月別アーカイブ / 2011年11月

 先日、中国での弊社ビジネスについて、ネット上だけでなく既存取引先からのお問い合わせも相次ぎ、皆さま中国との付き合い方を随分悩んでおられるのだなあと思いつつ、一方で私の文章力が拙かったこともあり誤解された点が多々あったので、修正も兼ねて補足エントリーを書いてみたいと思います。

中国市場から撤退する弊社から、中国でアプリを売りたい皆さんへ
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2011/11/post-c357.html

■総論

 弊社およびグループの対中国ビジネスは一貫して黒字が続いており、今回拠点を引き上げる決断にいたったのも、当初合弁会社へ投資した金額からは随分割高に株式を引き取ってくれ、また保有してきた中国企業が民営化された中国のサービス企業に株式交換で買収されてそこがナスダックに上場したことで上場益が入った経緯がありました。

 そのままビジネスを中国で行うにあたり、拠点を持っている必要があるか、苦労してハンドリングしてプレイヤーとして留まるよりも、いったん利益を確定させ、比較的信頼できる中国企業とのパートナーシップを前提にビジネスを再構築したほうが、将来的に継続して利益を上げ続ける可能性が高まるのではないか、という判断をしたからです。
 懸案に思っているのは、先般のエントリーにもありますとおり、知的財産権問題です。属人性の高い知的財産を、中国人に移管した途端に経営が不安定になること、その結果として、継続的に事業で利益を上げていくには理想から程遠い状態になることを懸念しました。したがって、独立したい中国人幹部やプロデューサーにはむしろ起業を奨励し、彼らに投資する形でダメージコントロールを図りましたが、巧くいったケースもそうでないケースもありました。

■日本の政策ミス

 撤退判断を考えるうえで、どうしても念頭に置かなければならなかったのが「日本の外交的な後押しは得られうるか」でした。これは、弊社と行動を共にした大手パートナー企業の中国進出の際に、もっともネックになったところですが、日本では結構簡単に中国のパクリ問題を捉えるものの、現地で事業をするに当たって「回収」、とりわけ海賊版というのは本当に死活問題で、これらのリスクを回避するためにどうしても中国の現地企業との信頼関係を築くことがどうしても大事になりました。

 タイミング悪く上海万博が終わり、海賊版のみならず社員の引き抜きとそれに伴う情報流出が相次いで、また私どもの大手パートナー企業が中国系コンテンツ企業に騙されて二桁億の損害を出したことを契機として、彼らが中国でのビジネスを縮小せざるをえない状態となりました。弊社も提携先の変更を迫られ、とはいえ中国と一口にいっても上海とシンセンと大連、北京では事情が違いますので、あるパートはドイツ企業と、また別のパートはアメリカ企業とご一緒することになりましたが… 海外企業と一緒に仕事をしてみて驚いたのは、中国でのビジネスでのトラブルに、アメリカの商務省やUSTRが具体的なトラブル収拾に乗り出してきてくれたり、解決のための道のりをネゴってくれる、という事態がたびたびあったことでした。

 私個人の見解では、日本貿易会やJETROの現地オフィスはとてもよく対応してくれました。優秀な人たちだろうと思います。で、それら現場の仕事の秀逸さ、前線での善戦よりも、もっと大本営としての介入力という点で、日本政府をバックにしているのと、アメリカ政府がいるのとではまったくトラブルの収拾力が違うというのを実感することになりました。

 知的財産権に関する部分については、日本の知的財産に関する考え方は相手がある程度穏便であり、話を聴いてくれる前提で進めるドクトリンになっています。もちろん、日本人として、信頼できる中国企業を選ぶという方法を頑張ってとるのですが、中国企業のトップは信頼できても、管理職から現場にかけてはまったく信用できないというケースが目立ちました。なので、トップ同士が意気投合して、日中で良い物を作ろうと勢い良く握手をした翌朝に現場のマネージャー同士が意見の食い違いで立ち往生するという事例が日常茶飯事で起きます。

