文脈としては、幻冬舎・見城徹さんが作家の百田尚樹さんとの個人的な政治信条や交友関係もあって百田尚樹さんの『日本国紀』推しを続けているのは分かるんですけど、売れる売れないはともかくコピペ批判ぐらいは受けて当然とスルーするぐらいが良かったと思うんですよね。

百田尚樹『日本国紀』コピペ論争と歴史通俗本の果てなき戦い(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20181222-00108643/

 ところが、幻冬舎で執筆している作家の津原泰水さんがこの『日本国紀』のコピペを指摘したからと言って、津原さんの幻冬舎での文庫化の企画を潰したり、ネットで津原さんの刊行した小説の実売部数を晒したり、見城徹さんの見識が疑われる事態になるのは仕方がないことだと思うんですよね。





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 しかも、見城徹さんと普段親しそうにしている筋や、普段あれだけ死ぬこと以外はかすり傷といっていた箕輪厚介さん以下関係者があんまり見城徹さんのやらかした内容について擁護どころか見解を書きもしないというのは、「見城組」とも言われる友情で結ばれた絆の深い集団として情けないというか、恥ずかしい事態のようにも見えます。これから何か言われるのかもしれませんが。

 ただ、今回の一件で、俄然『作家・津原泰水』が注目されたのも事実でありまして、ここで「一冊津原作品を薦めろ」と言われたらすぐに思いつくのは『Eleven』(河出文庫)です。「五色の舟」に込められた何とも言えない感情が文章から湧き上がってくる心象がたまりません。

 単に「お薦めだよ」というよりは、ああ、これが津原泰水なのかという感じになるし、幻冬舎相手に津原さんが何かを言い、見城徹さんがどんな振る舞いをしても「どっちが出版文化を支えているだろうか」と言われれば自明なんじゃないかとすら思うんですよね。だって凄い小説なんだもの。見城徹さんの代わりは山ほどいても、津原さんを超える作家はお目にかかれないだろうという点で、この騒動を見た本読みはだいたい津原さんに同情を寄せるんじゃないでしょうか。

 もちろん、対比として60万部以上を売ったとされる『日本国紀』と、5,000部刷って1,000部も売れなかったとする津原さんの本とのコントラストは、まさにいまの出版事情を示していると思うんですよ。売れるのが正義だというのもまたひとつの真理として、一方で「名作として評価され、読み継がれるもの」という点でもまた正義だと思うわけです。決して幻冬舎の商法が何も知らない人を煽って騙して売りつけるものだとまでは申しませんが、良いものを作る努力をしている人たちや、そういう作品を売ろうとしている人たちの熱意や才能をもう少し評価してあげられる幻冬舎であってほしいなあ、と。何しろ現場や担当が可哀想なので。

 なお、『日本国紀』のコピペ問題というのは「どうしてこうなった」としか思えません。有識者からの指摘も相次ぎましたが、エンターテイメント本なのか歴史通説本なのか微妙なところで「そういうものを信じたい人に届ける」ことが大正義になっている以上、どうにもならんのでしょう。今回の見城徹さんの炎上劇がもしも何らか誰かの役に立つとするならば、そういう”商法”がもう少し上品になり、裏付けがしっかりあるものが大衆に好まれ読まれる出版文化の方向へ進んでいってほしいといったところでしょうか。

 繰り返しになりますが、あれだけ日ごろ見城徹さんと親しい、見城徹さんと一緒に仕事をしている、見城徹さんは素晴らしい人物だ、と仰って来た著名人の人たちが、一連の見城徹さんのコメントを見てどう思ったのか、それでもなお擁護するのか、いや、見城徹さんの物言いはいかがなものか、と綴るのか、ちゃんと意見をしてほしいと思うぐらい強烈な事案だったと思います。

(追記 23:12)

 アフィを記事下にもう一個貼れってことなので、Amazon貼っときます。



 うん。

元朝日新聞記者の平和博さんが上梓した『悪のAI論』に関するイベントで行われたパネルディスカッションの内容が、Facebookで見事フェイクニュース判定されてコミュニティ内での配信拒否になったということで、平さんが騒いでいたので見物に行ってきました。

「AIリスク社会」を生き抜くリテラシーとは?―『悪のAI論』座談会採録
https://kaztaira.wordpress.com/2019/03/14/%E3%80%8C%EF%BD%81%EF%BD%89%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%80%8D%E3%82%92%E7%94%9F%E3%81%8D%E6%8A%9C%E3%81%8F%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F/

 内容を読むに、本を出した平和博さんと、山本龍彦、栗原聡、津田大介各氏がAIと世間についての見解を述べるというもので、一読する限り、さしたる違和感もなく「そうわね」というレベルで問題を感じませんでした。

