月別アーカイブ / 2018年10月

 MANGA議連で自民党の馳浩氏がご自身のブログでとんでもないことを書いていて、ああこの人も憲法を守る意志のなさそうな人なんだなということが分かります。

 こんなことで最低限の法学の理解もないとかヤバいと思うんですよね。安倍晋三総理が薦めようとしている憲法改正論議を自民党に任せていていいのか、という話にならざるを得ないでしょう。


--引用--

報道によると、中間報告でさえ両論併記できなかったとの事。

なんで?通信の自由を害するから?

それって、著作権者への甚大なる悪影響(損害)よりも優位な概念?

--引用ここまで--

 しかも、なぜか「ブロッキングに関わる法制度整備について、司法関係者から(総務省から?)異論が指摘された!」という程度の理解しかしておらず、海賊版対策は必要だけど憲法で認められた通信の秘密や通信事業法に違反することはできないので、然るべき対策をすべて打ってからにしましょう、という話であることも分かっていないようです。

 「漫画村」とかブロッキング議論をやる前に話し合うべき知財戦略ってのは別にあるのではないですか、という話は、すでに産経デジタルのiRONNAに寄稿しました。

海賊版ブロッキングより日本が急ぐべき「真の知財戦略」がある (山本一郎) - オピニオンサイトiRONNA https://ironna.jp/article/11003

 一方、立憲民主党の高井たかし氏は、こちらもご自身のブログでこの問題を取り上げておられます。

超党派の国会議員で構成される「マンガ・アニメ・ゲームに関する議員連盟(MANGA議連)」の役員会(古屋圭司会長、馳浩幹事長、笠浩史事務局長)で、政府が検討中のインターネット上の海賊版対策について報告を受けました。
http://takaitakashi.com/archives/3654

--引用--

議連役員メンバーは、ブロッキング推進派がほとんどであったためかもしれませんが、

住田事務局長の答えは、「タスクフォースの議論はあくまでも参考であり、最後は政府が決める。来年の通常国会で予定通り法案を出す(※)」

というように感じました。

(※)あくまでも他議員からの質問も含めた住田事務局長の答え全般から私の感じた雰囲気で、住田事務局長がこの通り発言したわけではありません。

--引用ここまで--

 とのことで、どうも漫画議連の役員はブロッキング推進派がほとんどであるとの由。ということは、漫画議連の役員は憲法違反を堂々と主張する人たちということになりかねません。

 ブロッキング推進派も反対派も、基本的に海賊版サイトを野放しにするのは悪いことだという前提で「サイト遮断のようなブロッキングは通信の秘密を侵害するので違憲だから、そんなことを議論する前に法的手続きほかやれることは全部やってから、なお駄目だという話になったら法制化について考えるのが筋」というだけだと思うわけですよ。

 で、漫画村下手人に関する話は動きがありました。

「漫画村は違法か」判断の裁判、異例の判決延期に Cloudflareが判決数日前に答弁書 - ねとらぼ http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1810/26/news034.html
「アクセス遮断が進めば、中国と同じ状況になる」NTTコム提訴の中澤佑一弁護士が警鐘 https://www.huffingtonpost.jp/2018/04/26/blockng-ntt_a_23420738/

 アクセス遮断(ブロッキング)をいち早く実施するとしたNTTグループ(NTTコミュニケーションズ)にはすでに中澤佑一先生が裁判を起こして法的リスクは具現化しており、また、権利を漫画村に侵害された漫画家たまきちひろさんの代理人を務める東京フレックス法律事務所の中島博之先生が手弁当でこの問題に取り組み裁判が進展しています。

 おそらく、MANGA議連は議員立法を目指して運動するけど途中で人が集まらないとかいろんな理由で挫折に追い込まれた後で閣法としてブロッキング法制化を進めていくのではないかと思います。ただ、そういう法律ができたところで違憲状態であることには変わりませんから、有志弁護士がわらわら出てきて裁判が起きるであろうこと、また、罰則規定のある通信事業法は一文も挿入されないことになりそうですのでISP(通信事業者)は社員や技術者を守るためにおそらくは(NTTグループも)実際にはこのブロッキング新法に基づいてブロッキングは行わないであろうと見られます。

