月別アーカイブ / 2017年10月

 衆議院解散総選挙が終わり、一週間ほど経過して各シンクタンクや日本経済に縁の深いファンドが「今回の選挙での有権者の意向は具体的に何だったのか」という探りを入れ始めておるわけですが、選挙の是非はまた別の機会でやるとして、今回の選挙では前回に引き続き「お前らは何を参考に候補者選びをしましたか」ということを問うたわけですよ。


 私も選挙直後の状況について産経新聞に記事を寄せましたが、今回ほど国民の生活に直接関係するはずの各種政策が有権者に届いていない選挙も珍しいなと思うわけですよ。でも、産経に限らず新聞はそれなりに紙面を割いて政策論争や各政党の立ち位置、考え方の違いなんてのは頑張って報じていたわけで、何でこんなに政策論争が有権者に浸透しなかったのか、不思議でしょうがなく思っておったわけです。


【新聞に喝!】面白かったが政策論争に欠けた衆院選…メディアも自省を ブロガー、投資家・山本一郎 - 産経ニュース http://www.sankei.com/column/news/171029/clm1710290007-n1.html


 結論から言うと、20代、30代は一位二位が「テレビ(20代:32.4%)」「ネット(同:28.5%)」となり、そろそろ次の選挙ではテレビがネットに並ばれるのかなという状況になりそうですけれども、一番おっかないのは40代50代もそろそろテレビや新聞を参考にした有権者が速いペースで減ってきていることなんですよね。


 それも、新聞はびっくりするほど読まれなくなりました。これは、新聞紙を読んでいるという物理的な接触が壊滅的になってきただけでなく、ニュースサイトなどで新聞社の記事を読み、参考にしているという有権者も40代男性で6割を切りました。下手をすると、新聞社から出た記事と分からずタイトルだけ流し読みしているケースも数多く存在する以上、本当に読まれていない可能性さえも感じます。


 また、媒体別のデータで言うと、以前は読売と朝日が上位にあり、以下日経毎日産経と並ぶ「参考にする新聞紙」という具体名は、いまや産経と毎日がワンツーになり、読売朝日が低迷を始めました。これは、悪名高き「続きは登録して読む」「有料会員のみこちらへ」というネット戦略であり、結果として時事通信、共同通信のヘッドラインのほうがこれらの読売のまともな解説記事より影響力を持ってしまった、ということでもあります。


 ビジネスですから、有料登録した人にしか記事を読ませたくないというのは新聞社の戦略としては分かりますし、そうせざるをえないのだろうとも思います。一方で、これらの一連のマネタイズ策がネット上でのブランドイメージを逆に毀損し、産経よりも読まれない朝日新聞というビビる状況を作ったのは紛れもない事実でありまして、ワイドショーが50代60代主婦に与える心理的影響と並んで若者にまったく読まれなくなった新聞が死んでいく姿を現在進行形で見ることになるわけであります。


 私は2年前にこのような記事を書いたわけなんですが、皮肉なことに2年を経て本当に不可逆なぐらいに新聞記事が他のあらゆる分野の記事に埋没し、読まれなくなってしまった状況になってしまったということになります。これは厳しい。


「ヤフージャパン一人勝ち」と「報道記事の買い叩き」がステマ横行の原因(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20151001-00050069/


 つまりは、新聞紙を各家庭に配って月額何千円かもらうというビジネスモデルがだめになったのであって、新聞記事の品質や、それを担う新聞記者に競争力がなくなったわけではない、というのは正しい考察だといまでも私は思っています。つまり、新聞社は人なり、人が作るものである以上、メディアは人が大事だということに他なりません。


 しかしながら、昨今の選挙に関するアフターフォロー的な調査結果を見ると、新聞社は大切なはずの新聞記者ごとブランドが腐り、大事なところに記事を掲示することができず読まれなくなってきているという風にもいえます。これは不可逆的に厳しいところですし、もう駄目なんじゃないかとすら思う部分です。


 新聞社も各社生き残り方を模索しているとは思いますが、テレビ局同様ほとんど不動産屋になっているところもあります。取材して記事を頑張って書いて、なお読まれず金を取れなくてお荷物になる、というのは非常に残念なことですし、どうにかしないといけないとは皆さんお考えだと思うので、うまくこの辺のブレークスルーがあればいいのに、と強く思うんですけどね。


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 紛れもなく良書なのですが、最近思うことあって読み直しました。子供を持つ親としてどう、というのもあるんですが、自分の人生で30年前の学生時代を思い返して、いろいろと胸をかきむしられる気持ちになったもので。

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 本書は単に部活動は教師の負担にばかりなるからやめちまえよ、というような悪い部分を淡々と書き綴ったものではありません。まあ、たしかに「部活動の闇」的な言及もありますけど、ただそれは著者の内田さんなりの現状認識であって、そこから一歩踏み込んで、学校教育を再定義し、さらに部活動の重要さや意味について吟味し、問題点を明らかにした上で具体的な処方箋まで書いてあります。

 もちろん、それはいきなりは変えられない、綺麗事なんじゃないかという話もあるでしょう。だからこそ、学校と家庭と地域のあり方はもっときちんと考えていく必要があります。家庭からすれば、共働きだと特に学校教育への依存度は高くならざるを得ず、子供を学校に預けているのだから学校がここまで面倒を見てくれて当然だ、という話にやはりなりやすい。学校側も生徒を受け入れるからにはこういう指導を授業だけでなく課外、部活動においてもやりましょうということで、どんどん子供の人生における学校の役割が拡大(というか、肥大)していきます。

