月別アーカイブ / 2020年02月

 コロナウイルス禍でCOVID-19対応をしなければいけないというのは、国民の関心事であります。

 また、たぶん一連の経済低迷は、消費税引き上げのころからアカンことになっていて、コロナウイルスへのパニック的な世界中の対応によって、すぐにリバウンドしてくれるような楽観論は吹き飛び、底値100日的な状況になってしまう可能性もあります。

 そうなると、コロナウイルスの感染力が強い弱い、死者が出た出ないという以前に、景気が悪くなって貧民にさらにおカネが回らなくなって病気よりも貧困で死ぬという局面になりかねません。

 なので、確かに政府対応に至らぬ点はあったけれども、疫学的・医学的にはまずまず及第点の対応をした政府に対してゼロ回答的な否定をする野党の在り方よりは、これは良かったがこれは駄目だった、だからこういう対策を行うべきだ、という是々非々の政策論争をすることで国会での議論が対策に向かって前進し、国民の健康と景気両方に良い感覚を与えてパニックが収まる方向に進むのではないかと思います。

 もちろん、野党の議論にも意味も価値もある発言は少なくないと思うのですが、危機に対応している官邸や厚生労働省、都道府県に対してあまりにも否定的で、対応に対して根本的に信頼を損ねるような話ばかりがどうしてもメディアに出てしまうため、まるで野党が足を引っ張っているかのような印象を持たれます。実際にはそこまで野党は悪くなさそうなのに、です。

 むしろ、野党の側からこの問題は与党野党の対立で政争の具にするのではなく、日本の政治、日本人全体の重大事と捉え、パニックを抑え、必要な政策は弾力的に行えるような一致団結した危機対応の議論をしましょうと言ってくれたほうが、今回については野党にとってポイントが高かったのに、と思います。

 桜を見る会や、大坪寛子さん和泉洋人さんの官製不倫など、国家の根幹、民主主義の原則を揺るがせるような問題があるのはもちろん妥協するべきではないと思いますが、目の前の火事であるコロナウイルス禍のほうが国民の生活に直結する関心事で、また、すぐそこに迫っている経済失調は物理的に日本人が死ぬ話なので、どうか野党本来の機能に立ち返り、見識のある議論を表に出し、国民が一致してこの難局に対峙する方向へ進んでいってほしいと切に願います。


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安倍政権が、すべての小学校、中学校、高校に対して来週3月2日から休校とするよう求めた、という話がニュースになっていました。

全国の小中高、3月2日から臨時休校要請 首相:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56131560X20C20A2MM8000/

 中国のコロナウイルス関連のデータにおいては、9歳以下の子どもが今回のコロナウイルスに起因する新型肺炎で重症化しないという内容があります。ですが、しかし感染はするうえ、その子は重篤にならずともお家に帰って基礎疾患のあるお年寄りに伝染す可能性は否定できないので闘病している高齢者のいる拙宅山本家的には「さすがにこのまま3兄弟を学校や保育園に通わせるのは大丈夫なのかなあ」とは思っていたんですよね。

 実際、職場においてはなるだけ通勤時間帯をピークから外してほしいという話が出たり、先進的な企業では自宅からのリモートワークを推奨したり、完全に切り替えたりするところも出ています。VPN死んでそのまま業務ごとシステム落ちしてどうにもならない企業も出ているようですが、いろいろ社会的にも組織的にも試行錯誤する必要があるのでしょう。

 その点では、拙宅山本家もそうですが、大勢の人たちが乗る通勤電車に我が子を乗せて感染リスクをとってまで学校に通わせることが果たして正解なのか、という議論はあります。学校が起点となって感染が蔓延する怖れはないとは言えず、感染の広がった中国ではさっさと学校は休校になっています。

 また、医師の岩田健太郎さんがダイヤモンドプリンセス号の船内対応で「清潔ゾーン」と「汚染ゾーン」との入り口を分けている画像を掲示した橋本岳さんに対して「これが汚染の現状だ」と指摘して政府対応を激しく批判していました。ただ、市中感染がそれなりに広がっている現状で、通勤電車はよくてダイヤモンドプリンセス号は駄目だという話は成立しないと思うんですよね。

