JeSU(一般社団法人eスポーツ連合)が興行権を確保して、無理にでもプロ団体にしたいっていう理由は、単純に浜村通信がJeSU開催のプロ大会(たぶん日本選手権的なものを『闘会議』か東京ゲームショウでやる)の看板スポンサーの権利を電通に買い切らせて組織の運営費に充てたいというビジネス的なものでしょう。

全てのゲーム会社に考えて欲しい「プロ認定制度」の問題点と新しい提案 - カジノ合法化に関する100の質問
http://blog.livedoor.jp/takashikiso_casino/archives/9774274.html

 別に「ゲームのe-sportsシーンを電通に売り渡そうとしている!」と噴き上がる必要はないでしょうが、Jリーグの運営やプロ野球機構主催試合のようにスポンサーを集めるためには代理店を持ってくる必要があります。自団体であるJeSUの興行に有力プレイヤーや観客を集めないとビジネスにならない、と浜村通信はきちんと説明するべきです。実際、それが悪いというわけではありません。ゲーム大会を開くのにも、団体を運営するのにも資金はどうしても必要ですし、電通や博報堂にスポンサー営業をお願いすることはむしろ正しいことです。

 ただ、ゲーマーにプロ化が必要という説明をするとき、木曽さんが繰り返し指摘しているように浜村通信が嘘をつきっぱなしというのは、あとあと構造がバレたときに取り返しのつかないダメージを受けると思います。

 そもそも、JOC(日本オリンピック委員会)は、要望としては「e-sportsを統括する唯一の団体であること」と「全国組織であること」としか言っていません。プロ化しろ、プロライセンスを出せという話はしてないことは、JOCに取材かければだいたい同じ話は聞けると思います。
 野球もその他のスポーツもプロアマ団体が併存している場合も多く、そういう競技団体の代表性をどう確保するのかは重要なテーマですから、JOCは特に理不尽なことは言っていません。ましてや、まだオリンピックのゲームが正式種目になる手前の段階ですので、込み入ったことを言う筋合いもJOCにはないのです。

 さらに、消費者庁の話があります。浜村通信が消費者庁に相談したら「プロ化しろ」「相談して決めた」と言われたと説明していますが、話がおかしいので確認した限りでは消費者庁は「プロライセンスを出せばよい」なんて話はしていません。あくまで役務として賞金に代わる金銭を勝ったプレイヤーに払うならば、優れたゲーム技術を披露する役務に対して契約して金を払えば景表法の枠内ではなくなるということであって、プロ認定しろとか、ゲーム大会にプロ協定を出せという話などはしていないはずです(建議官クラスが具体的にそういう話を本当にしたのだとしたら、その人が問題になるレベルです)。

 近いうちにちゃんとした記事は出るでしょうが、プロライセンス云々については、プロライセンスを出したJeSUは問題になりません。JeSUが勝手にプロ認定団体だと言っているだけで、法的根拠は何もないからです。しかし、そこにゲームを提供したゲームメーカーが責任を被る話になりかねません。賞金の出し方によってはゲームを提供した側が取引付随性があると認定されると、普通に景品表示法違反となり適法性が問われます。

 プロゲーマー・ウメハラ氏主催の座談会「ゲームと金」レポート。JeSU副会長・浜村弘一氏がプロライセンスの疑問に答えた
http://www.4gamer.net/games/397/G039789/20180221109/

プロライセンス制度、「消費者庁と相談して決めた」 eスポーツ団体の見解とプロゲーマーの思い - ITmedia NEWS http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1802/19/news082.html

[引用]

浜村副会長によると、消費者庁からは賞金付き大会を開催する方法として、(1)取引付随性のない第三者がお金を出す、(2)プロライセンスを発行し、プロの高度なパフォーマンスに対して報酬を出す――という2案を提示され、プロライセンス制度を作るに至ったという。

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 「プロの高度なパフォーマンスに対して報酬を出す」のは役務そのものですから、当然賞金付き大会の適法性を担保するために消費者庁もOKであるという判断を出すでしょう。ですが、そのためにJeSUがこれといった法的な裏付けなくプロ認定団体となり、プレイヤーに対して「プロライセンスを発行」する必要はどこにもないのです。ここに、JeSUの取り返しのつかない嘘があります。

