月別アーカイブ / 2019年11月

 というわけで、昨日11月25日は『激動のコンテンツビジネス・サバイバルガイド』のブックイベントにご来場くださいまして、ありがとうございました。当日は某省庁の調査会から大手プラットフォーマーのカンファレンス経由で直接八重洲ブックセンターにお伺いするという超強行軍だったのですが、日ごろ、業界で懸念を持っている点や悩んでいることなども含めて概ねのところを吐き出すことができてとても幸せでした。

 本書訳者で、対談でもご一緒させていただいた小林啓倫さんのお話も楽しく、登壇者としても一業界人としても大変に有意義に過ごすことができました。また、会場も超満員だっただけでなく、お席が用意できずにお断りしたご希望者も少なくなかったと後から聞きました。その節はすみませんでした。

 イベント後に、まさに当事者の方から「Yahoo! JAPANとLINEの経営統合は本当のところ、どれだけ価値を生めそうでしょうか」というストレートなご質問まで頂戴しました。細やかなところは、私の有料メールマガジン『人間迷路』のほうで解説をしてみたいと思うのですが、個人的には、壇上でもお話しました通り私はソフトバンクグループはYahoo! JAPANの嫁入り先はトヨタ自動車ではないかと思っていましたし、現状のLINEがQRコード決済事業の広告宣伝費負担などもあり1-9月期330億円もの赤字になっていることを考えれば1兆0,800億円もの時価総額がついていること自体が過大であると思っています。少なくとも、着実に利益を出し、日本のインターネットを長らく引っ張ってきたYahoo! JAPANと五分の価値で経営統合というのはどうなのかなと思う部分は強くあります。

 一方で、両社補完の材料で言うならば、LINEが持つ8,000万人近い利用状況でお客様とスマートフォンという主戦場で近い関係が持てるというのは大きいとも思うので、ビジネスという点では確かにLINEは今後、強くなっていくとは思うんですよ。ただしそれは、東南アジアも見据えながらも結局は日本ドメで頑張ってきたYahoo! JAPANと、同じく日本がメインのユーザー層であるLINEとで日本のマーケットではビッグパワーになったとして、やはりGoogleやAmazon、Alibabaといった海外プラットフォーム事業者に太刀打ちできる状況には程遠いので、おそらくはさらなる大型買収をどこかで仕掛けるか、アリババに再売却するかぐらいしか出口がないんだろうなと感じます。

 そういう業界の変動自体も、別に長い目で見れば当たり前の変化だったと振り返ることも多いわけでして、今回のようにソフトバンクグループのキャッシュ不足から業界的に収益性の上積みの余地が少ないYahoo! JAPAN(Z Holdings)の嫁入りはどこかのタイミングでせざるを得なかった、仮にそれが虎の子であったとしても、という点は変わらないのではないかと思います。

 また、どこかのタイミングで小林さんともご一緒するようなイベントをやろうということでお話も進んでいるようですので、今回ご一緒できた皆さんも、ご希望されていたけど残念だった方々も、ぜひ引き続きよろしくお願い申し上げます。


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 先般、白桃書房のイベント告知をしたのですが、イベントに客として参加予定の有識者各位から「Yahoo! JAPANとLINEの経営統合について喋れや」というオファーを頂戴しまして、15分ほどではありますがソロでお時間を戴けるそうなので壇上でお話することにしました。

【告知】11月25日、『激動の時代のコンテンツビジネス・サバイバルガイド』刊行記念トークイベントやります - やまもといちろう 公式ブログ https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13238686.html

 また、クロストークでご一緒するのは本書翻訳者で界隈ではみんなご存じ小林啓倫さんです。



 本書に解説を書いてから、普通のマーケティング関連や技術系評価、投資のご相談よりもサバイバルしたいです的な内容が増えたのが印象的ではありますが、すでにガレージから大企業ができる世界観から、大資本同士の戦いが繰り広げられるタイタンウォー的な状況になっているのが気になるところではあります。それはそれとして、世の中の一端を皆さんと一緒に考えられるようなセッションになればと思っておりますので、よろしくお願いします。

