月別アーカイブ / 2016年05月

 「書いてよい」とのことなので短文の雑感を書くわけですが、なぜかCESAという団体全体からすると私はパブリックエネミーみたいな状態なのに、個別企業の方が善意や親切もあって「あそこの会社はこんなことを主張していましたよ」とか「ガイドラインはこうなりますが、あの会社のPは守るつもりはないと言ってました」みたいな情報は多数寄せられるわけであります。

  たぶん、ガイドラインを作ったところで、守る意志はないのでしょう。
 同じことは、枠組みとしては先行していたはずのJOGAがガンホーもmixiもさっぱりなのと、先日JOGAとMCFの業界セミナーにメディア関係者であるにもかかわらず参加を断られるという騒ぎのなかで関係者から語られた事情を察するに、

”問題があることは承知しているが、抜本的に解決すると利益水準が大幅に低下してしまう”

そして、

”そもそもソーシャルゲームはやりたくなかったが、参入した理由は高収益事業だったから”

というクソみたいな理由があるのだそうです。まあ、そんなことだろうとは思いますが。

JOGAとMCFのソシャゲ業界セミナーに参加を断られるの巻
https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/5477299.html 

 まあ、このような体たらくなので、監督官庁や面白大臣がせっかく稼いでくれた時間をみすみす業界全体で浪費した挙句に、最低限守れば業界を健全化したと胸を張って言えたはずの本件が続発する仮処分でクライシスが本格化していくのを呆然と眺める方向へ業界団体として舵を取ったのは如何したものかと思います。

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 単純に、この問題を見るにゲーム業界のユーゴスラビア化が進んで、WW2を経てチトー亡き後に各民族の都合が全面的に出た結果、統一した折り合いがつけられず国家としての解体が進んでしまう現象を起こしているわけであります。JOGAは北イタリア、MCFはオーストリア=ハンガリーといった感じで解釈するわけですが、WW2をモチーフにした大傑作ウォーシミュレーションとして、個人的には『ハーツオブアイアン』シリーズを強く推奨いたします。リプレイを書いておりますので、ぜひご笑覧ください。

【山本一郎】リトアニアから愛を込めて。「アーセナル オブ デモクラシー」で,悲哀の小国を何とかしてみようと思ったら,こうなった
【山本一郎】「ハーツ オブ アイアンIII」ブルガリア繁盛記(前編)
http://www.4gamer.net/games/062/G006240/20130311026/ 

 やっぱり私としては、フィンランドやエストニアといったヨーロッパで蹂躙されるイベントしか組まれない小国でプレイするのが大好きなんですよ。負けることがゲームデザイン上強制されているにもかかわらず、プレイヤーの機知と根性で戦いを潜り抜け、和解に持ち込み、少ない国力を核開発とミサイルに注ぎ込んで首都のあるエリアに発射サイロ建設したり、潜水艦に搭載して大西洋でじっとしてたりするというプレイが大好きなのであります。

 なんというか、小国なんだけど切り札があって、喧嘩を吹っかけられたらいつでもお前の首都を核汚染の聖地にしてやるぞという瀬戸際感がとても良いと思います。ふだんは穏やかな民主国家なのに、突然「戦いだ!」とか「大変結構!」などと鋭い文言が平気で飛び出す的な。

 途中から何のことか分からなくなってきましたが、電話がかかってきたのでこの辺で。 

 自分の力だけで乗り越えられそうにない問題に直面しても、弛まず歩いていくことの大事さを教えてくれるのが本書です。強くお奨めしたい一冊です。

 この『18歳のビッグバン』では、言葉の強さ弱さよりも、たどたどしさの中にある伝えるべきことの率直さ、文字の運びの美しさが光る感じですが、一方で、何らかのハンディキャップを抱えて生きる人が生きていくうえでの等身大であり続けることのむつかしさもまた、垣間見せるわけですね。

 何かにもやもやしている人ほど、この本の訴えかけるものから感じ取れるエネルギーは大きいのではないでしょうか。

18歳のビッグバン [ 小林春彦 ]
価格:1728円(税込、送料無料)


 一口に「障害を抱えて生きる」といっても、人によって千差万別であるし、受け止め方もかなり異なる世界の話ですし、本書は必ずしも読者に共感してほしい、泣いてほしいという感じではなく、淡々と問題を受け止め、自分なりに解決していくさまを読ませる内容になっています。「どうにもならない問題を抱えたとき、人はどう立ち向かうのか」という、かなりストレートな著者の心情が記されていて、こちらも感情を揺さぶられます。

 ただ、それ以上に、いま健康に暮らしていると思っている私たち自身の心の中にある滓(おり)のような漠然とした不安を剥き出しにするでしょう。人としての尊厳を保つ、直面した問題を解決する、行動をするために自分の心を奮い立たせる、すべては心の働きであり、必ずしも抱えた障害ではないことが分かります。

