月別アーカイブ / 2015年10月

 このところ、アメリカのイージス艦一隻が南シナ海にある「中国の主張する『領海』」に無断で立ち入ったと言うことで、このゲームも新たな展開を見せておる次第ですが、いろいろと安全保障周りの執筆依頼をいただくなかで「これは読んでおいたらいいという本はありますか」というオーダーが良く来ます。



米中、南シナ海対峙で各国に支援働きかけ

http://jp.wsj.com/articles/SB10631682899670053547704581324243962294936



 人に原稿依頼しておいて「良い本あります?」もないもんだと思いつつ、ここ最近の中国解説本は比較的定番も研究物も良本が増えてきたなあと感じるので、ここ半年出た中でお奨め本などを掲載してみようと思い立ちました。



 どれも、吸い込まれるほどに良い内容なので、ご関心のある方はぜひご一読を。



■中国グローバル化の深層 「未完の大国」が世界を変える (朝日選書 デイビッド=シャンボー・著、加藤祐子・訳)



 ぶっちゃけ「なぜこの本が売れていないのだ」と思う好著。外交の各方面に対するプレゼンスを総覧できるだけでなく、国際的に中華を垂直統合するようなグローバルガバナンスに対する適切な論評を加え、経済面、文化面(とりわけソフトパワー)から安全保障にいたるまで、中国という国と関わりのあるルートは総じてきちんと網羅してあります。



 単なるエピソードではなく実際の中国が置かれている現状と、中国が醸し出したい雰囲気や虚像とのギャップ、また時間軸も見事に繋ぎ合わせており、ある意味でこの本をレファレンスに中国関連の記事を読むだけで立体的に現代中国の考えや意図が掴めるであろうというぐらいにちゃんとした内容です。







 ディプロマティックな方面ではウォッチャー程度の知識しか持ち得ない周辺国国民にとって、この本が手助けする現代中国の外交の有り様の解説は見事で、それは冒頭にあるように中国が世界の中にあってどのようなインパクトを持ち、また世界は中国にどう関わろうとしているのかという具体的な変数によって説明されている凄味があります。この本の最高の良さでもある、猜疑心や恐怖からの過大評価、過小評価を極力廃して、実際の関わりの中から中国の影響力の盛衰、中国中南海から地方政府その他の権力闘争と意図を読み解こうというのは、実に優れたアプローチだと思うのです。



 個人的に専門とするサイバー攻撃に関する記述が薄いのは残念ですが、それは差し置いても充分すぎるぐらいの品質と適切な情報量で、現代中国外交事情を一冊選べと言われれば近著ではこの本をお奨めします。このクオリティで2年に1冊ぐらいずつ継続して出して欲しいとさえ思う内容でした。








■十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争(小学館 峯村健司・著)



 上記『中国グローバル化の深層』が客観的な外交のアウトラインを総覧する良書とするならば、こちらの『十三億分の一の男』はルポルタージュ、ジャーナリズムの世界から現代中国の”皇帝”習近平を真正面から見据えて、その強烈な権力闘争を勝ち抜いた人物の素顔に迫ります。



 というか、冒頭からクライマックスでありまして、習近平の一人娘がアメリカに留学しているところを本人直撃取材しているところから本書は始まります。この「えっ」という迫力は、やはり長年この問題を追い続けた著者にしかできない凄味を感じさせるだけでなく、その後に続く各章もただひたすらに、著者が中国全土をその二本の足で歩いて見聞きした膨大な事柄を整理し、咀嚼し、体系立ててひとつの壮大な知識として読者に披露するというちょっと類を見ない荘厳な内容になっているのです。







 しかも、どこからどのようにコンタクトをして聞きだしたのか分からんような共産党幹部の言葉や、それを裏付ける取材の緻密さ、そこから読み解く意味を現実に落とし込んでどういう解釈とするかといった、1,500円かそこらでこんなもん読んでいいのかというほどの濃密さで読者に迫るわけですよ。凡百の中国事情本を読んで溜飲を下げたり無闇に恐れたりするぐらいならば、凄まじい権力闘争の歴史から押し出されたたった一人の男の人生の機微に想いを馳せるほうが何ぼか生産的なんじゃないかと思います。



