ねとらぼの記事について、別の媒体から取材が何件か来ていて、内容を初めて知ったのですが、基本的なところで事実誤認らしきものがあったので念のため記事にしようかと思います。

「漫画村」運営者特定した弁護士に嫌がらせ? 東京地裁が誹謗中傷者への発信者情報開示請求認める https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2204/15/news036.html

 記事にある通り、漫画家のたまきちひろさんの代理人を中島博之先生が担当されたのは事実と思いますが、漫画村への発信者情報開示請求の訴訟で100万の自腹ってのはそもそも何なのでしょうか。

 また、記事中「その人物は、『漫画村運営者をアメリカ連邦地裁のディスカバリーを使って解明したのは●●弁護士、ほぼ同時期に日本の発信者情報開示請求を利用した手続きを進めていたのは●●弁護士です。中島弁護士ではありません』と断言」とありますが、これはおそらく怪文書が示した内容は事実で、中島博之先生の漫画村関連の追跡よりも先に、すでに漫画村運営者情報は突き止められています。

 この怪文書(?)に沿って説明するならば、漫画村運営者をアメリカ連邦地裁のディスカバリーを使って解明したのは山口貴士弁護士、同時期に日本の発信者情報開示請求を利用した手続きを進めていたのは山岡裕明弁護士ということになります。

 事実関係については、法とコンピュータ学会(2018年11月17日)に山口貴士先生ご自身が一部発表をされています。

第43回法とコンピュータ学会総会・研究会
http://www.lawandcomputer.jp/theme043.html

 漫画村運営者の特定にあたっては、私自身も知り得る限りの情報を提供し、山口貴士先生の手配の元ディスカバリー手続きで判明させることができましたし、漫画村運営者に対する刑事事件化に際して警察関係者から依頼を受け情報を提供し、また、彼らの知っている内容と事実関係の突合せにも(それなりの長い時間)付き合いましたが、その中で中島博之先生の実名が含まれた資料を見た記憶がありません。

海賊版サイト「漫画村」の運営者を特定か 法的措置へ https://www.buzzfeed.com/jp/takumiharimaya/manga-mura

 事実関係としては、中島博之先生がクラウドフレア社に対してたまきちひろさんの代理人として提訴し、最終的にクラウドフレア社から発信者情報の開示を得たことは間違いありませんが、そもそも地裁においてはなんと「漫画村運営者が逮捕されており、特定済みだから開示を認めないという理由で棄却」されています。

漫画村の「発信者開示」は請求棄却 「すでに星野ロミが逮捕されているから」|弁護士ドットコムニュース https://www.bengo4.com/c_23/n_10681/

 つまり、外形的には中島博之先生が本件裁判で漫画村運営者を突き止める前に、すでに山口貴士先生の手によって漫画村運営者は解明されていることになります。

 一連の事実を知る者としましては、見ようによっては中島博之先生の漫画村運営者特定のお話は典型的な「アレオレ詐欺」に近しいものではないかという判断に傾くのですが、警察や先行した弁護士も知らなかった何らかの活動がが中島弁護士にあったのであればそれはぜひ情報法制研究会や法とコンピュータ学会などで論文発表などしていただければとも存じます。



 足下、我が国の児童福祉政策において大変重要な「こども基本法」に関する議論が国会でもおおいに進んでいます。

 私がやるべきことはこれから佳境ですが、EBPM()の観点から、これらの諸問題で子どもと教育データの利活用についての雑感を書けというので書くわけですが、まあなんというか悩みは深いわけです。

 一番気にしているのは、プッシュ型の行政で手厚く児童福祉をやり、自分からなかなか声を上げることのできない、例えば経済的に困窮した家庭の子どもや、親などからの虐待を受けている疑いのある子どもに対して行政が素早く対応するために、教育データを活用しようという話になるわけですが。

 必要なことだからやろう、公益だから踏み込もうという議論はもちろん賛同する一方で、学校で得られる教育データというものは、あくまで憲法で認められた子どもの権利である学習権を、よりよい形で実現するために学校が子どもとの信頼関係をもって取得する暗黙知でした。それは、明文化こそされないけれど、教師が子どもから信頼され、子どもを観察する中で得られた情報であったと。

