月別アーカイブ / 2010年08月

 もともとはちきりん女史の釣りエントリーだったのが、何故か罪山罰太郎氏に遊爆しており、とても微妙だったので、ちょっとした反論など。

児童虐待を減らす為に
http://d.hatena.ne.jp/tsumiyama/20100802/p1

 罪山氏指摘の対応バイアス(attribution error)については、それが成立する基本的条件や平行条件が明確じゃないので、政策論争としては片手落ちだろうと私は思うのだが、以下分かりやすく書こうと努力する。
 いきなり「1. 混ぜるな危険! 個人(ミクロ)と社会(マクロ)」から「2. 虐待を誘発するもの」へ至るところで議論の誘導があるんですけれども、

[引用]「頼るもののないシングルマザーが、経済的にも追い詰められて虐待を引き起こしてしまう」

といった感じの主張がなされています。

俺が知る限り、多くの統計データがこの主張を裏付けています。


[引用]虐待家庭の状況で最も多いのは「経済的困難」。また「ひとり親世帯」でも虐待の発生率が有意に高くなっています。

ついでにいえば、シングルマザー世帯の年収は平均で214万円。日本では「ひとり親」と「経済的困難」はセットになりやすく、国際比較でも、ひとり親世帯の貧困率が主要先進国の中でトップだったりするのです。


 これは当たり前の話で、統計データで言うならば:

虐待家庭の状況(Alignment)で最も多いのは「経済的困難」とのことで、

 同様に:

原チャリ事故の加害者の状況で最も多いのは「経済的困難者」であり、

傷害事件の加害者の状況で最も多いのは「経済的困難者」であり、

自転車盗難や万引きなど軽犯罪・窃盗犯の犯行理由で最も多いのは「経済的困難者」であり、

要は、反社会的・犯罪的要件を引き起こした人物の状況で必ず関与するのは「経済的困難」なんです。

 犯罪を犯すのは、概ねヤケを起こしてたり、八つ当たりしたい人なのであって、社会的地位が高く所得がある人は軽犯罪を犯しにくいという極当然の帰結となります。

 一人親が虐待する理由が経済的困難だ、だから一人親の虐待を減らすために経済的困難を国家や社会は解消するべき、という議論をするのであれば、同様の状況で発生している犯罪との「発生率や重篤度の見比べ」が必要になってきます。

 当然のように盗難を減らすために貧困を減らせとか、万引きを撲滅するために生活保護を与えろとか(どちらも加害者状況別にダントツ1位、ちなみに2位は飲酒)、政策論争的には「体調の悪い患者にはビタミンCを与えておくべき」というような、まあそりゃそうだし否定もしづらいけど意味は見出しにくかろうという話になるわけです。

 「3. バカを甘やかすとつけあがる?」でも対応バイアスの話は出てきますが、これ、こ申し訳ないんだけど、の問題を広く語るときには対応バイアスは関係ないでしょう。どんな犯罪者だって、犯罪にいたるまでの状況や経過、心理というものはあり、情状酌量の余地があっても犯罪を犯したからには犯罪者であり、犯罪を犯さなくて済む心理的状況を社会的に作り上げるべきと言われても、「じゃあどうすればいいんだよ」という話になります。で、結果が上記の「貧困をなくそう」というのは議論として極めて低質で、釣り要素満載だと思います。一番防犯に役立つのは地域パトロール(警邏)だった、というオチでありまして。

 大枠の貧困への対策は生活保護など政策的枠組みを用意するにしても、児童虐待などピンポイントの問題については、飲酒運転への徹底取締り同様に(もしどうしてもそのような虐待を減らさねばならない、という社会的コンセンサスができるならば、の条件付で)厚生労働省や警察庁の立ち入り権限を強化する方向で解決するほうがコスト的にも件数・事案的にも望ましいと考えます。

 「4. 出会い系のシングルマザーたち」以降も、犯罪者の心理についてのお話が続いておりますが、これこそがミクロの話であって、マクロとしての経済的貧困の解決を主張するのと筋違いだと思います。繰り返しますが、窃盗も軽犯罪も一般人による暴力も少年の非行(学校内暴力)も児童虐待も、統計上は有意に貧困問題を含んでいます。

 「5. ところで本当に金だけの問題なの?」については、今回の亡くなった2児の母に関しては報道されているとおり「父親などから生活扶助の申し出があった」等の要件もあり、また、置き去りにして転々とした先が友人宅であったということから考えても、本件事例に限って言うならば的外れと言えます。

