月別アーカイブ / 2019年07月

先日来、ソフトバンクグループ(SBG)のコーポレートガバナンスに関して、何故かアスクル側が空中戦を挑んで大西康之さんや磯山友幸さんといった経済ジャーナリズムのメインストリームにいる皆さんが参戦しており、アスクル木っ端株主としても興味津々です。

 個人的な感想は私のメルマガにも書いたんですけれども(プレタポルテでは間違えてソフトバンクHDって書いちゃった、許してください)、親子上場の弊害というリスクが今回直撃したのは別にヤフージャパンのせいじゃないと思うんですよね。

「親子上場」アスクルを巡るヤフーとの闘い | プレタポルテ by 夜間飛行
http://pret.yakan-hiko.com/2019/07/30/yamamoto_190730/

 親子上場の弊害については、QuestHubで渡辺拓未さんが論じていたので、興味のある人はこっちも読んでみてください。

ヤフー・アスクルの対立に見る、親子上場の問題点
https://www.qhinsights.com/oyako_jojo/

 で、なぜかアスクル内での岩田彰一郎社長らとヤフー川邊健太郎さん、小澤隆生さんとがトップ会談した内容についてのリーク記事が出ています。

ヤフー・アスクル騒動で暴落、経営者・孫正義の評判 内部文書入手! 「ヤフーvs.アスクル」対立の原点を検証する(1/3) | JBpress(日本ビジネスプレス) https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57152

[引用]  さて取材班が入手した内部資料とは、ヤフーとアスクルのトップ会談の会議録である。1万字を超えるこの会議録の内容は、孫正義社長の意向がこの騒動に影響していることを強く示唆するものだ。
 新年が明けて間もない1月11日、舞台はアスクル本社である。ヤフーの川邊健太郎社長は同じく取締役常務執行役員の小澤隆生氏とともに、アスクルの岩田社長ほか二人のCOO(最高執行責任者)と対峙していた。ちなみに小澤氏はアスクルの社外取締役も務めている。
--ここまで--


 これ、どう見てもアスクル側からのリークですよね。

 しかも、ご丁寧にアスクル側の二人のCOOについては実名伏せて記事にしています。そして、小見出しに一連のヤフーからの要請が「(ソフトバンクの)世界規模のレピュテーションリスク」であるとまで書いてあるんですが、常識的に考えたらアスクルで行われたトップ会談がいとも簡単にJB Pressに流出して文字になって掲載されているほうがアスクルにとってレピュテーションリスクでしょう。

 まあ、私がヤフーの法務担当だったら会談の中身を否定したうえでアスクルにJB Pressを訴えさせるよね。

 で、今日になって日本証券取引所がヤフーとアスクルの論争について懸念を表明しました。

日本取引所CEO、ヤフーの議決権行使に懸念表明-アスクル問題
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-07-30/PVFKZF6S972801

 この日本証券取引所(JPX)の社外取締役は、アスクル社外取締役の久保利英明さんで、さらに今回退任を要求されている社外取締役でもあるのがJPX前代表取締役の斉藤惇さんですね。これ、つまりアスクルの件で業績が伸び悩んで不振だからヤフーやプラスが経営陣の入れ替えを要求したら、JPXがメンツを潰されたことも相俟って岩田社長の居直りに加担していることになってしまいます。

 資本の論理から言うならば、アスクルの半数を超える株式を持っているヤフーとプラスが業績の伸び悩んでいる経営陣を入れ替えることを決定することのほうが優先されるべきで、少数株主の利益を守るガバナンスがどうとかあまり関係がないのではないでしょうか。

 実際、ヤフーがアスクルの業績改善やロハコのヤフーへの業務移管のネタを出したところが材料視されて、アスクルの株価は上昇しておるわけです。当たり前よね、B2Bで頑張ってきて、これから伸びるであろうB2Cをさらに成長させようと考えるのならば、アスクルが自前で汗かいて頑張るよりはtoCでしのぎを削ってきたヤフーとともに事業を成長させていったほうが業績が伸びることは予想されるし、投資家もそっちを望むであろうから。それが少数株主であったとしても。