 こんなMANGA議連や甘利明さん、稲田朋美さん周辺がごり押しして最低限の憲法周りの話も踏み抜いてブロッキング法制化を強行するようでは、安倍政権の憲法改正論議なんか怖ろしくて賛同などできないよなあという話になると思いますが、それ以上に、関わる自民党馳浩氏以下不勉強すぎる人たちをどうにかできないかと感じる次第です。


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 ちょうど我が国の公正取引委員会がプラットフォーム事業者に対する公正取引の状況についてのヒヤリングを進めている途上にあるわけですが、日本でのSNSサービス大手に位置するTwitter社の「Twitter」で意味不明の機能制限を喰らい、こりゃいったい何なの? と思うわけです。

 

 しかも、ちょうど政府・知財本部のブロッキング問題で騒動になっているあいだ、告知用のメディアの一つとして、事実上の言論プラットフォーム事業を運営しているはずのTwitterが、通報に基づいた機械的な発言の抽出で異議申し立ての内容を検討しないうちから機能制限や凍結をするというのは適切ではないと思うんですよね。

 


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 JILIS(情報法制研究所)やプライバシーフリークカフェでご一緒している高木浩光先生の場合、6年以上前のTweetで東浩紀さんという名前の評論家の方に対し、先日亡くなられた又吉イエス先生の選挙ポスターをもじったこの書き込みが通報の対象となり、機械的に「自殺を助長するもの」と判断され、アカウントがロックされてしまいました。

  

 で、当然高木浩光先生は東浩紀さんに自殺を奨励しているわけではもちろんないこと、また東浩紀さんは殺しても死ななさそうな人物であることは自明としたうえで、異議申し立てをしてたもののこれによってアカウントロックはなぜか解除されず。結果として、誰がやったか知りませんが6年前のTweetは削除しなければならなくなった、という事案であります。

 

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 私の原稿アカウント(@kirik_game)の場合は、少女の人形をしたからのぞき込んで見えるパンティに欲情する大人という謎の嘘松がTweetで流れてきたので、わざわざそういう変人を見つけ出してきて「この人は変人だ」と喚き立てる必要はないのではないかと論じているものです。使用した単語は不穏当だったかもしれませんが、別段誰かが具体的にアレであると名指しして中傷しているわけでもありません。

 

 これがなぜか通報が通り、異議申し立ての余地なく削除しなければアカウントはロックされて利用できず、削除後も、7日間の機能制限期間が設けられ、その間はTweetRTができないどころか、フォロー外の友人にDMが送れなくなり、また相互フォローの友人には画像付きのDMが遅れなくなるという不便を強いられるわけです。

 

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 いままでどちらかというとTwitter社が打ち出す施策に対しては賛成であり、また、過去に通報された問題のあるTweetに関しても積極的に削除することは厭いませんでした。しかしながら、議論の文脈も判断せず、異議申し立て中も一方的にアカウントがロックされたり、問答無用なら仕方ないと問題のTweetを削除しても長期間の機能制限をされるというのは大手SNSというプラットフォーム事業者としての能力を著しく欠いているように見えます。

 

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 また、私が7月に凍結されたアカウント(@kirik)に関しては、すでに一部ネットメディアで報じられた通り、Twitterのヘビーユーザーは鬱病など精神疾患になりやすいと揶揄したTweetに対して私が「ぶち殺すぞ」と応じたことが問題であるとして凍結に至った経緯があります。

 

山本一郎さんのTwitterアカウント、凍結される - ITmedia NEWS http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1807/24/news125.html

 

 しかしながら、Twitter日本法人に対する異議申し立てはそのままアメリカのTwitter社本社の決議事項であるとされ、明らかに文脈に対する審査もされないまま、いまなおアカウントが凍結されたままになっています。さらに、以前はTwitter社に対する異議申し立ては米カリフォルニア州で訴え出れば良かったものが、最近利用規約が変更され、アイルランド法人(在ダブリン)に申し立てなければならなくなりました。

 

 日本人相手に日本語でサービス展開し、日本に支社のあるTwitter社が、日本語でのサービス内容やコンフリクトを海外法人を相手にして法的措置しなければ損害が救済されないこと、日本語での文脈を明らかに理解していない、単語ベースと見られる自動検知でアカウントの凍結や機能制限がなされることは、さすがにプラットフォーム事業者としてTwitter社は如何なものかと思います。

