土に落ち身は消えて
ふることのみを思い草
ー「雪」より


先日は奈良県に参る
芝能(しばのう)の地謡を勤める
曲目は「雪」
シテはお家元

無意識のうちに現れて
消えていく儚き雪の精を
描いた曲であります

天より降りる雪のひとつひとつ
地に降りて消える命
それは本当に短いもの

その魂が僧の前に現れ
私は何者なのか、と問い
有明と共に成仏していく


いつのまにか誕生し
無心に生きる
そして必ず死ぬ
己は何者か

この世に生きるものは
雪も草木も動物も人も
魂になれば同じすがた



この日は強風で
風に煽られながらの支度
冒頭の写真では
雪の精が現れる山の作り物

雪の載せ方も
気品を保たねばならぬ
良い格好が求められる


舞台は板の上ではなく
芝生の上であります

昔ながらの方式であり
もともと能は芝の上で
演じられておりました

観客も芝に座して観ることから
芝に座る、ということで
芝居という言葉がある


帰り道は奈良の定番(勝手に)
千壽庵のわらび餅



…足袋を履いていても
やはり地の上を歩くのは良いものだ
だが洗濯は大変である