先日、戸田総合法律事務所の中澤佑一先生が提訴されたブロッキング訴訟の控訴審判決が出て、被告となったNTTコミュニケーションズの主張や知財本部も併せて「三方一両得」的な内容になりました。

NTTコム・ブロッキング差し止め訴訟、原告弁護士の請求棄却「必要性認められない」|弁護士ドットコムニュース
https://www.bengo4.com/c_23/n_9362/

 あくまで「ブロッキングを行うことに対する差し止め請求」なので、判決としてはサイトへのブロッキングを行う必要性は認められないという内容になっていますが、さすがに東京高等裁判所、今回問題となった海賊版サイトへのブロッキング問題について、きちんと踏み込んで判決文を書いておられます。

[引用]「本件ブロッキングを実施した場合には,第1審被告によりユーザーの全通信内容(アクセス先)の検知行為が実行され,このことが日本国憲法21条 2項の通信の秘密の侵害に該当する可能性があることは,第1審原告が指摘するとおりである。児童ポルノ事案のように,被害児童の心に取り返しのつかない大きな傷を与えるという日本国憲法13条の個人の尊厳,幸福追求の権利にかかわる問題と異なり,著作権のように,逸失利益という日本国憲法29条の財産権(財産上の被害)の問題にとどまる本件のような問題は,通信の秘密を制限するには,より慎重な検討が求められるところではあるが, 訴訟費用の負担の問題の結論を左右する問題ではないものというほかはない。」(東京高裁令和元年10月30日判決)-ここまで-

 何度読んでも味わい深い判決ですね。

 一文ずつ読んでみましょう。

[引用]本件ブロッキングを実施した場合には,第1審被告によりユーザーの全通信内容(アクセス先)の検知行為が実行され,このことが日本国憲法21条 2項の通信の秘密の侵害に該当する可能性があることは,第1審原告(山本註:中澤先生のこと)が指摘するとおりである。-ここまで-

―― ブロッキングによる海賊版対策が、日本国憲法21条2項の通信の秘密に該当する可能性を指摘しています。ありがとう高裁。これは、かの議論で我らの森亮二先生が状況の概要整理として官邸に提出した内容と100%一致するものであり、まさに不動の守護者森亮二の名前に恥じない堂々たる正論であったことは言うまでもありません。川上量生さんに届いてほしい、味わい深い一文です。

[引用]児童ポルノ事案のように,被害児童の心に取り返しのつかない大きな傷を与えるという日本国憲法13条の個人の尊厳,幸福追求の権利にかかわる問題と異なり,著作権のように,逸失利益という日本国憲法29条の財産権(財産上の被害)の問題にとどまる本件のような問題は,通信の秘密を制限するには,より慎重な検討が求められるところではある(略)-ここまで-

―― そして、緊急避難についての言及です。ありがとう高裁。例示は児童ポルノ問題まで踏み込んでいて、丸橋透先生ほか、児童ポルノで被害に遭われた子たちの救済についてギリギリまで議論してきた関係各位の議論が、しっかりと高裁判決文にも判断として掲載されております。川上量生さんに届いてほしい、味わい深い一文です。

 よりテクニカルに言えば、海賊版を含む特定サイトへの電気通信事業者によるブロッキング問題は遮断行為ではなく検知行為の問題であり、日本の司法は本件についても通信の秘密直接適用説であることが明確になったという点で、極めて意義深い裁判ではなかったかと思います。改めて、こんな(差し止め自体は)勝てるはずのない徒労以外ない裁判で高裁判決を取ってくださった中澤佑一先生には感謝しかない一件です。日本の司法が何を考えているのかが私も理解できて幸せです。本当にありがとうございます。

 一方、川上量生さんは先日の朝日新聞のインタビューで「それでもブロッキングは必要ですか」と煽られて語った内容がありまして、実に見事なカウンターアタックをその眉間めがけて高裁にぶち込まれたことになります。彼は何でこんなインタビューを受けてしまったのでしょう。

 なんかこう、川上量生さん関連は毎回「川上量生さんが大上段に何か言う」→「状況が動いて全否定される」の繰り返しで、私との話でも「NTTグループがブロッキングするようですが」「それは嘘だ」→「NTTがブロッキング発表」とか、「クラウドフレアは情報開示しない」→「山口貴士さんが頑張ってクラウドフレアから無事情報開示」など、この人わざとやってんのかと思うほど状況が見えていないように思うんですよね。

 今回も「川上量生さんが朝日新聞で『ブロッキング議論があったから海賊版議論が進んだ』と自画自賛する」が「高裁が判決でブロッキングの検知行為そのものの違憲性や違反の可能性を指摘する判決を出す」って流れになっていて、一般論として、人間落ち目になるとこういうことが次々と起きるのか、それとも元からこの程度の人だったんだけど一発当たっていたのでみんな明示的に認識していなかったのか、良く分かりません。

川上量生さん、いまでもサイトブロッキングは必要ですか:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASM9N468TM9NUCVL00H.html
川上量生さん、素人サイトのガセネタに引っかかって、ぬか喜びをした模様 #川上量生 - やまもといちろう 公式ブログ https://lineblog.me/yamamotoichiro/archives/13237114.html


 児童ポルノの緊急避難の正当性に触れ、そのうえでブロッキングのような財産権に緊急避難性があるわけないだろと高裁に真っ二つにされておるわけですけれども、先日も、不思議なご人格の元社員にドワンゴ退職エントリーをぶちまけられ、事情を知る有識者にフォローされていました。もちろん川上量生さん一人が悪いという話ではなさそうですけれども、一時期は日本のデジタル文化を率いる寵児として第一人者扱いされた足元ではこのような話があり、そしてブームが去った後はゴミのような話題しか残らないという残念な状況になっているあたりは、川上量生さんにそこはかとない同情を覚える次第です。

 上手くいっているうちは周りをイエスマンで固め太鼓を叩かせて悦に入っていたけど、いざ風向きが悪くなってカネがなくなると太鼓を叩く人がいなくなり、茶坊主もお茶を持ってこなくなって、残念な人だけがまだ自分の身の回りに人垣があると思ったまま放言を繰り返している的な。物悲しい。

ドワンゴのslack事情 https://anond.hatelabo.jp/20191102095312

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