 この本の惜しいところは、難解な部分です。おそらく著者や周辺にとっては当たり前の前提条件が、必ずしも読者には伝わらないところがあるのではと感じる記述がそれなりにあり、過去の事件や人事抗争も含めた現代中国の時事問題に関するリファレンスがあればそれを読みながら、あるいは前に行ったり後ろに行ったりしながら、時間をかけて立体的に読みこなすことを読者に求めています。



 そういう前提条件としての若干の敷居の高さはありつつも、この本はお奨めです。









■語られざる中国の結末(PHP新書 宮家邦彦・著)



 ご存じ日本外交の語り部、宮家邦彦御大の玉稿。こちらは、経済停滞後に中国全体を襲う社会不安、その混乱を収拾できないであろうシナリオにたったときの中国大分裂を予見させる、ある種のディストピア本であります。



 中国の経済不調や社会不調和から来る悲観論を総じると、いわずもがなの中国歴代王朝の衰亡期に起きるあれこれを繰り返すわけで、それは中国共産党という血脈ではない王統が混乱に陥った時に、王なき統治がどれだけの合理性を持って危機を打開できるのかというのは非常に重要なテーマであります。正面からこのあたりを冷静に分析する著者の筆致は迷いがなく、欧米へのキャッチアップの中で大国を目指した中国、しかしその脱共産主義的な国家観を確立するまもなく停滞局面に入ったとき、豊かさを知ってしまった中国国民がどのような動きをとるのかというのは価値のある未来予想図だと言えましょう。







 そういう隣の大国の混乱を予想した際に、我が国日本のとるべき道筋は、というあたりは地に足の着きすぎた議論であって、ある意味で現・安倍政権も含めた現状維持的な親米路線の踏襲を前提として日本は安定を図るべきという強い意志を著者から感じます。この中国で混乱が起きたときに、うっかり良く分からない政権が日本で立っていると一緒になって混乱して動揺することだってあり得るわけで、このあたりも十二分に踏まえて日本人の間で生来に関する議論を深め、備えとしておくべきなんだろうなあと漠然と思うわけであります。



 全体的に、中国に関する基礎知識がなくてもほとんど平易に読み解くことのできる内容です。以前東京大学の政策勉強会で輪読会をやったときは、まったく外交に知識のない工学部の大学院生でも活発に意見交換に参加できたぐらい分かりやすい本です。









■巨龍の苦闘 中国、GDP世界一位の幻想(角川新書 津上俊哉・著)



 同じ中国社会論、未来予測でも、宮家せんせが外交からのアプローチなのに対し、本書はもっぱら経済の観点から読み解いており、ある意味で対にして読むと対比が面白く、そして結論はだいたい同じように落ち着くという、ひとつの山を登るのに登山ルートが違っても頂上で鉢合わせるパターンの好著です。



 中国経済に対する実態と虚像を解き明かしながら、そのメカニズムや中国人と経済の関わりの中から多くの知見を紐解き、説明していきます。中国経済を世界一に引き上げていくナショナルアイデアが国内の統制に一役買い、成長が社会を結束たらしめて共産党の求心力としてきた一方、その成長の魔法が解けたときに社会で起きる困惑、思い違い、不和が、具体的にどのような方面にいかなる影響を与えていくのか、非常に冷静な視点で解説しているのが本書です。







 5月ごろ話題になったAIIBの話だけでなく、国際金融、世界の中の中国経済、中国自体の都市国家の集合体的な側面や、内陸開発の懸念点など、歯切れ良く明快に中国の経済事情、とりわけ実像そのものの解説と、虚像がどうして必要なのかを類推させる筆致はとても良いのではないでしょうか。



 やはりここでも、中国の危機は「統治」にあるという基本線から外れておらず、このあたりがすんなり読み解けるようになると分かったような気分になれるのではないでしょうか。









■本当は日本が大好きな中国人(朝日新書 福島香織・著)



 福島女史の本書は、彼女の十八番である中国文化論や実際の中国事情から社会の動きを読み解こうという内容で、ダイナミックな記述に見えて、よく読むと非常に繊細な心情を連続的に捉えるような描写ですんなり本にのめり込める良い文体だと思います。



