もう2年ぐらい前から「クールジャパン」がどうという案件がなくなってはいるんですが、コンテンツ投資よりも公共政策として海外に売り出すネタになっていたので、さすがに産業構造自体の問題に踏み込んだ方が良いんじゃないの、と思いまして、ウェッジに記事を寄せたわけです。
ところが、 さる方面から激しく「Wedgeに記事を執筆するなんてけしからん!」というお叱りがやってきまして、どうも「何となくウェッジが嫌い」というだけではなくて積極的にウェッジが駄目だとマジおこ集団がいるようでした。私はまあいろいろ世の中あるんだろうけど個人的に長らく愛読してきたので気にせず寄稿するわけですが、明日は明日の風が吹くのでありましょう。
本論では書ききれませんでしたが、クールジャパンが駄目というよりは、クールジャパンが成立する産業の土壌にもう少し目を向けたり、政府にしかできない海賊版対策などのやり様をもう少し考えてほしいなあと思うわけであります。例えば、中国では猛烈なコンテンツのパクりがあるだけでなく、13億人巨大市場のコンテンツ流通で日本独資の展開がそもそもできず、ものすごく不利な取引環境にあることを、中国に進出した企業が単独でどうにかするなど不可能です。任天堂やコナミはかなり頑張ったんですが、やはりこれは「クールジャパンで世界に日本のコンテンツを」というからには、真っ先に対応してほしい部分です。
また、これも何年も前から話していることですが、日本のコンテンツの担い手の労働環境が悪すぎます。アニメーターや漫画家、アイドル、作曲家その他、当たりはずれのある業界だから仕方がないという部分はあるにせよ投資額に見合う充分な報酬がこれらの働き手、担い手に支払われていません。そればかりか、健康診断もまともに受けられないケースが続発した結果、メンタルヘルスの問題を起こしたり、重篤な病気になって使い捨てられる人々も少なくないわけでして、民間でも充分対応できるようなファンドを組成するよりも先にやるべきことがあるでしょう、と強く感じる部分でございます。
能年玲奈「のん」騒動にアニメ作品「この世界の片隅に」が引っ張られている件|やまもといちろうコラム http://dailynewsonline.jp/article/1233618/
んで、 デイリーニュースオンラインでも書きましたが、そのあたりのコンテンツ業界としてのむつかしさは、「この世界の片隅に」に凝縮されている感じがします。配給は東京テアトルですが、毎度コンテンツ部門の身売りが出回る割に不思議と続いている人たちです。低予算映画の割にとても頑張った作品なので応援しようぜという話になるのは熱量の高いファンがいれば当たり前に出る話なんですけど、なぜかクールジャパンとか一切動かないわけです。
しかも、それらの海外販売や買い付けのビッドにも入ってません(さっき見たけど、やっぱり無い)。きっと、相対取引で適当なブローカーが翻訳してネットで公開とかやらかして、制作者にほとんど金が返ってこないとかそういう仕組みになるんだろうと思いますが、まあ要するに海外にコンテンツを売るという意味でちゃんとした窓口を置く力がなかなかないのだろうと思います。じゃあ買い付け側にまともな人がつけばいいじゃないかと考えるわけですけど、その辺のやり方が分かってるコンテンツ事業者は大手アニメ会社や玩具会社、某公共放送、テレビ局系列だったりするので、あんまり簡単じゃないですね。
その海外に監督が行くのに千万ぐらいの寄付型クラウドファンディングが組まれているみたいですが、本当の意味で熱量を収益にしようと思うのであれば、ちゃんと営業ができる人をつけたり、海外で売れる仕組みを作れるマネージャーを入れたほうが投資回収という点ではよほど実入りがあると思います。
で、こういう古き良き日本のコンテンツ産業がグズグズとやっている間に、世界的にはCGスタジオ全盛の世の中になり、CGアニメーターやオペレーターにきちんとした給料が払われ労務管理がしっかりしている企業のほうがシステム投資されて1分あたりの制作単価が日本よりはるかに安くなってしまい、それに対抗するために韓国中国東南アジアに安い労働力を目指してスタジオを移転する程度の価格弾力性では国際的蟹工船になってしまう日本のアニメ業界があるわけです。その状況を打破しようとしたら某方面のカワンゴ師が大御所に怒られる映像が某公共放送で流されて増田で愚痴を流す場面があるわけで、もうこれはしょうがないのかなと思います。