 

 別に高木浩光先生も私もパルチザンやフーリガンの類ではなく、極めて穏当かつ紳士的に社会生活を送る健全で生産的な日本人に過ぎないことはご理解いただきつつ状況について皆様にも知っていただきたく、Twitter社には日本語でのサービス運用において改善をお願いしたいと願う次第でございます。

山本一郎 - Facebook

https://www.facebook.com/ichiro.yamamoto

イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社

https://i--p.com/

やまもといちろうの『人間迷路』 | The Book Project 夜間飛行

http://yakan-hiko.com/kirik.html


 引き続き、よろしくお願い申し上げます。


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みんな大好きカドカワ代表取締役、ドワンゴ取締役CTOの川上量生さんが、先の政府・知財本部の海賊版対策に関する検討会議に面白意見書を出していると聞いて、見物していました。

SimilarWeb の数値は本当に信用できないか?
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/kaizoku/dai9/siryou7.pdf 
「インターネット上の海賊版対策に関する検討会議」 中間まとめ(案)(2018 年 10 月 15 日)への意見書
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/kaizoku/dai9/siryou8.pdf

 何ですか、これは。

 JAIPAの立石聡明さんが「何その緩い推定被害額の根拠は?」という意見書を前回出しておられるわけですが、川上量生さんの話は伝聞を元にして「そうじゃねーよ!」と言ってるだけです。

被害額等の算定に利用する データについて 
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2018/kaizoku/dai8/siryou3.pdf

 SimilarWebの数値が信用できるかどうかというのは、単純に、海賊版サイトを訪れたであろう人たちの合算PVに漫画などの販売単価を掛け算しただけの被害金額予想3,000億円という途方もない金額の根拠の一部でしかなく、こんなものを堂々と意見書として提出する「有識者」がいるというのは驚きです。

 川上量生さん、どういうことなんでしょう。

 しかも、「SimilarWebは正しいよ」という論拠が他のサイトからのコピペで、さらに「また他に引用されている日本語の個人ブログ記事をみても、概ね正確な解析結果が出るとの評価も多いと書いているものもある」と川上量生さんは書かれています。他人のサイトにそう書かれているから正しいのだ、と川上量生さんが主張するのならば、誰かが「川上量生さんは途方もなく馬鹿なことを書く人だ」と酷評されればそれを意見書にして「川上量生さんはこんな馬鹿な主張をするような人だそうです」と提出することもできてしまいます。

 百歩譲ってSimilar Webが正しい数値を出していると証明したいのであれば、数多あるカドカワグループ(ニコニコ動画を含む)のサーバーログから得られる正規のPV数、UU数などエンゲージメントに関する数字と、Similar Webが弾き出した推定訪問者数との比較をすれば一発だろうと思うわけですよ、川上量生さん。

 実際、川上量生さんの手掛けたニコニコ動画のSimilar Webのスコアで見れば、エンゲージメントが8%ぐらい下落している素敵なニコニコ動画に関する状況が読み解けるわけですが、この悲惨なサイトアクセスの状況は正しいんでしょうか川上量生さん。

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 で、今回の10月15日に限って何でこんなネタを川上量生さんがこさえているんだという話ですが、つまりはブロッキングに関する議論はあったとタスクフォースの報告書で両論併記することが最終目標なのでしょう。なので、被害額の算定をする掛け算のかたっぽであるSimilar Webの数字は正しいのだ、だから3,000億円の被害総額は間違いないのだ、と主張して、だからここまでの被害金額の救済を行うためのブロッキングは違法性を阻却する緊急避難にあたるのだ、と川上量生さんは言いたいじゃないかと思います。

 しかしながら、すでに多くの皆さんが指摘している通り、そもそも日本のコミック市場というのは電子書籍も全部合わせてせいぜい4,400億円しかないわけです。本当に海賊版サイトで3,000億円もの損害が与えられたのだとするならば、川上量生さんのカドカワだけでなく出版各社のまんが部門は壊滅的になり消し炭同然になっているはずです。