 不安の正体とは、実は自分が持つ感情の歪みにあるものであって、18歳の著者を襲った問題は、必ずしも本質ではなくて、むしろ心を投影する客体に過ぎなかったとも言えます。また、私たちが生きていく中で感じる不安や、取り組むべき問題もまた、自分の内面の映し鏡に過ぎないことを悟らされるわけであります。



 自分の外側で何かが起きて、失望することの恐ろしさ、心から沸き立つ不安に潰されて行動しないことの怖さといった、 億劫な自分の背中を自分で押すために、この本で描かれたまっすぐな著者の心を照らしてみると、いろんな気づきがあるのではと思える一冊です。

 扱うテーマの割りに、著者の若き悩みに触れられるモゾモゾ感もまた、素敵です。はい。 


 

 今夜のフジテレビ系ネット放送ホウドウキョク『真夜中のニャーゴ』では、昨晩炸裂したパナマペーパー問題について続報も踏まえて語りたい… のですが、同時に、今回問題の根幹を担ったICIJという国際的なジャーナリスト団体が前のめりになりすぎて、いろいろとやらかしていることがかなりわかってきたので、このあたりも含めて説明などしてまいりたいと思います。


ホウドウキョク
http://www.houdoukyoku.jp/pc/archive/0005/ 

 簡単にいえば、タックスヘイブンを使った租税回避には、完全な合法で、二重課税を防いだり、為替予約などの平準化をしたり、ファンドの組成地であって租税回避そのものをしていないケースがあったりで、いろんな役割があります。最たるものは、内外の価格移転税制の適法な調整機能なんですけど、このあたりの問題をすっ飛ばしてあたかも「パナマペーパーに名前が挙がっているから全部違法」であるかのような報道が行われたり、脱税の意図がある前提になっていたりします。

 また、登記ですんなり名前の挙がる会社や個人というのは、パナマで名前を隠す意図のなかった、ある意味でまともな投資家や事業者であるということです。下手すると、国際的な連結グループ決算にもパナマ法人の名前が書いてあるにもかかわらず、租税回避を試みたと報じられてしまっているケースさえもあります。

 まあ、知恵も金もない人からすれば、途方もない問題のように思われても仕方がない部分はありますし、国税はかなりがんばって対応してきた世界ですので、これを気にしっかりと問題提起をして網の目をかけたいと思う気持ちはあるでしょう。

 しかしながら、実際には日本企業や日本の投資家がタックスヘイブンを使って租税回避するよりも、アプリ開発会社や通販事業者が恒久的施設(PE)がないのでいままで日本で事業を行っておきながら日本に法人税を支払ってこなかった問題のほうが、実ははるかに大きいわけであります。これは、イギリスやアイスランドなどでも同様の問題を起こしているわけでありますが、それについて、もう少しきちんと解説したいと思います。

 また、私事ながら、ちょっと身近で立て続けに介護問題が発生して私自身が四苦八苦するという事態に直面したこともあり、このあたりの物事について、軽く後半で触れたいです。当事者になってみると、介護って実に辛い事案であります、はい。 

 5月16日(やまもと註:訂正しました)にイベントやるので来てください! みたいなカジュアルな感じでお話が流れてきたので、お伺いする返答をしたら登壇する運びとなっていました。
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 世の中いろんなことが起きており、それに対して率直な見解を利用者が気軽に書き込めて意見交換できる環境は大事だとは思います。ただし、その世の中で起きるいろんなことは、既存大手商業メディアだけがネットで報じているわけではありませんし、カネを払ってでも読みたい読まれたいという読者だけで成立しているものでもありません。

NewsPicksの課題と可能性。5月16日に公開イベント開催
https://newspicks.com/news/1537908/body/?ref=pickstream_205360

 必要なことは正しい知識に基づいた見解や、情報の作り手や読み手に対して公平であること、そして運営主体が誠実であることだと思っています。
 
 記事がPickされた結果、多くの読者に記事がリーチするのは素晴らしいことではあるんですけど、タイトルだけもっていかれて、本文もたいして読んでいなさそうな読者がコメントをつけて、そこにイケスが作られて有料会員ビジネスをしているのであれば、記事の作り手に対しても、雑魚とされる無料の読み手や無償Pickerに対しても、さほどの誠実さを感じないのは気のせいでしょうか(誘い受け)。

 イケスのビジネスをされるのはまったく構わないんですが、もしも他社のヘッドラインで配信契約をするのであれば、まずはちゃんと直接踏まれたリンクに対してアクセスが流れていく仕組みにするべきだと思いますし、契約していない配信元の記事は扱わないほうが健全であろうと感じます。

 せっかく呼ばれてギャラ払われてお話をするからには、きちんとこのあたりの課題と可能性については議論をしたいと思うのですが、一方で、調査報道をやりたいというチームに対してしっかりと保障するような投資も行っているそうです(他人から聞いたので、詳細は知りませんが)。