そういう産業構造にメスを入れようよという話が進まない以上は、クールジャパンがどうといっても誰も何も思わないんじゃないですかね、分からんけど。
![]() Wedge 2016年12月号2016年12月号【電子書籍】 |
ところが、 さる方面から激しく「Wedgeに記事を執筆するなんてけしからん!」というお叱りがやってきまして、どうも「何となくウェッジが嫌い」というだけではなくて積極的にウェッジが駄目だとマジおこ集団がいるようでした。私はまあいろいろ世の中あるんだろうけど個人的に長らく愛読してきたので気にせず寄稿するわけですが、明日は明日の風が吹くのでありましょう。
本論では書ききれませんでしたが、クールジャパンが駄目というよりは、クールジャパンが成立する産業の土壌にもう少し目を向けたり、政府にしかできない海賊版対策などのやり様をもう少し考えてほしいなあと思うわけであります。例えば、中国では猛烈なコンテンツのパクりがあるだけでなく、13億人巨大市場のコンテンツ流通で日本独資の展開がそもそもできず、ものすごく不利な取引環境にあることを、中国に進出した企業が単独でどうにかするなど不可能です。任天堂やコナミはかなり頑張ったんですが、やはりこれは「クールジャパンで世界に日本のコンテンツを」というからには、真っ先に対応してほしい部分です。
また、これも何年も前から話していることですが、日本のコンテンツの担い手の労働環境が悪すぎます。アニメーターや漫画家、アイドル、作曲家その他、当たりはずれのある業界だから仕方がないという部分はあるにせよ投資額に見合う充分な報酬がこれらの働き手、担い手に支払われていません。そればかりか、健康診断もまともに受けられないケースが続発した結果、メンタルヘルスの問題を起こしたり、重篤な病気になって使い捨てられる人々も少なくないわけでして、民間でも充分対応できるようなファンドを組成するよりも先にやるべきことがあるでしょう、と強く感じる部分でございます。
能年玲奈「のん」騒動にアニメ作品「この世界の片隅に」が引っ張られている件|やまもといちろうコラム http://dailynewsonline.jp/article/1233618/
んで、 デイリーニュースオンラインでも書きましたが、そのあたりのコンテンツ業界としてのむつかしさは、「この世界の片隅に」に凝縮されている感じがします。配給は東京テアトルですが、毎度コンテンツ部門の身売りが出回る割に不思議と続いている人たちです。低予算映画の割にとても頑張った作品なので応援しようぜという話になるのは熱量の高いファンがいれば当たり前に出る話なんですけど、なぜかクールジャパンとか一切動かないわけです。
しかも、それらの海外販売や買い付けのビッドにも入ってません(さっき見たけど、やっぱり無い)。きっと、相対取引で適当なブローカーが翻訳してネットで公開とかやらかして、制作者にほとんど金が返ってこないとかそういう仕組みになるんだろうと思いますが、まあ要するに海外にコンテンツを売るという意味でちゃんとした窓口を置く力がなかなかないのだろうと思います。じゃあ買い付け側にまともな人がつけばいいじゃないかと考えるわけですけど、その辺のやり方が分かってるコンテンツ事業者は大手アニメ会社や玩具会社、某公共放送、テレビ局系列だったりするので、あんまり簡単じゃないですね。
その海外に監督が行くのに千万ぐらいの寄付型クラウドファンディングが組まれているみたいですが、本当の意味で熱量を収益にしようと思うのであれば、ちゃんと営業ができる人をつけたり、海外で売れる仕組みを作れるマネージャーを入れたほうが投資回収という点ではよほど実入りがあると思います。
で、こういう古き良き日本のコンテンツ産業がグズグズとやっている間に、世界的にはCGスタジオ全盛の世の中になり、CGアニメーターやオペレーターにきちんとした給料が払われ労務管理がしっかりしている企業のほうがシステム投資されて1分あたりの制作単価が日本よりはるかに安くなってしまい、それに対抗するために韓国中国東南アジアに安い労働力を目指してスタジオを移転する程度の価格弾力性では国際的蟹工船になってしまう日本のアニメ業界があるわけです。その状況を打破しようとしたら某方面のカワンゴ師が大御所に怒られる映像が某公共放送で流されて増田で愚痴を流す場面があるわけで、もうこれはしょうがないのかなと思います。
そういう産業構造にメスを入れようよという話が進まない以上は、クールジャパンがどうといっても誰も何も思わないんじゃないですかね、分からんけど。