月別アーカイブ / 2017年06月

 otsune神とヨッピーさんの間の論争を見ていて、メディアのデータ配信を考えるサイドからすると一番の本質は「タイトルに【PR】や【広告】と入れるとアクセスが大きく減る(サイトパワーとタイトルのキーワードから予想されるオーガニックな流入が激減する)」ことにあります。

 LINEや個人的なSNSで大活躍している田端信太郎さんも書いていますが、ライフ系の記事では如実にアクセス数が予想より6割以上減少するのがタイトルに「広告」が入った場合です。そもそも、LINE NEWSであれYahoo!newsであれ、広告欄のタップ率は常に課題であって、よくコンテンツマーケティングで言われる「面白いコンテンツならば広告でも読まれる」という神話は根底から瓦解しています。

オーケー、認めよう。広告はもはや「嫌われもの」なのだ — LINE 田端信太郎 https://www.advertimes.com/20170515/article250119/

 まあ、みんな広告は読みたくないのです。

 だからこそ、ネットメディア各社は、なるだけ広告未表記でいきたいという強いモチベーションを持ちます。記事本文を読まれたいから、タイトルに広告と入れたくないのです。

 それでも、広告を読ませようとすればステルスマーケティングをして、実際には広告であるのに広告と表示しないで読ませるやり方については、過去に私もかなり取り上げました。また、ネット上のコミュニケーションに関する業界団体であるJIAAでも、ネットと広告の問題はかなり議論になっています。

そもそもステマって、なんでダメなんですか?/ステマ問題を厳しく追及している山本一郎さんに聞いてきた(前編) | Web担当者Forum http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2016/01/21/21609 
ネイティブ広告に関するガイドラインを策定
http://www.jiaa.org/release/release_nativead_150318.html

 しかしながら、現実には動画サイトやinstagramなどリッチ系もSNSも広告が事実上蔓延していて、ブログ開設者が個人的な所得にするために広告を紛れ込ませるというレベルを超えてきました。戦略PR会社やネット広告代理店が一体となって、広告主からお金が振り込まれているのに通常の記事であるかのように広告が流通してしまう問題については、米FTCが警告する事態になりました。

人気絶頂のインスタグラム 「ステマや広告過剰」批判も  :日本経済新聞 http://www.nikkei.com/article/DGXKZO99184480R00C16A4H56A00/
「ステマはだめ!」、InstagramインフルエンサーにFTCが警告:ITpro http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/042101236/
YouTuberのステマのギャラ相場をシバターが暴露
http://xn--h9j4axdc40dcb.net/youtuber-stealthmarketing/

 実際に、YouTubeの「特別な関係」とは、提供や広告表記をある程度(自粛) とはいえ、今後はもっと適正な表記を行うよう行政が動くことは考えられなくもありません。ただ、日本の場合、公正取引委員会や消費者庁も問題を認識はしているようですが、具体的な問題解決への介入は実質的にはまだで、具体的な被害者の出ることの少ない広告未表記の問題で警察庁・警視庁が動くことは考えづらいというのが実情です。

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 やはり、アメリカFTCのように、フェアトレードというビジネス倫理の世界からこの問題について強く問題意識を持つ機関が整理していく以外ないのではないかと思います。したがって、私はタイトルに広告表記とするかについては「広告表記したほうが読み手に対して親切(メディアを運営する側が、読み手の『広告なら読みたくない』という心情に誠実)」だと考えています。細やかなレギュレーションについては、JIAAのサイトでガイドラインを読んでいただければほとんど理解できると思います。

 この問題をより悪くするのは、Googleがすでに発表しているように、悪質な広告を表示しない方法について具体的な動きが出てきていることです。

Google、悪質広告のブロック機能をChromeに搭載へ http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/481709/060600330/ 

 もちろん、Googleが自社ブラウザで「悪質だ」と判断した広告をブロックすることは福音ではあります。一方で、Google「が」この広告は悪質だと判断する方法は開示されないでしょうから、検索エンジンの上位表示のロジックをハックしてSEOと称してサービス化したり、アプリランキングを不正なブーストで操作しようとするようなビジネスは横行するでしょう。また、広告なのか、広告ではないのか微妙な線を突くネイティブ広告も増えていくと思われます。

 そして、残念ながらGoogleの目指す世界線があるのだとすると、ヨッピーさんの意見は通りません。仔細は省きますが、いまはともかく、ゆくゆくはそのようなコンテンツは「悪質だ」と判断されることでしょう。ただ、ヨッピーさんの問題意識や主張も正当なものであって、ただネット系大手企業の目指す未来とは相いれない部分がある、ということになります。

