波の浮鳥住む程も 
下安からぬ心かな
_WfbCzhRYa.jpg

波間に浮かんでいる水鳥は
絶えず落ち着きのない
不安な思いをしているが
私たちの身の上も ちょうど
あの水鳥のようなものだ…

小沢の主君 友春が討たれて
その友春の妻子は
信濃国から逃げ出し、
それはそれは辛い旅を
続けておりました。

不意に訪れる夫の死の悲しみは
ただ闇に浮かぶ月のみが
慰めるだけであった

「私は、信濃国の住人の
安田の庄司友春の妻です。
そして我が子 花若を連れて
旅をしております

さて 私の夫である友春は、
同国の望月という者に
討たれてしまいました

それからと言うもの…

我が家に仕えていた
多くの家来たちは
敵の手により殺された者や
追われて逃げた者、
身を案じて隠れた者と、皆んな
散り散り 居なくなりました

もう 頼りとなる者は
誰一人もおりません

この可愛い我が子を
敵がどこかで狙っていると思うと
恐ろしくて溜まらないのです。

危険な事とは思いながらも
この子を連れて旅に出ることを
決心したのです」

信濃国より外へ出てみると、
故郷の事が名残惜しくなった。

浅間山に立つ煙を見れば、
昔のことや夫の事を
思い出したりなどして余計
歩みは鈍りがちになったが、
今さら戻ることもできず、
足を進めた。

旅の辛さは
その経験のあるものにしか
本当には理解できない。
女と幼い者だけの旅であれば
それこそ言うまでもない。

夜の寒さ、空腹、強奪などの恐怖、
ましてや敵方から
狙われる可能性があれば尚更だ。

ところどころ宿に泊まっては
辛い思いをして、悲しい涙を
流しながらも 旅を続けた。
気がつけば彼女たちは
守山の宿に着いていた。

友春の妻「急いで歩いたので、
近江国の守山の里に着きました。
今日はここで宿をとりましょう」

eGk9DdopKH.jpg
つづく…

昔のこと。

季節はお正月。
まだ外は寒い。
ここは近江の国、
守山の宿屋〝甲屋″でのお話。
0JcXHs73We.jpg

「俺は信濃の国の住人だ。
もとは信濃で安田の庄司友春様
という方に仕えていた。
その友春様が殺されてしまったことは、まだ記憶に新しい。
友春様の従弟に
望月秋長という者がおり、
どうやら口論の末、
討たれたというのだ。
俺はその事件の頃は
都におったから、
その悲報を聞いて愕然とした。
事の経緯も知らないまま
急いで帰ろうとしたが、
この俺までも道中で
敵から狙われていると、
さる者から知らせを受けた。
その時の俺は恥ずかしながら、
まだ生きたいと思った。
だから武士として
誠に恥ずかしいことではあるが、
この守山に留まる事しか
できなかったのだ。
こうして俺は生計を立てる為、
この甲屋の主人となった。
武士としての姿を隠し、
暮らしているってわけだ」

と、宿屋の主人が
語りだしたところより
この物語は始まる。

この初老とみえる男、
名を小沢の刑部友房という。


つづく…


LPCveMV_nt.jpg
信濃の国の住人 安田庄司 友春(やすだのしょうじ ともはる)は、従兄弟と口論の末に討たれてしまう。その従兄弟の名を 望月秋長(もちづき あきなが) という。

友春の家臣 小沢刑部友房(こざわのぎょうぶ ともふさ)は 事件当時、都にいた。この事を聞くと急いで本国へ帰ろうとしたのだが、その途中で敵が自分を狙っていると聞き、帰国は叶わなかった。

その後、守山の宿に落ち留まることになり、"甲屋"(かぶとや)という名の宿屋を営み、武士の身分を隠し宿の亭主として姿をくらましていたのだった。


別れし主君の 友春の妻は、敵の追手から逃れようと息子 花若(はなわか) を連れ、さすらいの旅を続けいた。その途中、守山の宿 "甲屋"(かぶとや)に辿り着く。

宿の主人である友房は、泊めた旅の母子が、主君の妻子と判り、やがて自分の身分を明かして、主従涙にくれます。


仇である望月はというと、友春を討った罪として領地を召し上げられ、都で裁きを受けていたのだが、それも全て解決した為に本国へ帰ろうとしていた。その帰路、なんと甲屋で宿を借りようとするのであった。


望月のお付きの者が口をすべらせた事により、今夜の客が望月であると悟った主人 友房は、これこそ天の与えた好機と思い、主君の妻子に敵討ちの相談をする。

敵討ちの手筈はこうだ。

主君の妻を宿場で流行る盲御前(めくらごぜ)に仕立て上げ、それを花若に手を引かせて望月の部屋に連れて行き、芸を見せ酒で酔わせた後、スキを見て討とう、と言うのだ。


望月のもとに到着した友房は、段取り通り、寒い夜なのでお酒を勧め、盲御前に扮した母子に曽我兄弟の敵討ちの物語を謡わせます。

途中不審に思われながらも、花若の羯鼓に、友房は獅子を舞い、やり過ごす。

続く余興の面白さに、望月は気を許して酒の酔いに眠気を覚える。ついに臥したる折を見て、友房は花若と力を合わせて望月を討ち取る。


上記がおおよその粗筋である
次の記事からは能「望月」の
簡単な読み物を予定



山田伊純事務局より宣伝です

本年6月17日に
東京の国立能楽堂において
山田伊純は「望月」を開曲(披く)する
こととなりました
是非お出かけくださいませ

当日のチラシと番組は
以下をご参照ください

チケットに関するお問い合わせは
公式サイトの お問い合わせ より
お待ちしております
FQ4ZyK3yr7.jpg第30回記念 潤星会
2018.6.17
於 東京・国立能楽堂

能「楊貴妃」山田純夫 ほか
能「望月」山田伊純 ほか
狂「居杭」大藏彌太郎 ほか
仕「笠之段」金剛永謹 

※詳しい配役は以下の画像をご覧ください

正面指定10000円
自由席6000円
学生3000円

4_STgkUk8A.jpg

●チケットに関するお問い合わせは
 公式サイトの お問い合わせ より
 お待ちしております

●また、カンフェティでもご予約していただけます

少しだけ良いことがあった日

少し良くできた日

少し幸せな日

少し酒を飲む可し

yZOoT_pfeL.jpg
誠実に事を進めれば
後ろめたいことは
一つもなく
背筋を伸ばして
堂々とこなせる

正に
誠実に勝る知恵なし、だ


写真は
晩酌の定番
今日も有難や

↑このページのトップへ