今日2020年11月25日、東京高等裁判所で川上量生さんとの裁判で判決が出まして、私の一審勝訴を支持する、控訴棄却となりました。まずは順当な判断を高裁にはいただけたということで、ホッとしております。


 ご支援くださいました皆様方、ならびに担当代理人として勝利に導いてくださった壇俊光先生、神田知宏先生ほか対カワンゴ訴訟団の先生方、本当にありがとうございました。深く感謝を申し上げます。


 私は一連の裁判において、本件は一番重要な裁判であると考えていました。

 第二訴訟である本件裁判は、訴額こそ1円ですが、大企業カドカワの経営者がツイートで間違いを指摘されたことに対してSLAPPまがいの訴訟を提起し、言論を封じようとする行動に他ならないからです。
これはもしも相手が法的知識のない人からすれば、1円とは言え法的措置を取られたことに大変に動揺し、萎縮することは間違いありません。当時まだカドカワ代表取締役であった川上量生さんが、私の所属先である情報法制研究所に私のツイート等に対して削除と謝罪を要求してきた文書に対して、債務不存在の確認訴訟を私どもが提起したところ、それに対して起こしてきたのが本件1円訴訟であったことを考えれば、法的措置のなんたるかをご存じない人は立ち往生してしまうことでしょう。


 本件は、すでに弁護士ドットコムでも報じられました。


川上量生氏の控訴棄却「上告しません」  山本一郎氏に対する「損害賠償1円」訴訟…東京高裁|弁護士ドットコムニュース https://www.bengo4.com/c_23/n_12045/


 また、なぜか控訴人の川上量生さんからのお悔やみの記事もアップされておりますが、何を言いたいのか、イマイチ意味が良く分かりません。


山本一郎氏との訴訟についてのご報告

https://web.archive.org/web/20201125120305/https://sp.ch.nicovideo.jp/kawango/blomaga/ar1968585


 川上量生さんは、この一番最初の債務不存在確認訴訟が「もっとも大事」と指摘していますが、すでに川上量生さん自身がカドカワ代表取締役から降ろされているんですよね。もちろん決して第一裁判や第三裁判を軽視して良いとは思いませんが、すでにカドカワどう大事だと思っているのか、ぜひ改めて聞いてみたい気も致します。


 で、今回の裁判に関しては、大きく分けまして3つのポイントがあったのではないかと思っています。


■東京高裁、川上量生さんを「認識不足又は注意不足の程度が著しい」文脈での馬鹿を認定する


 川上量生さんはネット上の口喧嘩であるので、裁判官にどっちもどっちと判断されたから負けたと言いたいのかもしれません。しかしながら、このたび東京高裁からは「控訴人(川上量生さん)の認識不足又は注意不足の程度が著しいことを意味するもの」として、この文脈上では川上量生さんは馬鹿であると認定されました。社会的地位は低下しない層なので、そのように認定されて、良かったですね。


 このまま最高裁判所に上告いたしますと、本件はどう考えても最高裁が取り扱う憲法問題とはとても言えない内容ですので、川上量生さんが弁護士ドットコムの取材に答えた「上告しない」という方針は良かったのではないかと思います。最高裁が認定する馬鹿になってしまう危険がギリギリで回避されたことを、心からお慶び申し上げます。


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■津田大介さんや浜村通信さんが提出した証言・陳述書が東京地裁から完全に無視される


 特に新たな争点もないなかで控訴してしまったため、何かしなければならないと思ったのか、よりによって川上量生さんは津田大介さんや浜村通信さんに助けを求め、川上量生さんにとって有利になるような証言をしてもらうという暴挙に出ました。


 代理人の許可を得次第、後日アップできればとも思いますが、当事者である被控訴人の私が一読して「これのどこが控訴人(川上量生さん)の立場を補強する証拠なんだ。不動産屋が広告でつけるポエムみたいなものじゃないか」と思ったわけです。