※追記・註 JeSUが雇用主となって、プロゲーマーを雇う形態であれば話は別です。大会を行うために、順位・成績にかかわらずプレイ技量のある参加プレイヤーに参加料を支払う形であれば問題になりません。ご指摘、ありがとうございました。ただし、その場合でもプロライセンスは不要です。

 最後に、なんか「オリンピックに選手を派遣したい」という夢は大事だと思いますが、少なくとも室内のアジア競技大会(2018年)については、アリババグループ子会社のアリスポーツが仕切るわけです。


アジアオリンピック評議会が「e-Sports」を競技種目に―2018年「アジア競技大会」から本格デモ導入 | エンタメウィーク
https://ent.smt.docomo.ne.jp/article/321627

 そこで採用されているゲームは、オリンピック全体のゴールドスポンサーであるアリババグループの影響は受けざるを得ません。なので、目下のタイトルはValve「DOTA2」、ABの「Hearthstone」、「スタークラフト2」と、場合によってはエキシビジョンでEA「FIFA」シリーズであって、今後追加されるのは中華系タイトルが中心になるかもしれません。

 そういうオリンピックに日本国籍のゲーム選手を派遣するための座組をJeSUが作る話を、これらのゲームに全く絡みのないウメハラさんその他e-sportsのリアルプレイヤー並べてきてコミュニティと話し合っても、さほどの意味を持ちません。そもそも「ゲーム大会」と「e-Sports」と「オリンピック選手派遣」とが全部ごっちゃになっているのです。結局出る選手は世界的にプレイヤーがいて公平な競技性のあるゲームで活躍する人たちとなり、いま最前線で活躍している人たちとは全然違う分野の選手が増えることでしょう。

 また、オリンピック採用競技となるゲームでないからと言って、そのゲームで活躍しているプレイヤーの価値が低くなるという話でもありません。オリンピック採用競技には、カプコン「ストリートファイターV」シリーズやバンダイナムコ「鉄拳」シリーズは性的描写と暴力表現が多すぎることが理由で間違いなく採用されないとみられていますが、ではカプコン公式大会やEVO JAPANなどでの試合やパフォーマンスが価値が低いかというとそんなことはありません。オリンピックありきでプロライセンスを発行する団体としてJeSUが「日本で唯一のe-Sports統括団体となる」と言われても、HearthstoneやCrush of Clansなど世界的にプレイヤーの多いゲームはすでに日本国内にコミュニティもありますし、そちらも勝手に統括団体を名乗る権利があります。そうなると「日本で唯一の」という条件が外れて、JeSUが一時的にJOC認定団体になったとしても、除外されることになります。

 一方で、なぜかプロライセンス対象タイトルというものが、JeSUによって勝手に決められています。どういう根拠でタイトルが制限されているのか理解に苦しみますが、なぜか「パズルアンドドラゴンズ」とか「モンスターストライク」などが入っています。国内大会できちんとプレイヤーのいるゲームを選んだのかもしれませんが、要するに浜村通信が声をかけやすいメーカーから許諾が取れたから名前が挙がっているだけで、オリンピックの正式種目になるはずがないパズドラでプロライセンス発行する意味がどこにあるのか理解ができません。

 ましてや、コナミ「ウィニングイレブン」などをJeSU公式種目(何それ?)にしたところで、競合であるEA「FIFA」シリーズが大会エキシビジョンに採用されたとき、大会に人を出すJeSU浜村通信はコナミになんて説明するのかという話になります。JeSUではプロライセンスを出していないはずのゲームが室内競技としてジャカルタ大会で採用されたとき、JeSUはどうやって選手を派遣するつもりなのでしょうか。プロ認定していない選手を連れていくんでしょうか。そうだとすれば、JeSUは何のために存在するんでしょう。

 つまりは、オリンピックへの出場はJeSUのプロライセンス発行の口実に過ぎず、プロライセンス発行予定タイトルが1%もオリンピック正式種目になる可能性がないのにJOCや消費者庁の名前を勝手に持ち出してゲーム大会の箔付けに使うべきではないと思います。

 自分が大事に思っている東京ゲームショウ(での目玉イベントとしてのe-sports大会)とKADOKAWAドワンゴのイベントである『闘会議』のスポンサー営業のためにJeSU立ち上げましたという話にすぎないので、そうならばそうだとはっきり正直に言ってくれれば問題点がスッキリするのではないでしょうか。

 

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