 弊社の場合は、提携関係を軸に事業をする方針でしたので(人が少ないもんで)、ドイツ企業やアメリカ企業、ロシア人といった混成部隊であって、バックはむしろ日本の化粧品メーカーさんが善意で取ってくれたところがありました。これ以上、化粧品メーカーさんに迷惑をかけられないというのも拠点撤収のひとつの理由ではあるのですが。

 また、日本の政策ミスは、中国市場参入における朝令暮改の非関税参入障壁ともいえる文化政策に対して効果的な修正を求める手段が存在しないことでした。ある日突然、PC向けオンラインゲームのサービスを停止させられたり、すでに半金支払った広告が途中で掲載できなくなったりするわけなんですけれども、強いコネがあり、契約があったとしても反故にされるケースが頻繁に発生することになりました。これも、一部サービスの権利をアメリカ資本の会社に譲渡し、中国企業との合弁企業の株式を一部アメリカ人投資家グループに譲渡することで相当解決しました。

 日本政府が日本企業や日本人の在中国権益の保護、確保に役立っていない、というのは、コンテンツ投資や制作事業で比較的多額の投資を先行して行わなければならない事業体からするともっとも改善して欲しいポイントのひとつであり、知財本部や外務省があまりこのあたりの改善に熱心でなく、クールジャパンとか言ってるのを本当に早くどうにかして欲しいと思います。特に経産省、お前らが税金でハリウッドで映画作ってどうすんだよ。

■直近の在中ビジネスについて

 最近だとGREEなどもパートナーを伴って中国進出しようとしたりしておりますが(相手はチャイナユニコムだそうだけど)、中国は中抜き上等のビジネススタイルが横行しており、非合理ではあるけどそれはそれで仕方がないという文化であります。もし私に大規模な投資を専権でできるのならば、自ら海賊版を出して後発の参入者が商売にならないぐらい市場を壊したいと思うぐらい、ビジネスでのぶら下がりが多くて大変です。

 それでも、中国でのデジタルコンテンツの販売は総額として伸び続けており、加入者のケタが違うのと、そういう人たちに一斉に同じものを売り出すとやはりそこそこの金額になるんですが、参入当初は7割8割を相手方に持っていかれるのは覚悟したほうがいいと思います。ついでに、相手が出してくる売上レポートも、正規のものが偽造とかいう笑える場合がありまして、先方幹部が勝手に自分自身の決済会社を作り証明資料を出してくるとか、本当に中国人のそういうところが私は嫌いでしょうがないんですけれども、どうにかして正味の売上証明が得られるパスを作っておかないと本当に死ねます。

 また、日本でアプリ開発をしている会社で、中国にローカライズしたものを売りたいという会社さんがあるようでしたら、いつでもご紹介しますしお手伝いしますのでご連絡ください。ローカライズやアップデートは対応するので、ソース貰えれば日本国内で全部作業を済ませて中国のキャリアやメディア系に売らせることはできます… もっとも、上記理由で手数料は高いけど。

 中国の拠点撤収の理由は、本当にソースごと持っていかれるケースが多かったからで、国内にラインを移したら随分問題がなくなって、利益率も単品事業としては問題ないぐらいに回復したのが大きいです。

■日中貿易、対アジア貿易やTPPについて

 諸事議論はあるけど、資源のない日本は人が財産であり、付加価値をつけて貿易を盛んに行わない限り、エネルギーの調達もできず経済が沈没してしまうのは自明のことであります。

 また、政府の無駄を減らそうという話になった先にあるのは農家の戸別保障など、本来は競争力を持っている高品質な農産品を生産できるにもかかわらず補助金漬けにした結果、疲弊した地方経済が合理化の機会を持てず、資金を稼いでくるべき産業の足を引っ張っているという状態に問題があると思っています。

 そもそも円高と言うのは日本の競争力の総体的な反映であって、去年の輸出が67兆、輸入が60兆で、そりゃ円高になりますよ。なので、より付加価値の高い部分を日本国内で担当し、海外にはアセンブルや量産など低付加価値なものをお願いしなければ事業としても成り立ちません。空洞化というのは、低付加価値の作業が海外に出て逝っていることであって、私どものような虚業ぽいけど付加価値の高い世界はお引き合いがとても多く、増収ベースは変わらないわけです。