 津田大介さんの書いたものは「ぼくとインターネット」みたいな散文で、いかに自分がネットで叩かれて可哀想な存在であるかを書き綴っていますが、それは大概において津田大介さん本人の責任なのであって、私ではありません。ネットで中傷された僕は可哀想というエッセイを私と川上量生さんの控訴審で提出されても私も困ります。


 さらには、なぜか浜村通信さんが出てきて「ゲーム内での表現とはどういうものか」という、津田大介さん以上に本件控訴審とは無関係の内容を提出してきて度肝を抜きに来ました。百歩譲って浜村通信さんがゲームについて語ったとしても、「それはあなたの感想ですよね」と横から西村博之ばりに応じて終わるべき内容です。


 その結果として、控訴審であるにもかかわらず控訴人である川上量生さんが出してきた津田大介さん、浜村通信さんという一部関係者による提出書面は、このたび高裁判決において一文字も、一片たりとて引用されることなく、「判決」表記から「これは正本である」まで全無視されております。いったい、何をしに出てきたのでしょう。


 単純に、津田大介さん、浜村通信さんは、オヤビンの負けそうな裁判でタスケテーと言われると意味も分からず陳述書を書いてくれる人という良い人認定で終わったという点で画期的でした。もしも控訴審で新たな証言を積み重ねる場合は、人選とテーマと新事実をしっかり踏まえた内容を揃えましょう。


■東京高裁も『シヴィライゼーション4』の台詞は著名と認め、そのソースはニコニコ大百科


 東京地裁での判決では素敵な文言で『シヴィライゼーション4』について「著名なゲームの言葉」と認定してくださいましたが、東京高等裁判所でも本件『シヴィライゼーション4』の「貴公の首は柱に吊るされるのがお似合いだ(宣戦布告)」という表現が「ゲームの著名な言葉」と改めて認定されました。


 長く『シヴィライゼーション』シリーズやParadoxゲーム、コーエーテクモ『三國志』や『信長の野望』を楽しんできた私からしましても、川上量生さんがどうであるかはほっといてこの認定を戴けたというのはまさに感無量であります。


 しかも、高裁判決の中では「(私が14日投稿で)引用した『CIVILIZATION 4』というシミュレーションゲームにおけるプレイヤー側の開戦の言葉は、少なくともオンライン百科事典『ニコニコ大百科』にもその同一の文言が掲載されており、同ゲームをプレイした者に限らずその言葉を認識できる状態にあったという意味では、当該文言自体は著名だったといって差し支えないものといえる」とまで認定してくださっております。


 「ニコニコ大百科」、すなわち川上量生さんが経営するドワンゴが運営するサービス内にある記事が、東京地裁をぐるんぐるんと旋回して返ってきて川上量生さんの眉間に刺さった瞬間であります。自分とこのサービスで書かれている内容が裁判所の認定で決定的に不利な証拠として激しく採用されたことについて、川上量生さんは何を思っておられるのでしょう。


 皆さんも、今後川上量生さんに対して論評を加えるときは、私のように「ニコニコ大百科」で掲載されるような著名な言葉を駆使して思うところを述べていっていただければと存じます。

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■SLAPPによる言論封殺されること、言論封殺されなかった私


 とりもなおさず、川上量生さんは当時はコンテンツ産業の大御所の一角カドカワの代表取締役であり、実際のところ私自身もカドカワや傘下KADOKAWAとはプロダクションを通じて少なくない取引がありましたので、そのカドカワの経営者である川上量生さんとの係争に発展するにあたっては、いろんな方からのご心配の声も頂戴しました。私自身も、なにひとつ不安はなかったかというと、嘘になります。


 ただ、一連の海賊版サイトに対するブロッキング議論については、私自身が問題と感じ、民主主義である日本において事前検閲にも模される海賊版サイト遮断をプロバイダに求めることで、児童ポルノのような緊急避難の俎上に著作物という財産であるマンガなどのコンテンツを同列に議論することはできない、と考えてきました。


