマナステクノホールディングスジャパン社なんてのもあります。こっちが先に事件化するかと思っていたのですが、違いそうですね。

(株)L’ALBAホールディングス(4798)をウオッチする part2 バルチック詐欺との関連(一部追記)
http://murakusai.doorblog.jp/archives/21719725.html
(魚拓)  http://web.archive.org/web/20210113095753/http://murakusai.doorblog.jp/archives/21719725.html

 まあ要するに詐欺的な何かなんですが、そこに日中協力会という比較的いろんな人たちが関わっている団体の世話役として、この牧厚さんが関わっていたうえ、前述の通り鳩山由紀夫さんや森喜朗さんといった素敵な元総理大臣が後援会名目として顧問として入っております。ただ、表向きにはいわゆるオールド自民党の対中国の山吹色のお菓子団体だったとしても、個人的に聞きうる限り、牧厚さんが具体的に森さんの集金マシーンであったとか、鳩山さんのお陰で上手い飯が喰えているという類の話ではないのかなと感じます。




 先日事業撤退をしたSBIホールディングス傘下のSBIソーシャルレンディング(SBISL)社を介し個人投資家からも300億円以上を調達し、さらに金融機関から融資金11億円超を詐取したなどとして、代表の生田尚之さんや役員ら3人が逮捕されたテクノシステム社の問題は、すでに報じられている通りです。

 この流れで民泊事業子会社が旅館業法違反容疑で警視庁の捜索を受けたピクセルカンパニーズ(旧ハイブリッド・サービス)のようなハコ企業にも関連していたのが、この牧厚さんなのかなという感じはします。いわば政治的なコネクションを利用して、もしくは詐称するなどして、金融機関から日本の再生エネルギー転換の重要な手段のひとつとして事業を展開する際、そのテクノシステム社の顧問などの名刺を駆使して永田町工作を行い、ある種の問題ありげな融資の片棒を担いでいたのではないかとも思われるわけです。

“銀座豪遊辞職”公明・遠山前議員元秘書ガサ入れの裏で囁かれる「太陽光発電巨額詐欺」(日刊ゲンダイDIGITAL)#Yahooニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/c90eb3ef477c47ad5714a1ba92acf46bcf8138a3

 正直、なんでこんな反社まがいの面白紳士の皆さんにオールド自民党や鳩山由紀夫さん、公明党元秘書の皆さんが関わることになってしまったんや? というのと、遠山さんと言えば、そちら方面では非常に人気のある人格者でもあり、真の意味で未来の日本の政治を担う人だったはずなんですが、どうしてこっちの方面で名前が取りざたされるようになり、またいままでだったらちょっとあり得ないような銀座での豪遊があり、しかも暴露され、追われるように社会的地位を失ってしまったのか、気になって仕方がないわけですよ。

 同様に、脱炭素を巡る再生エネルギー関連はもはや一大利権となり、霞が関におけるベンダーロックイン問題など吹き飛ぶぐらいの勢いで取り組んでいかなければならない大きな予算が注ぎ込まれる事態になっています。そこへ、中国製の太陽光パネルだけでなく発電システムそのものが丸ごと中華製で、メガソーラー設置に適した立地が日本には乏しいという理由で道府県や自治体の造成認可をもらうために「森」「鳩山」などの政界に近いことを示すカードをちらつかせてカネにすることが横行しているのではないかと思います。

 当然、本件のようなSBISL社からテクノシステム社に至る過程で出ているのは「ちゃんとやらない太陽光などのエネルギー事業者」と不正融資やソーシャルレンディングでの与信の悪用があったので事件化して炙り出されたに過ぎず、一番の問題は融資を引っ張って山林を切り開き事業化するところまではやるけど、きちんとしたパネルの設置を行わず地すべりや土石流などの発生をしたころには逃げ散っているご本尊問題でしょう。カネの貸し借りなら「返済が焦げ付いた」「与信がおかしい」で事件化しますが、曲がりなりにもパネルが置かれてしまえばゆっくりカネは引き出され、事業は頓挫して追いかけようがなくなります。

 そういう斡旋を、金融機関や政府・道府県・自治体に行うために、自分たちは政治家にこんなコネがあるんですよと有利な条件を引き出したり認可を貰えるよう取り計らおうとするゴロビジネスが実際に存在し、さらに、裏付けとなる設備や技術が概ね中国発であり、最終的には中国企業に造成や設置が発注されるということになるならば、それは売国奴とかいうレベル以前の問題じゃないかと感じるんですけれども。



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