先日、研究所の流れでメディア企業の実例研究会に呼ばれて講師として喋り、終わってから「ネットや映像に関するワークショップ」みたいなのに参加したところ、変わった記事が紹介されていました。

第20回「若者のテレビ離れはない」(魚拓)
http://megalodon.jp/2017-0511-2121-15/social-trend.jp/35104/

 あえて魚拓を貼るわけなんですが、指南役さんという元ホイチョイ方面と思われる御仁が書いてらした記事です。

 たぶん、指南役さんはエムデータの基礎数字はおろか、映像配信サービスのログサマリーも読んでないからこそ、堂々と「若者はテレビを観ている」と言えると思うんですよ。まあ、私も数字でしか見てないので、じゃあ具体的にどの番組やカテゴリーから若者が見なくなっているかは体感がないわけですが。

 また、動画サイトでの閲覧が増えている理由として「大学生の必需品はWiMAX」とか書いちゃって、おそらくはUQが大量に広告を投下した時期を勘違いして「若者のテレビ離れ」と被せてしまったので、データ解析を学習途上の若い社員からもダメ出しをされておりました。

契約者数
http://www.uqwimax.jp/annai/kokai/keiyakusya/
過去分
http://www.uqwimax.jp/annai/files/kokai_subscriber.pdf

 まあ、一事が万事こんな感じなので、おそらくは感覚で現状を理解し、論考し、対策を立てるタイプの古い世代のテレビマンはだいたい同じ認識なんだろうかと感じます。いま「会員制のネット動画の主たる客層は若者ではなく30代女性ですよ」と指摘することの意味は特になく、むしろいまの売れるコンテンツ作りは共感を呼ぶための”ターゲット世代”とか”属性”といったものを絞れば絞るほど刺さらなくなる現象ってのはあると思うんですよ。

 例えば、広告主である食品会社(別に特定のどこということではない)が30代独身男性に向けて手軽に家で食べられる商品を売り出したい、だからそういう世代に刺さるコンテンツを作っている番組のスポンサードについて… みたいな売り方が現代で通用しているか、という話です。ビールでも自動車でもいいけど、どの属性の誰々に向けたメッセージをというと、どうしてもコンテンツやキャスト主導になりやすい。でも、男性に向けて作ったコンテンツが肝心の男性から見向きもされないとか、EXILE出しておけばEXILE好きは映画館に足を運ぶだろうと思ったら微妙な出足だったとかたくさん起きるわけです。

 そうなると、コンテンツの作り手や広告主が思っている「若者」というのは主語がでかすぎてまったくスコープにならないだけでなく、ジャンルの絞り込みにすら役立たないということが起きることになります。まあ、実際にそうなのだから仕方がないとしか言えないんですけど、一番動画サイトにカネを払う40代男性、30代男女、ここに向けて出すコンテンツを一番カネ払って見たのが50代男性だった、といったとき、年代で区切ることにどういう意味があるのかを考え直す必要があるんですよね。

 だからこそ、キャストの情報で「このタレントは誰々に人気がある」というものがいままでは視聴数予測では王道だったのが、いざネット動画サービスが興隆してみるとあんまり影響してなかった、アウトカムに結びつかなかったということは往々にしておきます。これは仕方のないことです。でも、じゃあどこに届いたのかを厳密に見てみると、実は年齢横断的な恋愛映画のマーケットがあったとか、口コミの主体が若い女性のInstagramではなく中年のやってるFaceBookだったとか、そういうことになるわけです。

 いままでマーケットに商品を投げ込んでいたと思い込んでいたものは、実はコミュニティに届いていて、そこに生息している人たちはもっと多様なんだということに気づいたのが、動画サイト関連の重要なポイントだと思います。アニメに客がつくのも、時代劇が廃れたのも、そういう視聴者同士の横のつながりはもっと柔軟で多様だったということに気づくと、データの見方ももっと変わっていくんだろうなあと思う次第であります。