 ネタの一つひとつは軽いように見えても、なぜそれが中国の人たちの心情に受け入れられるのか、意外に日本人と共通している事項や、時代感、それも成長しているころの日本人との類似性みたいなものが強く浮き彫りになっています。その一方で、切ない話が合ってみたり、日本文化が中国に与えた影響、またその逆、羨望、歴史観や評価といったところは、単純に日中間で話題になる「歴史認識」一色の不快感からは隔絶した、生身の中国人と日本人の間の通い合うあれこれの描写であることが分かります。







 相手も人間であって、感情も利害もあるという当たり前のことを忘れるといろんなものを見失うということを教えてくれる本だと思うのと、手軽なルポやエッセイとしても充分に面白く、書が進むほどに筆者の個人的な趣向にはまり込んでいくあたりもこれはこれで楽しかったりして、より多面的に中国を理解するにはもってこいの内容じゃないかと思います。









■人民元の正体 中国主導「アジアインフラ投資銀行」の行末(マガジンランド 田村秀夫・著)



 産経新聞の田村さんの本。いろいろと異説もある中で、半年経ってみて出てきた事実関係と照らし合わせるとAIIB解説本の中では相応に風雪にも耐え得る内容に仕上がっています。この本は「少なくとも当時は中国政府はそのようなことを考えていて、あわよくばというところも含めて攻勢に出ようとした」ということを書き切っているという点で評価をされるべき内容なのかなあと思うわけであります。



 一方的な中国脅威論ではなく、その意図や限界、実証的な数字面での補強も施され、通貨戦争もまた新たな米中対立の具のひとつと明確に規定して論じ上げているあたりは納得できるところもあり、さりとてある程度国際金融の常識の点からすると「もし中国が本気でそれを押し通すつもりでいたとするならば、よほど相場操縦に自信がないと無理じゃないか」というくだりも残っていて、いろいろと考えさせられる本です。上記津上さんの本やウェブ記事と対比して読むと、エピソードひとつとっても解釈の違いひとつでこれだけの事実認識の幅が出るのだということも分かるわけであります。







 この当時は、少なくともアメリカは中国経済の全面的な停滞は望んでおらず、事実上のドルとの連動を容認している状態であったように見える点は、振り返ってみても非常に重要な指摘だったと思います。また、ここ二年で徐々にアメリカは中国に対する見方を変えていく中で、人民元の扱いもまた少しずつシフトさせていったあたりは、非常に興味深い考察だろうと思います。



 なお、中国が日本の軍事技術を掠め取るあたりの論述は、うーんまあ、といったところです。このあたり、悩ましいところですよねえ…。









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 ということで、他にもこれはという中国本もあるのですが、まずは6冊選んでみました。



 ついでにというわけでもないのですが、今度11月24日は、阿佐ヶ谷ロフトAでこんな書籍イベントをやります。



ココロに効く(かもしれない)本読みガイド #2 「読書で人生変わる」って本当!? 年忘れ! 2015年おすすめ本総括

http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/39131



 また、最近ココロに効く(かもしれない)本読みガイドである漆原直行さん、中川淳一郎さんと、こんな輪番書評サイトもできています。地味に更新しています。



「ココロに効く(かもしれない)本読みガイド」山本一郎・中川淳一郎・漆原直行

http://biz-journal.jp/series/business-book-review/



 書き終わってから気づいたんだが、こんな自分のブログで無料で書いてないで、連載記事として小出しすればよかったんじゃないか疑惑がふつふつと湧いてきました。まあいいか。













 先日AppBank Gamesが消滅したんですが、そこの棟梁として頑張っておられた宮川義之さん(hotmiyacchi)の懇親のブログが話題になっております。あくまで一方的な話なので断定するのも問題あるかと思いますが、ここで問題視されているはいったい何崎啓眞さんなんですかね…。