 つまり、川上量生さんはコンテンツ産業の財産であるマンガを守るために、憲法や業法の解釈を曲げてでも海賊版サイトを取り締まるべき、と主張したことで、これはひいては我が国のあらゆる機微情報やネット上の財産が緊急避難の名のもとに遮断される、中国のような専制国家におけるインターネットと同等の存在になり下がることをも意味します。私は政府内審議で最後まで戦ってくださった森亮二先生の見解を強く支持します。


 同様に、では海賊版サイトを野放しにしてよいのかという議論は、山口貴士弁護士が明らかにしたように、既存の法律でも充分に対応が可能であったこと、また、NTTグループが一度はブロッキング賛成に回った件には中澤祐一先生が、さらに海賊版サイトの差し止めについて山岡裕明先生も道筋を示され、我が国の法律家も総意として海賊版反対でありつつ現在の自由なインターネットを守るために動いてくださったのもまた事実です。


 情報法制研究所では、一連のブロッキングに関する政策議論について情報開示請求を重ねて行い、多くの資料から高木浩光先生や鈴木正朝先生が問題点を整理され、シンポジウムまで開いて我が国における海賊版対策とはどういうものであるべきか、実効性と理論両面から検討を重ねてきた経緯があります。そして、まだ実は「漫画村」問題は主宰者星野ロミさんの逮捕、公判のプロセスにありながらもまだ現在進行形で続いている面もあります。これについては、私も深く関わっているため、時期を見て改めて記事にしたいと思います。


 そのような議論において、例えば防弾ホスティングの状況で漫画村で使われたクラウドフレア社の情報開示の状況について川上量生さんはカドカワ代表取締役の立場にありながら誰からも情報提供をされておらず、ネット上で与太話を流すなどして、本件でも注意不足又は認識不足の程度が著しい状態にありました。この指摘に対して、川上量生さんはカドカワ代表取締役の立場で一連の記事やツイートを削除し謝罪するよう、私の所属する情報法制研究所に封書を送ってきたのです。


カドカワ川上量生氏、クラウドフレア社は法的措置では対応できないという見解を示す(山本一郎) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/yamamotoichiro/20181009-00099878/


 これは、おそらく私(のような訴訟慣れした人間)でなければ太刀打ちできないだろうし、海賊版サイトのブロッキング議論という公益性の塊のような議論において、圧力に折れて記事を削除したら誰もこの注意不足又は認識不足の程度が著しい裸の王様とも言える川上量生さんを止めることはできなかろうと考えたのです。


 ところが、裁判結果を受けて川上量生さんはどうも本件を「挑発」としか受け止めなかったようです。非常に、残念なことです。


 おそらくは、いまでも、一連の議論は誹謗中傷であり、挑発であるとしか思っていないのでしょうが、川上量生さんが封書で送ってきた削除と謝罪の要求は言論封殺以外の何者でもなく、私は一連の指摘に対して誹謗中傷であるとして裁判を起こしてきた川上量生さんのこの「第二裁判」こそ、一番大事な訴訟であると認識してきました。


 本来ならば、この削除と謝罪を求める「第一裁判」も大事なのですが、なにぶん川上量生さんはカドカワ代表取締役を降ろされちゃったうえ、裁判では「自分(川上量生さん)は削除を求めていないし、今後も求めない」と主張しだした時点で、どうも川上量生さんはご自身で吐いた唾をジョッキで飲み干す趣味でもあるのかもしれません。いや、おんどれが書面で削除と謝罪を求めると書いてきたから債務不存在訴訟に発展したというのに、何を言っているのでしょう。圧力をかければ黙るととっさに思ったんじゃないかとすら邪推してしまいますが、死体蹴りにならない程度に、適切に対応をしてまいりたいと思います。


 重ねてになりますが、ここまでやってこれたのも金銭や情報提供でご協力をいただいた皆さま、壇俊光先生、神田知宏先生および対カワンゴ弁護団で対応してくださった専門家の皆さまのお陰と思っております。重ねて深く御礼を申し上げますとともに、引き続きのお引き立てのほどをよろしくお願い申し上げます。