 Facebookがどういう理由でこの記事を「問題だ」としたかは分かりませんが、類似の事例で芸能ニュースや海外事情を紹介する記事のFacebookでのシェアで「コミュニティ規定に違反する」という表示とともに第三者が閲覧禁止になることがあります。また、別の件では洋画に関する論評がなぜか「差別・偏見を助長するコンテンツ」判定されて記事が見事BANされるという事例があったそうなので、なかなかむつかしいもんだなと思います。

 平さんも飛んだとばっちりですし、悪のAI論のプロモーションという意味では格好の餌がFacebookから投げ込まれた感じにはなっていますが、ちょっと注目してみていきたいところですねえ本件は。

(お詫びと追記 11日22:57)

 文中、栗原聡さんのお名前を間違って記述しておりました。修正いたしました。ご指摘いただきまして感謝申し上げますとともに、深くお詫びいたします。

 また、文中でFacebook側の対応については、続報として「平氏の討論の中でフェイクニュースとみられる事実誤認の記述があった」とのことでしたが、平和博さんの発言内容の真偽は不明のため、論評は差し控えたいと思います。


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 歳を取ると弾丸出張もなかなか大変なのでありますが、瞬間移動というか反復横跳びのような出張をして疲労困憊しました。ま、そういう日程でいいやと思ったのは自分なので仕方がない。

 で、それほど長くないフライトではあるものの本でも読みながら過ごそうと思っていると並びの席に座った中国人母子がものすごい勢いで機内で子どもに怒鳴っているんです。その向こう側に座っている、アメリカ人かカナダ人らしき二人組が「何が起こっているのか」「虐待か」みたいな感じで見ているんですけど、よく考えたらその隣に座っているのは日本人男性の私で、彼らからすればその中国人の母、子ども、同じく中国人くさい主人と思われていたんじゃないかと。違う。違うんだ、私は中国人ではないから。天安門事件、文化大革命。

 とはいえ、気になるものは気になるので、他人でありつつもちらちらと見ると、どうもアメリカのどこかのスクールに入るために、英語で何かの論文を書くために猛勉強をしているらしい。凄い。たぶん、背丈を見るとうちの子と似たような8歳ぐらいの男の子だと思うんですよね。筆が進まない男の子に、母親が時折金切り声を挙げながら何かをさせようとしている。しまいには、Newsweekアジア版(?)を出してきて、母親は流暢な英語でここを写せと言っています。いや、それは剽窃だから……。

 最近、息子たちも中学受験が視野に入ってきて、ただ本人たちは別でやりたいことがそれなりに見つかっているのでなかなかエンジンがかかりません。まだ時間の使い方が分からないから、ダラダラしていいときは精一杯ダラッとし、何か集中するべきときはガッと入る、というような効率の良い時分の精神の捌き方のようなものは見つけられていないのです。集中するときに儀式を自分で作るといいよ、と教えても、まあなかなかそうスムーズにはいきません。

 そういう似た年ごろの息子たちを持つ私としては、何かを目指す親として、子どもにどうにかしてそこまで辿り着かせようという修羅のような形相で物事を強いる気持ちは良く分かるんですよ。やっぱり親として子どもには良い人生を送ってもらいたいし、何か一ミリでも他の人より頭一つ出て優れた人物になってほしい。

 ただ、受験戦争を勝ち抜いたわりに勝ち抜いた後が大反抗期とモラトリアム期間になってしまった私からすれば、親の自己満足や見栄の部分もあって立派なところに入ったところで、そのまま立派であり続けるにはなかなか大変だというのもあります。親のケツ叩きで良いところに入っても私のように落ちこぼれる人間もいれば、そのまま偉大な技術者になったり医者になるような奴も出るのが世の中だとするならば、いまここで無理強いして頑張らせることが近道であるのかいま一度考えるのが良いのではないかと思うわけです。

「大学生なのに%が計算できない」と日本の初等中等教育の憂鬱(修正あり)(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20190427-00123968/
「おまえ、noteぐらいやっとけよ」と若者に煽られる選ばれし者の記憶|山本一郎(やまもといちろう)|note(ノート) https://note.mu/kirik/n/n8c8f00c47ce5

 そういう思うところもありつつ、私が子どもたちに伝えたいことは「悔いのないように、先を見据えて、やるべきときは集中してやれ」であります。やっぱこう、46年も生きていると「ああ、人生だいたいこんな感じかな」と、錯覚か本物か見えてしまうときがあります。漠然とした不安は、若いころはすべて自分の将来と現状だったものが、やがて仕事になり、家族になり、自らの健康へと変遷していく。それが大人になるということならば、やはり悔いのないように大人を迎えてほしいし、どういう大人になりたいのかは見定めてほしいし、その大人になるために集中してほしいわけですよ。伝えきるのは無理なんですけど。