 …と思って告知をかけていたら、どうも残席があんまないようです。マジか。

◆小林啓倫さん×山本一郎さん トークショープラットフォーマーや海賊行為にやられっぱなしの出版・音楽・映画産業で働く皆様に贈る処方箋、またはレクイエム!? | 八重洲ブックセンター https://www.yaesu-book.co.jp/events/talk/17262/


 気を取り直して、前を向いて頑張っていきたいと思います。

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河井克行さんが法務大臣職を早々に辞任。後任は森まさこさん、元少子化担当大臣。

河井法相が一部報道受け辞任 後任に森まさこ元少子化担当相 | NHKニュース   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191031/k10012157951000.html

[引用] 31日発売の「週刊文春」は河井克行法務大臣の妻でことし7月の参議院選挙の広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏の事務所がウグイス嬢13人に法律の上限の2倍の日当3万円の報酬を支払っていたなどと報じています。--ここまで--

 菅原一秀さんが、経済産業大臣職を早々に辞任。後任は梶山弘志さん、元地方創生担当大臣。

菅原経済産業相 首相に辞表提出 | NHKニュース   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191025/k10012147781000.html

[引用] 24日発売された「週刊文春」で、今月、菅原大臣の地元の支援者の通夜で、秘書が香典を手渡したなどと新たに報じられました。こうした中、菅原大臣は辞任する意向を固め、25日朝の閣議のあと、総理大臣官邸を出る際、安倍総理大臣に辞表を提出したことを明らかにしました。--ここまで--

 で、萩生田光一さんが文部科学大臣として「身の丈」発言をしてしまい、不適切であったと発言撤回して改めて陳謝するも、決定がほぼ決まっていた大学入試における民間英語試験は導入が土壇場で見送りに。

“身の丈” 発言撤回し改めて陳謝 萩生田文科相 | NHKニュース   https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191029/k10012154631000.html

[引用] 萩生田文部科学大臣は、大学入学共通テストに導入される英語の民間試験をめぐって「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」などと発言したことについて、発言を撤回したうえで「私の不徳の致すところだと反省をしている」と述べ、改めて陳謝しました。--ここまで--

 さらには、地方創生担当大臣の北村誠吾さんが、国民民主党の森ゆうこ議員の質問内容漏洩に関して。

「内閣府から漏えいなし 質問通告受けた民間人が第三者に伝えた」地方創生相 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン   https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/24555.html

[引用] 国家戦略特区をめぐり、政府側に通告した質問内容が委員会の前に外部に漏れていたと、国民民主党の議員が指摘していることについて、北村地方創生担当大臣は、質問通告を受けた民間人が第三者に伝えたもので、政府の対応に問題はないという認識を示しました。--ここまで--

 んで、今回の「桜を見る会」問題。『サクラチル解散』的な雰囲気になるんでしょうか。

桜を見る会 安倍事務所が案内文|NHK 山口県のニュース  https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamaguchi/20191113/4060004276.html

[引用] 
総理大臣主催の「桜を見る会」について、NHKは、下関市にある安倍総理大臣の事務所名で作成された、地元関係者に参加を募る内容の案内文を入手しました。
文書には、会の前日に東京での観光ツアーや夕食会などを行うことも記されているほか、飛行機やホテルの手配が必要か確認するアンケートも含まれ、地元事務所が支援者などの参加をとりまとめていた実態を伺わせています。--ここまで--


 まあ… 私が書くのも何ですが、それなりに関係の深い議員さんや秘書さんから「来ませんか」と声はかかっても、私たちのような書き物の仕事もやっている人間からすると「迂闊に政権に近しいイベントでにこやかに写真でも写ろうものなら、それが理由で大事な人から情報が取れなくなってしまう」わけですので、基本的には「ありがとうございます、ただ所用もあるのでまた次の機会に」とやるのが普通だと思うんですよ。

 ましてや、今回は安倍晋三総理が自らの事務所を挙げて関係先に声をかけ、盛大にやっていたのですが、私も今回の報道が出るまでアレは税金が使われているイベントであったとは知りませんでした。

