月別アーカイブ / 2018年03月

海外にいたのでリアルタイムでは観ていないんですが、報道を見る限り4時間のロングラン証人喚問は与野党どちらにとっても実りのあるものとは思えなかったんですよ。

【佐川氏証人喚問】不祥事の出口見えず財務省沈痛「これからどうなる…」「真相は藪の中」 - 産経ニュース
http://www.sankei.com/affairs/news/180328/afr1803280001-n1.html
佐川氏「誰のために仕事してんだ」 部下を叱った過去も:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASL3W5JFJL3WUTIL055.html

[引用]

いい加減な仕事をした部下に「誰のために仕事しているんだ。俺じゃなくて納税者のためだろう」と叱る姿を覚えている職員もいる。

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 もちろん、公文書の改竄(書き換え)は問題が大きいでしょうし、国会の答弁の辻褄を合わせるために細工を指示したのが事実なのであれば、それは刑事訴追も含めて対応が求められることに変わりはないでしょう。

 ただ、将来を嘱望され、良い大学に入り高級官僚になって人生を霞が関で国家や社会に捧げた結果が、一風変わった学校法人の土地取引の値引き云々で大きく取り沙汰されて、人生を滅茶苦茶にされてしまうというのは如何なものかと思うのですよ。また、この問題に関しては財務省が組織として役人を守り切れず自殺者まで出してしまったわけでして、もちろん重大な問題ではあるのだろうけどそこまでの話なのか、と感じてしまいます。

 ましてや、刑事訴追を理由とする供述拒否権を認める憲法38条1項「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」ことも忘れて証言拒否に文句を言う筋もあり、我が国の人権はどこに行ってしまったのか不思議に思う内容もありました。

 いずれにせよ、ある意味で国民のガス抜きショーとして佐川さんの証人喚問が取り沙汰され国民の関心事になってしまったというのはどうもなあと感じる部分もあり、普通に目の前の仕事に真面目に取り組んでいるはずの財務省があたかも国民にとって悪党の組織のように扱われ、犯罪者も同然にメディアで報じられるのもいかがなものかと感じるわけであります。

 和田政宗さんも「財務省の陰謀論」を国会で語り、財務大臣の麻生太郎さんにレベルの低い質問と切り捨てられているのに開き直ったような物言いをしている一方、山本太郎さんも安倍晋三総理に「いつ辞めていただけるんですか」と迫ったり、まあもう少しどうにかならないのかと思うような事態が連発しているのが気になります。

麻生氏、自民議員に「レベル低い質問」と厳しく批判 https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201803210000195.html
【炎上】山本太郎「総理、いつ辞めて頂けるんですか?」が失礼すぎる | netgeek
http://netgeek.biz/archives/115378

 ノイジーマイノリティが右と左に分かれて面白おかしく政治ショーをやっているだけではさすがにマズいわけで、幕の引き方も含めてそろそろ真面目に考えるべき状況になってきたのではないでしょうか。

 あと、いままで霞が関の官僚各氏も、メディアが面白おかしく書き綴る各種問題について、きちんと反論したり抗議したり、場合によっては名誉棄損も含めた法的措置を取ってもおかしくないものは放置しないほうが良いと感じます。ガセネタをメディアが書いても役所が黙っているからこそ袋叩きにしても大丈夫と思っているのかもしれませんし、そのくらい言いがかりのような内容でも甘受し続ける必要もなくなっているように思います。

 ただでさえ、官公庁勤めは魅力がなくなって日本のトップの大学からの志望者数が減ってきている現実がある中で、佐川さんのような人が弾除けにされるようでは未来がないんじゃないでしょうか。優秀な人が高級官僚を目指せない状況では、国家の未来が暗くなるのではないかと感じてしまった証人喚問でした。


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 毎年恒例の会員さん追加募集を始めました。

情報経営グループ『漆黒と灯火』
https://yakan-hiko.com/meeting/yamamoto.html

 少し前から募集開始していたのですが、蓋を開けてみたら海外在住の日本人投資家の方ばっかりだったので、仮想通貨方面やICT関連の事業投資の皆さんが増え行く状況なのかなと思いつつ…。