2016年のコミック(紙+電子)市場を発表しました
https://www.ajpea.or.jp/information/20170224/index.html




 一方で、18年6月22日にニコニコ動画内で行われた本件議論では、川上量生さんは被害額3,000億円について、当時は重要性を認識していなかったのか、出版各社が被害額を足並み揃えて提示することになるという見通しを示していました。Similar Webのシの字も喋っていません。当たり前ですよね、そのときはそんな重要な論拠になるとは思っていなかったんでしょうから、川上量生さんは。

 おそらく今後は閣法(内閣提出)でブロッキングの法制化を無理筋で進めるかどうかという政治的な問題へと移行していきます。もちろん、みんなで仲良く違憲訴訟などもしつつ最高裁まで争っていくことになると思いますし、罰則規定のある業法に条文が加わらない限り、新しくできるブロッキング法が施行されても対抗法規がある以上どの通信事業者も要請があってもブロッキング実施には踏み切らないでしょう。当たり前ですよね、通信事業法で過誤逸脱があった場合、違法性を指摘され罪を問われるのは通信事業者という法人ではなくブロッキングを実施した技術者が罪を被ることになるわけですから。

 川上量生さんはイエスマンに囲まれて周辺が見えなくなっているのかもしれませんが、そろそろちゃんと川上量生さんは服を着たほうがいいと思います。

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 個人的には社会保障費増大への政策的対処は必要で、国庫負担も重くなっていく中で歳入を増やさなければならないという意見も理解できるので、大いに国会で「増税に賛成だ」「反対だ」と議論してほしいと願っているところです。消費税増税やむなし、と安易に言えないのは、消費税を増税したところで景気が悪くなって思ったような歳入も得られなければ増税の意味はなく国民の重税感、負担だけが募ってしまう怖れがあるからです。政府筋の方が「消費税2%増税で2兆円増収」と簡単に計算しているのを見ると、それは計算のそもそも論からして無理筋なんじゃないのと思うわけですよ。

 ただ、社会保障費が増大しているので、これの削減と併せて、国庫に入るカネを増やしたいという話は分かります。まあ、国際公約ではあるので、一応は守ろうとするのは是だと思います、消費税に限らずいうならば。

 そのうえで、何ですか、あの軽減税率の次第は。政府の要請で財務省が頭をひねった結果だとは思いますが、マスコミ(新聞社など)への軽減税率適用のお陰で本来ならもっとわいわい騒ぐべきマスコミが消費税に関しては静かですし、コンビニにいたってはイートイン話も出てきてしまったので訳が分かりません。コンビニで買って帰るのは軽減税率適用で8%、イートインで喰って買えれば10%とかいう謎の展開になっており、財務省の苦肉の策とはいえ政府の無理筋はどうにかしろと言いたい気分もないでもありません。マスコミが独饅頭喰ったと言われる所以はこの辺じゃないでしょうか、本来は議論喚起の大キャンペーンをやるべきはずなのに。

 それもこれも、公明党と創価学会の「夫婦間の価値観の不一致」みたいなものが原因だと自民党も官僚も口をそろえるわけですが、軽減税率がコスト高の政策であることは間違いないので、公明党ならずとも、もう少しまともな創価学会の上の人が「もっとエレガントに、合理的にやりましょうよ」と一言言えばいいのにと思います。創価学会の中のことが分からないので、何とも言えませんが。でも、安保法制では本来なら「戦争法案だ」といって反対に回りそうな創価学会をどうにか宥め、また今回の沖縄県知事選では公明党もかなり頑張った中での敗戦ですし、大変微妙な情勢ですから公明党も創価学会も「与党にいる意味」を冷静に考え、模索した結果がこれだった、とするならば、もう少しやりようはあったのではないかと思います。

 てなことで、与党の中の良心とも言える公明党ですらこうですから、もはや歯止めをかけられるのは野党しかない… 割に、どうにも野党が静かなのです。いや、騒ごうとしているのかもしれませんが、メディアの論調が低調なこともあって、あんまり声が聞こえない。立憲民主党もモリカケやるぞとは聴こえてますけどそれ以上の話には伝わらず、国民民主党も夏が終わってミンミン言われなくて良くなったはずなのに何かを言おうという雰囲気が感じられません。何故なんだろう。