 子供の側も、本書で繰り返し指摘されているとおり、何かに取り組む、学業以外の価値を見出す、一生涯付き合える友人を見つけ、目標に向かって努力する… 様々なメリットが有る一方、それを支える教師の役割も責任も重大になりすぎているというのは事実でありましょう。

 思い返せば、30年前は私は数学研究会やらバレーボール部やら草野球やらに精を出していたわけですけど、実際その後大人になって、部活動が私の行動に与えている影響はとても大きいのは間違いありません。楽しいことも嫌なこともあったけど、学校と家庭とも違う、サードプレイス的なゆとりを持てたのは間違いなくこの手の課外活動があったからです。

 その後、私も学校教育というフォーマットは大学卒業後四半世紀そのままになっているわけで、いざ子供の運動会とか学園祭とかに足を向けてみると、やっぱり時代にそって学校もどんどん変わっていっているというのが分かるのです。まず何よりも先生は生徒を殴っていない。素晴らしいことだと思うんですよね。

 そして、アクティブ・ラーニングだ、プログラミング教育だ、英語指導だと新しいカリキュラムがどんどん組み入れられ、大学入試も改革されていくなかで、やはり小学校中学校高校も今日的なあり方とは何かを考え、再定義されていく必要があるのでしょう。




 学校が問い直されれば、当然部活動も、教師の重責も考えるきっかけになるわけで、このテーマで最後まで突っ走った内田さんも、それで良しとした東洋館出版も偉いと思います。人間のいちばん大事な若い頃という時間を担う学校の責任もやりがいもちゃんと睨んだ上で、具体的な対応策も踏まえて議論を整理できているという点で、この本はむしろ読む人の人生を見返すためのツールとして役に立つんじゃないかと思います。


 「お前じゃねえよ」って声が聞こえてきそうですが、希望の党の比例東京ブロックから上杉隆が出馬するのではないかという話が出ていて騒然としております。

 いろんな意味で捨て身なんでしょうか、希望の党。どうせやるからには華々しくやろうという気持ちは分からないでもないですが、正座して小池百合子大先生のご親攻たる電撃出馬会見を待っていたら、上杉隆が出てくるなんてあんまりです。

 もちろん、小選挙区の比例代表重複立候補をリスト的に優先するのが定石でしょう。現状で議席17の比例東京で希望の党が最大で確保する7議席でみたときはかなりの確率で赤絨毯を踏む上杉隆を拝めるかもしれません。逆に、このまま小池百合子女史が出馬せずとなれば、下手すると3議席4議席しか比例代表で確保できないぞということで比例復活する小選挙区勢がリストの上の方にあれば上杉隆はカカシで終わるわけであります。

 なんかもう、希望の党も大変なことになってきました。
 これは小池百合子女史が都知事の職を投げ打って衆院選立候補の道筋をつけ、堂々と首班指名を受けて政権交代を目指すしかないんじゃないかと思うんですけどね。

 ここで小池女史が変に日和って、獲得議席が3桁切って改選前勢力さえも確保できないとかいう竜頭蛇尾っぽい流れにならないよう、いまのうちに希望の党はアゴラ編集長にして平成が生んだ最高峰の天才軍師で百戦百勝の実績を誇る新田哲史を選挙参謀最高顧問に迎えて日本全国を一気に制圧するぐらいの勢いで頑張っていただきたいと強く願うところでございます。

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 本人の自業自得もありつつ、小池百合子女史は自分の周りにちゃんと汗をかいたり、言いにくいことを組織に伝えたり、本人の代わりに代弁してくれるまともな人を一人も置いておかないので、結果として周囲が状況に立ち往生してしまうわけですよ。

 小池百合子女史は実務の「じ」もやらない人だと弁えて、肩代わりしてくれる番頭がどうしても必要であって、もちろん目立たない人で良いので地道にやってくれる信頼できる同志が一人でも二人でもいれば、随分違ったと思うんですよ。

 でも、周りにある意味でイエスマンを揃えたがるし、トップ自らが独断専行をしてしまうので、茶坊主みたいなのか、役立たずのいずれかしか組織に残らないようになっている。これは都民にとっても悲劇であるし、都庁、都民ファースト、希望の党、どこでも同じ問題を起こしているわけです。

 それは、防衛省の大臣という重要閣僚が転がり込んできて、勝手に事務次官クビにして、当時の官房長官であった塩崎恭久さんという切れ者の瞬間湯沸かし器と喧嘩して更迭された事例ひとつとっても「この人はイメージで物事を進めて、着地点を決められないうえに人に相談できないのだ」ということは良く分かります。だからこそ、身を捨て都知事選に転出できるような勝負勘はあっても党内で権力を掌握し上を目指すなんてことは全くできない人なので、今回のように流れを作って一発勝負に挑むことでしか野望を達成できないのでしょう。

 いちど、月が欠けると速いのです。自分で自分の出馬も焦らしているから、テレビ広告の手配も進まず、おそらく公示後は山ほどネット動画が流れます。そのカネだって、立候補した人からの上納金ですけど、そういうお金で作成され、ベクトル経由で押さえられた広告枠で流される、小池百合子の小池百合子による小池百合子のためのイメージ動画です。

 それでも、こうなった以上は頑張らざるを得ません。候補者一人ひとりにそこまでの罪はありませんし、裏方や会計、法務をやっている人たちは真面目にどうにか状況を改善しようと頑張っている人たちでしょうし、善戦を期待したいです。判断するのは有権者ですから、日本にとって良い形で、最善の結果が常に出ると信じて、政治報道を見ていきたいと思う次第です。

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