 ところが、昨今の教育データにおいては、これらの子どもの情報そのものが利活用できるようになるぞということで、いままで学校の中で閉じた暗黙知として存在していたこれらのデータが、データベースに格納され、民間の教育ベンダーや自治体の子ども見守りデータベースに格納されることで第三者の目に触れるようになります。

 統計学と情報法をある程度学んできたわたし的に、私がはっきり言えるのは「悪用できちゃうよね」ということです。

 例えば、大阪府箕面市の子ども見守りデータベースでは、なぜか条例で認めた「世帯の情報」、例えば親の所得とか、家族構成、さらには生活保護受給の有無から給食費未払いなどのセンシティブなデータと併せて、子どもの学校での様子、例えば出席の状況や学習態度、宿題の提出状況、衣服の乱れなどのデータが同じダッシュボードで展開されます。ということは、これらのデータは多変量解析を行う目的で、同じデータベースに入っていることになります。

 そこから分かることは、学校で見過ごされてきた、問題を抱えた子どもの炙り出しだと説明をされます。総務省でも、デジタル庁でも、かなり牧歌的に「なるほど、そういうデータが出てくるのか」と信じています。

 しかしながら、これをやった場合に(特に多変量解析において)分かることは、例えば以下のような事柄です。

・親の所得が高いほうが成績や生活態度が良い
・兄弟がいる家庭よりも、一人っ子のほうが成績や生活態度が良い
・共働きの家庭よりも、専業主婦のほうが子どもの成績や生活態度が良い
・核家族よりも祖父・祖母が同居しているか、近隣に住んでいる家庭のほうが子どもの成績や成績態度が良い

 そして、これらを長期的に経過観察してコホートやるんだよとなれば、子どもの生活と学習の観点から評点を下すならば、他国での教育経済学的知見と同様に、親の所得が高いほうが、兄弟はいないほうが、一族が固まって住んでいるほうが、専業主婦のほうが、成績が上がり、生活態度が良いということがエビデンスとして簡単に出てくるようになるでしょう。

 問題は、これらの教育データを利活用することでワンストップで児童福祉の現場に情報が提供できるようになるということは、逆説的に、低所得で、低学歴な親に養われている、片親の子どもが自動的にピックアップされることになります。もちろん、高学歴な親が家庭内の性格的に粗暴で日々子どもに暴力を振るう家庭が出てくることもあるかとは思いますが、これらのデータを集めてきたうえで、当初、デジタル庁などが言っているように長期的な子どもに関するデータとして蓄積するのであれば、いわば「問題を抱える家庭環境の子ども」を炙り出すはずが、教育データの推移から「学習面で見込みのない子ども」がはっきりしてしまいます。

 正直言えば、これは絶対に分かります。また、長期的影響を把握すると言って、個別最適化された学びのような中教審の方針をもとに教育データの利活用を行うことになってしまえば、家庭の状況と子どもの生活態度とから導き出された分析によって、将来的に学歴で劣後するであろう子どもや、収入が低い子どもが、おそらく小学校高学年で分かるようになってしまいます。

 一億歩譲って、公教育の現場と地方公共団体とが責任もってこれらの子どもに関する情報を保持しているからそのような分析はなされないのだと主張するとして、では、すでに民間のサービスとして公教育の現場に入っているGoogle for Schoolなどのプラットフォーム事業者の仕組みや、リクルートやQubena(COMPASS社)、あたまプラス、ベネッセなど教育ベンダーが提供しているアプリ・サービス経由で公教育での子どもに関する教育データが吸い上げられ、分析される恐れはあります。

 そして、国会答弁でも統計的に解析するために匿名処理されたデータを活用する方針が出ているようですが、実装する内容はおそらく異なります。デジタル庁の教育データ利活用ロードマップにおいては、これらの情報は識別子(ID)が振られてデータベース管理されていることになり、そもそもこの時点で匿名加工処理ではなく仮名加工処理です。また、長期的影響を踏まえた個別最適化された学びを実現するのであれば、これらのデータは仮名加工ですらなく、実名で行われる必要があります。

 さすがに情報法の観点からも統計的分析の手法からもいまの教育データにまつわる議論は本当にメタメタになりかねないのですが、例えば、公知として「兄弟のいる子どもは成績面で必ず不利になる」ことが明らかになった場合、大学入試改革で「兄弟のいる子どもは学習面でハンディキャップを抱えているので公平な入試にするためテスト得点に下駄を履かせることの是非」まで議論しなければならなくなります。