 もはや、一連の問題では疫学上の正しさだけではなく、国民生活における安心と安全をどう担保し、感染リスクに対する不安を和らげていくべきなのかというコミュニケーションが問われ始めていることは間違いありません。これは、東日本大震災における放射性物質を巡る国民感情の揺れと同じ意味を持ちます。

 もちろん、共働きをしている家庭において子どもが学校に預けられない問題は深刻ですし、非正規雇用の人たちからすれば休むことがダイレクトに収入減少に繋がるのであれば、多少体調が悪くても電車に乗って職場に向かってしまうという弊害はあります。京都市の教育委員会や、千葉市長の熊谷俊人さんらもいち早くこの政府の決定には事実上従わないコメントを出していましたが、平常通りに子どもたちを一か所に集めて、その子どもたちは必ずしも重症化しないにせよ学校を感染センターにしてしまう怖れを敢えて犯す必要はあまりないのではないかなとも思うのです。

 表向きは、結構簡単に「正しく怖れましょう」と言うわけですが、実際にはイベントが中止になり、会社も従業員の感染リスクのために時間差通勤やリモートワークを奨励しているのに、子どもたちだけは何か知らないが守られる話が出ない、通常通り学校に行くべきとするのは議論としてどうなんだと思いますけどね。まず何よりも先に、感染の母体となり得る学校こそ、本来はさっさと休校にしておいたほうが子どもや子どものいる家庭のためだと思うのですが。

 いま騒ぎになっている「いまからでも中国人を入国禁止にしろ」という議論もそうですが、それそのものの実効性よりも、国民の不安を払拭するほうが大事だよとなれば、気休めにしかならないかもしれないけど手を打っておこうという話になるのではないかなと思います。通勤通学におけるマスク着用が、必ずしもウイルスの拡散防止には役に立たないことと同じように。

https://twitter.com/BOHE_BABE/status/1233044748425781249

[引用]

急に休校と言われても困ると騒ぎになってますが、上海の感染者拡大カーブに日本に当てはめると、2/22に感染防止措置を始めると最終的な罹患者は15万人、2/29だと45万人と1週間で3倍違うという数理解析が出ています。遅きに失したけどリカバリーは1日でも早い方がいい。

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.21.20026070v1

--ここまで--

 そうだとするならば、本当に怖れるべきは実際に人が死んでしまうインフルエンザや結核、風疹などの流行病にもコロナウイルス以上にケアしましょうという話があるべきです。また、子宮頸がんワクチンも含めた予防接種はしっかりと義務化して、集団免疫が日本社会全体に行き渡るよう、これからでも努力するべきじゃないのかなあと思う次第です。

 なんせ、毎年お餅食べて千人以上亡くなっているのが我が国ですからね。
 コロナウイルスを怖れる者は、切り餅で恐怖してショック死ってレベルじゃないかと思うんですが。


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 まさかこんな形でコロナウイルス禍が直撃するとは思いもよりませんでしたが、主催する@IT(ITmedia)さんのご英断で無観客試合となりました。ウェブ放送はあるそうで、収録のためにホストである鈴木正朝先生、高木浩光先生、板倉陽一郎先生と私・山本一郎は普通に電車でウイルスに晒される危険を甘受しつつ現地に向かっていました。

@IT セキュリティセミナー 2020 新春 @ITと考える「強いセキュリティ」の作り方 https://itmedia.smartseminar.jp/public/application/add/2862

 時節柄しょうがないところではありますので、それもこれも運命ということで受け入れてまいりたいと存じます。

 お題は3つ、どれも個人情報や情報法の観点からは外せないネタになっていますが、これからどうなっていくのでしょう。

パート1 公正取引委員会 優越的地位の濫用 考え方 どうなった?
パート2 個人情報保護法 制度改正大綱 パブコメへのツッコミ
パート3 パンデミック対策と個人データ

 とりわけ3点目は中国共産党単独政権という専制国家が激しい情報統制のもとで行うパンデミック対策が、仮に効果的に感染症を防ぐとして、これらと類似のデータ利活用を民主主義国である日本で実施可能なのか、という緊急のテーマについても取り上げてみようと思います。

