そんなわけで、民進党代表・蓮舫女史が辞意を表明することになりました。
 求心力の高まらなかった民進党を救うべく人気のある蓮舫女史が代表になり、陣頭に立って党勢回復を図るはずが、二重国籍問題を最後まで引っ張られ、都議会選挙ではお膝元から離脱者が続出するという状況でしたので、まったく本意ではない退陣ではないかと思います。

 ともあれ、蓮舫女史はお疲れさまでした。
 思い残すことだらけで、悔いのあるところかとは思いますが、まずは臥薪嘗胆、再起を目指してほしいと思います。

 時を同じくして、防衛大臣の稲田朋美女史が辞意。防衛次官の黒江哲郎さんの更迭が発表され、陸上自衛隊トップの陸上幕僚長・岡部俊哉さんも辞意という流れになっております。蓮舫女史退陣が好機だと思ったのかと思いきや、改造前に大臣辞職を前提としていたような話も伝わってきて世の中うまく回らないものだなと感じるわけです。

稲田朋美防衛大臣、辞任の意向を固める謎展開(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20170727-00073812/
民進党代表・蓮舫女史が、代表辞任の意向を伝える(追記あり)(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20170727-00073794/
民進党・蓮舫代表”二重国籍”で戸籍出す出さない攻防を見る側の心情|やまもといちろうコラム http://dailynewsonline.jp/article/1334843/ 

 で、今の安倍政権に対する森友学園、加計学園に各種政治家の「このハゲーーーッ」やらスピード不倫みたいなスキャンダル、頭の変わったファーストレディの奇行に、受け皿になれない民進党みたいなジレンマを見るに、国民不在、政策不在にあわせてメディアの咀嚼機能の劣化が組み合わさって、とんでもないことになっているように見えます。

 まず、明らかに行き詰っているアベノミクスから、一億総活躍社会になり、今年もなんか変なキャッチフレーズがついてましたが、つまりはポストアベノミクスの状況がしばらく続いていて、日銀では一日千秋のごとき出口戦略の話が出て、デフレ脱却を掲げて頑張ってきたけどまあなかなかむつかしかったよね、という話であります。

 ただ、お陰様で以前よりは円安になり、トリクルダウンとやらが当初の狙いほどの効果は無かったものの高齢者を中心に嘱託再雇用の動きから非正規雇用も正規雇用も一応は拡大、有効求人倍率が1.4倍とかになったため、少子高齢化からの人手不足が深刻化。海外からも移民が増えてきたので国民の暮らし向きはデータを見る限りそこまで悪くはありません。日経平均も3年ぐらいかけて2万円を超えて、不充分だけど成果はあったよね、でもこれからどうすんのというのが安倍政権の経済政策の状況ではないかと思います。

 その意味では、アベノミクスは無効だった、なぜならば物価は上がらなかったからだ、という話はナンセンスで、安倍政権は打てる手を全部打ったけど物価は上がらなかった、でも何もしなければもっとひどいことになっていただろうという言い方になるんじゃないかと思うわけです。

 本来であれば、安倍政権の金看板であったアベノミクスがどうやら失速していそうだ、となれば、野党が出てきて「お前らの経済政策では不充分だ。我々が新しい経済政策であるレンホミクスを提案する」とかいうべき必要があるわけです。最低賃金の引き上げなどは自民党のほうが実績が出てしまっている手前、より経済成長を実感できるような政策を本来は民進党が打たなければならないわけですよ。

 ところが、脱成長とかいう人たちも民進党の支持者には少なくありません。私は脱成長とかいう大人は馬鹿なのかなと思うほうですが、彼らだって一票を持っていますし無視などできるはずはないのです。それが民進党の少なくない割合の支持基盤となっているならば、彼らの納得のいく経済政策を打ち出し、よりよい日本経済、よりよい日本社会、よりよい日本政治にしていく使命があるはずなんですよ。

 ここで必要になるのは、もちろん安倍政権は野党にとっては倒す対象かもしれないけど、何でもいいから攻撃してしまえという戦術では確かに安倍政権の支持率は下がっても国民のためにはならないことはあるんじゃないの、という考え方だと思います。安倍政権を憎悪して倒したところで、倒した後に何の具体的な政策もなかったらそれは亡国の極みです。やはり自民党に政策があり、野党に対案があって、これをぶつけ合うからこそ意義のある議論ができるという青臭いことは実は大事なんじゃないかと思います。