消滅会社 AppBankGAMESを終えて・ゲーム作りで大事なこと

http://hotmiyacchi.hatenablog.com/entry/2015/10/19/105940

enishの人事異動…岩崎啓眞氏が執行役員ゲームデザインディレクターに就任

http://gamebiz.jp/?p=145807



 個人的には誰崎さんから具体的な反論が出るようであれば聞きたいところですし、彼が宮川さんのところにjoinしたという話はかねてから聞いていたので、てっきりそれなりに双方納得で円満にあれこれ処理されていたのかと思っていました。誰崎さんとは正直面識はなく、あくまで彼が関わった仕事の共同開発先のプロジェクトが炎上した際に、I&PではなくEuphoros(子会社)としてサルベージしたことがあるだけなので、あまり詳しく知らないんですよね。Unityのセミナーであれこれ喋るようですが、妨害する意図はないのでリンクは貼らないでおきます。




 もしも宮川さんが書かれた内容が完全にすべてそのとおりなのであれば、個人的にはとっとこ裁判でも起こすもんだと思います。enishでも同じことをやらかしているのであれば、普通はそこまで焼け太らないんじゃないかという風にも感じるので。



 なので、まずは経歴詐称だのうんこだの名指しされた岩崎啓眞さんからの反論を待ちたいと思うのですが、AppBankもほうぼうややこしいことやらかしている割には、こういうところで良い奴になってて良く分からない会社ですね。上場おめでとうございます、って感じですが。



(追記 16:23)



 その後、日ならずして斧さんという元AppBank Gamesの開発者の方が真相激白のブログが出ていたようです。別件のところでは、弊社も人を出していた案件でしたので、このお話ですと多少辻褄は合います。



AppBank GAMESを退職していました

http://akisute.com/2015/10/appbank-games.html



 まあ、某崎さんは年を食っていたので、言ってることはともかくデスマ不可、と言われると確かにそうなのかも知れませんね。むしろ、製作総指揮みたいな感じで大所高所から某GMみたいな感じで関わっていただくほうが、現場的には良かったのかなあとは感じますが、そうだとすると、マックスむらいさんがiYANMATOやiNINJAを見て宮川さんのゼペットを丸抱えした時点で悲劇は予告されていたという話であって、それでも消滅の最後まで面倒を見たAppBankは一応仁義は果たした、と言えるのでありましょうか。



 いろいろと情報が乱舞している状態ですので、この辺でいったんto be continuedといたしたいと思います。



(追記 17:22)



 上記暴露記事は大変な力作だったのですが、揮発性が強すぎたのか、生後わずか2時間で削除され帰らぬ人になってしまいました。



 しかしご安心ください、遺影は魚拓で保存してありました。誰ですか、魚拓なんてとった無粋な人は。



AppBank GAMESを退職していました

http://megalodon.jp/2015-1019-1705-45/akisute.com/2015/10/appbank-games.html?m=1



 私は常々思うんですがね、正義を貫くのに必要なことは、技術でも知識でもなく、勇気なんですよ。うっかり他人様の前でシャブ野郎と罵ってしまいお詫びしたことも、破産したはずの木村某の吉祥寺の自宅登記がおかしいので調査した結果を公表したら名誉毀損ではなく脅迫だと言われて警察沙汰になったことも、あれもこれもすべて経験が私を強くしました。先週、ついに殺害予告まで書かれてしまい、あまりの恐怖に昼も寝られません。皆さんも、尾行がたくさんついて無料で身辺確認サービスが受けられるぐらいに熱量の高い暴露記事を是非次々と書き続けていって欲しいと願っています。



 今後ともよろしくお願い申し上げます。









 久しぶりに素敵な記事を見ました。



ベクトル社資料におけるメディアジーンのメディアに対する不当表記に関して

http://www.infobahn.co.jp/news/5809



 そのベクトル社資料については、私もすでに入手しているので、今日ちょうどnippon.comで記事を書いておきました。



日本のウェブメディア「ステルスマーケティング」事情

http://www.nippon.com/ja/currents/d00199/



 オフィシャルな面での問題で言うと、ベクトル社に限らず「やればやったもん勝ち」になりやすいPR会社独特の体質がバックグラウンドにあると思います。要するに「おたくの商品、メディアジーンの媒体に売り込みますよ。場合によっては、PR表記なく掲載してもらえるかもしれませんね」と営業してお金を先にクライアントから貰う。そしてメディアジーンに売り込みをして、無事掲載されればメディアジーンはノンクレやステマはやらないので、あたかもPR会社がステマの広告記事の売込みに成功したように見せることができる、という点で、裏口入学の詐欺とあまり変わりありません。


