月別アーカイブ / 2018年12月

 あんまりこういうネタをやると「堀江貴文は逮捕起訴有罪禁錮刑だったのに日興証券ときたら」とか、いろんな「あれを逮捕するならこっちも逮捕しろや」案件に容易につながるわけですが、同じ金商法違反関連でも、日産カルロス・ゴーン氏とケリー氏の件は結構な紛争になり、ようやく本丸の特別背任で再逮捕され無事年越しとなったようです。

ゴーン前会長を再逮捕=特別背任容疑、日産に損失転嫁か-「私物化」解明へ・地検:時事ドットコム https://www.jiji.com/jc/article?k=2018122105122

 なぜこのような核心情報が報じられてしまうのかは分かりませんが、内容を読む限りど真ん中の特別背任事案であり、検察の勝ちだ負けだ横暴だといろんな意見はありますけれども事実としてそれがあるならば検察は普通に仕事をしているだけじゃないかと思います。相場やってる人間からすれば、これがアウトでないならどれがアウトなんだという感じなので、司法取引で得られた日産社内の情報から裏付けることができているでしょうし、これはもう駄目なのかなと感じるところです。

 一方、椎木隆太氏の率いるDLE社は、上場前から現在に至るまですべての期において粉飾決算であったという事実が表面化した割に、たいした処分もされずに放置されている問題があります。大丈夫なのでしょうか。むしろ面白半分に株買っておいて代表訴訟でもやればよかったんじゃないかと思えるぐらいに、こんなのが東証一部上場企業であるという問題はあると思うんですよね。

椎木里佳の父親の会社DLE、粉飾決算バレの果てに株価10分の1 - 市況かぶ全力2階建 http://kabumatome.doorblog.jp/archives/65931408.html

 市況かぶ全力2階建では面白おかしくみんな書いてますけど、この程度の処分しか粉飾でも問題ないとなれば、投資家からすれば決算書自体が信頼できないことになり、市場の信認を根底から揺るがす事態になるわけですけれども、先に上場したソフトバンクが通信障害後の契約解消1万件だのエリクソンMME/vMME置き換えでの費用が未計上、リスク情報にも無さそうというあたりで非常に困るわけです。

 全部の事案に共通するように一般化させるのは危険ですけど、どこも誰もが自社を良く見せようとし、粉飾を誘発したり、品質を偽装したりすることは主に倫理とか意識の問題なので、そういう目に見えない信用という財産を大事にしてくれる会社が今後訪れる不況下でも生き残るのだろうか、とぼんやり思うのでありました。


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 某所で呼ばれたので解説など。

 なお、一般向けにはすでにApplivさんで言及しています。あまり村ゲに造詣の無い方はこちらをどうぞ。

完全攻略!『戦国大河』クソ仕様の楽しみ方 https://games.app-liv.jp/archives/389201

戦国大河 オフィシャルサイト https://sengokutaiga.com/

 本件『戦国大河』はパブリッシャーがバンダイナムコ、制作がAimingであるとされています。純正村ゲなので、やり込まないと作品の良し悪しは分からないでしょうし、やり込んだところで村ゲなのでプレイヤーが少ないためにあまり話題にならないというのが残念なところですが、欧州『トラビアン』3倍鯖や、同じくクソゲーと名高い『モバイルストライク』で基地を焼いて回ったラキシスさんなどとご一緒するということで、それなりに頑張ってプレイしつつ解析をしておったわけです。

 『戦国大河』がクソである理由は、初心者向けに離脱の原因となるであろう「いきなり上級者に村を焼かれて訳も分からないうちに滅ぼされる」ことを極力減らすための工夫が、すべてゲーム性を台無しにする方向に動かしてしまった、という点にあります。

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 すなわち、初心者を攻撃してもおいしくない状態にしようという話なわけですが、標準的な村ゲであれば初心者対策には通常「大きめの隠し倉庫」を用意して、根こそぎ資源を奪われ建物を破壊されて立ち直れなくなることを防ぐ仕組みを用意します。それでも、生産拠点となる田んぼや製材所が壊されるとダメージも大きいわけなんですが、昨今の欧米系の村ゲだと「出撃に米がかかる」仕組みになっていて、レベルの低い初心者や放置城に攻め込んでも兵隊を出すのに資源がかかる以上、損をする可能性があるので攻めないという仕組みで初心者を守ろうとするわけです。