 で、緑の四角で囲ってるのが、アスクルが守ろうとしている少数株主の皆さんが「ヤフーばんざい」と叫びながら買い上がったアスクル株の相場です。「コーポレートガバナンスのコードが守られないヤフーは許せない」と言われていましたが、ヤフーの動きを見て買っているのは半分ぐらいは外国人だと思います。

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 そして、ゆくゆくは親子上場の廃止も視野に入れて、ヤフーがTOBをかけることも俄然視野に入ってくるからガバナンス以前に少数株主は喜んでヤフーの方針を支持するからこそ株価が上がっているわけですよ。

 ひふみ投信の藤野英人さんも少数株主ですし、他の当方も含めた海外系ファンドは、アスクルとヤフーの間の契約がどうとかいう話は別として、業績が伸びて株価が上がってくれることのほうを期待します。言い方として誤解を怖れずに言えば、ヤフーが好きだというよりは、アスクルの経営陣が良くないと思っているのです。

新たな少数株主が「ヤフー支持」表明 「支配株主の横暴」説くアスクルに打撃 - ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1907/29/news118.html


https://www.facebook.com/hideto.fujino/posts/10158994981663438

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 それでもガバナンスがいけない、という話をするならば、天に唾をする話として、JPXがそもそもソフトバンクグループ、ソフトバンクKK、ヤフージャパン、そしてアスクルと、事実上親子どころか祖父、父、子、孫という四世代住宅みたいなとんでもない上場を承認しているのがいかんわけですよ。「ソフトバンクの孫正義が錬金術を日本市場でやっている、けしからん」というけれど、それをさせてきたのは他ならぬJPXであり、斉藤惇さんや久保利英明さんもその責任の一端を担っている、と言えます。

 また、なぜか冨山和彦さんがCGSガイドラインについて解説されたうえで、ヤフーの決定について意見をされていますが、一理あるもののこれもそもそも親子上場させるな、ましてや四世代をや、という話で終わってしまいます。そのようなコーポレートガバナンスコードを孫正義さんが踏みにじった、といきり立ったところで「でも、アスクルは業績不振だろう。そういう業績不振を招いた経営陣を、社外取締役の仕組みが理由で解任することもできないのは、守るべき少数株主にとっても損害を与える行為ではないのか」という相対的な話になるだろうと思います。

https://www.facebook.com/mammy.toyama/posts/2865544446795686

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 外形的に「ヤフーによるこんな横暴が許されるのか」という話になるとしても、強権を発動してでも成長分野を取り逃したくないヤフーの考えのほうが株主としては理解できる以上、本件についてはアスクルの側に分がないと思います。これでもう少し業績が良くて、独立性を維持できるぐらいの経営状態であったならば、実った果実を自分だけで召し上がろうという親企業は許せないという論調にも同調者が多かったかもしれませんが。

夜間飛行 人間迷路
https://yakan-hiko.com/kirik.html


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 5月ぐらいまで「川上量生」で検索をするとそれなりに上位表示されていた当ブロマガですが、最近は監視ツールでも見当たらなくなりました。どうも、わざわざドワンゴが当ブロマガが検索エンジンにかからないよう、何らか手配をしたようです。

 まあ、そりゃ都合が悪いものがいちいち上位表示されないようにしたいというのは分からないでもないんですがね。私としては、たかだか川上量生さんがイキり立って中傷してきたツイートや、事実を記した記事に抗議し情報法制研究所に削除と謝罪を求める文書を送ってきたような事例の裁判がおおっぴらにニュースサイトに転載されるのは彼にとっても恥ずかしいだろうと思って、わざわざ500円支払ってブロマガで書き綴っていたのですが、真意はなかなか届かなかったようです。