 その日本の、最大のお客さんは中国であり、東南アジアです。輸出の一位は中国。対中輸出は17兆、輸入は13兆で、貿易収支は4兆円のプラス。弊社のグループ(兄弟会社含む)としても、売上の海外比重は80%に近くなっており、日本市場だけでどうにかできる状態ではありません。

 各論で言うと、TPPに反対論が多いのは分かります。日本の優れた医療保険制度や、農協・漁協など、あるいは私の直面している知的財産権の問題など、日本が従来から持っていた良いシステムを手放すのはよろしくない。ただ、それらの日本のより良い仕組みというのは、海外でしっかり稼いで日本に資金を還流してきてくれる、稼ぎ手の産業が元気だからであって、これらのなかで本当に高付加価値な部分を担当するセクションが海外に出て逝ってしまったら、年金も医療保険も財源がなくなり、教育が立ち行かなくなるのは当然のことです。

 日本の中産階級の没落は、諸先進国の現状と同じように、中産階級のやってきたことが世界経済の進展と貿易の充実によってコモディティ化し、後発国の労働力に置き換わってしまったからだと思います。では、すでに地位を失い、所得がなくなった彼らが、海外の安い労働力を防いでくれと言って、どうにかなるものなのでしょうか。

 私個人の考えでいうならば、戦って勝ち、生き残るために、自由貿易に賛成です。それは、日本により多くの税金を払い、仕事をしたくても無理な人々に無償の訓練を施し、これから社会を担う人々に無理のない金額で教育を受けさせ、真面目に働き日本社会の安定に貢献してきた老齢の人々に安寧の余生を送って欲しいと願うからです。ただし、日本はもとから自給自足の経済などあり得ません。貿易の自由化によって職を失い、当面の生活に困窮する人たちも出てくるのでしょう。そういう人たちのためのセーフティーネットを用意し、移行期間をしっかりと考えつつ、より日本経済を対外的に開き、経済効率を上げていくための施策を打っていくべきだと思います。

 この議論に際し、TPPがどうのというのは矮小化しすぎとも思いますし、どうも世情での議論が雑なこともあって、個人的にはどうでもいいんじゃねえのと考えていたりします。また、同様に陰謀論めいた反米思想とTPPがくっついてて、微妙な感じもするので、もうちょっとどうにかならんのかなあと。

 中国やアジアでの事業は、苦労も多いけど思索と試行錯誤の果てが様々あり、少なくとも2001年から足掛け10年近く、ファンドやコンテンツ制作の現場で得た知見はどっかでまとめたいと思ってます… やらないかも知れんけど。

■補足

 と、偉そうに書きましたが、大変お世話になった在中国ビジネス30年の恩人他皆さまからは、私の中国人嫌いが表に出ていて、中国人と同じかそれ以上にはっきりとモノを言い過ぎる私の気性をどうにかしろと言われ続けてきました。果たしてその通りとなり、むしろ信頼の置ける日本人やドイツ人に中国事業を預ける形となりましたが、もうしばらくは東京とシンガポールを拠点として、ベトナムやタイでの事業確立、拡大にフォーカスしていきたいと思っています。

 どうしても勘違いが混ざるのは仕方がないし、間違いを犯すなということを言いたいわけではないのだが、明らかにガセネタの部分はたとえ2ちゃんねるのコメント引用であったとしても編集して掲載している以上、サイト運営者の発言と捉えるわけですね。

アニメ2クール(6カ月)だと3億円
http://blog.esuteru.com/archives/5446793.html

 元発言は電撃文庫の三木一馬さんの発言であり、これは別に構わないんですが、波料や代理店の話は2ちゃんねるのコメントを引用する形で解説されており、これがまた無茶苦茶で、「ネタをネタと」とか「荒らしに反応するのも荒らし」というレベルではないと思うので、理性があるのであればせめて撤回、修正して欲しいものです。
[引用]6 名前: なまえないよぉ~ 投稿日:2011/11/29(火) 23:42:04.05 ID:EQ878kcS
テレビ局に50%
広告代理店に30%