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 日経平均株価が29年ぶりの高値を付けたとのことで湧いている一方、今年度卒業の新卒大学生の就職率がリーマンショック以来の70%を切ってしまいました。これが続くようなら立派な就職氷河期に突入してしまうことでしょう。

日経平均、終値2万6014円 29年ぶり高値:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66316140X11C20A1000000/
大学生の就職内定率69.8% リーマン以来の下げ幅:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASNCK4CR3NCJULFA030.html

 もちろん、コロナウイルスのような強烈な感染症が流行っていて政治的に対策を行う以上、経済が無事であるはずもないので、政治が悪い社会が悪いと言っても仕方がなく、生活を自衛しながら打たれる対策に乗っかって凌いでいくしか方法はないのですが。

 ただ、証券も不動産もやけに堅調で、強い物件はいまなお強く、株価も相場を張っている側ですらちょっと怖くなるぐらいで、まあ、おっかなびっくりなわけです。

 また、youtubeでも喋りましたが、日銀発表で言えばすでに事業者の運転資金を中心とした資金需要はすでにピークアウトし、年末に向けての仕入れがあまり増えなかった(さらに、たぶんハロウィン特需もなかったであろう)ことは間違いありません。各業種の状況で言えば、どこもあまり景気の良い師走とは言えないんじゃないかと思います。



 つまりは、実体経済はズタボロなんだろうけど、証券市場のように公的資金がジャブジャブになっているところは天空の城状態になっていて、これはなんで浮いているんだろう? という話になります。そういう浮いている経済状況で買われる銘柄と生き残る企業に乖離があったとき、結構悲惨な結末になりかねないことは何となく予想がつきます。

 一方で、二期目になり何をしでかすか分からなくなりそうだったトランプさんが負け、ある程度、落ち着いた政権運営をしてくれるんじゃないかと思われるバイデンさんがアメリカ大統領選で勝ちました。グッバイトランプ、俺たちのバイデン。これからは民主党の皆さんと超党派議会の動向を見ながら生きていきます。で、そこにきてファイザーやモデルナが相次いで有効なコロナワクチンの開発に成功。人類は早くもコロナウイルスに勝てる見込みが出てきたわけでありまして、これもまた、証券市場の楽観論に拍車をかけております。

 問題は、熱狂が冷めたときにどうなるのかということです。
 こんな調子がいつまでも続くはずはないんだけど、なにぶん世の中は美人コンテストですので、自分がどう思うかではなく、世の中のお金持ちがどう思うと思うかが問われています。極論、お前らがどう感じようが関係ない以上、「そんなはずはない」と首をかしげながらも上がっている以上は買い上がらなければならない運命にあります。

 翻って、我が国の経済の足元は述べた通りドベカスの状況です。ほんと、どうするのでしょう。

 GOTO イートで無限くら寿司だGOTO トラベルだと騒いでいるうちに、これらのおカネは将来国庫に入るはずだった税金であることにいずれ気づくことになるのですよ。MMT理論もクルーグマンさん指摘の通りケインズ経済学を言い換えただけに過ぎないとするならば、実はいま猛烈な勢いで駄目な経済政策の路線に乗っかっている怖れはあります。あるけど、じゃあどうなのかと言われれば、どうにもならないのですよ。やらないわけにはいきませんから。

 結果として、いまの私たちはどうにもならないトロッコが真っ暗闇の中で猛烈に加速してどこかに向かって行っているのではないかと気づきながらも、降りるに降りられず、ワーワー言いながら身を委ねるしかなくなっているのだろうなあと思います。

 なんかこう、牛肉は腐り際が美味いというか、飛行機墜落間近は無重量状態の浮遊感が体験できますというか、まあもうどうにもならないのだろうなあという気持ちしかないんですよね。

 気休めだろうけど、シートベルトでも締めておこうか、みたいな。

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私が所属している次世代政策基盤研究所で、経済産業省の『未来の教室プロジェクト』と教育技術に関する『EdTechとこれからの教育』なるオンライン・シンポジウムをやることになっていたんですよ。