 いまでこそ、ジェンダーギャップだ何だと言われていますが、男女の性別差で有利不利があるという議論ですったもんだしているのに、教育データの長期的分析が炙り出す「この地域に住む人たちは所得が低いので、そこに通う子たちは成長して社会人になっても大半は地元にとどまり、低い給料の就業で我慢する人生を送ることになる」という不都合な真実にどれだけ向き合うことができるのか、という話にもなります。

 そこには、おそらくは広域通信制高校であるトライ高等学院やN高校のような教育の質が高いとは言えない高等教育への評価や現状是正をどうするかだけでなく、子どもの総数が減っていく中で我が国の教育全体をどうデザインし、学びたい人たちが如何に望ましい環境で学ぶことができ、親の所得や生まれた地域といった本人の責任に帰さない属性で蒙る不利を見つけ出し、救済するのかといった、より長期的な視座が必要になります。

 よく、教育データの利活用で「アメリカなどでの先進的な事例は」とか「イギリスのパブリックスクールでは」という話が国際比較で出ます。いまさらのように、他国の教育データ利用の事例について公金を使って調査するので手伝えというような話さえも来ます。ただ、諸国の事例は日本とは常に異なります。日本では、デジタル大臣の牧島かれんさんまで出てきて「教育データは国家が一元管理しない」と言っている横で、イギリスの先進事例をうらやむ教育者は、そもそもイギリスでは教育庁が国家プロジェクトとしてすべての子どもの教育データを管理することを忘れています。また、フロリダ州やテキサス州で子どもデータベースの充実を州政府自らが行った理由は、州議会での議論を見ればわかる通り、アメリカの子どもたちは小学校からすでに、妊娠、拳銃、ドラッグの三大問題に常に晒されており、日本とは比べ物にならない割合で発生する虐待や性犯罪とこどもが隣り合わせだから教育データを完備して子どもを社会が守らなければならないという要請があります。

 そもそも13歳以下の子どものデータに対して取得制限のあるアメリカと、基本的な保護の枠組みしか定めておらず子どものデータを取り分析することがなぜか自由な日本とで情報法制や教育データの枠組みを単純比較するほうが愚かと言えます。この問題を忘れて、教育データとはなんぞやという話をいくら国会で積み重ね、こども家庭庁の意義のある児童福祉とどう連関させるのかを語ったところでたいした役には立たないかもしれません。

 子どもの教育データを利活用することには賛成です。学校をICT化し、時代に即した公教育を行うことも賛成です。子どもの情報を集約し、きめ細かい児童福祉を実現することで子どもの健全育成に国家や行政が責任を持とうとすることにも賛成です。

 ただし、それらはきちんとした法整備を行い、不適切な形で個人情報が流用され、悪用されないようにすることが大前提です。その問題を飛ばして議論をすると、なかなか面倒なことになるのだろうなあと思いながら半笑いで会議に臨席しています。



 燃えたあと、すぐに該当コンテンツが削除されたので、私も「あっ、すぐ問題を理解したので降ろしたのだな」と思っていたところ、北陸大学の山本啓一先生が世界的にも犯罪抑止のために人工知能が利活用されているよという指摘をされていたので補足をしたいと思います。



 私も本件では犯罪抑止目的の人工知能利活用については完全な利害関係者のため、なるだけ中立的に解説を書きたいと思いますが、データ利活用推進派としての意見であることはご留意ください。

 まず、山本啓一先生ご指摘の内容はもっともで、2011年以降、犯罪抑止のための人工知能の利活用はEM(ExpectationMaximization)法を用いた犯罪予測アルゴリズムを基にした犯罪予測を全米80以上の市警察が導入しており、また、シカゴ市ではハンチラボと呼ばれるアルゴリズムを犯罪抑止AIとして利用することで特定地域の凶悪犯罪発生率を抑えることに成功しました。

 同様に、我が国でも京都府警が2016年に予防型犯罪防止システムの運用を開始しました。これは、俺たちの山田敏弘さんが盛大に馬鹿にする記事をIT Mediaなどで掲載し、関係者一同顔真っ赤になっておりましたが、その後も順調に運用が進められ、費用対効果は良く分からないけどとりあえずなんとなく犯罪が減った感じがするからよいだろうということでこんにちに至っております。実際、2019年から21年にかけては昨対で劇的に犯罪が減ったわけですが、これは人工知能による犯罪抑止システムが奏功したからなのか、コロナウイルスが流行して中国人の入国が減ったからなのかはまったくわかりません。何で減少したんでしょうね。