 当然、ベクトル社に限らず、他の複数の会社の営業資料を見ておりますと、特記欄に「ヤフー掲載保証」とか「PR表記なし」とか書いてあるメディアリストが出てきます。ただ、今回ベクトル社がお粗末なのは、ノンクレ・タイアップ記事をやってくれるメディアとして、堂々とメディアジーンなどの媒体のロゴを掲載した決算発表資料まで作ってしまって配布しているところでありまして、それは誰が見ても「お前アウトやんけ」という話になるわけです。



 先日、徳力基彦さんという人や、藤代裕之さんという人が、いろいろ示唆に富んだ記事を書いておられまして、こいつらみだりにフサフサしやがって腹立たしいところはあるのですが内容はもっともですのでやはり世の中こっちなんだろうなあと思うわけであります。



やっぱり「広告脳」と「PR脳」は構造が違うので、別部署にする方が現実的?

http://www.advertimes.com/20151013/article206385/

ステマ問題で浮かび上がるネットメディアの構造問題

http://mag.sendenkaigi.com/senden/201511/trends-content-marketing/006442.php

真面目なPR業界の方々は「PR」という言葉を諦めて、「広報」に統一した方が良いのではなかろうか を宣伝会議 AdverTimesに寄稿しました。

http://blog.tokuriki.com/2015/09/advertimes-pr.html



 で、なぜベクトル社だけを悪者にするつもりもないのかというと、ベクトル社は単に悪質だというだけで、他のPR会社も似たり寄ったりなんですよね。場合によっては芸能事務所が自らステマを敢行しているケースもありますし、ウェブ系の編プロが各種ウェブ媒体に派遣している記者レベルから一度で二度効くコンバット状態のステマを繰り広げている場合もあります。



 どちらにせよ、徳力さんが指摘するような「PRと広告の垣根が無くなってきたよね」という話もごもっともな割に、割の良い広告商材としてのPR業界が跋扈することで起きる問題は多数あるわけであります。先日、片岡英彦さんという人が釈明を書いてて面白かったんですけど、要するに「俺が現役のころは繁華街で立ち小便しても捕まらなかった」というレベルの話で、お前もうそういう時代じゃないんだよ貧乏くさいロートルはクソして寝ろという状態であることは言うまでもありません。そもそも、成功報酬と銘打つ割に先にクライアントからカネ貰ってて記事化されたら幾ら、配信されたら幾ら、駄目だったら返金しますとか、契約書を作らず口約束の世界で手形や小切手が企業間決済の基本だったころの常識でしてね。



 本件ステマ関連企業が出していた面白資料を元に調査をしていたら、その当の会社からメールが入ってなんだろうと思ったら「これ以上調べるな。訴えるぞ」と素敵な宣戦布告のお知らせだったというのはここ半年ぐらいの私の人生の中で「ああ、やはり戦いの中で送る人生というのはこういう景色に彩られるのだな」と強い安寧の感を抱いた次第でございます。



 昨日のホウドウキョクでもその話をしましたが、ステマからの欺瞞的取引で消費者が見えない不当な損失を蒙るタイプの話は、早々に業界ガイドラインを遵守させられる体制を作るか、必要であれば一部法制化するべき状況になっていると思います。



ホウドウキョク

http://www.houdoukyoku.jp/



 昔からそういうやり方でやってきたからこれからも大丈夫なのだ、というあほ業界人も多いですし、バレなければ大丈夫なのだと私腹を肥やす人たちというのはいつの時代でもいるので、そういう人たちが業界諸氏の善意と嫉妬で炙り出され叩き潰される日が来ることを期待してやみません。



 なお、先日ソシオコーポレーションが運営するロケットニュース24というサイトで、中の某という営業を中心としてステマやってました、というお詫びが掲載されていましたが、あれだって隠れて収入を得ていた馬鹿が外車買って羽振りが良いとかいう業界内の情報が出回ってから指摘されて発覚したわけで、それまでもいろんなところにステマ営業をして、営業をした本人が記事書いてアグリゲーターに掲載してカネを個人的に貰っていたことは知れている話だったんですよ。1,800万でとどまる話じゃないと思うんですよね。ソシオコーポレーションはとっとと税務署に通知出した後で業務上横領のかどで刑事民事でちゃんと最後までやっていただきたいと願う案件であります。



