月別アーカイブ / 2009年10月

 結構前にご相談はいただいていたのですけれども、ちといろいろありましてあまり時間が取れず、何ヶ月か放置したあとの掲載となってしまいました。心が折れずにメールを送り続けるksoranoさんは偉大だなと思いましたが、まさか何の打ち合わせもなくいきなりダダ漏れ配信が始まるとは思わず、どきどきしてしまいましたねえ。

【平常心】from:『切込隊長blog』の山本一郎さん
http://ketudancom.blog47.fc2.com/blog-entry-244.html

 っていうか、壤で何してんだ。

綾波@赤坂 壤
http://twitpic.com/nhxah

 オバマ大統領が演説で「政府の大小が問題なのではない。機能するかどうかが問われているのだ」と発言し、それを聴いた聴衆が最初は「まあそうだな」と思ったものの、オバマ政権が健康保険の問題とかで実は大して機能してなかったと思われたので支持率が急落した逸話を思い出したのが以下の議論です。

[雑記]「大きな政府、小さな政府」など存在しないよ
http://d.hatena.ne.jp/Dr-Seton/20091030/1256911673

 もちろん、比喩としての大きな政府、小さな政府というのは厳密な定義がされているわけではないですが、政治思想の観点から言うならばおおよその意味は決まってます。高熱とは何度か? という定義を求めるようなもんですけれど、政治過程から考えますに夜警国家(ラッサール)が主権国家の最低限の小さな政府である、という暗黙のルールがあるんで、存在しないよと豪語しちゃうのは馬鹿の極みと思います。知性を疑われる前に修正したほうがいいレベルの内容ですね。
 ただ、その前段の面白論調と違って、エントリーの中盤から結構興味深い記述があって、凄く良いです。

[引用]もっと直接的な政府の関与があります。それ無しにはGoogleもYahooもマイクロソフトも大きく発展、どころか存在すら出来なかったでしょう。それは「特許」です。

 いわゆる、プロビジネスやプロパテントは貿易統制とならぶ国際的な政治関与の一種と判断すると、従来の大きい政府、小さい政府とは別に、政治が貿易を含む民間にどれだけ効率的に関与するのかという論題が持ち上がってくるわけで。

 経済に活力をもたらすために、政府が効率的に産業を育成できる人たちに有利な条件で事業を取り仕切らせ、国家全体の経済を拡大する方策に充てるというのは当然考えることですしね。それの技術の元が軍事技術であったのは疑いなく、それはそれで良いと思います。じゃあアメリカ経済の全体の何割が政府関与した技術で形成された産業なんだ、と厳密に言い始めれば、もちろん論旨は崩壊するんですけれども(笑)。

 いろいろグダグダした論述も並存しています。

[引用]ブラジル銀の一部業務停止 地下銀行と取引で初の処分

 これは大きい小さい関係なく、通貨発行権を含む信用創造は国家が管理するという基本的な概念に関連するものなので問題外ですけれども… ただ、政府の機能のあり方について、規定の概念をとりあえず置いて論議するというのは最近忘れられていることなのかなとも思うので、非常に興味深いところではあります。

 国家全体の支出における公共事業の割合や、公務員の人口比を他国と並べて検証することに、ワイドショーで素人を騙す以上の効用はあまりないと思います。むしろ、政治的分配がきちんと機能せず、格差はそれほど広がっていないのに貧困率だけは上がっているという所得構造から、都市と地方の財政問題や経済問題を考えなければならんようには感じるんですけどね。

 っていうか、これだけ論じる力がありそうな人が、あまりにも乏しい政治知識を元に時事ニュースをピックアップして誤解の極みの解説をつけた挙句、凄まじい勢いで見当違いな方向へ全力発進しているのは凄いと思いました。
 この辺の本を一冊読むだけで、随分見え方も違ってくると思うので、せめて体系的な政治学の知識の一端だけでも確保しておいて欲しいと願います。

『アメリカの保守とリベラル』(講談社学術文庫、1993年)
http://www.amazon.co.jp/dp/4061590723
政治学は何を考えてきたか
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480863744/

 夏の終わりにはてなさんから連絡を戴いて、ライフネット生命の出口治明社長とお会いする機会を得ました。業界では非常にユニークな御仁で有名な方であり、また出口さんとタッグを組んでいる岩瀬さんという人も不思議なお方と聞き及んででいました。

 話ははてなの広告での対談であり、以下の本やマニフェストのカードを貰った以外は100円も貰っていません。そればかりか、家内が保険に入っちゃったぐらいですので持ち出しです。はてなはもう少し金になる話を相談して来い。でも、そんなの気にならないぐらい、出口社長というオヤジの話が異常に面白かったので、ちょっと前ふりでも書いておきます。そのうち真面目に書くと思います。

[PR]パパになった“切込隊長” ライフネット生命保険加入を検討する
http://b.hatena.ne.jp/articles/200910/532


 ライフネット生命の良さは、ネットだから保険料が安くできるというような短絡的な話じゃなく、生命保険という商品がどういう仕組みで成り立ってるのかという問題意識からスタートしている部分にありました。

 対談記事では書かれていない部分ですけれど、保険は保険単発で売るには、利幅は少なすぎる。これでは大手生保が抱えるおばちゃん組織など全体を保つことができないので、保険本来のサービス以外に貯蓄型とか何らか組み合わせることでサービスのボリュームを増やし、利益を確保することで成り立たせている産業のひとつだ、ということを解説されました。

 そこには、お客様から預かった資金を、生保が運用し、お客様の「いざ」というときにどうお返ししていくのかも考えて、長期の付き合いを築く必要があり、おばちゃんら営業の主力から運用から調査から多くの仕組みを組織に抱えて巨大組織へと膨れ上がっていくのが生命保険会社の宿命であったと。