 最近では数理モデルを利用した感染症流行のモデリング研究も出てきている一方、東日本大震災では震災ビッグデータなる適法性のあやしい番組までNHKで放送されるにいたり、何をどこまでやっていいのかという線引きが曖昧なまま「緊急時だからこのぐらいは許されるだろう」的な議論も横行してしまっているのが現状です。

 このところ界隈の動きが激しいこともあり、積もる話もさまざまといった感じではございますが、後日記事にもなりますし、オンラインでも視聴できる(らしい)ので、是非ご関心の向きはライブ配信セミナーのほうへぜひどうぞ。

 ところで、本件と前後してここ数日ほど、コロナウイルスでパンデミックしたので思考盗聴するのはやめろというご婦人らからの内容証明が到着し、少し早い春の訪れを体感しております。皆様におかれましても、ご体調にどうかご留意の上でお風邪など召しませぬようお願い申し上げます。

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 始まってしまったものはしょうがないだろ。

YouTube『火鍋チャンネル』
https://www.youtube.com/channel/UC_d247C8KBoSz6p75kGQQgw
『火鍋チャンネル』公式Twitter
https://twitter.com/hinabe_ch
小肥羊 公式ホームページ
http://www.hinabe.net/

 今回は火鍋を食べ酒を飲みながら、西原理恵子さんと、小肥羊の元代表・青山浩さんとのトークを細切れにしてお送りします。その後いろいろゲストをお呼びして余計話を鍋と話に箸を突っ込みながらお伺いするというスタイルでやっていこうと思っております。

 当番組は小肥羊のご善意で提供されておりますが、あまりにも宣伝臭くなさ過ぎて出演している私自身が申し訳ない気持ちで一杯であります。というか「火鍋を食べに来い」というので普段着でお伺いしたら突然収録が始まったという謎仕様でありまして、西原理恵子さんのドブから這い上がった話から青山さんのガハハ話だが実は灘中→灘高→東京大学法学部というクソエリートやんけネタまで、鍋から目線でお送りしたいと思っております。

 なお、この模様はどういうわけか巻き込まれたJ-CASTで記事が提供されるという実に謎な編成となっております。おいしいのは火鍋とそれを喰ってる西原さんと私だけで、それ以外は誰も幸せにならない匂いも薬膳とともに漂ってまいりますが、良い形で皆さまのご期待にそえる動画にしていきたいと思っております。どうかよろしくお願い申し上げます。

 ちなみにですが、本件話題で「芸能人はなぜシャブに手を出してしまうのか」という話題で私めが仕事柄把握した事項を番組中に披露したところ、思い切り当該者が摘発されてしまっため関係個所が全編お蔵入りになるというダイナミックな事故がありましたことは関係者に心よりお詫び申し上げます。また、もう酔っ払って「このシャブ野郎」と申し上げることのないよう気を付けてまいります。

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 出張の移動時間の友として携行した本書、読み終えたもののどうしても再読したくなって二度読み、三度読みしてしまうぐらいに興味深い内容でありました。いわゆる「病める大国・アメリカ論」に類される内容でありつつ、テーマとして辺境の厳しい環境で歯を喰いしばって生活をする地元のアメリカ人やメキシコ人たちの苦境と葛藤。あるいは、豊かな地域に生まれ育ちながら、精神的に行き詰まり、自問自答しながら命を繋いでいく人々の記録と記憶が詰まっているのが本書『グローバル資本主義VSアメリカ人』(篠原匡・著)であります。

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 序章から、筆者のアメリカ大統領選に対する読み違えの懺悔があり、実は現実のアメリカ人が何を考えているのかを知りつつメディアが有利とするヒラリー・クリントンさんの勝利を疑わなかった経験を踏まえ、本書は始まります。冒頭に元吉烈さんの手によるものと思われる引き込まれる写真、また取材アシスタントをした長野光さんへの修辞も踏まえて、繁栄するアメリカにおける「B面」とは何であるかというテーマが提示され、グッと引き込まれるわけですよ。