人は強みで尊敬され、弱みで愛される|池田 紀行 @ikedanoriyuki|note(ノート) https://note.mu/ikedanoriyuki/n/nd4fcea15c873

 まあ、何が正解か分からないからこそ、子どもにとっても自分の気持ちに正直に生きることも大事なんだけどなあと思ったんですが、よく考えたら親にとっては子どもをビシビシ鍛えるのが正直な気持ちだということに考え至って、これはもうこの思考は駄目だなと思いながら『戦国大河』やってました。戦争したくねえなあと思いながら。戦争ゲームなのに。


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セブ山さんが二股云々でやらかした件で、地雷を踏み抜いて天高く舞い上がったセブ山さんに対し、面白系コンテンツの総本山とも言えるバーグハンバーグバーグ社から「お前ええ加減にせえよ」という記事がアップされており、見物しに行ってきました。

ライターの不誠実な行動への対応について | バーグハンバーグバーグのブログ(バーグハンバーグバーグ代表 長島 健祐 オモコロ編集長 原宿)
https://bhb.co.jp/blog/12192/

 正直に申し上げると、セブ山さんがよく執筆されていたバーグハンバーグバーグ社に限らず、ウェブ系のライターで行儀の悪い人や、この記事で言うところの「不誠実な行動」をとる人は少なくなく、セブ山さんはいろんな意味で目立つので結果としてクズエピソードが直撃した先がリスカ系メンヘラ女子のハートにダイレクトアプローチしたのかなと思うわけであります。決して「そんな大きな問題なの?」とか「それを問題視するなら他にもヤバイ奴が多すぎるのでは」などと言いたいわけではなく、早いタイミングで大見得を切り英断を下したと喝采をされた後で、もっと大きめの問題が発生してグズグズになるパターンに陥らなければいいなと思う次第です。

 翻って、このタイミングでセブ山さんがバナナの皮を踏むのは良いタイミングだったように思います。私が申し上げるのも何ですが、バナナの皮を踏んで転ぶことが駄目なのではなくて、転んだまま立ち上がれないことや、バナナの皮を踏み続けることがいかんのです。私も炎上しますし、いろんな人たちはある意味で自らを燃やしながら知名度を得てもっと上を目指すモデルを確立しています。

 確かに不誠実だ、クズだと怒られたり揶揄されたり黒歴史にされることは仕方がないことですけれども、起きてしまったことは仕方がないわけで、それを批判し続ける奴は別にこちらの人生や今後のことを思っていってくれるわけでもない無責任な人たちですし、批判は熱く受け止め、それよりも次はバナナの皮は踏まないぞ、次にバナナの皮を踏むときにはもっと面白い転び方をしてやるぞ、ぐらいの気構えが必要じゃないかと感じます。

 そして、いつまでもクズキャラを突き進んでしまうと百式的な取り返しのつかなさを再現してしまうでしょうし、一休のなおやさんのように泥沼のようなネタで身体を張ることになってしまいます。でも、じゃあ百式やなおやさんが面白くなかったかというと、面白かったのです。人物としても、書き物のコンテンツとしても。

 あくまで、コンテンツと人格、経緯は別物であり、ただ、年齢的、立場的に次のポジションを考えるときにいつまでもゲスでクズな面白コンテンツを生み出す人というだけでライターを続けていくならば、いずれどこかで摩耗してしまいます。バナナの皮を踏んで転ぶのは仕方がないとして、どう起き上がるか、起き上がった後で、どう一歩を踏み出すのかが大事なのです。

 バーグハンバーグバーグ社の次なる仕掛けがどうなるかは外野として楽しみに見ていたいと思いますし、セブ山さんが次なる成長を目指して一皮剥けることを、一読者として期待してやみません。


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 さすがに宗教的バックグラウンドもあるので、いろんな企業や個人から再建のための寄付が集まってきており、私も些少ながら浄銭をお送りするわけであります。出火の理由はまだ良く分からないようですが、何であれ良い形で再建されるといいなと思っております。

ノートルダム火災、寄付1千億円 大統領「5年で再建」:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASM4K2475M4KUHBI00C.html

 一方で、フランスと言えばプラットフォーム事業者などに対するデジタル課税を行う予定のある先進国のひとつでして、そういうフランスに対してアメリカ系の多国籍企業が歴史的な宗教施設のために多額の寄付をするというのは何の冗談なんだろうとも思うわけです。

 さらには、現在少し沈静化しているとはいえフランスでは労働政策を巡って黄色いベスト運動が騒ぎになっていて、これらの問題を理解する態度を取り困窮したフランス人労働者に何らか資金を提供したという企業があったという話はあまり耳にしません。

 正直、これが世の中の摂理なんだなあと思うところが大です。目の前で困っている人たちよりも、歴史的建造物のほうが安全だから優先されるのだろうか、という意味で。


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