 最初、すぐ定員になってしまったので告知しなくてもいいのかなと思っていたら、なんか事務局長の加藤さんが「閲覧できる人を1万人に増やしました」とかいう後楽園ホールなみの話に盛り上げていたので慌てて告知するわけであります。

第3回NFIシンポジウム【「未来の教室」キャラバン2020 #8】:EdTechとこれからの教育──デジタル時代の教育を考える! https://nfi-symposium03.peatix.com/

 政策目線で申し上げれば、一昨年の「柴山プラン」以降、経済産業省と文部科学省とで学びの体系をどうアップデートしていくのか議論が重ねられてきた中で出てきたPC一人一台をすべての児童に配るGIGAスクール構想、そして、やってきたコロナウイルス対策としての全校一斉休校(休業)になって、いかに日本の子どもたちの学びを止めないか、それにテクノロジーや制度がどう後押ししていくのかは強い課題であったことは言うまでもありません。

 さらには、PC配っている以上、一人ひとりにあった教育とは何かという命題や、そもそも6334制でやっているいまの学校制度の出口が最終的に東京大学・京都大学や国公立医学部への入学者数で競うようなスコアリングで大丈夫なのか、そしていわゆる日本人・日本社会がいかなる社会にするために教育を変えていくべきかという学力観の問題に立ち入ることになります。

 いまでこそ、高大接続の問題で騒ぎになったり、英語やプログラミング教育、果てはSTEAM教育に人工知能を使った教育メソッドの拡大が進み、教育ベンダーも学校教育の現場も子どもが少なくなっていく中で大きな転換期を迎えています。私は1973年生まれのベビーブーム、団塊Jr.世代であり同期が堀江貴文で申し訳ないわけですが、そのころの偏差値70と、いまの少子化で年度出生数が三分の一になろうかという2020年時点の偏差値70とでは学力には雲泥の差があります。少なくなっていく子どもたちの適性をどう評価し、テクノロジーはいかにサポートしていくべきなのでしょうか。

 という話を他の人がします。私も登壇するわけですが、社会調査側から、Edtechが必要な子どもたちをどうサーチし、教育プログラムの中できめ細かくフォローしていくべきかについての概論なども語れればと思っています。

 ご関心のある方は、ぜひご来場くださいませ。無料です。


山本一郎主宰経営情報グループ「漆黒と灯火」

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 コレ。

デジタル改革関連法案ワーキンググループ(第2回)議事次第
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/houan_wg/dai2/gijisidai.html

 どこから突っ込んでいいのか分からないわけですけれども、これが我が国の大事なデジタル庁設置に関する協議で、日本国内・海外のデータ流通をどうするか審議する場で提出されてしまったそうなんですよ。

 それも、先日日経の「スーツ・オブ・ザ・イヤー」に輝いた慶應義塾大学教授の宮田裕章大先生がやらかしたと酷評されていたので見物しにいったら、これがまた酷い。

 冒頭から「資料1-1デジタル庁の創設に向けた論点(宮田教授提出資料)」として「" 21世紀の基本的人権“データ共同利用権” の確立」→「所有財の側面だけでなく、共有財の側面も考慮したデータ活用」とありますが、いや、そもそもこれデジタル庁立ち上げる際に最初に問うべき論点じゃないですよね。なんでいきなり憲法問題が始まってるの? 改憲ありきなの?

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 しかも、この基本的人権で確立されるというデータ共同利用権とやら、誰の権利で、誰に対して行使できるものなのか、まったく明記されておらず、さっぱり理解できません。さらに、所有「財」、共有「財」と、個人に関する情報が経済的対価の対象であると定義されております。いや、個人に関する情報については、競争法(公正取引委員会)マターでもない限り、本来は財ではないんですよ。財であるなら、自分の情報を誰かに売って対価を得る行為が正当だよと説明しなければならなくなり、いきなり個人情報保護法の立法趣意と正面衝突してしまいます。

 で、続く「データ共同利用権(仮称)について(案)(宮田教授提出資料)」では、宮田裕章大先生はこのようなことをお書きになっております。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dgov/houan_wg/dai2/siryou1-2.pdf

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 あ?? なんやこれは?