 どうにもならない現実が、ここにあるんです。

 そして、アメリカからすれば偉大なアメリカを取り戻す大統領であるドナルド・トランプさんの「移民を防ぐ壁」を巡る、国境線付近でのアメリカ人コミュニティやメキシコ人移民のリアルが提示される。あるいは、復権するアメリカの前で教育問題やドラッグ、妊娠その他個人の事情で立ち往生する人々の現実が突き付けられ、そういう本物の当事者の声を取り上げながら、さらにその外側にいるアメリカ人保守層やリベラル層が取り巻く環境を解き明かしていきます。そして、誰の人生においても「正解」は、ないのです。

 センセーショナルに物事を書き連ねるよりも、淡々と人々の人生で直面している事実を重ねていくのを読み進めるたび、移民する切実な事情、生きていくために必死な人たちの心情、売春婦に身を落とした母がせめて我が子は良い教育を受けさせ辛い生活をさせたくないと願う愛情とが奔流のように本書を覆います。そこにあるのは人生そのもので、圧倒的なリアルであり、あっさり死ぬ母親、違法行為をする父親、経済的な事情で四散する家庭、地域や家庭の事情を斟酌せずに蹂躙しようとする圧倒的な政治の力とそれに巻き込まれて大混乱する人々。そして、何よりもまわりにあるリベラルなボランティアから戦場を失い行き場のなくなった退役軍人まで、拭い去れない状況に立ち向かう、胸をかきむしられそうな当事者の心が伝わってくるのです。

 良質なルポルタージュというのはこういうものだと思いながら、何度も読み進めるたびに行間に込められた著者の情念が湧き上がってくるようで、そこには無限の同情とどうにもならない諦観と、しかしこれを詳らかにすることで何らかの魂の救済を願うかのような余韻が輻輳して、章ごとに綴られる地域とそこに息づく人々の人生の重みを痛感します。深い。そして、どうにもならない。

 文化は違えど人の心は同じであり、良い生活をしたい以前に生きていくのに精一杯だけれども、家庭を養い愛する人たちがせめて自分の後で苦労しなくて済むように奮闘する、しかし環境や制度がそれを許さない、地域によっては麻薬組織との折り合いや中産階級を作りたいメキシコの政策による環境の変化などあり、これ、私たちが知っている綺麗なアメリカの真の意味でのB面だと思うんですよ。

 本書は、そう多く売れる本ではないかもしれないけど、社会問題に関心のある人や、日本とアメリカとの関係を考えてこれからどうしていったらいいのか考えたい場合に、太い補助線を引いてくれる快著であることは間違いありません。単に、異世界探求もののルポとして読んで良し、あるいは人権や民主主義を大事にしていきたい西側自由陣営の日本の未来を思い描く材料としても良し、人によって陰影の深い読み解き方のできる内容であることは保証いたします。類書は多々あれども単なるアメリカ事情ではとどまらない深みを是非読み解いて戴きたいと思ってしまうような本です。

 何より、大統領選を控えるトランプさんが、明らかにボケ老人のようなイケてない政治家にすぎない人物であるにもかかわらず大統領となっただけでなく、少なくないアメリカ人になぜそこまで評価されどうやら再選しそうだという下馬評にまでなっているのか、本書で記されたアメリカ人の現実を読むだけでも随分スッキリ分かってくるんじゃないかと思うんですよ。著者の篠原匡さんが繰り返しB面のアメリカを強調する割に、でもそれって世界帝国であり繁栄しダウ3万ドルを目指さんとする好況に沸くアメリカの、その繁栄から取り残された少なくないアメリカ人のリアルそのものだと思うのです。

 翻って、経済後退や人口減少による国威低迷を宿命づけられた日本も、地方経済や移民への依存で起きるリアルも今後はどんどん表面化でてくる問題でしょうし、アメリカの直面する課題を自分なりの価値観で正面から捉えることもまた、知識と慎みある日本人として為しておくべき事柄なのではないかと改めて思う次第です。

 久しぶりに、出色だなと思えるルポでした。必読だぞ、と言わせてください。そして、登場する一人ひとりに、自分だったら何と声をかけるのか、もしも自分がその立場だったらどうするか、自問自答してみることを強くお薦めいたします。

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