イード社が展開する媒体レスポンスで、ちょっと信じられないガセネタが流れてきていて騒然としていたのですが、こりゃいったいどういうことなんでしょう。

カタカナが多くて無理? トヨタウーブン・シティ地元、裾野市の未来構想が終了 https://response.jp/article/2022/09/07/361521.html 

 は?? カタカナが多くて無理…??

 しかも、一時期はヤフーニュースにも掲載されていたようで、騙されてそのまま見解を述べている有識者まで出てきていました。ちょっとびっくりです。

 「わりとストレートな表現」じゃねえよ。



 簡単に言えば、このトヨタの未来都市プロジェクトであるウーブンシティは諦めてぶん投げた話ではなく、(1) 裾野市の市長が交代し(現市長は村田はるかぜさん)、前市長のプロジェクトからの引継ぎがなされず検討の結果の撤退であること、(2) 裾野市からトヨタの工場が撤退することになったためです。

 前職の高村謙二さんは裾野市議から裾野市長を2期、ただしその間、市の財政は悪化の一途をたどっており、これは高齢化の進む自治体では日本各地普遍的に起きていることですが、裾野市の場合は御殿場線で山を上がったところにある東静岡の山あいの地域のため、高村市政がどうであったのか無関係に典型的な衰亡自治体の状況でした。

 その起死回生の策の一つがトヨタなどが参画するスマートシティ構想でもある本件ウーブンシティは、裾野市にある旧関東自動車工業の東富士工場が母体で、これがセントラル自動車などと合併してトヨタ自動車東日本になります。その裾野市にあるトヨタ東富士工場がトヨタ全体のサプライチェーン最適化の煽りもあって撤退の見込みが長年取りざたされてきたところ、2020年12月の閉鎖が決定したことになります。高村さんが市長選で敗退したのもまさに裾野市の地場産業とも言えるトヨタ工場やトヨタ紡織の撤退の責任を市民が取らせた的な意味合いも持ちます。

トヨタ東富士工場、約400人が退職 12月の閉鎖に合わせ転職など | 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20201124/k00/00m/020/405000c
 
 それでもトヨタは撤退に関してそれなりの長い期間含みを持たせつつも、豊田章男御大とその周辺の大手コンサル含めた面白メンバーが出てきて第二次安倍晋三政権や菅義偉政権で推進されたスーパーシティ構想で挙手したプロジェクトとしてウーブンシティが構想された形になります。それが終了に追い込まれるわけですけれども、その根本原因は岸田文雄政権となり、安倍ちゃんや岸田さんが薦めたスーパーシティ構想は幕を下ろし(5都市やるぞといってたのが、なぜかつくば市と大阪市だけに大幅縮小した)、地方創生的大盤振る舞いの仕組みは概ねデジタル田園都市構想へとシフトしてしまったことが背景にあります。

 一連の問題については、裾野市長の前職の高村さん、現職の村田さん、いずれの責任とも言えません。純粋に、立地的、人材的、設備的に裾野市である必要が無くなったというだけであって、市政が全力で頑張ったところで、トヨタグループはいずれ部分的にであれ撤退したでしょう。

SDCC構想およびSDCCコンソーシアムの終了について
https://www.city.susono.shizuoka.jp/soshiki/3/1/7/jisedai/14483.html

 裾野市としてはSDCCとウーブンシティは関係がないとしつつも、市が独自にスマートシティやったところで何の独自性のないでしょうからどう着地させようにも行き詰まっているのではないかと思いますね。なんせ、市の財政が悪すぎて、自治体の単独事業としてはスマートシティどころではないのかもしれませんし。

https://www.city.susono.shizuoka.jp/soshiki/3/3/4/kishakaiken/getsureikishakaiken/2022/17291.html

 そして、このウーブンシティについては、最初は、それなりにまともに検討をしてきた経緯があります。スマートシティ的にいろんなことをやるぞという話で現地のトヨタ社員やご家族を中心に360人程度が裾野市に定住し、将来的には2,000人規模にしますよという話だったわけですが、政府ネタとしても梯子が外れ、トヨタ自身も裾野市からの撤退を決めていたのでどうにもならなくなって終了という運びなわけですよ。

 で、裾野市は前述URLにもある通り、その終了の理由について非常に不誠実な記載をしとるのが気になります。



 普通ね、こんなこと書かないんだよ。

 カタカナ用語があるからプロジェクトが中止だとか、近隣市町と比較した優位性が無くなったぞとか、まともな社会人ならお目にかかれないタイプのいかれたセリフが堂々と市の公式の書類に書いてあって非常にソソります。ほんと形容する言葉が見当たらないぐらい頭の悪い対応じゃないかと思うわけですよ。

 いいですか。過疎で財政破綻目前でどうしようもない内陸部の自治体で、主力産業だった自動車産業が撤退していくところで、どうにか街の灯を消さないようにするためにも先進的な取り組みで頑張って地域の活性化を果たそうと考えるべきところ、近隣市町(どこの?)と比べて優れたことが無くなりましたのでプロジェクト辞めますって、中年男や年増女が婚活で「若い相手でないと嫌だ」「年収千万以上」とか高いハードルを掲げて誰も相手にしないでずっとお一人様なのと変わらないぐらい恥ずかしいことじゃないですか。

 そのようなどう見ても不始末な話を対外的に強弁している裾野市の言い分を、レスポンスが聞いてきてそのまま記事にしたわけですよね。や、おかしいと思わなかったんですか。だって「カタカナ使っていて市民に受け入れられなかったので、先進プロジェクトやめます」だよ。しかも、裾野市だよ。「そんなわけねえだろ」と感じなかったんですかね。

 もちろん、プロジェクトを継続するにあたって、裾野市側にトヨタがハードルの高いことを言ったとか、雇用継続の受け皿としてはウーブンシティは実現可能性が乏しかったとか、別の要因はあったかとも思いますよ。でもそれを言い始めたら会津若松市とかほかのスーパーシティ構想だって、いかれた大手コンサルタント会社の肝いりで需要のない地方投資で税金つかみ取り系の濡れ手に粟を狙う具でしかないとか批判されていたじゃないですか。

 曲がりなりにも自動車産業の城下町であり続けた社会資本もあったはずだし、このような形で情けないリリースを出して、今後いったい誰が裾野市に見向きするのかという話になりはしないか、他人事でありながら心配は尽きません。

 また、釣られたレスポンスも、そのレスポンスのクソ記事に釣られた面々も、産業関連の情報を読み解くリテラシーをいま一度再点検されたほうが良いのではないかと思いました。

(修正 9日02:22) 御殿場と御殿場線と裾野市の位置関係が違うというご連絡をいただきましたので修正しました。ご指摘、ありがとうございました。