 国民の利便性に資するデジタル政策を実現するために新しい組織を新設しようという話をしているところに、有識者として呼ばれた宮田裕章大先生が、「利用目的等に鑑みて相当な公益性がある場合に、(国民の個人に関する情報の元になる)データ利用を認める」ことが、21世紀の基本的人権に組み込まれるとかいうデータ共同利用権の正体なんですか?

 これって、憲法に記される国民の権利ではなく、データ共同利用権によって国民の情報が公益性の名のもとに誰かに共同利用されてしまうことを追認する仕組みに過ぎませんね。しかも、誰の権利であって、誰に対する権利なのでしょう。

 資料を全部読むと、おそらく国民の権利のように見えて、個人に関する情報が簒奪される仕組みのようにも見え、また、その共同利用する対象は国家か、国家が認定した組織・法人などです。共同利用されるデータの中身が良く分かりませんが、医療情報なども念頭に置いているとなると、個人の健康に関する情報(PHR; Personal Health Record)だけでなく遺伝情報なども含まれる可能性が高くなります。今回の感染症対策でゲノム情報を追い、特定の遺伝子を持つ人物が重症化しやすいという公衆衛生の知見が得られたこともありますし、そういう知見を得ることが社会の利益に資すると言いたいのでしょう。

 しかしながら、これらはいわゆるホワイトリストであって、必要に応じて公益になったりならなかったりしてはいけないので、事前に具体的に列挙せよという話になってしまう。個人に関する情報に基づくデータの共同利用権が我が国の基本的人権に加えられるとして、反社会的人格や経済的な信用情報、趣味嗜好なども犯罪行為との相関性があるからといって公益性のもとに共有される怖れだってあり得ますから、そういうものを除外しましょうという話があるわけですよ。

 つまりは、「政府が認めた公益性があれば、政府(デジタル庁など)または政府が認めた組織・法人などが、権限を持って国民本人の同意がなくても個人に関する情報の元となるデータを利用できる権利を認める」ことが、この宮田裕章大先生の本件デジタル庁主張の大原則になります。いや、そこまでは言ってないと言いたいかもしれませんが、内容を見る限りそうとしか読み取れず、それ以外の方法でこの資料の内容を理解できる人は是非教えてください。

 これはまさに『憲法とAI』でたびたび問題になる、データで差別されない社会、本人に無断でスコアリングされない権利という枠組みからは真っ向から対立してしまいます。それなら基本的人権などと言わず、普通に個人情報保護法を基幹として分野ごと個別に特別法を立ち上げて対応してよ、というレベルの話ですね。

 なお、人権宣言を引くまでもなく、基本的人権とは「人が生まれながらにして持っている奪えない権利」であり、これを政府が国民に対して行わないという決まりが憲法ですので、すべての人の奪えない権利を(政府が定める)公益性の名のもとに共同利用するという時点で違法な改憲提言を堂々と政府議論で宮田裕章大先生がしてしまったことに他なりません。 

世界人権宣言
https://www.pref.tottori.lg.jp/secure/317151/u-sengen.pdf

 これ、我らがドワンゴ川上量生さんが身体を張って私たちに教えてくれた海賊版サイトに対するブロッキング議論とさして変わらない非常に危険な議論で、こんなもんがコロナ対策という大義名分で堂々と政府内で有識者ペーパーとして開陳されておるほうがおかしいと私は思います。

 着地点としては「このようなペーパーが政府のサイトに堂々と掲載されているのは恥ずかしいから撤回するなり差し替えするなりしてほしい」というのと、改正個人情報保護法を基本として、情報法の枠内で個別の事案ごとに特別法をきちんと作り、国際的な情報法制との協調が可能な運用を行うことしかないんじゃないかと。