 「6. ディストピア」については、根拠がはっきりしないので何とも。罪山氏の考えすぎじゃないかと思うんですが、何か具体的なデータがあるんであれば参考値としても見てみたい気がします。
 で、「7. 児童虐待って増えてるの?」については、世帯割で見ると横ばいだと思うんですけれども、ご説の通り介入事案が増えているため社会的な注目を浴びており、結果として虐待報道に触れる機会が増えて、なんとなく増大している印象がもたれている、という状況ではないかと考えられます。

 具体的事案については、表層的には厚生労働省や警察庁など所轄の役割を拡大し、一方で社会的には子育ての孤立を防ぐために家庭に産み手が回帰するというようなコンセンサスが取れればまずは対応としては上出来なんじゃないかと思うんですが。個人的には、核家族問題の一種だとも思っているので、祖父祖母も含めた大家族と核家族の中間のような形態がうまくつくれるといいなと。

 ある意味、ちきりん女史のワイドショー化が進行しており、とても興味深いのだが、またやらかしております。

誰が何をネグレクト?
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100801

 シングルマザーが児童二人を育てるのは大変→だから社会がもっと向き合うべき、という議論構成になっておるわけですが、

 ・ 社会扶助を受けながら独身女性が育児をしているのは推定34万世帯(某保険会社調べ)
 ・ 今回報道では、容疑者の親の支援を容疑者が拒絶している

 の2点から考えるに、行政が国民保護をネグレクトという話には本来ならんはずです。まあ、充分とは言えないけれども。
 むしろ、飲酒運転事故の取り締まり同様、育児ネグレストや虐待については厚生労働省や警察庁の立ち入り・介入権限を強化すべきかどうかという議論をすべきで、生活に苦しい育児ネグレクトの事例があったからといって公的支援を積み増せばいいという話はやや筋が通らんと思うわけですけれども。

 まあ、今回の件は、育児ネグレクトをした母親側が、ホストクラブに通うお金があったという点で、貧乏を前提に国家の支援体制の責任にするのに問題はあるんですけどね…。

(01:30 訂正) ネグレスト→ネグレクト ネグレストは人名であった…。

 出張でへろへろになっていたんだが、その間に死人は出るわ某シャブ関連で大物の逮捕者は出るわで散々になってるところでGIGAZINEネタが。

【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します
http://gigazine.net/index.php?/news/comments/20100802_gigazine_job/

 これは… ブラック企業としてのカミングアウトだとか、経営者としてどうなんだとか、さんざん言われているけれども、この編集長の言う「志」ってのが明文化されてないということを除いて死ぬほど正直なマネージャーなんだろうと思った。ことのついでに、何故かナタリーまで叩かれていて何だろうと思ったわけだが。
 もちろん、「経営者たるものそういうことは言うべきじゃない」とか「マネージャーとして失格である」とか「それはブラック企業志向ではないか」とか叩かれるべき要因を併せ持つので、正直すぎる発言は禁物なんだろうが、ネットでの活動で一定以上にインディーから大きくなるとき必然的に持つある種の「壁」のようなものは厳然とあると思う。

 ネットで人に読まれるものを書くと、多かれ少なかれ叩かれるんだけれども、ネットで叩かれずに無難に大きくなるというのはなかなか困難で、ある程度のところまでくると「ここの客層は捨てよう」という判断が働いてくる。迎合しても無駄だからだ。何にとって無駄かは、媒体によって異なる。ある人は商業誌へ執筆する際に良い読み手を持っていると思われるためのブログだったり、ある会社はメディアとして価値を高めたいのでPVを稼ぎつつお金を持っている人に影響力を与えてアフィリエイトで稼ぎたいと思っていたりする。だから、保守系雑誌に書きたい人は急進系の読み手の批判は屁とも思わないし、メディアとして広告主に良質なPVを売りたいと思っている会社は2ちゃんねるで批判されてもクライアントに対する風評が出ない限りは何も感じない。

 ある程度、ネットも成熟してきたのでメディア側も読み手側も距離感がだいぶ分かってきて、いちいち釣りに反応しなくなったばかりか、一定の「島」からサーフィンして泳ぎ出ることも少なくなってきた。SNSやらソーシャルやらが流行しだすと、その傾向は顕著になった気がする。メディアと読み手の距離が近づいた分、読み手がメディアの出す情報の鮮度や質に敏感になったし、メディアも主要の客の嗜好をはっきり認識するようになった。これはウェブメディアに限らず、ウェブで顧客反応を知ろうとするあらゆるビジネスに共通して起きるジレンマになってきた。

 今回のGIGAZINEの一件で山崎氏がキレたことは、GIGAZINEが成長するにあたって発してきた情報の熱量をより高めるどころか維持もできない状態に対する危機感を背景にしていると感じるし、それ自体は、私は健全なことだと思う。というか、意外と客の反応を真剣に感じていたのかなGIGAZINEと少し見直した。赤字のくせに。彼らが経営や組織論の理想と現実の乖離に身悶えしているログを見て、少なくとも私は共感した。社員って、経営者の思い通りには働いてくれないし、幹部ってものは仕事がうまくいくとだいたい裏切っていくんだよね。

