いつも畏友・中川淳一郎さんと漆原直行さんとでやってる書籍イベント『ビジネス書ぶった斬りナイト』というのがありまして、また濫読系読書家メディアになっているスゴ本も人気を集めるなど、いやー、本ってとっても楽しいですねと思える日々が続いております。言っておきますが、仕事や育児に疲れて現実逃避をしているわけではありません。
ビジネス書ぶった斬りサイト(仮)
http://buttagiri-site.cocolog-nifty.com/blog/
わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
http://dain.cocolog-nifty.com/
で、本を探すのに「話題になっているのを買う」という行動様式に偏ると、例えばamazonでベストセラーをピンポイント買いするケースが増えてくる。でも、それはソーシャルメディアやネットなどで巧妙に宣伝された書籍のみが売れていく傾向に拍車をかけてしまうわけですね。別に通だから、読書家だから、こうだっていう話じゃなく、Kindleにせよ電子書籍にせよ「より良い本と出合う」ために金銭と時間を遣ってでも邁進したいと思うとき、本屋という仕組みはベストだと考えるのです。
てなもんやで、今年一年も暮れますけれども、ここ一ヶ月ぐらいで面白かった本を列挙してみたいと思います。
■『金融の世界史―バブルと戦争と株式市場―』(著・板谷敏彦)
月刊『MONOQLO』の書評連載で取り上げたところ、反響が大きかった一冊です。ある意味で金融史に興味のある人たちからすれば『バブルの歴史』その他で南海泡沫事件やらチューリップバブルといった定番は良く知っているところも踏まえ丁寧に論考している一冊です。
これ、金融が期待の産物であり、貨幣経済は常にバブルであるという定番ネタを知らなくても、通説金融史を通しながら「そういえば、自分の仕事って本来の価値と比べてどれだけ期待を集めているのかな」というような着眼点も得られて良いと思います。といって、通読するのにそれほどの時間はかかりません。この本をレファレンスにして、他の書籍へ飛んでいくのもまた面白いかもしれません。
■『専門記者 200人が選ぶ 明日を拓く55の技術』(編著・日経BPテクノインパクトプロジェクト)
最初は何がぶつかってくるんだろうというドキドキ感があったんですが、ページをめくってみると思った以上に明日が拓いていたのでお奨めです。まったく仕事に関係ないけど、ちょくちょくケンプラッツや日経コンストラクション、日経アーキテクチュアなど流し読みしておったわけです。ただ、技術の概要を眺めるだけで「ヴォー すげー」と感じられるのは適度に抽象化され、また書き手の技術に対する熱量みたいなものが伝わってくるからなのでしょう。
私の良く知る領域では、さすがにワイドギャップパワー半導体や光伝送といった、もう手に届く立派な技術についてもしっかり取り上げられています。これら一個一個の技術分野で着実な研究開発ができていけば、我が国は明日を拓く力を磨き直せることでしょう。
■『繁栄と衰退と』(著・岡崎久彦)
最近の本ではないですが、このところの安倍政権の外交に一定の影響力を与えている岡崎久彦さんの好著です。純粋なヨーロッパ史の俯瞰という点ではやや異論が出る部分もあるかもしれませんが、経済力に対する嫉妬も含めた感情によって経済は大きく左右されるものだという点で、板谷さんの『金融の世界史』と異なったベクトルから知識を補完できる形になります。
引越をした荷物を整理しているうちに発見し、用意もそこそこに思わず読み直してしまったのでここに掲載するわけなんですけれども、amazonで見たらもう出てないんですね。惜しいことです。
そのうち、もう本屋で買えないよ選書でもやろうかと思うぐらいですわ。
■『勝ち抜く力 なぜ「チームニッポン」は五輪を招致できたのか』(著・猪瀬直樹)
例の5,000万で埋没した我らが前都知事猪瀬直樹さんの手による、スキャンダルの渦中に出版されてしまう運命の書であります。この本の発売日が著者自らの辞任会見と重なって、ある意味で「おいしい」わけですが、それを抜きにして純粋に書籍として読むならば、猪瀬直樹という作家としてのそれではなく、著名人本の立て付けのように感じられます。
ああ、猪瀬直樹さん急いで書いたんだろうなあ、または口述筆記の体裁でライターに書かせたのかなあ、と思うようなレファレンス性の低い内容で、その代わり一人称として猪瀬直樹さんが取り組んだことが時系列に羅列していて臨場感はとてもあります。本書で惜しいところといえば、やはり著名人の関わりばかりが前に出て、共に誘致に汗したであろう事務局や都職員、官邸の面々ほかの具体名がほとんど見られないこと、また誘致に大きな貢献を果たしたはずの安倍政権の担当や森喜朗元首相、あるいは広告代理店の皆さまといったところがごっそりと抜け落ちていたところでしょうか。もう少しそのあたりに幅広く目配せができる御仁であれば、スキャンダルに見舞われてももう少し援軍が出ただろうにと思うところであります。