 医療情報の分野はまさにこれからいろんな取り組みが起きようというところで、政府の中枢でこれというのはさすがに脱力することしきりです。国民の利益に資する議論に立ち返ることを祈るのみです。


山本一郎既刊!『ズレずに生き抜く』(文藝春秋・刊)
https://books.rakuten.co.jp/rb/15879273/

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 一定方面で騒動になっているスターリン関連の話ですが、山形浩生さんの大元の議論をお読みいただければ分かる通り、冗談抜きで、本当にこんな感じです。

偉大なる首領スターリン閣下のありがたきインタビューでも読み給え。
https://cruel.hatenablog.com/entry/2020/10/14/095323

 で、これに対する批判というか、まあまったく見当違いの意見が並んでいて、ああ、意外と知られていないのだなと思いました。

 指摘は少ないので敢えて書きますが、リベラル(現在で言う自由主義であり、当時もいまも知識人階級は大事だよという根拠になる考え方)とスターリン主義とはまったく異なります。芝刈り機と首刈り機ぐらいの違いです。そして、ソビエト連邦や共産党の歴史をある程度知っている人であれば、当然この手の話なら話題に出るべき「役に立つ馬鹿(useful idiot)」論が捨て置かれます。

役に立つ馬鹿
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%B9%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A4%E9%A6%AC%E9%B9%BF

 本件については、最低でも東京大学名誉教授の塩川伸明先生の議論に目を通しておいて損はありません。

なぜ世界中で「リベラル改革」が困難を極めているのか
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52047

 翻って、中国共産党の浸透工作における日本学術会議ネタなども、天安門広場天安門広場なミームとは別に類推しておいて良いと思います。スターリン主義と、中国共産党が進める習近平イズム的な拡張主義とはやや近い概念じゃないかとすら感じるんですよね。ハーバード・ジョージ・ウェルズの議論は、レーニンまでは開放の段階論として消化されたにせよ、スターリンは違う。本当に違う。

 山形記事では「単に手玉に取られるウェルズ」という扱いになっていますが、現在の日本も、当時のイギリスも、知的生産の中心となる(リベラルな主張を行う)インテリの人たちは常に自由に発言のできる正義の側に置かれ、彼らの主張によって労働者は開放されるのだという大前提を疑わない(だからプロパガンダに利用される役に立つ馬鹿になる)のですが、スターリン主義はそもそも知識人を社会階層として必要とせず、全体主義の中で知識は労働の下に隷従する概念でしかありません。

 と思ったら、山形さん的に面白かったからなのか、追記記事が出ていました。

スターリン閣下はお怒りのようです:インタビューの読み方説明
https://cruel.hatenablog.com/entry/2020/10/15/110928

 ウェルズ側にそのようなシナリオがあったのかどうかはともかく(ウェルズがそういう主張をしたいと思っていただろうという意味では間違いなく山形論は正しい)、議論の抄訳としてはこんな感じだろうと思います。はい、スターリンは狂ってますね。でも、それはいまの私たちの社会、知的な文脈からすれば「こんな人が指導者にいてはいけない」「おかしい議論だ、正気とは思えない」という話なのであって、かの時期のソ連は本当にあれが彼らの正論であったということは知っておくべきだと思うんですよね。

 いま読んでも冷汗しか出ないわけですけれども、知識に対する考え方や、全体主義的な価値観を否定する言論に自由はないという点においていまの中国とは大差ありません。生活を豊かにする技術は大事にされ、技術者が尊敬される中国のすばらしさはある一方で、ウェルズ的(リベラルの)価値観といまの中国共産党との関係は、その部分において当時のソ連スターリニズムと結果として同じであるというのは理解されるべきなのだろう、と。

 一般論やネタとして消化されるべきではなく、これから米中対立の最前線で冷戦構造に飲み込まれる我が国に生きる者として、最低限の「教養」として持っておいてほしいと願うのみです。


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