 その意味では、突き詰めればNewspicksのビジネスモデルは既存のニュースアプリの競合というよりは「はてなブックマークつきFACTA」なんだろうと思います。

 便意を催したのでこの辺で。
 
(訂正 21:21)

 文中、イベントの日程を間違えて記載していました。正しくは、5月16日です。ご指摘いただいた方、ありがとうございました。

 また、すでに定員の50名はいっぱいになっていたようです。この記事が掲載されたころにはすでに満員だったということで、なんとなく読者に申し訳ない気分でございます。 

今朝、ちょうどパナマペーパーの番組をやるということでNHKの「週刊ニュース深読み」に出演したところ、午後になって一部の外資系証券経由で「本件問題は、米国主導のスキャンダルリークだったのではないか」というような情報が出回って、週末でみんな暇なんだろうと思いつつ、そういう合理的な疑いがあってもおかしくないよね、とは思います。10日に予告されている内容は、おそらく言われているほど(日本やアメリカにとっては)たいした内容にはならないのかもしれませんが、そもそも二重課税や為替予約の仕組みをオフショアで使うことと、租税回避の仕組みを構築することとは本来異なるはずです。

“税金逃れ”に世界が怒り! パナマ文書って何?
http://www.nhk.or.jp/fukayomi/maru/2016/160507.html

 また、保険商品を組み合わせたり、なんとか特区などの国や地域別の産業振興策を組み合わせる仕組みは、別に秘匿性が高くなくても「必要だから使う」「余分に税金を払わなくてすむのであれば、いま払っている税金が減らせる分の何割かを手数料で払っても構わない」という合理的な判断が成立するなら普通に活用されるものです。適法だから使って何が悪いという話ではなく、企業が税金を余分に払おうとしても、株主がそれを納得しないのが通常である以上は、そこの地域でビジネスを行う上でのCSRとしての現地納税みたいな話になるわけですね。

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 番組の冒頭で、森信茂樹せんせがいきなり「世界中どこにいても、日本在住者は日本の税金がかかる」と仰ったので、海外の日系現地法人が価格移転税制の枠内で現地で経常利益を出し現地で税金を払う、グループ決算をしたり、為替予約を機動的にやるためにオフショア口座を使うといった話にはいたらずじまいでした。どこの国でも徴税担当者は同じ発想ですから、企業やファンドの責任者は当局対応として「聞かれたことだけを喋る」という話になってしまうのもむべなるかな、といったところでしょうか。

 なお、オフショアがいけない、タックスヘイブンが駄目だとなると、現在主流となっている海外の直接投資や、香港市場などでの上場のためにケイマン諸島やヴァージン諸島などにホールディングカンパニーを立てるといった定番の租税回避策はできなくなります。もちろん、そういう手当てを日本がすれば、そのようなお金はなくなるわけですが、それは日本人が海外に投資をする際に一方的に不利になるだけでなく、海外から日本に投資するときそのような規制があるなら必要最低限の資金しか日本に置かないという話になります。まあ、対日投資を呼び込みたくないというなら話は別ですが、これから日本の国債消化余力が乏しくなりそうなところで海外からの商人を寄せ付けないというのは結果として日本が海外で資金調達をしたいとなったときに90年代のような余計なプレミアムを払わないと金が借りられないという本末転倒な事態に陥るので、うまい具合にやってよね、と思う次第でございます。

 したがって、透明性を確保して、納得できる税体系にしましょう、という本筋は誰も反対しないのですが、実際には透明性を確保するための申告制度を義務付けたら、外からカネが日本に入らなくなるうえ、日本企業が海外で何か展開するときに不利を起こす可能性があります。

東電、海外に210億円蓄財 公的支援1兆円 裏で税逃れ
 たとえば、一昨年東京電力が海外子会社を通じて事業を行い、別の海外事業者との取引で得た利益をプールしてたら、東京新聞から謎の叱責を食らうという「事件」がありました。現地で稼いだ現地のお金を現地に置いて現地で納税することは別に公的サービスだろうがファンドだろうが問題にはならないはずが、公的支援を得ていたからそれが駄目だ、税逃れだという話になるのであれば大変なことです。 

 語るべきことはさまざまあるのですが、企業は利益を追求することが求められているけれども、同時に市民社会の一員としての責任も果たさなければならないので、適切な納税を公平感のある形で行わなければなりません。一方で、制度として透明性を強めようとしたときに起きる諸問題については、企業と国民の間で決定的に利害が対立するものでもあります。投資家は概ねにおいて両方の立場ですので、放送を通じてもう少し「何が対立軸なんだっけ」というのは語ったほうが良かったかなと思いつつ、語ったところで言葉足らずだと誤解も広がるんだろうなーと感じて、ぜんぜん違うことを喋っておりました。

 どうせICIJが次の公表をするので、取り急ぎはそれを正座して待ちたいと思います。はい。 

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