 民進党は、少なくともそういう安倍政権の経済政策に見合うような具体的な対案や政策パッケージを用意することはありませんでした。むしろ、崩壊していく党内の融和を目指して中で頑張って調整ばかりしていたようにすら思います。支持母体である連合が共産党系労組と不倶戴天の敵で、その共産党と野党共闘しますと蓮舫・野田体制が話を進めるほどに溝が深まるのは当たり前のことじゃないですか。

 「連合なんて支持母体はいらない、民進党は政策オンリーで頑張るのだ」と勇ましいことを考えたとしても、実際に出てくるのは同様に支持母体から見放されて党消滅の危機にある旧社会党、社民党のような滅びの道です。そことつるんで野党共闘やろうというのですから、まあなかなか話が進められないのは当然でしょう。

 それもこれも、野党共闘路線は反自民の軸足で、野合をしているからに外なりません。もちろん、その選挙協力には意味はあります。ただ、政策でも人事でも共産党に引っ張られて、本当に現実的で、かつ自民党に対抗できる経済政策を立案できるのか、という話です。だって、仲間に共産主義者を抱き込むんですよ。選挙協力と称して支持者の票を集めたり、候補者を立てないで「共産党候補を応援してね」とやるわけです。反自民が本当に結実したとして、うっかり政権に手が届くところで喧嘩になるに決まってるじゃないですか。政策がないんだもの。

 それでも、政党が崩壊するよりはマシだ、解党的出直しなどせずとも人気を回復させられる方法を模索しようというのが蓮舫女史の立ち位置だったとするならば、文字通り悲劇しかおきません。実際、悲劇が起きました。蓮舫女史というのは、そういう人柄でしょうから使うべき状況が限定されるカードだったと思います。拠点防衛に向かない兵科を要塞に立て籠もらせて玉砕させてしまうような方法論は本来は避けるべきだったのでしょうが、それでも他にいなかったし、状況的にそうならざるを得なかったのでしょう。

 その意味では、つくづく運がなかった、巡り合わせが悪かったと思います。民進党は、局面によっては大化けするはずだった蓮舫女史というカードを場に出して、何の利益もなく失いかねない状況になったからです。もっと早くアベノミクスにほころびが出たり、安全保障で致命的な外交ミスがあったり、先に中国や東南アジアで経済危機が起きていれば、真の意味で政策議論をするためのツールとして蓮舫女史の突破力が生きたのではないかと思うと、何と不運な政治家だったのだろうと忸怩たるところがあります。森友や加計は印象操作というよりは国民生活の中枢を揺るがすような大事件ではなく、ただただ安倍晋三さんの脇が甘いというだけのネタでしかありませんから、同様に二重国籍問題のようなたいしたことのない案件で揉めている民進党に声望が集まるはずもないのです。

 もしも、民進党が本当に回帰するのであれば、わたしなら徹底的な組織化と併せてマーケティングを頑張って、スローガンを打ち立て、経済政策の根幹を考えられるよう努力するでしょう。国内でも海外でも経済政策の柱となるような理論的バックボーンを構築し、文字通り三顧の礼を持ってでも一流の経済学者にアベノミクスを超える実効性のありそうな経済政策をパッケージにしてぶつけていくことを考えるでしょう。ただし、支持母体は連合であり、これはこれで大事なので、中道左派的な経済政策の立案と運営を一緒に考え、浸透させていく必要がどうしてもあるのです。

 おそらくは、蓮舫女史の周辺にそのような構想力のある人物が乏しかったか、いたとしても蓮舫女史と手を携えて党勢を支えようという働きをしなかったのでしょう。蓮舫女史はもったいないことをしました。

 蛇足ながら、私自身は蓮舫女史をあまり支持していません。どうみても家庭を顧みるような個性を感じないからです。カメラマンをしておられる村田さんに対する仕打ちがテレビで放送されているのを見て、これは厳しいなと思いました。また、ツイッターで蓮舫女史が飼っているとする猫の写真が出ていたのですが、耳がデスフェイスになり、目ヤニがついていて、とても可哀想な育てられ方をしている猫であることは、猫を飼っている人間であれば気づいたのではないかと思います。パブリックイメージと同様に、おそらく蓮舫女史は冷たい人なのだ、非常に勝気な性格なのだと理解できます。人格の円熟には程遠く、失策をして頭をかくことのできない政治家だと思うと、それに本人が気づくまでは一回休みでいいんじゃないかと思いました。

 それでも、蓮舫女史は稀有な能力を持った優れた政治家になる資質は今なお秘めていると感じます。
 まずはいったん休んで、そこで何を思い返したか、考えてほしいと切に願います。


kokkai_touben_shingi.png