 そんなわけで、本件については同じ文章をLINEブログのほうでも転記することにしました。

やまもといちろう オフィシャルブログ(LINE)
https://lineblog.me/yamamotoichiro/
川上量生さん、当ブロマガ記事を検索エンジンに引っかからないようにするナイスプレー https://ch.nicovideo.jp/kawango_kirik/blomaga/ar1791528




 また、本丸裁判のほうでも現在は唐澤貴洋弁護士から川上さんサイドの準備書面が送られてきていましたが、どうも自分のカネを入れたファンドで投資を行うのに投資顧問業の登録が必要だと思い込んだような文書になっていて面白かったです。ネタ元は2ちゃんねるで裏取りもせずに突っ込んできている感じがして、心が晴れやかになります。

 こちら界隈では、先日ドワンゴが4月1日にサービス開始したばかりのソシャゲ「エンゲージプリンセス」がいきなりサービス終了のお知らせを流してきていて、川上量生さん時代の置き土産がひとつ、またひとつと潰れていくさまをみせつけられ、ますます心が晴れやかになります。

 「エンゲージプリンセス」のサービスが2019年9月30日13:59をもって終了。本日21:00からは開発責任者による説明番組の配信も https://www.4gamer.net/games/412/G041277/20190719066/
【悲報】ドワンゴの本気ソシャゲ『エンゲージプリンセス』開始3ヶ月でサービス終了を発表 https://imasoku.com/engageprincess/

 サービス終了が発表されているタイトルなのに、ニコニコ動画では「NEW!」「サービススタート!」と勢いの良いバナーを表示して、しかもニコニコアプリのランキングでは1位であるという猛烈な寒気を夏に放つクールジャパンな雰囲気がとても素敵です。

 川上量生さんについては、その後もいろいろな新しい素敵な話が聞こえてきているので、改めてまたメディア等で記事にしていきたいと思います。


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 新しくベストタイムズで連載を始めることになりました。調査報道でご一緒するのは北澤恭さんです。

『堂々たる白タク配車アプリ』と評判の「CREW」を巡る論争が拓く未来 | コップの中の百年戦争 https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/10448
『堂々たる白タク配車アプリ』と評判の「CREW」を巡る論争が拓く未来
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190720-00010448-besttimes-pol

 「取材させて欲しい」と何度か連絡をしているのに当事者から一向に返事をもらえなかったんですが、ただまあ良く調べてみると「業としては別として、報酬を受け取らない」前提でのモデルであれば許されるという国土交通省と経済産業省の解釈もあったためにマッチングまでは適法ということでそのままサービスインするようです。

 記事にも書きましたが、マッチングされて配車され乗った車両が事故を起こしたらどうなるのか、という点も含めて、保険会社の対応も割れそうです。ただ、個人的には「CREW」のようなライドシェアの発展版的なサービスは面白いと思うんですよね。どこで儲けるのか分かりませんが。アプリに広告でも掲載するんでしょうか?

 で、この記事で書きたかったのは警察庁もある程度状況を認識する中で、例えばインバウンド客が海外の配車サービスで日本のドライバーとマッチングしていて、決済情報も乗降情報も日本が承知しないまま完全な白タク行為が成立してしまうことが野放しになっている点です。ここにおいて、「CREW」がどんな意味を持つのか、また、彼らがグレーゾーンなビジネスをやっていると断罪するだけでは意味をなさないデリケートな問題がすでに起きていることが問題だと思ってます。

 確かに日本の法律だけ見れば「CREW」のマッチングサービスは白タク斡旋行為そのものだと業界は言うでしょうが、ただ、日本の法律を守ったところで利用者が海外のマッチングサイトで情報をやり取りしてしまっていては、規制を守っている側が積極的に損をすることになります。実際、日本の法律を守るのは日本の法人だけで、海外の人たちは日本で脱法ビジネスし放題、日本人のデータ抜き取り放題となっている側面はどうしてもあります。