実質2クールは6000万円で作れる
ニコニコ専用アニメとか流行りそうだな


 もう、作れるものなら作ってみろ、という感じですが、引用しているからには本当にできると思わせる根拠か何かがあるのでしょうか。

[引用]10 名前: なまえないよぉ~ 投稿日:2011/11/29(火) 23:43:27.69 ID:4iupEn2t
その内の2億は広告代理店と放送局に抜かれてるんですけどね


 これもねえ。2億も抜けるんだったら、代理店ももっと必死にアニメ枠を増やそうとするんでしょうけどね。

 まあ… アニメが好きならば、もう少しでいいので事業構造や放送までの仕組みを読んでおいて欲しいものです。

 義理で某コンテンツのお通夜に参席し、単に葬送を見送るだけかと思いきや、まったく関係のない方面から「クソ野郎」呼ばわりされたようなので、分かる人だけ分かってね的な一般論を書きます。事情を知らない人にはちんぷんかんぷんかもしれませんが、戦訓として成り立つように極力一般化して書きますのでご容赦を。

■発注側の問題

 究極には、自分の権限や立場を守るために、さまざまな正当化を図って「社運を賭ける」動きを取るわけです。

 「失敗したら、責任を取る」とは言うんですけど、前の失敗のときも別に責任取らずにリストラだけ進めて部下切って黒字化したわけで、その経緯を考えれば関が原前夜の空手形書簡のようなものだと思うんですよね。
 それを聴いて、真に受ける社内も問題ですが、前々回も前回も同じような失敗をして、責任を取らずにポジションに居続ける大御所を斬らない他の経営陣が罪深いと思ってます。せめて株主のためにも解任動議ぐらいは出すべきじゃないでしょうか。

 一億歩譲って、彼の後に、襲うべき人間がいない、余人をもって代え難いという判断があったのだとしても、単に指示を受けて実直に制作しただけの人々に失敗の責任をおっ被せて追い込むのはよろしくないと思います。もう、この時点で日経ビジネスかFACTA送りになるべき問題じゃないかと思うんですね。

■受注側の問題

 いくらにんじんをぶら下げられて「失敗したら、責任を取る」と言われたからって、まったく素人で、できもしない案件を受注して、もうどうしようもなくなって、なお自分ひとりで抱えるのはやめてください。無理だと分かっていたなら、先にどうにかできるような筋道を作っておくのがプロだと思いますが、どうも本気で無理だと思っていなかった、自分ひとりで全部できると思っていたようで、それはそれでマズいんじゃないでしょうか。

 で、もう収拾がつかない、ダメだ、と分かったことはお通夜の席で明確になったのであれば、いまからでも自分から降りると言わなければ、その場にいた各社各員全員が等しく損害を蒙る結果になります。っていうか、そう言ったんだけど、まだ降りる気配がないのが驚きです。

■倍プッシュの問題

 確かに今までの実績を考えたら銀行からの借り入れはできるでしょうし、そのあたりの心配は外部の人たちからはされないでしょう。でも、もう火の車なんですよね。理由は単純、成功を重ねても、次の事業機会に前回の成功の儲けを全部注ぎ込んじゃう経営をやっているから、一回外れると連鎖してキャッシュが出て逝ってしまう事業構造になっるからなんですよね。

 小学生のお年玉じゃないんだから、そろそろそういう甘えた事業構造は考え直すべきポジションに来ていると思います。制作側だから、クリエイターだから、と言って許されるのは大手にかわいがられて下請けできている状態までだと考えたほうがいいんじゃないかと。

 もし、それでもなお理解できていないのだとすると、社内や側近が本当の意味で茶坊主の巣窟になって、太鼓持ちに担がれていい気分になっている証左だろうと思います。「諫言耳に痛し」とか洒落たことを言いたいんじゃなくて、本当に潰れますよ。