 しかしながら、『戦国大河』では単純に「攻め落としても戦利品が貰えない」仕組みになってしまっています。これでは何のための村ゲなのかさっぱり分かりません。同盟が敵対しようが戦争になろうが、攻めて勝っても「ざまあみろ」という気持ちが晴れるぐらいでいいことがひとつもありません。逆に負けた側は新設した街を焼かれたり、盟主を落とされて「砦」を奪われるとダメージになりリハビリ期間がかかるので、最高にムカつきます。負けたほうだけがペナルティを負う、というどうしようもない仕組みになっているのが『戦国大河』なのだ、と判断せざるを得ません。

 それゆえに、ゲームの中盤から「出城攻略」そして「雲のかかった本丸まで攻め込みに行く」というプロセスの前に、いかに兵隊を揃えたアクティブなプレイヤーが集まって同盟を組み、多くの砦を擁して生産性を確保するかという、非常に高度な同盟連携が求められます。本作品が最高にクソである理由は、初心者のために対策を打ったはずなのに、戦争自体が無駄なことに気づいた同盟同士が合併してアクティブな人たちだけで出城を落としに行かなければならず、ここで農民は役立たずなので同盟から外されざるを得ないというところにあるのです。

 いままで20作品近く村ゲをやってきましたが、ここまで間抜けな仕様を中心に据えて展開している大規模作品は見たことがありません。中華系村ゲ作品で仕様がクソだと酷評される『Mafia Wars』ですら、同盟に入れる人数とゲーム内の進行上必要なボスのバランスを取り、抱えるボスの奪い合いでPvP仕様を用意して札束を使わせる仕組みになっています。

 初心者でも大事に扱われるようなゲームデザインを考えるならば、欧州系作品で良く見られる「弱小プレイヤーを守ることがギルドの利益に繋がるように配慮させる仕組み」を用意したり、前述のように攻略にコストがかかるようにして弱小プレイヤーを攻め落としても利益が少ないようにするほうが合理的だったはずなのです。

 ところが、同盟の仕組みはレベルマックスでもたった80人しか同盟員を収容できず、どの大手同盟も戦争屋は10人いないような状況では大合戦を演出できるようにはなりません。

 さらには、シーズンの引継ぎも「育った武将はそのまま次のシーズンに持ち越し」なため、その段階で新規プレイヤーが入ろうとしても「突然育ちに育った前シーズンからのプレイヤーに主導権を奪われる」ことになります。これでどうやってプレイヤーを増やすつもりなのか、正直理解ができないんですよね。

 それであれば、村育成パートと地図を切り離して同盟間の合戦がメインの仕組みを用意するか、PvEメインの使用を用意して同盟依存を減らすかの2択しかなかったのではないかと思うのです。いまや、村ゲの主力は『Clash of Clans』のような戦術級も用意したキャンペーン構成のPvP対戦ですし、武将の強さにしても古色蒼然とした『ブラウザ三国志』の焼き直しのような仕組みでは不合理すぎてプレイヤーは納得しないでしょう。

 他にも、雑過ぎるうえに数の少ない技術ツリー、どう育てても似たような本拠地や町にしかならない少ない建物、三すくみ3兵種と剣兵破城兵の5種類しかいないバラエティ絶無の兵科と、さすがに他の大手村ゲに遜色しかないデザインは良くないと思います。シミュレーションゲーム好きとして、一番何が許せないって騎馬隊で揃えた快速部隊よりも、剣兵適当に率いた淀君のほうが倍以上速度が速いんですよ。あるいは、敵陣に実弾を打ち込もうと遅い破城兵を送るにあたって、武将の移動速度は完全に無視され武将が乗っているアイテムの馬で速度が決まるとか、こんなの戦術にならないよって思うわけです。

 いまどき道路も敷けない割に出張詰所は本拠地の練兵所とワープゾーンに繋がってて瞬間移動し放題、空き地を攻めて経験値貰い放題っていうゲームは流行らなくて当然だと思います。さすがに新鯖である第6ワールドでは名声0にして高レベル土地を占領しないように同盟員で囲んで殴りまくってレベリングするということはできなくなったようですが、そもそも中立地帯の空き地での戦闘や強敵のみに経験値である「武士の魂」が与えられるという仕様がおかしいのです。