 ここで国民が理解しやすいように筋道立てて「消費税増税は反対だ」または「その軽減税率は意味が不明だ」などときちんと主張してくれれば、ああ一応は野党も財政や社会保障や増税や景気や軽減税率問題について理解があるのだな、と思う浮動層もいるでしょう。少なくとも、国民の中で政治に関心のない中間層ですら、半分以上が老いも若きも明確に消費税増税反対なのはどの数字を見てもはっきりと分かっているはずなのです。それでも自民党が公明党引き連れて不思議な軽減税率すら「やろう」と言って5年かけて増税に舵を切っているわけですから、野党はそこを突かないと本当は駄目なんだと思います。

 でもなぜ野党がここまで存在感がないのか。それは立憲民主党の支持率が5%切りそうとか、共産党も党勢が衰亡していてワンイシュー立ち上げる気力を振り絞らないと前に進めないとか、そういう内側の事情だけじゃだめだと思うんですよね。中間派・中道の人たちが「おっ、野党の言うことももっともやんけ」と注目するチャンスですよ、いまは。

 なんでこんなに静かなんだろう、どうしてメディアパワー使って攻めていかないんだろう、少なくとも呼び水になるような議論はどんどんシンポジウムやって、デモ打って、マスコミを炊き付けて、ノボリ立てつつ盛大にやればいいんじゃないかと思うんですけどね。何かできない理由があるんでしょうか、新聞社の軽減税率適用でマスコミが腰砕けになっていること以外に。


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 このところご体調が芳しくない状態の続いておられた佐々淳行さんが亡くなられまして、魂の平安を心より祈念する次第です。

 大変ご自身にもご家族にも知人友人にも厳しい方でありまして、快活なお話を笑いながらされる一方、叱咤激励… と申し上げるにはまあいろいろと踏み込んだお話もたくさん頂戴する感じではございました。

 思い返せば、慶應義塾大学に在学中、佐々さんの授業を取っている間に、ある案件で塾生を集めてほしいと頼まれてから24年に渡るご厚誼を賜ったのは私自身としても幸甚の至りです。穏やかな表情の中にも、世の中の至らぬ点を冷静に見つめ、こうでなければならない日本、それに対して力を尽くせない日本人の体たらくというお話を何度も、何度もされました。「お前は警察組織をもっと理解しろ」とか「新しい時代の警邏について考えを述べろ」などなど、まあ不思議な注文も頂戴しつつ、それでいて、かなり率直に、日本の置かれた現状や安全保障については最後の最後まで明哲で開明的な議論を先導されようとしていました。

 ジャーナリストの藤田正美さんも交えてのネット論壇を作りたいというご希望もあり、BLOGOSで動画をやったり、その後、某支援団体との定期的な会合もご一緒させていただき、佐々さんから見て若い世代はもっと右も左を見た堂々たる真ん中を歩くべきというご意見をいまだ胸に抱いております。

国内海外安全保障なう 第三回 「日本は領土・領海を守れるのか」
https://www.youtube.com/watch?v=LIX1Ina8wl4

 いろんなお話を聞かせていただきましたし、たくさん怒られもしました。まあ、時事問題はことさらご関心を持ち続けられ、それに対して人に言えない率直な評価をお話しいただいて、これはどう咀嚼したものか悩むことも数え切れない回数ありつつ、とはいえ、天下国家日本かくあるべし、一方で、国民の間での議論は口を差し挟むことなく細大漏らさず聞き届けよとのお話は私には大変に重いものでございました。

 ちょっと「安らかにお休みください」と私の口から申し上げるには、なかなか安心して送り出せなかった私らの世代のだらしなさを噛み締める部分はございますが、車椅子のうえで「年相応。老病の老病たる所以だよ」とご自身の病状をも笑い飛ばす佐々さんの心の太さを思い至す次第です。

 「喧嘩師の風格をもっと磨きなさい」「権力者に迎合しない、公平な態度が山本君の唯一の持ち味だ」と、何度も何度も言われまして、なんかこう、佐々さんにとっては至らぬ存在でしか自分はないのだなという反省もいまなお深く感じております。

 ご厚誼を賜り、本当にありがとうございました。


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