 それもあって、お前らどう考えているのと取材をしたかったんですけど、せめてメールでも返してくれればよかったのに記事執筆までの3週間ぐらいは何の返答もありませんでした。何で返事してこねえんだよ。

 そして、記事が出て5日経って、初めて「CREW」を運営している株式会社Azitから公式に返答を頂戴したわけです。おせーよ。

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 「任意で謝礼を払ってもええよ」という内容まではいいとして、やっぱりお前らどこで儲けるつもりなのか? というのは凄く気になるんですよね。アドテク会社が移動履歴を参照したいのでまるっと買収するぐらいのEXITしか見えなさそうなのがアレですが、それもこれも海外に出たら取引情報分からなくなるのに無駄に規制している日本の法律がいかんのよね。大手を振って間を取れるぐらいのビジネスサイズになるといいね、と他人事ながら思います。


 まあ、個人的にはAzit社からは返答もらえなかったけど頑張ってほしいと思います。結構、本気で。

 次回の連載は、あの! 著名人もPRでいっちょ噛みした、微妙女性経営者が運営する不思議な不思議なサービスの実態について迫りたいと思います。所詮は日本市場というコップの中で、繰り広げられる果てしなき戦いを楽しんでみていきたいです。




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 面白ウォッチャー的には、山本太郎さんの「れいわ新選組」が2議席に届くのかどうか(あるいは0議席で終わるのか)と並んで興味の対象になっているのが福島瑞穂さんが副党首を務める「社会民主党」の行方であります。

 人によっては「泡沫政党なんてどうでもいいじゃん」と言いたいかもしれませんが、戦後政治における社会党の意味について理解のある人でしたらこんにちの社民党の凋落は感慨深かったり、哀愁を感じたりするんじゃないかと思います。ああ、あの社会党がこんなことになるなんてねえ。

 しかも、おそらく今回の参院選で社民党は比例で有効得票総数の2%を獲得するか、公認候補2人以上が当選しないと政党要件を満たさなくなってしまい、政党ではなく政治団体に転落することになります。そして、社民党支持者の中でもコリコリの左派と見られる人たちは、今回社民党にあまり投票せず、れいわ新選組に票が流れてしまっているように見受けられます。と言っても、そもそも「社民党支持者」と出口で回答する人は総有権者の1%を切ることがあり(出口なので支持政党を「社民党」と答える人は割合的にはもう少しいる)、その社民党支持者が各年齢・年代にわたって「れいわ新選組」を比例で選んだり、選挙区でれいわ新選組候補に入れたりしているという状況であります。ただ、あまりにもミクロな世界なので、社民支持がこれだけれいわに流れました、とはっきりしないのが困るところではあるんですよね。

 東京を見ていると、社民党的にはそこそこ頑張れる候補として朝倉れい子さんを立てていて、総評系では頑張ってた御仁なので、ここで健闘できなければどこで踏ん張るんだっていう状況になっていたんですよね。で、下手すると、れいわ新選組野原善正さんにすら得票数で負けかねないという。しかも、浮動票に強いけど共産組織票に弱い吉良よし子さんが共産党から立って、何と今回2位目もある流れになっていて、山本太郎選挙区出なかったよ効果はむしろこっちに受益がありました。なので、社民党が本来取るべき票がどこにも見当たらないという悲しい現実があるわけです。

 そして、社民党にとっては本当に運の悪いことに又市征治党首ががん治療のため参院選出馬見送りでそのまま引退されそうな勢いです。人として、どうかご養生をと思うんですけど、ご本人からしても忸怩たるところはあるでしょう。私だったら悔しくて憤死するぐらいの状況じゃないかと思います。 がん

治療から復帰の社民・又市党首、参院選不出馬を表明:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASM6L3T3LM6LUTFK00C.html