 これのどこが面白いのかさっぱり分からない村ゲが『戦国大河』になってしまっていて、私のプレイした一か月と課金した2万円を返してほしい気持ちでいっぱいですが、残念ながら、本当に、救いがないのです。海外にも豊作な村ゲも少なくないなかで、それから学ぶこともせず、よくこんな状態で広告宣伝し、リリースしたなってレベルの。『大戦略WEB』から出直してほしいと切に願います。

 立て直すとしたら、意味がなくなっている木、絹、鉄の資源仕様見直し、武将パラメータの見直しっていう根本的なところから始まって、PvP、PvEのチューニングと、武将のレベリング仕様は最低でも大幅にアップデートしないとゲームとしての死から蘇生することは不可能だと思います。技術ツリーも建物の種類も武将のパラメータ・スキルも武将編成・移動の方法も全部ゴミなのは何なんだろうと。

 服部隆之の音楽と、織田信長のシナリオと、アプリの手触りは良かったんですけどね…。
 なんか石川五右衛門のイベントが始まって… なぜか本来辛みがないはずの前田慶次との掛け合いがあって、これはこれでノリとしては好きだったんですが。
 非常に非常に残念な一作でした。


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ご縁あって、ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんの自伝『THE LAST GIRL』の私の書評が東洋経済オンラインに掲載されました。

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 本件でむつかしいのは「イスラム国(ISIS)と言っても、その衝撃は伝えられても体感としてはなかなか日本人には伝わらない」ことであり、ナディアさんのような北イラクに住んでいたクルド人、それも、地場の少数宗教であるヤズィーディー教の苦難となるとまったく想像の果てにあるんじゃないか、という点です。

 イスラム国の勃興については衝撃的にとらえられ、池内恵さんの『イスラーム国の衝撃 (文春新書)』や黒井文太郎さんの『イスラム国の正体 (ベスト新書)』なども事情や概要を知るには素晴らしかったわけですが、この『The LAST GIRL』は実際にイスラム国に襲撃を受け、親族を目の前で殺され、性的虐待を受け、改宗を迫られて、薄い縁で命を繋いで逃げてきた被害者の側からの体験談として、重すぎる事実が淡々と語られるあたりに綺麗事では済まされない紛争地域の現実を思い知ることになるわけです。

 この書籍の受け止め方はさまざまでしょうが、おりしもシリアからの撤退を勝手に決めたトランプ大統領と、それに愛想をつかす形で辞任が発表されたマティス国防長官の報道を見る限りは、この中東の問題がもちろん現在進行形のものであり、また、大国の思惑によって翻弄される中東の人々の図式もまた鮮明に感じられるように思います。

マティス米国防長官が2月退任、シリアなど軍事戦略転換のさなか https://jp.wsj.com/articles/SB10956990367541264051804585011922622369404

 決して入門書ではなく、被害者の体験談から大きな物事、出来事を下から眺めるという形なので、読んでいて興味深くはあっても爽快感もなければ充足も覚えないリアルな紛争地域の被害者、それもとても運がよく生き延びて事実を語ることができた人の話であることは理解する必要があります。その背後には、平和な暮らしを奪われるどころか命すら失った多くの犠牲者がいることを忘れてはいけません。

 そして、突き付けられるものは「じゃあ日本人であるあなたはどう感じましたか」「何ができると思いますか」という陳腐な話だけではなく、私たちが望む平和、安心というのはそもそも何でしたっけという根源的な問いです。単に平和ボケだという話ですらないことは本書を読めば何となく体感できると思います。

 日本で生まれ、日本で暮らしている人にとって、私も含め100%ナディアさんの体験を理解し、すべてに共感することはなかなか困難です。ただし、起きた犯罪を正面から見つめ、その凄惨な体験から、平和を実現するための教訓を得ることはできるかもしれません。ライトノベルやファンタジーの異世界では到底起き得ない本当の紛争の現実がそこにあることに関心を持ちそれを知るだけでも、本書は充分に価値のある書籍です。

 ご関心のある方はぜひ。

THE LAST GIRLーイスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語―

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