 そして、一連の話は政権中枢のお友達に対する優遇・配慮や贔屓の問題も含むので、長きにわたった安倍政権の運営はかなりの部分がこのような側近政治に拠るものであった事情の集大成のようにも見えます。

 一連の政治家・閣僚のスキャンダルからの辞任劇も、この「桜を見る会」も、あくまで政治家の資質に関わるものばかりであって、あまり政策論とか、国民の生活に具体的にヒットするような問題ではないのですが、政権を倒したい野党側もここでつつかないわけにもいきませんから、うまく倒閣にもっていきたいのでしょう。

 ところが、与党は日本社会全体の天皇即位歓迎モードで内閣支持率が横ばいから連れ高になり、概ね順調な支持状況があります。一方、野党はれいわ新選組の消費税減税政策の強硬な主張などもあって、リベラル勢力が一枚岩で頑張っていけるという雰囲気ではないのは気になります。候補者調整はできたとして、政権批判票の上積みがどれだけ掘り起こせるのかは、ちょっと微妙な感じでもありますし、日本国民は(本当にそう思っているのか、単に騙されているのかは別として)消費税の引き上げそのものにはそれほど反対しなくなっているという状況でもあります。

 で、俄然解散もあり得るよねって話が広がってくるわけですけれども、年末から年始にかけて日本経済も猛烈な不景気になる危険性が見え始める前に選挙やって安定政権を作っておこうというモチベーションでもあるのかもしれません。

12月8日、12月15日「解散総選挙説」の衝撃|山本一郎(やまもといちろう)https://note.mu/kirik/n/n07aed525cd2e

 また、安倍晋三さんも伝え聞く限りでは政権最後の偉業(レガシー)として、2020東京オリンピックの後に、やはり憲法改正にいまなお強い意欲を示しているとのことなので、勝てそうな戦いをまずはきっちりと勝つ、という作戦に出たとき、その結果は確かに国民の民意であったとしても、果たしてそれは国民のためになるものなのかは良く分かりません。

 与野党が立てる新人の人選に入り、資金をかき集めている状況になってきて、目先のことに拳を振り上げるところまでは仕方がないにしても、なんかこう、国民にとって大事な政策もなければ国家にとって策定しなければならないグランドデザインもはっきりしない状態が続くのでは、ちょっと困ったもんだなあと思わずにはいられないんですけれども。


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「告知しないのですか」と促され、告知していなかった事実に気が付いてしまいました。申し訳ございません。

 ということで、お声がけを戴きまして『消費者法ニュース』の巻頭特集に「花粉を水に変えるマスク」ネタで寄稿をしました。元ハンドル切込隊長の名に恥じぬ冒頭掲載で恐縮をしております。

『消費者法ニュース』 121号2019年10月発行

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 これと併せて「ネット系に強い消費者団体ってないよね」という話を改めて関係者から蒸し返され、以前私自身もそういう団体の設立を考えたことがある一方、我ら我らが津田大介さんらが立ち上げた「MIAU(インターネットユーザー協会)」も話を聴かなくなってしまったので、いろんな意味でホットな分野なのに消費者保護が進められていないなあという実感もあります。どうしたらええんでしょうか。

 今回の寄稿は、昨年18年4月のヤフーニュース個人に書いた私の記事、ならびにその後消費者庁から出た景品表示法に基づく措置命令について、顛末や問題の着眼点を整理した内容です。

問題が指摘された「花粉を水に変えるマスク」の経緯と顛末(追記あり)(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20180404-00082994/
光触媒を使用したマスクの販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/release/2019/pdf/fair_labeling_190704_0001.pdf

 消費者を欺くニセ科学については今後もあれこれ取り上げていきたいと思っていますし、また、昨今では「血液クレンジング」で騒動になったようなニセ医療まがいやその周辺で蔓延るステルスマーケティングについても深堀をしていきたいと思っています。

 とはいえ、家庭と公務が立て込んで、なかなか取材で走り回る時間が捻出できないのがネックになっておりまして、人間46年も生きると自分の一存だけではままならぬことが増える、という摂理を実感している次第でございます。