 本にも書いてありましたが、本来生命保険会社ってのは、その人の生活を安全、安定たらしめ精神的な支えを提供することが本筋であるはずで、生命保険にかこつけて多くの金額を貰い受けて貯蓄に成り代わって運用していくサービスまでやるべきなのか、という問題はあるようです。生命保険を生命保険としてだけ考えれば、何のために生命保険に入るのかというのも含めて保険料はもっと手軽であるはずで、安く、かつ堅実に事業を構築できるはずだ、というのがライフネットの事業における基本的な考え方であると理解しました。

 ライフネット生命のマニフェストを見て、まず「原点に戻す」、というのは「ネットだから」とか「ベンチャーだから」という発想の延長線上にはないなと思う部分です。生命保険そのもの、生命保険は何故入るか、生命保険とは何かを突き詰めていったとき、実は非常にシンプルなサービスであり、それをそのまま提供することが安く安全にサービスを提供できるということが分かる。

ライフネットの生命保険マニフェスト
http://www.lifenet-seimei.co.jp/profile/manifesto/index.html

 これは、非常にいい話だと思いました。なるほど、と。

 ただ、それ以上に、出口社長というオヤジが強烈でした。あの文面からは、なかなか伝えることの出来ないオヤジの持つ知性というか、問題意識というものが、生命保険という枠組みからはみ出していきました。私たちは何のために生きているのか、社会はどうあるべきか、政治ってのはどういう最低条件を満たすべき存在であるか、という社会科学全般の哲学の分野にまでオヤジが語り出すわけです。

 生保業界の運用とかには興味があるけど生命保険には何の関心もなく必要も感じていなかった私が、一番興味を持ったのは、他ならぬこのオヤジの知性と使命感にありました。というか、otsuneやdankogaiや真性引き篭もりほかネットで際立つヤバい知性や感性の持ち主に比較して劣らぬどころか鬼の如く熟成されたバランス感覚というものがあって震撼しました。

 申し訳ないけど、私程度では出口社長という人間の凄さを引き出す対談はできないし、伝えられないと思います。

 どうも日経新聞に広告が掲載されたせいか、普段見慣れないところからのアクセスが急に増えたので、御礼がてらまた本の宣伝とか勝手にしたいと思います(照)。
 「新書なのに、なぜハードカバーなんだ」というお話も頂戴しておりますが、まあそこはそれ。



 前回のエントリーはこちら。

PHP新書『ネットビジネスの終わり』を上梓しました
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2009/10/php-67ef.html
 書名の「ネットビジネスの終わり」というのは、内容からしますとちと煽り過ぎで、むしろ過剰に投資が過熱した先としてのネットビジネスがその不採算性が故に周辺業界を巻き込みながら勝手に自沈しているさまを描いているものです。

 適切な規制も存在しないため、どうしてもプレイヤーの寡占が進んでしまう弊害もありますし、その寡占した連中がどうしようもない奴らだったときに大きな揺り戻しが起きますよね、という話も含みます。何より、巨額の投資を繰り返しながらここ十年ぐらいはgoogle以降大きな技術革新を引っさげた大物ベンチャーが出るでもなく、似たようなビジネスと従来からのビジネス組み合わせが主流のあまりエキサイティングではない事業構造が問題視されてもいいんじゃないのという問題意識から記述しております。

 いまからネットビジネスに参入するのであれば、コアでクラスター化された専門知識をベースにしたカテゴリーキラーが中心にならざるを得ず、ネットで収益機会を大幅に減らされた既存の情報産業は事業性回復のきっかけさえつかめずリストラに追い込まれ、大手企業の破綻なんぞも表面化するかもしれないよね、という話です。ソフトバンクは早く借金を返すか潰れるかして欲しいと個人的には思いますけれども。

 どちらかというと、理知的で後ろ向きだけども、思想やここ十五年ぐらいの金融の流れを背景に「そんないいことばかりは続かないですよ」という意味合いの事例をたくさん書き連ねておりますので、ご興味ご関心をお持ちの方は是非お買い求めろ。

 農政は素人同然で、通り一遍の知識しか持っていない私にも、郵政がひと段落したら農協に何か刃を向けそうな政権が地球上にあるらしいことは知っている。

 フォーサイト読んでたら、農協を小沢さんがどうにかしたいと考えているようであることも書いてあって、しばし沈黙。

FORESIGHT
http://www.shinchosha.co.jp/foresight/
民主党の「農協潰し」が加速する
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20091026-01-1501.html
 別の見地からの話では、結局、民主党の考えていた「脱・官僚依存」というスローガンと、今回一連の政策課題に向かう各大臣・副大臣のあり方や官僚の対応とのコントラストというのはなかなか面白いなと思う。もちろん、現実に直面している人達からすれば、面白いとは不謹慎なということになるかもしれないけど、役人支配から脱するつもりの民主党がだんだんと役人なしでは何も進まないことに気づき、役人も人事権を握られた状態で抵抗することの困難さに気づいて何とか民主党から送り込まれた人々を理解しようと努力しているという、不思議な歩み寄りの構図である。

 どう考えても信頼関係はないと思うのだが、それでも政策課題は厳然とあり、課題を解決しないことには話にならないのだから、お互い手探りに妥協点を見つけあって強引に納得しようとしているような感じがしてならない。

 農業者戸別所得補償の制度化など個別の具体政策については、記事ではインデックスから紐解いて民主党の「真意」を推し量ろうとしている。どうなのだろう。単に、参院選に向けて自民の集票マシーンとして歴史的な機能を果たしてきた農協が嫌いだ、という目線ではないとは思いたいが、どーもそういう感じな気がしてならない。困ったもんだ。

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