 野党共闘の観点では、左派票・政権批判票の受け皿を一本化することで一人区で有利に、と思っていたら、逆に立憲民主党の党勢低迷が顕著になってしまい、選挙協力をどうやっても浮上の目がまったく見当たらなくなってしまいました。マスコミも悪いんですが、改憲勢力に届くか届かないかという議論は国民からすればどうでも良くて、実際には年金問題などの社会保障と、景気・雇用がワンツーで、次いで出産子育て教育、外交問題などがきて、その次に憲法問題が問われているという感じで、正直言って選挙の争点設定ミスが序盤から投開票日まで響いているんじゃないかと感じます。ただ低迷しているというよりは、年金問題での議論が上手く喚起できないまま、改憲があると立憲主義の危機だとかいう国民から見ればどうでもいい話を前に出すので支持が集まらないのです。

 もちろん、改憲は大事なイシューだと思います。メディアや政治に関心のある人にとっては。私も無闇に雑な改憲論議が湧き起こるのだとすれば、改憲に反対です。ただ、改憲するという中身の吟味は賛否あるとしても、調査してみると前々回も前回も国政選挙においては「改憲については反対・やや反対」だが自民党に投票する人が実はマジョリティなわけです。つまり、改憲に反対しましょうとキャンペーンを張っても、いま現在まあまあ飯が喰えている国民にとってはそれはそれとして自民党に入れてしまうわけですよ。野党はそこが分かっていない。

 結果として、野党は何とか与党の政策に難癖をつけて失点をあげつらうことで与党の政策との差を際立たせるという方法以外取りようがないのでしょう。最低賃金の引き上げやブラック企業撲滅と言った、国民目線で近しい政策を実現するためにどうするべきなのかという争点を設定することすら途中で放棄してしまったんじゃないかと思うんですよね。

 山本太郎さんの凄かったのは、そういうトピックスはごっそり持っていったし、全部つなぎ合わせると絶対実現しないことなんだけど、本来それは社民党が口を酸っぱくして主張するべき政策課題だったと思います。そう考えると、社民党が党消滅の危機だと騒ぐ理由も彼ら自身の中にあるだけじゃなく、トピックスをかっさらったれいわ新選組は、敵の票を奪ったというより左翼・左派の現状批判票を取っていると言えましょう。

 さすがに展望が拓けない状態で社民党が歴史的使命を終えようとしている、というのは悲しいことだし、いまや何でも反対は共産党やれいわ新選組の役割となりました。支持母体がなくなった政治組織は、その政党としてのテイも維持できなくなるということでありまして、改めて政治というのは自己規定としてまず「誰の大便をする組織なのか」という本質をしっかり見据えることが大事だと思う次第です。


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 産業廃棄物業界の悪しき伝統とも言える部分はあるんですが、「モノタロウ(MonotaRO)」社の尼崎本社にまで家宅捜索が入るようです。事故を起こしたのは高槻市の産業廃棄物運搬会社「今村産業」だそうなので、この辺は「あっ(察し」という感じの出来事になってきました。

モノタロウを家宅捜索 高槻の倉庫火災、業過致死容疑で:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47119900Z00C19A7AC1000/

 そのモノタロウの前社長はLIXILに返り咲いた瀬戸欣哉さんで、現経営者の鈴木雅哉さんの手腕もあって合理的な経営を行い急成長をした会社さんなのは事実です。

創業者が去った「工具のアマゾン」 41歳社長の克服法 : NIKKEI STYLE https://style.nikkei.com/article/DGXMZO10681160V11C16A2000000/
MonotaRO(モノタロウ)の瀬戸会長は、なぜLIXILグループの社長に指名されたのか https://limo.media/articles/-/1055

 ただまあ、あるある話とはいえ自動車会社だろうが物流卸だろうがコンビニ業界だろうが、合理的な経営を貫徹して本部・本社は儲かるとしても、現場は大変なことになるわけでして、おそらくどこかが記事にするとは思いますがモノタロウ社は結構産業廃棄物やリサイクル周りでは下請けになかなか厳しいことを仰る会社さんではあります。