 今月のゲストがネットメディアの新星BuzzFeed Japan編集長の古田大輔さん、来月4月のゲストがテックビューロの代表取締役・朝山貴生さんを予定しております。

 投資関連、時事全般から社会保障、技術動向、メディアの動き、安全保障といった方面にご関心のある方は是非どうぞ。


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東洋経済が大変微妙な記事を配信していて、その道に詳しい人からほぼ全否定されるような事態になっており、香ばしい匂いが漂ってきました。書き手は「富増章成・学びエイド鉄人講師」さんだそうです。

(魚拓)恐るべき大器晩成「北条早雲のすごい生き様」
https://megalodon.jp/2018-0304-1351-03/toyokeizai.net/articles/-/210309

 Twitterでもコメント欄でも「恐るべき間違いだらけの記事」とか「最初から最後まですべてが間違っている記事というのも凄い」とまで酷評されていて、なかなか大変だなと思うわけであります。

 で、先日その東洋経済オンラインの編集長山田俊浩さんも、インターネットメディア協会の発起人に名前を連ねておられ、ネットでの記事の信頼性向上のために頑張ろうとしておられたのが印象的です。なぜかこの団体が「フェイクニュース撲滅を目指している」というフェイクニュースが流通した、ってことらしいんですが、世の中いろいろむつかしいですね。

「フェイクニュース対策のための団体設立」が非常に何である件で - やまもといちろう 公式ブログ https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13175249.html
インターネットメディア協会に、賛成する人も反対する人も知っておくべきこと https://www.buzzfeed.com/jp/daisukefuruta/media-and-journalism-1

 これ、思うんですけど、時事ネタであれ今回のような歴史であれ、あるいは科学、芸術文化からオタク界隈にいたるまで、報じる側のメディアが書き手の専門性を信頼し、デスク業務が事実確認をしないで掲載する事例ってとても多いと感じるんですよ。

 「事実関係ははっきりしていないけど報じる価値のあるものを速報で流すことができるのがネットニュース媒体の売り」であり、速報性で新聞やテレビよりも第一報を流しうる存在として既存メディアを脅かしてきたという側面は間違いないと思うのです。また、商業ベースにはなかなか乗らないようなカルトだけど必要な情報をネットで安価に流すことができるのでネットには玉石混交だけど魅力的な情報が乱舞しているのも事実です。

 そうなると、ネットニュースを媒体として流し、広告を掲載したりセミナーをやって帳尻を合わせているネットニュース媒体社各社は、他よりも優れた媒体力を確保するためにも、速報性のある、刺激的な記事を媒体名という看板に括り付けてネットに放流するためのシステムの巧拙が戦場だ、という話になります。

 そうなると、東洋経済の問題というよりは、記事の校閲をかけたり事実確認の結果、GO/NGを決めるデスク業務がいかに重要か、というあたりじゃないのかなあと思うわけであります。逆に、一日何十本もニュース記事を配信しているメディアが、配信する記事一本一本で事実確認していたら割に合わないだろうとか、編集者の目を通してチェックすることはその編集者があらゆるジャンルに精通していなければならなくなってしまう状況を考える必要があるであろう、と。

 ましてや、今回のような歴史記事に関しては、ある程度常識的な学説を知っている人であれば記事の内容がトンデモに近いことは見抜くことができたであろうし、また編集部がそれなりに著書を出している富増章成さんの専門性に疑問を持つことができるかどうかは試されるところであろうし、むつかしいテーマだと思うんですよ。

 反HPVワクチンやEM菌に関してもいまだにまともに取り上げるメディアがあったり、速報性が必要ないところでもイデオロギーや「べき論」も介在するところでフェイクニュース対策や物事の真贋を見極めるリテラシーが必要と説いたところでどこまできちんとできるようになるんだろうか、と思うわけであります。

 東洋経済もまさかこんなところに地雷が埋まっているとは思っていなかったかもしれませんが、さすがに誤報に近い歴史記事に広告つけてそのまま垂れ流すわけにもいかないでしょうし、どうするんですかねえ… スマホ片手に踏ん張りながら推移を見守りたいと思います。


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