 最後になりますが、これらの活動においては国民の生活を守るために日々精励されている消費者庁の皆さんや消費者委員会、国民生活センター、地方消費者行政に関わる各位の努力の賜物のところが多く、情報提供・交換に快く応じてくださる消費者団体の皆さまにも重ねて感謝と御礼を申し上げたいと存じます。

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仮想通貨(暗号資産)取引の世界で頑張っていたKAZMAXこと吉澤和真さんが薬物の件で御用になってしまいました。非常に残念なことです。

資産50億円トレーダー・KAZMAX、麻薬取締法違反の疑いで逮捕!「マジやばいのあるから来て」 
https://bunshun.jp/articles/-/15389

 なぜか文春が第一報になっているんですけれども、いったい誰がタレ込んだんでしょうか。

 また、半年ほど前に別件で問題になっていたので、KAZMAXさんやサロン周辺の面白メンバーの話は有料メルマガのほうで序文の記事にしたところ、KAZMAXさんのお陰で大変な目に遭った方々から素敵なご連絡を戴いたりもしていました。いまとなってはさすがに事実関係を追うこともなかなか大変ですので、本当か嘘か分かりませんが、KAZMAXさんもなかなか業の深い世界で思い悩んでいたのだなと思わずにはいられません。まあ、何といってもおカネは拾うものだそうですからね。売り文句とはいえ、そんなわけねえだろと思うわけですが。

人間迷路 Vol.264 仮想通貨改め暗号資産、オンラインサロンにフィンテック、人工知能と世の中魑魅魍魎が跋扈しすぎな件』―夜間飛行 http://yakan-hiko.com/BN8796

 で、KAZMAXさんの件で言うならば、アクセスジャーナル(山岡俊介さん)で報じられたオウケイウェイヴ社の松田元さんも名前が取り沙汰されていました。さすがに薬物関連は無関係じゃないのとは思いますが、なんかいろいろとややこしそうですね。別件もあって裁判になったようですが、いったいどうなったんですかねえ…。

アクセスジャーナル 「ウルフ村田」も推奨ーー詐欺的投資塾入会を勧誘するKAZMAXの背後にあの松田元氏 http://www.accessjournal.jp/modules/weblog/details.php?blog_id=8335

「オウケイウェイヴ」松田元社長を告発、集団提訴などの動き https://access-journal.jp/12068

 KAZMAXさんの逮捕からストレートに別の犯罪(仮想通貨取引を通じた投資詐欺や韓国などを通じた租税回避・脱税に関する問題)にまで発展するとは思いませんが、金融庁も警察庁・警視庁も仮想通貨絡みでは失点も多かっただけにあれこれ考えるのではないでしょうか。

 さらに、KAZMAXさんははあちゅう(伊藤春香)さんや落合陽一さんらとの交遊をTwitterで披露し、無事炎上してツイート削除するという騒ぎも引き起こしたかと思えば、DMMからはオンラインサロンを追放されてしまうなどの逸話にも事欠かず、ちょっと可哀想だなと思います。「KAZMAXさんに騙された」と思う人にとっては、芸能人やはあちゅうさんとの交遊を羨ましいと感じるかもしれないし、養分構造はどうしてもこの世界には付き物なので吸い上げられたことを後から知る立場の人にとっては今回のような事件があったらたまったもんじゃないとは思いますが。

 あれだけ才能があり、物事に集中できる人だったのに、ひとたびお金の魔力に吸い付かれると人間はこうも簡単に闇に吸い尽くされてしまうのかと感じるぐらいにKAZMAXさんの一件は「マジか」という思いでしたし、良い意味で、心を入れ替えて再起してもらいたいと願っています。人間、そういう回り道もあり得ることだし、自分で道を切り開いてきた部分もあるでしょうから、KAZMAXさんの人生にさらに先に光があり、いったんは暗闇で途方に暮れることはあってもまた歩み出していってほしいんですよね。

 むしろ、本当の更正、再起があるのならば、人の好き嫌い、恨みは別として、どういう生き方をしていきたいのか見定め、話すべきことは話し、自らを律してその才能を活かせる道を拓いていってほしいと願うのみです。

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