 だから、今回の件に触発されてGIGAZINEの古来から持つ熱量をより高めてくれるような書き手が現れることはGIGAZINEにとっても読み手にとっても良いことだと思うし、この際だから記事を書く際はちゃんと引用元を明らかにして、不確かなものはせめて電話取材して、専門的でないことは参照リンクをつけて、クソのようなPV稼ぎ釣り記事を減らして欲しいと願っています。

 で、ウェブである程度仕事をしている人なら良く分かっていると思うけれど、GIGAZINEというのはこの手のブログカテゴリーでは上位3位に入るPVを誇る大型メディアになってる。某セプテーニとか某DACとか経由で広告だそうとすると、結構な費用がかかるわけだね奥さん。当然、広告主としてはGIGAZINEを選択する場合に、ウェブ界隈で話題になったりマーケティング上バズ的に有利な仕掛けを考えるか、実際に財布を開いてくれる読み手に直接情報が届くかといったアプローチで考えるわけだ。ところが、比較的親和性が高いと思っていたデジタルコンテンツ系や、ジャンクフード系の情報提供といったところでご一緒した限りにおいていうと、mixiやニコニコ動画同様、大量のアクセスはやってくるんだけど実際の購買には何一つ結びつかない事例だけが残った。少なくとも、GIGAZINEの読者は、GIGAZINEの情報でモノやデジタルコンテンツを買う判断は下してないってことだね。

 GIGAZINEにとっては大きなお世話だと思うのだが、どうせ今回人を入れ替えて大きな改変をやるのであれば、膨大なPVはそのままに、もっと読み手のクオリティに訴えかけるような仕組みを何か考えたらいいんじゃないかと。赤字を憂えているようだけど、メディアシートに書かれているPVが正しいのなら、間違いなく日本有数の大ウェブメディアであって、しかもブログ形式のメディアに今後大きな伸びしろは残されていないようにも見えるので、正直この手のメディアはラストチャンスだと思うんだな。

 最近採算が合わなくてしめやかに事業譲渡されるウェブメディアが多い中で、インディー系成り上がり媒体としてのGIGAZINEは貴重だと考えているので、頑張って欲しいと。もう広告出さない私に応援されたくないだろうけど。

 面白展開の続く日本振興銀行と木村剛の物件でありますが、ついに死人発生であります。

<振興銀>社外取締役の弁護士、自殺か
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100802-00000036-mai-soci

 ほとんどリアル人狼の風情になっており、ゲーム上で言うなら襲撃死したということは白判定なのかと思うわけですけれども、如何なものでありましょう。

 赤坂せんせに関しては、事実上銀行経営では完全に素人の江上剛せんせの脇支えであり、二重譲渡されたSFCG債権について精査をするためのリスト作りを開始したところで、今週総額についての大枠を報告する予定だったということで、問題譲渡物件についての仕分けも進める中での悲報であることを考えると、心労なのか何らかの「配慮」なのかは意見が分かれるところです。個人的には、何らかの事件である可能性が低かったとしても司法解剖を行うべき事案であるようには思いますけどねえ。ご本人や関係者のためにも。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20100715ddm008020043000c.html?inb=yt

 また、現在保釈見通しとなっている木村剛ほか逮捕された関係者についても、身辺状況の確認や安全確保のためにももう少しの時間を要するものだと個人的には思います。

 スキームそのものに関与していたわけではなかった赤坂せんせの急死は、時期が時期だけに非常に微妙で、全容解明からしますと少々痛いんですが、如何したものでありましょう…。
 以下引用。

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 日本振興銀行(東京都千代田区)の社外取締役で弁護士の赤坂俊哉さん(51)が東京都目黒区の自宅で死亡していたことが分かった。警視庁目黒署によると、現場の状況から自殺とみられる。

 同署によると、7月31日午前、家族が赤坂さんの自室を開けると既に死亡していた。着衣に乱れはなく、外部からの侵入の形跡もないことから自殺と判断したという。遺体の状況から死後数時間が経過しているとみられる。

 同行を巡っては、09年6月から今年3月まで行われた金融庁の立ち入り検査の際、前会長の木村剛容疑者(48)ら元幹部計5人が業務メールを削除したなどとして銀行法違反(検査忌避)容疑で逮捕されている。【神澤龍二】

 ◇振興銀「自殺とは聞いていない」

 一方、同行は「死因は心筋梗塞(こうそく)で、自殺とは聞いていない」と説明している。【清水憲司】

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