京都府警の「犯罪予測システム」が使えない、これだけの理由:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1610/06/news018.html

 さて、立正大学のデータサイエンス赤ずきんシリーズとこれら実際に稼働している日米の犯罪抑止システムとの間にどのような違いがあるねんという話になるわけです。

 立正大学のデータサイエンスにおいては日本の昔話に出てくる赤ずきんらが何の捜査権限・情報入手資格があるか不詳ながら、データサイエンティストとして出どころ不明のデータを分析し、問題を解決することになっています。ここで、村人のきびだんごなどの購買データや顔つきや挙動、位置情報を何らかの方法で蒐集してきて適法な匿名処理することなく分析をおこなって犯罪の発生を予測するシナリオです。

 問題は、第一に、これらの分析は「個人に紐づくデータ」でその個人を可逆な状態においたままデータ分析を行い犯罪予測をしているように見えること。第二に、購買データや位置情報をいくら分析しても犯罪予測はできないことを知らずに、あたかもデータサイエンスを駆使すれば犯罪発生を予測できると誤認させるコンテンツになっていることです。

 単純な話、特定の時間に変な歩き方をしていたり、きびだんごなどを買ったりする行動パターンを持つ個人は、蒐集したデータを照合し個人を特定することは容易であり、これはアメリカでも日本でも犯罪予測のデータ処理では禁忌になっています。実際、そのような表現になっていました。

 また、天候データ、購買履歴や位置情報を集めただけで犯罪が起きるか予知できるなら世の中こんな簡単なことはありません。極論、みんながTポイントを使えば犯罪予測できてしまいます。そんなわけがあるか。実際には、どのような傾向の特徴が具体的な犯罪発生を誘発したかという、起きた犯罪のデータのほうがはるかに大事で、購買履歴は実際にゴミだし、そもそも店があって人流があれば確率で購買そのものは発生するため、それは単なる交絡因子であって、ゴミをいくら分析してもゴミであることはTポイントがすでに証明しています。

 そういう犯罪を起こした人の行動履歴を教師データとし、そこに気象や混雑、時間帯など犯罪を起こしやすい条件を割り出していってヒートマップを作るというのがデータサイエンスでできる適法な犯罪予測の限界点であって、これといって犯罪を起こさない人の位置情報や購買履歴をいくらたくさん集めても犯罪予測にはならず、昨日コンビニでコーヒーを買った人が今日コーヒーを買う確率ぐらいしか割り出せません。その確率が分かっても「こうすればもっとコーヒーを買ってくれるか」はデータサイエンスだけでは予測できませんし、北斗の拳の世界みたいに一日歩いてたら3回は事件に巻き込まれるような最頻状態の修羅でもない限り、そもそもレアな犯罪の発生を一時間単位で推測することなど不可能です。

 特に日本の場合、アメリカと違って犯罪を起こす市民の割合が極端に低く、そういうレアな犯罪を犯す人の行動をいくら食わせたところでレアな犯罪を起こす似たような人の行動を割り出すことは至難と言えます。そもそもデータサイエンスで犯罪抑止というのは、そのイベントの発生確率が低ければ低いほど悉皆データで村人の購買履歴や行動注視、位置情報を分析してもたいしたことは分からないのです。

 しかしながら、世の中には「データがあればきっといろんなことが分かるんだろう」と牧歌的に考える偉い人たちはたくさん存在します。また、そういう人たちほど出すべき予算の一割も出さないのに結果だけちゃんと出せという人ほど出世するのが世の常ですので、世の中のデータサイエンスにかかわる人たちがどんな気持ちでこの手の官公庁データ処理に向かい合って棲息しているのか知っておいてほしいという気持ちもないわけでもありません。