 指示待ちの茶坊主や、知った顔のパトロンはさっさと切って、自分の足で立てるところまで事業を立て直したほうがいいと思うんですけど、まあもう無理かな。

 以上、12年生き残ってる博打打ちである私からの妄想発言でございました。

 というわけで、mixiがアクセス激減風評の元となったネットレイティングスの調査結果に抗議をしたので、当のネットレイティングスから、がっぷり四つのマジレスが返ってきました。まあ、中身は当たり前のことなんですけどね。あくまでPCベースでは、という形ですが、mixiはとっくにFACEBOOKに抜かれておりました。

「mixi」訪問者数は横ばい、ネットレイティングスが再集計グラフを公開
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20111128_494088.html
「最新SNS利用動向レポート」を更新しました。
http://www.netratings.co.jp/news_release/2011/11/sns-report-Oct-2011.html

 mxiのフォローをしますと、メインのユーザーは携帯電話からのアクセスになっておりますので、必ずしもユーザー数が激減したわけではありません、ということになろうかと思います。良かったですね。

 単純に言えば、

NR「計算方法をより正確にしてみたわー」
ループス斉藤「なんや。先月からえらいアクセス下がっとりまんがな。騒動や騒動や」
mixi「ちょ、なんでうちが涙目なグラフになってんの。下がってないし。NR、どういうことか説明せい」
NR「あー、ごめんごめん、mixiの訪問者数はすげーゲタ履かせてたわ。正味の数字はこれな」
mixi「」

ということで、予想通りの結論となりました。諸関係者の皆さま、お疲れ様でした。

Mixiの広報は数字が読める ~対ネットレイティングスの場合
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2011/11/mixi-7c10.html
 ところがですねえ、mixiが出さんでもいい情報を出してしまったので、とんでもない地雷を踏んでる可能性が出てきているわけでありまして…。

ミクシィ、mixi利用者数の推移グラフを公開……ネットレイティングスの発表を受けて
http://www.rbbtoday.com/article/2011/11/28/83387.html

 ああ、激減という風評を払拭するために社内のデータ出してきたんだなあと思うわけですが、これ、よく見てごらんよ。

 NRによると、統計的にはPCからのmixiのユーザー数は838万5,000人相当。

http://image.itmedia.co.jp/l/im/news/articles/1111/28/l_sk_netratings_03.jpg

 マルチデバイス、重複上等でmixiが提示したPC利用者動態は50%超。

http://www.rbbtoday.com/article/img/2011/11/28/83387/166524.html

 そんで、mixiが公表したMAUは1,516万人という。

http://www.rbbtoday.com/article/img/2011/11/28/83387/166523.html

 するってえと、ネットレイティングスの今回修正した数字を元にmixiの利用者を推定すると、標準偏差次第だけど1,450万人から1,550万人ぐらいと予想され、すなわちmixiが提示した数字がすっぽり君じゃないですか。誤差率2%台と、ネットレイティングスの調査力すげえという話であって、実に正確です。つーか、ドンピシャ。もちろん職場と自宅のダブルカウントはあるわけですが、そんなものは広告を出した側が売れた時間帯と人数で調整するんで心配要りません。

 ネットレイティングスの提示した折れ線グラフも「PCベースでみたmixiには元からそんな動員はありませんでした」という意味合いであるし、むしろいままでネットレイティングスによってmixiは高めに動員を見積もられ続けてきていて、むしろmixiとしては抗議するのではなく「いままで高めに数字を言っててくれて、ありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます」という話をすべきであって、変なグラフを作りやがったループスの斉藤さんに文句を垂れるべき内容だったんじゃないの、という結論になります。でもまあ、最初に数字見たら確かに激減してるし、興味本位でグラフ作るとああなるよな。分かる分かる。

[引用] これに対してミクシィでは、自社データの調査を実施しているが、利用者数に関して大幅な減少は無いと説明。また、mixiは各デバイスを併用するユーザーが多く、約5割がPC、約8.5割がモバイル・スマートフォンからのアクセス(重複あり)となっており、ネットレイティングが集計するPCからのアクセスのみのデータはサービス全体を表したものではないと反論し、こうした誤解を与える解釈が生じる調査を行ったネットレイティングに対して「公式説明を求めている」としている。