 もちろん、モノタロウ社よりも厳しいことを仰る家電量販店さんや物流卸さんはいらっしゃるので、必ずしもモノタロウ社だけが何かアカンという話ではないし、また、今回はスプレー缶で、大爆発して不幸にして死者が出てしまったので騒ぎになりましたが、絶対にその辺に埋めてはいけないものを埋めろと指示を出してヒヤリハット事例を起こすケースは他社にもいっぱいあります。今回スプレー缶と訊いて「あっ(察し」と思ったのはこれらの物品はそのまま埋められないからなんですよねえ。

 産業廃棄物業界も、私が父親から事業を引き継いだころよりもはるかに健全になって、きちんとマニュフェストを出して追跡できるようになり、不足がある場合は産業廃棄物の処理責任がある企業も名指しで罰せられるようになりました。その点では、とても良かったと思います。しかしながら、今回のスプレー缶も含めて大変いけない物質を出してしまう物品はトレーサブルではない状態に置かれている、どころか、冷蔵庫のようなドンガラのところは追跡可能なのでくず鉄で出しておいて、そうでないものは費用の高い中間処理もかけずにホロ掛けの不振トラックが兵庫や鳥取の山中に… みたいな話がないとは言えません。

 本来ならば、価格競争の激しい通販業界や家電量販店において、安売りしてたいした利幅も出ていないはずの企業が、なぜか高収益であるというケースはやはりあります。たいていにおいては、経営陣が優れていて合理的な経営を貫徹しているから本部が頑張っていて利益が出ているわけですが、回収された廃品や在庫処理において、明らかに企業規模と不釣り合いな規模の事業者が一手に引き受けている状況は散見されます。

 例えば、環境系の上場企業がポイズンピルを飲み損ねて、業界でもややこしいと知られる砂利屋にTOBをかけられそうになった事例もありましたが、大手企業なのに処理費を浮かせるために追跡される部分は環境系上場企業にまとめて流し、面倒な処理が必要でそのまま埋めたり焼いたりできないものは中小零細規模の面白業者に頼むということは横行していました。ただ、日本の都道府県の環境事務所も馬鹿ではないのでそういう話を聞きつけるとあれこれ対応してくれるのですが、別に全量を一次請けしているわけではない環境系の上場企業がまともな仕事をしていて、それとは無関係に分離された代物は資源ごみとして買って貰ったということにしたり、中国に輸出したことにしたり、面白業者に回収処理してもらったりする形にして安く抑えようとします。もちろん、環境系の上場企業は普通に仕事をしているだけなので何も知らないんですよね。

 なので、アカン処理をしているところはアカン人たちがやるのでアカン事故を起こします。で、上から「どうにかせえ」と言われると、本部や倉庫物流部門や下請けから応援が出てきて、みんなよってたかって処理をするんですよ。なかなか修羅の世界ですし、人間不信になるほど妙なことが起きますが、残念ながら、世の中にはそういうことが平気でできてしまう人たちというのがいるのです。

 モノタロウ社の件も、おそらくは「どうにかせえ」と言われたんだと思いますが、モノタロウ社がただ悪いという話ではなく、そういうものを引き受けてしまう産廃業界の古く悪しき体質みたいなものがまた出たなあと思ったりもします。本来なら、これはこういう事故でした、業務上過失致死です、で済ませずに、舞台となった高槻市のこの零細”産業廃棄物運搬業者”の取り扱い物品の記録や、売上票、銀行口座などを見てみるといいんじゃないかと思います。モノタロウ社以外にも、意外な会社が「お世話」になっていたり、「お手伝い」してきた経緯があるかもしれません。

 そして何より、現場の爆発で亡くなられた「モノタロウの社員、山西潤さん(36)」と、現場で手伝っていたと見られる「山西さんの次男(13)」が重体であるという報道に、私は「あっ(察し」というものを感じます。

 なんかこういう報道を見ると、昔を思い出して何ともいたたまれない気持ちになるんですよねえ…。



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