ゆるゆるとぶった斬りブログの書評も増やしていこうと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
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で、本を探すのに「話題になっているのを買う」という行動様式に偏ると、例えばamazonでベストセラーをピンポイント買いするケースが増えてくる。でも、それはソーシャルメディアやネットなどで巧妙に宣伝された書籍のみが売れていく傾向に拍車をかけてしまうわけですね。別に通だから、読書家だから、こうだっていう話じゃなく、Kindleにせよ電子書籍にせよ「より良い本と出合う」ために金銭と時間を遣ってでも邁進したいと思うとき、本屋という仕組みはベストだと考えるのです。
てなもんやで、今年一年も暮れますけれども、ここ一ヶ月ぐらいで面白かった本を列挙してみたいと思います。
■『金融の世界史―バブルと戦争と株式市場―』(著・板谷敏彦)
月刊『MONOQLO』の書評連載で取り上げたところ、反響が大きかった一冊です。ある意味で金融史に興味のある人たちからすれば『バブルの歴史』その他で南海泡沫事件やらチューリップバブルといった定番は良く知っているところも踏まえ丁寧に論考している一冊です。
これ、金融が期待の産物であり、貨幣経済は常にバブルであるという定番ネタを知らなくても、通説金融史を通しながら「そういえば、自分の仕事って本来の価値と比べてどれだけ期待を集めているのかな」というような着眼点も得られて良いと思います。といって、通読するのにそれほどの時間はかかりません。この本をレファレンスにして、他の書籍へ飛んでいくのもまた面白いかもしれません。
■『専門記者 200人が選ぶ 明日を拓く55の技術』(編著・日経BPテクノインパクトプロジェクト)
最初は何がぶつかってくるんだろうというドキドキ感があったんですが、ページをめくってみると思った以上に明日が拓いていたのでお奨めです。まったく仕事に関係ないけど、ちょくちょくケンプラッツや日経コンストラクション、日経アーキテクチュアなど流し読みしておったわけです。ただ、技術の概要を眺めるだけで「ヴォー すげー」と感じられるのは適度に抽象化され、また書き手の技術に対する熱量みたいなものが伝わってくるからなのでしょう。
私の良く知る領域では、さすがにワイドギャップパワー半導体や光伝送といった、もう手に届く立派な技術についてもしっかり取り上げられています。これら一個一個の技術分野で着実な研究開発ができていけば、我が国は明日を拓く力を磨き直せることでしょう。
■『繁栄と衰退と』(著・岡崎久彦)
最近の本ではないですが、このところの安倍政権の外交に一定の影響力を与えている岡崎久彦さんの好著です。純粋なヨーロッパ史の俯瞰という点ではやや異論が出る部分もあるかもしれませんが、経済力に対する嫉妬も含めた感情によって経済は大きく左右されるものだという点で、板谷さんの『金融の世界史』と異なったベクトルから知識を補完できる形になります。
引越をした荷物を整理しているうちに発見し、用意もそこそこに思わず読み直してしまったのでここに掲載するわけなんですけれども、amazonで見たらもう出てないんですね。惜しいことです。
そのうち、もう本屋で買えないよ選書でもやろうかと思うぐらいですわ。
■『勝ち抜く力 なぜ「チームニッポン」は五輪を招致できたのか』(著・猪瀬直樹)
例の5,000万で埋没した我らが前都知事猪瀬直樹さんの手による、スキャンダルの渦中に出版されてしまう運命の書であります。この本の発売日が著者自らの辞任会見と重なって、ある意味で「おいしい」わけですが、それを抜きにして純粋に書籍として読むならば、猪瀬直樹という作家としてのそれではなく、著名人本の立て付けのように感じられます。
ああ、猪瀬直樹さん急いで書いたんだろうなあ、または口述筆記の体裁でライターに書かせたのかなあ、と思うようなレファレンス性の低い内容で、その代わり一人称として猪瀬直樹さんが取り組んだことが時系列に羅列していて臨場感はとてもあります。本書で惜しいところといえば、やはり著名人の関わりばかりが前に出て、共に誘致に汗したであろう事務局や都職員、官邸の面々ほかの具体名がほとんど見られないこと、また誘致に大きな貢献を果たしたはずの安倍政権の担当や森喜朗元首相、あるいは広告代理店の皆さまといったところがごっそりと抜け落ちていたところでしょうか。もう少しそのあたりに幅広く目配せができる御仁であれば、スキャンダルに見舞われてももう少し援軍が出ただろうにと思うところであります。
ゆるゆるとぶった斬りブログの書評も増やしていこうと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。