 究極には、そういうインターネットを利用するにあたって「何が有害か、悪質か」をGoogleをはじめネット企業が勝手に決めていいのか、もう少し民主的な方法はないのかという問題意識は持たざるを得ません。ユーザーが「広告なら見たくない」という考えが強いからこそ、企業は対策しているだけなのですが、一方で、企業とネット閲覧者を結ぶコミュニケーションの形のひとつが広告である以上、企業はネット閲覧者とリレーションシップを勝手に結ぶな、結びたければGoogleやFaceBookやAppleにお布施を払うのだ、という話になっていきます。

 私もネット古参兵のひとりとして、Otsune神とヨッピーさんの話は興味深く読んでおりますが、まあ結論は出ない前提で考えを整理するためにも一通り目を通すことをお薦めします。


先日、研究所の流れでメディア企業の実例研究会に呼ばれて講師として喋り、終わってから「ネットや映像に関するワークショップ」みたいなのに参加したところ、変わった記事が紹介されていました。

第20回「若者のテレビ離れはない」(魚拓)
http://megalodon.jp/2017-0511-2121-15/social-trend.jp/35104/

 あえて魚拓を貼るわけなんですが、指南役さんという元ホイチョイ方面と思われる御仁が書いてらした記事です。

 たぶん、指南役さんはエムデータの基礎数字はおろか、映像配信サービスのログサマリーも読んでないからこそ、堂々と「若者はテレビを観ている」と言えると思うんですよ。まあ、私も数字でしか見てないので、じゃあ具体的にどの番組やカテゴリーから若者が見なくなっているかは体感がないわけですが。

 また、動画サイトでの閲覧が増えている理由として「大学生の必需品はWiMAX」とか書いちゃって、おそらくはUQが大量に広告を投下した時期を勘違いして「若者のテレビ離れ」と被せてしまったので、データ解析を学習途上の若い社員からもダメ出しをされておりました。

契約者数
http://www.uqwimax.jp/annai/kokai/keiyakusya/
過去分
http://www.uqwimax.jp/annai/files/kokai_subscriber.pdf

 まあ、一事が万事こんな感じなので、おそらくは感覚で現状を理解し、論考し、対策を立てるタイプの古い世代のテレビマンはだいたい同じ認識なんだろうかと感じます。いま「会員制のネット動画の主たる客層は若者ではなく30代女性ですよ」と指摘することの意味は特になく、むしろいまの売れるコンテンツ作りは共感を呼ぶための”ターゲット世代”とか”属性”といったものを絞れば絞るほど刺さらなくなる現象ってのはあると思うんですよ。

 例えば、広告主である食品会社(別に特定のどこということではない)が30代独身男性に向けて手軽に家で食べられる商品を売り出したい、だからそういう世代に刺さるコンテンツを作っている番組のスポンサードについて… みたいな売り方が現代で通用しているか、という話です。ビールでも自動車でもいいけど、どの属性の誰々に向けたメッセージをというと、どうしてもコンテンツやキャスト主導になりやすい。でも、男性に向けて作ったコンテンツが肝心の男性から見向きもされないとか、EXILE出しておけばEXILE好きは映画館に足を運ぶだろうと思ったら微妙な出足だったとかたくさん起きるわけです。

 そうなると、コンテンツの作り手や広告主が思っている「若者」というのは主語がでかすぎてまったくスコープにならないだけでなく、ジャンルの絞り込みにすら役立たないということが起きることになります。まあ、実際にそうなのだから仕方がないとしか言えないんですけど、一番動画サイトにカネを払う40代男性、30代男女、ここに向けて出すコンテンツを一番カネ払って見たのが50代男性だった、といったとき、年代で区切ることにどういう意味があるのかを考え直す必要があるんですよね。

 だからこそ、キャストの情報で「このタレントは誰々に人気がある」というものがいままでは視聴数予測では王道だったのが、いざネット動画サービスが興隆してみるとあんまり影響してなかった、アウトカムに結びつかなかったということは往々にしておきます。これは仕方のないことです。でも、じゃあどこに届いたのかを厳密に見てみると、実は年齢横断的な恋愛映画のマーケットがあったとか、口コミの主体が若い女性のInstagramではなく中年のやってるFaceBookだったとか、そういうことになるわけです。

 いままでマーケットに商品を投げ込んでいたと思い込んでいたものは、実はコミュニティに届いていて、そこに生息している人たちはもっと多様なんだということに気づいたのが、動画サイト関連の重要なポイントだと思います。アニメに客がつくのも、時代劇が廃れたのも、そういう視聴者同士の横のつながりはもっと柔軟で多様だったということに気づくと、データの見方ももっと変わっていくんだろうなあと思う次第であります。

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