捨てられた美少年と菊水の話
むかしむかし、中国の王に仕えていた少年がおりました。少年は王の枕をまたいでしまい、罰として山に捨てられました。王
は可哀想に思いまして、偈(げ)という、仏様をたたえる言葉を書いた徳の高い
枕を渡しました。少年は山の中の
菊の葉にそれを写しました。すると、そこのうえに"露"(つゆ)が溜まってゆくではありませんか。これは不老不死の薬となりました。少年はそれを飲みつづけ、
七百年もの長いあいだ
生きることができました。めでたしめでたし。
能では、七百余歳の少年(主役=シテ)に
勅使が出くわすところから話が始まります。
もとは祇園祭の菊水鉾町で頂ける御菓子でありましたから、是れを戴くのにはちと気が早うございます。
私の居ります金剛能楽堂 (現在は上京区の烏丸通中立売通上る)は移転前、四条室町を上るところに御座いまして、"したたり"は、祇園祭のお茶会を催された際の献上菓子でございました。現在では年間を通してご購入いただけるようです。
黒砂糖とざらめと糸寒天と水で作られた、綺麗な御菓子です。つるりとした食感で程よき甘さ、必ず一棹独り占めをする贅沢が毎年夏の楽しみなり。
菊水鉾の名は、"菊水の井"という名水の湧き出る井戸より取られ、さらに菊水の井は、能の題材である謡曲「枕慈童」に因んでいると聞いております。
即ちこの文(もん)菊の葉に
悉(ことごと)く顕(あらわ)る
さればにや
雫(しずく)も芳(こおば)しく
滴(しただ)りも匂ひ
美味しいものを頂ける今日に感謝
鞍掛け馬の稽古
今日は少し曇り。
本日はお家元による若手能楽師のお稽古。先生により稽古方法に違いはございますが、基本的には手取り足取り教えて頂くものではなく、改善点のみを注意して頂きます。技術習得の"練習"は己でやりたまえよ、と言うことです。
「いにしへ(古)を考える(稽)」
稽古は練習と違う。古書などを読んで学ぶ意味から派生したと聞いております。単に方法や技術を学ぶのではなく、その先に何を致すのか、どの様に力を注ぐのか。
"これから先、そして今、
為すべきことは何かを考える"
能楽師のみならず常に一発勝負の舞台人にとりまして、練習ではなく稽古が大事なのです。本来、最良の勉強は本番の舞台であることは言を俟たず、中々其れは難しいことです。鞍掛馬の稽古にならぬよう。
昔の先生方の言葉を読みますと、
一に稽古、二に稽古、三に稽古
などと書いてあります。
トマトが青く大きく膨らみました。赤くなる前にどれだけ養分を吸収できるか。
今日も有難う御座いました。
人生朝露の如し
今日も雨は降らず
晴れ間がさしました
私は雨が好きです
つまり天気が宜しくない
こちらは「羽衣」という曲に出てくる
天女の役です。今年の5月、豊橋における能楽講座第3回目の際の写真(全4回)
一昨年初めて"ワークショップ"という形式で能楽講座を催しました。ワークショップとは、一般的に体験講座という意味です。お能の試食会のようなものだと、あるお方の能楽講座の記事に掲載されており、成る程と思いました。
(去年12月 姫路 妙行寺)
日本に限りませぬが、この世はとても恵まれており、得られぬものは無い程、モノやコトで溢れています。
今ではモノやコトから人間様に近寄るということが鉄則のようで、確かにワークショップ形式が効果的なことを感じております。
勉強中の我が身にて僭越なことではありますが、能楽の良きとするところ、この世界に身を置いて感じること、細くとも多くの方々に繋がる糸筋を提供できればと思い、今年も活動を続けます。
(今年5月 みたけ幼稚園)
※金剛龍謹若宗家の助手
(去年2月 奈良 今西家邸宅 重要文化財)
(一昨年2月 京都 わざ永々棟)
これが初めてのワークショップ
すべての皆様に感謝
照顧脚下
京は梅雨のひと休み
今日はお弟子様のお稽古教室
家紋、桔梗の色の美しきかな
忙しなき日常のほんの数時間でも、お稽古を通して、自身のからだやこころと対峙する機会をお持ち頂ければ、と考えております。
能のお稽古では、まだ見たこともなき景色を想像することも、あらゆる ヒト や
モノの気持ちに浸ることも致せます。
実際のお稽古では、すり足の勉強を致します。能の用語では、運足(うんそく)・運び(はこび)などと言います。
普段はあるく・あゆむという行為を意識することは少ないかと思いますが、先ず、その難しさを覚えます。そして日々の生活の中、歩けることの有り難さを知ることが致せると思います。
照顧脚下(しょうこきゃっか)とは、有名な禅語です。脚元こそが自分の存在根拠である、という意味。外から学べなければ自身に問いなさいということでもあります。
"脚実地を踏む"
という言葉があるように、人生も一足ずつ確実に歩まなければなりませぬ。
実家では、祖父の部屋の襖に書いてあります。またお寺などの玄関にも書いてあるのを良く見かけますが、靴を揃えよということですね。
今日一日に感謝。