 参考までに、この手の犯罪予測において、もっとも効果があるのではないかと類推される個人に関するデータは、消費者金融の借り越し人物の照会とギャンブルの常習性と風俗、飲酒履歴が四天王です。重犯罪で言えば幼少時代に犬猫鳥などを殺害して補導されたかや、片親・虐待などの家庭環境の有無、凌辱・ゴア表現などの異常性愛などでほぼ説明がつくのではないかと思っています。なので、立正大学のようにこれらの犯罪抑止のために特に悪いことをしたことのない村人の行動を監視してデータを取り、それを分析することで犯罪抑止が可能になるという考え方そのものが大変な間違いを持っているし、また、犯罪を犯す傾向の高い個人が仮にプロファイリングされているのだとしても、その人が充分な理性をもって個人の感情(リビドー)の暴発を防ぐことができているのであれば、民主主義国家においては「問題のない国民」であり、個人を特定できる形での公権力を使った監視は禁忌であると言えます。

 もしもデータである程度の犯罪抑止を予算に見合った形で適法に行いたいのであれば、子どものころからの経年監視しかないんじゃないのと思うわけですが、おまえなんとなく基地 外で危険だからというプロファイリング的観点だけでデータサイエンスを使い監視したり、あるいは街中が監視カメラだらけになったりするのは適切じゃないような気はします。

 蛇足ながら、幼少期特段の問題を抱えていなくても、人間誰しもが、何らかの環境的要因がトリガーとなって、大変なことをやらかす確率と隣り合わせで生きています。本当の犯罪抑止は、幸せに生きることのできる環境を整えることに尽きます。後発的要因は概ね失業などの経済要因や職場・家庭でのパワハラなどの人間関係ストレスですので、犯罪を減らしたければみんなで声を掛け合って楽しい社会にしようねということ以外ないんですよね。

 いろいろと思うことはありますが、立正大学の皆さん大変お疲れさまでした。




 事実関係としては、ロシア産を国産を偽って輸入しているという話よりも、漁獲の中心となっているのはロシア側経済水域であってむしろ「日本が獲らせていただいている」「いままでうまい具合にロシア側と調整してモノが入ってきていた」という状態なので、今回「禁輸や」とやられると本当に産業が死ぬのでどうにかしてほしいという事案であろうと認識しています。

 他方、ロシアがウクライナでやったことはガチもんの侵略と解され、民主主義国家として日本も国際社会の重要な一員として対ロシア制裁に加わらないわけにはいかない、また、実際に産業が死ぬよりもウクライナ人もロシア人も死んでしまっているわけで、この戦争をやめさせるために態度をしっかり示す目的で禁輸措置も含めた経済制裁をしっかりやらなければならないのもまた当然のことです。

 ところが、特定の自民党議員が地元経済からの陳情を理由にロシア側に事実上立って、これらの海産物の禁輸措置については抜け穴とするよう自民党内だけでなく岸田官邸に対して強烈な申し入れを繰り返しているのもまた事実で、ということは、ウクライナ人は死んでもいいけど地場地域の産業は守りたいという主張を日本政府は認めるのかと海外から指弾されても何も言い返せないことになります。

 究極には、日本が具体的に権益を持ち、しかもそれがオール民間であるサハリン2をはじめ、極東経済の枢要なポジションで日本が引き続き存在感を示していること、また、ここで原油やLNGをロシアから導入できなくなると中東依存度がより高まる大問題もまた並存することを考えれば、岸田文雄さんにとってよりむつかしい情勢になっているのだということは考えてしかるべきであろうと思います。

 逆に言えば、極東のロシア人に対しても、それだけのことをクレムリンはしたのだと説明するべき状況であるだけでなく、他方で、これらの物品がダブつけば中国が買っていくだけなのだから対立して制裁をしても中国を利するだけで特段の意味がないという議論はあります。ただ、そういう議論をするのならば、日本政府としてその旨をきちんと説明せねばならず、まだドイツが天然ガスをロシアから買っているうちに道筋だけでもつけてほしいなあと思う次第です。

 ほかにも面倒くせえ議論はたくさん出てきて緊張感のある感じで直面している部分はありますが、とりあえずはこの辺で…。



鈴木宗男さんや佐藤優さんがどうもアカンかったようだというのは以前から薄々なんとなく分かっていたものの、本人はまあ国会議員だし、あるいはロシア専門家でもあるし、インテリジェンスの世界では実績もあり著名とされている人たちだったわけですけれども、今回はこの体たらくでした。

佐藤優「『プーチンの精神状態は異常』という報道は、西側が情報戦で負けている証拠である」 相手の内在的論理がわからなければ、対抗手段もわからない #プレジデントオンライン https://president.jp/articles/-/55331 