 いや、結果としてPCを主とする調査とユーザーからのアクセス属性の情報があれば、より正確な動員力は外部から予測可能、という事実が今回はっきりと明らかになったのであり、広告主からしますと福音だったんじゃないでしょうか。誤解を与える解釈は一切生じず、結論としてはネットレイティングスの調査の正確さだけが際立つ結果となりました。

 この調子でamebaの実数のMAUやPVについてもニールセンが獅子奮迅の情報公開力をし、ループスに騒動の輪を広げていただいて、騒動に拍車をかけていただきたいと願うところであります。

 ちなみに、ネット業界の各媒体の「自称リーチ」とネットレイティングスから発表されるネット視聴率、一度広告を出してみた反響から予測されるモバイルアクセス率を組み合わせると、各メディアの公表数字の誠実度が下はサイバーエージェントから上はダイヤモンドオンラインまで結構はっきりリストが作れたりするようです。mixiに関して言うと、私個人は誠実で商売がまともな会社だと思っておりますので、広告出稿料は実態に即してもうちょっと安くしていただき、風評に惑わされず、着実に事業を展開しつつ真顔で工事中のマンホールに落ちるなどして殺伐としたウェブに笑いをもたらして欲しいと思います。

 本当にありがとうございました。

 弊社・イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社は、投資先と合弁で行っていた大連の開発拠点事務所を閉鎖し、社員および他拠点ごと合弁先に全株譲渡し、中国での開発から撤退しました。残るラインは、国内で吸収するか、ベトナム・ダナンかハノイかに事業協力先とご一緒し新設する会社に移行させようか悩んでおります。どうしたら合理的なんでしょうねえ…。

 いま、ソーシャルゲームを含むデジタルコンテンツの開発などで中国に進出する会社が増えていて、成功例も徐々に出てきているのですが、提携や合弁会社を設置した当初は凄く良好だった関係も、なぜかビジネスがうまくいったり、特定の中国人の才能やセンスに依存したモノづくりになった瞬間に、どうしても関係がギクシャクしてしまうことが多いように感じます。
 中国でのアプリ販売は確かに伸びておりまして、信頼できる良い提携先が見つけられるのであれば、中国独資か合弁会社を設立するかに関わらず、全面的に投げ捨てる感じでお付き合いしていく他ありません。また、中国人コーダーやデザイナーをラインに組み込んで、安価にデジタルコンテンツを制作したいということであれば、当初であれば中国人だけのチームでも充分な品質で制作が可能になってきました。

 オンラインゲームの世界では、日本で国産のオンゲを作る必要がほぼなくなりつつあります。工期の短い、クオリティ重視で日本人にまずしっかり売りたいコンテンツの設計、制作をする場合は、日本国内でラインを組むのが合理的だと思いますが、MMOライクなブラウザゲームを制作するようなケースでは、もはや中国の会社を抜きにコストダウンを図ることは無理な状況になってます。

 また、携帯電話向けデジタルコンテンツにおいても、制作も販売も、そこそこの規模で充分な利益を挙げようと思ったら中国のラインにどうしても頼らなければならなくなりました。一言で言うなら、長打を狙わないで手堅くアプリを売っていくのであれば、中国市場の中だけで回ってしまうぐらい、充分な販売ボリュームと制作能力を持つようになりました。

 一方で、2つの弊害があります。技術やノウハウの流出と、制作費の高騰です。前者は、ぶっちゃけうまくいけばいくほど、日本人が外されるようになります。理由は、日本人高いから。ある程度、中国人のラインで回るようになっちゃうと、中国人のプロマネが日本人を外す工程を出してくるんですよね。例外なく。もちろん、理由は明確で、「私の管理しているプロジェクトで利益を出そうとすると日本人の人件費は賄えません」ということで、そういわれると「そうか」となってしまう。

 で、そのプロマネはゲーム開発の2サイクル、3サイクルも経験して、独り立ちできるかなといったところで辞めてしまう。これはもう見事に辞めていきます。もう、人材の流出と、それに伴う技術やノウハウの流出は宿命と思っていいと思いますが、この点は後述。