当社メディアにおける不正な広告記事についてのお詫び

http://rocketnews24.com/news/2015-10-08/



 同じように、他の出版社系のウェブメディアで、大手広告代理店系のPR会社とつるんで時間差で報酬を受け取ったりバーターを貰う類のステマを手がけるケースや、その出版社のウェブ系のライティングで組んだ会社が独自の営業を経てステマやり放題というケースもあるわけでして、ホントステマ界隈は地獄だぜ フゥハハハーハァー!



 ご清聴ありがとうございました。















脱毛ラボ「ミュゼがやられたようだな…」

TBC「ククク…奴は脱毛大手四社の中でも最強…」

銀座カラー「駄目じゃねーか」



脱毛エステ大手のミュゼ、任意整理 社長「事業は継続」

http://www.asahi.com/articles/ASHB63PJ1HB6ULFA008.html



 ということで、脱毛サロン最大手のミュゼを運営するジンコーポレーションが任意整理に追い込まれてしまいました。誰ですか、そんな通報をしたのは。


 個人的には、以前から指摘している通り脱毛とはいえ不可逆な治療である以上、医療法違反に問われる疑いの強いサービスであって、医療脱毛と「エステ脱毛」なる線引きが謎だというのはかねてから界隈で問題になっておったわけですが、先に役務サービスの前受金を売上に計上していたので粉飾を疑われて整理に追い込まれるとか行政からすれば消費者被害が最悪な形で出たことになり困惑を隠せません。



 アリバイというわけではないのでしょうが、とりあえず偽装医療施設を開設したかどで小口のネタは出ておりますが、そろそろまじめにこの手の医療紛いエステは考えないといけないんじゃないかと思うわけです。



無資格で医療脱毛、美容外科病院部長らを医療法違反容疑で逮捕

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=120332



 この場合も、勤務実体の無い医師に診療所の開設者として登録してもらっていたわけで、患者からすれば医師だと思って行ったら元ヤンキーのアルバイトエステティシャンしかいなかったという悲劇が繰り返されるのでして、この辺からどうにかしないとなあと思います。



 何しろ、美容医療というカテゴリーだけで(審美歯科も含まれるんですけど)2014年には消費者生活センターに2,465件もの相談が寄せられている状態なので、如何したものかという一方、美容医療は医療法に守られ特定商取引法によるクーリングオフや中途解約の対象となっていないため、悪質なことをしようと思えば結構いろんなことができる状態であるのも事実です。しかも、悪徳医師ほどいろんなクリニックをホップしながら実態隠しをしたり、被害が露顕しないような診療経過の改竄や捏造をしたりするケースも後を絶たず、患者側が証拠を出しづらいのをいいことに大変なことになっております。



 なので、審美歯科から脱毛、痩身エステ、ネイル、マッサージにいたるまで、もう少し被害実態が減るような方法をどこかで考えないといかんでしょう。しかも、いま開業医の診療報酬が高いとか問題になっとりますが、その平均値や中央値を引き上げているのが他でもない保険外の美容整形外科でありまして、そういう高額診療報酬に見合う治療をしているクリニックが多いとはいえ不良業者の摘発は進めていかないといけないんじゃないですかね。



 それらの守り神、というほどではないけど魔除けのお札ぐらいにはなっているのが医師会や日歯連といった業界団体です。この前、裏金2億円のかどで日歯連は摘発されました。



日歯連が政治資金裏金2億円で摘発の巻

http://dailynewsonline.jp/intro/1018611/



 もうこうなるとギャグなんですけど、それもこれも、まっとうな医療行為だけで充分な収入をクリニックで上げるにはいろんなテクニックが必要になるというニックニックした感じがだるいんですよね。厚労省も保健所もセンターも頑張っているだけに、うまくこのあたりの社会問題を拾って、立法化してくれる議員でもいればかなり解決するんじゃないかと思いますが、どうなんでしょう。あんま票にならなさそうだから興味ないのかな。





 


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