 たぶん、どこからもきちんとした情報を入手できておらず、誰にも頼られず、ちょっと宙に浮いてしまっているのではないかなと思いますが、これでインテリジェンスや諜報を語られてしまうと日露のオペレーターたちも苦笑するしかないのではないかと感じます。それ以上のことは良く分かりませんが。

 また、鈴木宗男さんもなかなか厳しい感じになっています。いま、維新におられるはずですが、所属議員個人の認識、意見であるという切り離し方をするのでしょうか。

鈴木宗男氏、ウクライナ側にも責任あるとの認識…講演で「原因作った側にも幾ばくかの責任」 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/politics/20220315-OYT1T50088/ 

 なお、鈴木宗男さんが派手に罠に引っかかっている記事がこちらになります。

「2島返還」しかない、鈴木宗男氏語る領土交渉の舞台裏:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASP744TVCP6JUTFK00K.html 

 極東や貿易関係しか知らない人間でも、さすがに流れてくるお話を見ている限りでは非常に厳しいなあとも思うわけですね。現状では、対ウクライナのロシア侵攻でテレビなど主要メディアでは防衛研究所を含めて安全保障分野のちゃんとしたアナリストが頑張って出演して解説を施していて、情報バラエティで呼ばれるスポーツ選手や芸能人がウクライナ紛争の「お気持ち」を無駄にくみ取って話が混乱する以外はおおむね正しい情報がメディアに流通しているようです。

 そこにきて、テリー伊藤さんがニッポン放送のラジオ番組で戦争当事者のウクライナ人に余計なことを言って騒ぎになったり、本田圭佑さんがTwitterで余計なことを書いて騒ぎになったり、橋下徹さんが余計な論争をして騒ぎになったりしていました。戦争や災害というものは、基本的に「当事者ではなくても、結論が誰の目にも明らかである」という点で、将来こうなるという未来予測も、どちらの言い分に理があるかという議論も、基本的には明確な結果から事後検証が可能だという点で、非常に分かりやすいイベントなんですよね。

 正直に思ったことを書いた、あるいは、立場上当然言うべきことを言った、と本人たちは釈明するのかもしれませんが、実際になされることは「その人が、どういう立場で何を言ったか」に集約されるわけですよ。

橋下徹さんがウクライナ出身学者と生放送で口論…”国外退去”発言が物議「じゃあ一体誰が国を護る」「よくこんな的外れなこと言えるな」(中日スポーツ)
#Yahooニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/6aac85a3f36187dff69ca053e71c69b5c5554e9b 

 報道とはいえテレビ番組であり、スポンサーがついている「商品」である以上、橋下徹さんのような出演者が役割として議論を喚起したり、異論を述べて盛り上げなければ視聴率も取れず、報道がビジネスとして成り立たないのは分かります。ただ、ウクライナ紛争に関しては単に戦争であるだけでなく、シリア、チェチェン、ジョージアでの事案同様、日本の隣国であるロシアでの問題であると同時に、ほぼ同じロジックで台湾海峡や尖閣諸島、南シナ海といった日本の利害に直接関係のある国や地域・海域にも影響する有力当事者候補であることは言うまでもありません。

 そうなれば、今回のウクライナ紛争で「誰が(どの媒体が)正しく情報を取り、然るべき議論をした有識者なのか」は浮き彫りになります。逆に言えば、誰が(どの媒体が)間違った情報や評価を流しているか、あるいは特定の当事者の大便をしようとしているのかも、なんとなく分かっちゃったのが今回、ということになるのではないかと思うんですよ。それは、特に今回、国際社会の後押しで国体を守り抜きたいウクライナ大統領のゼレンスキーさんが情報戦を大事にし、また、ロシアもプーチンさんを筆頭にかなり本気でこの戦争を戦い抜くにあたってなりふり構わずに情報工作を推進しているため、結果として、みんなこの問題ではポジショントークがどうだとか無関係に本気で言論活動に取り組んでいる面はあるからです。

科学を信じる民主主義者が言論弾圧に抵抗しなければならない理由|山本一郎(やまもといちろう) #note https://note.com/kirik/n/n86cda3d7d585 
ロシアによるウクライナ侵攻とそれによって日本がいまなすべきこと

 もうこの時点で、2月24日に振られたサイコロの出目は把握された、誰が何を言い、どういう見解でこの問題に焦点を当てていたのかは明確になった、と思います。



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