 辞めてしまうのを指くわえて見ているだけ、というわけにもいきませんので、防衛策としてもっとも手っ取り早いのは日本に連れて来てしまうか、給料を上げ昇進させるかといったところですが、どうであれ、制作コストの上昇に繋がります。3年前は4万円の月給でニコニコ働いて徹夜も厭わなかった中国人が、いまでは3倍の12万、それでも15万だ20万だと引抜がかかるので、もうこれは致し方ありません。

 結果として、日本の地方都市で頑張っている制作会社と連携したほうが、クオリティは安定するわノウハウは保てるわ量産効果はきっちり出るわで、国内向け海外向け問わず制作は日本に集約したほうが安いし品質が高いんじゃないのという議論になりつつあります。もちろん、弊社でも対応をどうしようか悩むところではありますが。

 したがって、中国市場で重要な部分のR&Dやコンポーネントの制作は行わず、汎用的でコモディティ化されている部分、例えばUnity振り回すとか量産が必要なモデリングの部分だけ作らせるとか、そういう限定された量産工程だけ中国企業にお任せするという形にならざるを得ないのかなと。もしくは、某社の下請けのように、某社が社内で作ってるクソのようなフレームワークを使えと強制された場合に、ある種の死に兵的に中国企業へ委託するという形ぐらいまででしょうか。

 また、独り立ちしてしまう中国人幹部対策として、移籍されるぐらいなら独立させて、その会社に出資させてもらって仕事を回す、という荒技が役に立ちます。もう、ノウハウ流出は、してしまったものは仕方がないので。結果として、中で抱えて人件費が高騰するのを抑えられ、むしろ安くなったりとか、ただ、自社で頑張って企画してた内容が丸ごと流用されてガワだけ変わって別の会社からリリースされるとか日常茶飯事になりまして、もうどうしようもないよなあと思うところで。

 日本人側の反省としては、やっぱりダイナミズムが乏しいというか、決断が遅いので、どうしても商談がまとまらず、大口の話はどんどんアメリカやドイツの会社に取られてしまうという現実があります。というか、ホテルのロビーでカバンに現金持ち込んで版権交渉してくる中国人とかマジヤバイ。比較的判断の速い私でさえ慎重に見え、日本人の中ではドライに思われる私が中国人から見ると人情味のある日本人に見えてしまうというこの現実。

 とはいえども、ゲーム業界に限らず中国はひとつの産業に関わる人が多すぎて、商売のグロスが大きくてもシェア先が幾つもぶら下がる形になりますので、何のコネもなく参入しても食い物にされて終わります。日本の出版社とかだと、appleに30%取られてけしからんとか、Amazonが55%取るとは何事だと言ってますが、中国だとコンテンツ提供側がローカライズ含めて取れるレートが20%台とかザラです。モノを売るのに、80%取られる。でも回収を面倒見てくれて、次々とモノを捌いてもらうには我慢しつつ、信頼関係を築いてもっと良いレートの版権開発をしていく、という立て付けに。

 最後に、東南アジア向け市場への販売対策。これ、結構曲者。まあ、iTunes storeとかで売る分にはappleが面倒見てくれるので問題なし。ただ、オンゲやAndroid向けは超カオス。どうしたらいいんでしょうね。助けてJETROって訳にもいかないし、仕方がないので強くなった円を抱えてリアル人間魚雷でやっていくしかないのでしょうか。それでも、日本人代をどう捻出するかが頭の痛いところではあるのだけど。

 目下の悩みは、もう下請けで潜水艦のようにやっているだけでは、仕事がスケールしないし、個別対応の嵐になって、疲弊してしまうのが眼に見えている、というところです。人件費12分の1の人たちと真正面からの競争などできない。今抱えている業務のどこに利益の源泉があり、どこに一番カネのかかる、信用の置ける日本人を配置し、どこを失ってもいいと考え、ダメージコントロールを図っていくか、というところでしょうか。このバブルが続いている間に、何らかの着地をして、一定の地位を確保しておきたいと考える日々です。

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