ULTRA TIGER Part 2
A.JPG
前回の記事から、早いもので半年以上(約7カ月か?)が過ぎウルトラタイガーにチャレンジされる方も増えていると思われる。もちろん、ウルトラタイガーという名前は“俗称”であるから、筆者から提供された個体やその流通を意味しているわけではない。
レッドビーシュリンプにも様々なブランドやブリーダーの特徴があるように、ウルトラタイガーもそのような世界になってゆくと想像する。
ちなみにレッドビーであれば、A者とB者のレッドビーを交配しても、それはレッドビーと評価される。ウルトラタイガーもそのような流れになれば掛け合わせ、組み合わせの自由度が増すように考える。
B.JPG
さて、今回は前回からの続きにはなるのだが、概要から少し踏み込んで、ウルトラタイガーが持つ多くの魅力と可能性に迫りたい。
今回はウルトラタイガーが持つ魅力の3大要素、
① ルビーレッド、
② サイケデリックパターン、
③ 白の厚塗り、
について、過去にドイツからデビューしたファンシータイガーや現在では一般的な品種となってきたナナシーシュリンプ、またウルトラタイガーが作出される前後に起因するフラワータイガーなどとの品種の位置関係を踏まえ、ブリーディングに取り組まれる方のアイデンティティになれば幸いである。
C.JPG
① 赤の質感(ルビーレッド)
今後ウルトラタイガーを入手、ブリーディングに成功される方が増えるにしたがって周知のファクターになると思うが、現状ではやはりルビーレッドの色彩美について言及するべきと考える。
前回の記事で、
1:艶のない色質「バーミリオン(朱色)」レッドビーとファンシータイガーは同じ色質でありまた、
2:艶のある色質「ワインレッド(クリア)」シャドー、ピント、ナナシーなどが同じ色質であると説明したつもりである。

この2者を比較した場合、1は優性、2は劣性となり、それ以外の品種との交配も含めて1と2の基準を考えることでウルトラタイガーが持つ特徴の整理がつけやすくなってくる。
「ハイグレードのレッドビーはワインレッド以上の濃さであり、艶もある赤に見えるし、あなたの言っていることは理解に苦しむ・・・」
との声も上がるかもしれないが、この説明の意図するところは同じなのでご安心いただきたい。
基本的に優性・劣性の話となる場合は白か黒かの二分(にぶん)、もしくは赤か黒かの二分など、はっきりした分離を説明する際に用いられるが、今回のルビーレッドは“その中間”を意味している。
E.JPG
説明が長くならないように例えると“中間”の意味はビーシュリンプで過去に見られた“茶ビー”という色関係に近いと考えて良いだろう。
周知の通り、黒ビーとレッドビーは前者が優性、後者が劣性であり、F1はすべて黒ビー、F2では3(黒):1(赤)に分離されるというのがメンデルの分離の法則にしたがった考え方となっている。・・・以下省略。
ただし分離の法則は基本的に同種間での交配について立証されるものであり、他種(異種)との交配ではその範疇にない場合が多くなる。
(ホビーレベルでの参考文面としてください)
補足であるが、この場合の他種というのは学名的に違いのある種類ということであり、品種という意味ではない。
例えば、ビーシュリンプとタイガーシュリンプの混血は異種間交雑となり、メンデルの分離の法則では説明がつかない結果となる話を言いたいのである。(茶ビーの定説の話は今回割愛します)
F.JPG
また、
A:ビーシュリンプ、
B:シャドーシュリンプ、
C:ギャラクシーシュリンプ、
ではそれぞれ違うシュリンプが源流となるため、現在流通する様々な品種では当然メンデルの分離の法則どおりにはならないのである。もっといえばA,B,Cそれぞれでもすでに異種間交雑の結果、今日の美しき表現を得た可能性が高いため、それぞれのルーツについても様々な品種を考えるとき、整理程度に抑えておいていただきたい。
さて、先ほどの“茶ビー”の意味としてウルトラタイガーに当てはめ、お伝えしたかったのは、
バーミリオン(レッドビー)⇔ルビーレッド(ウルトラタイガー)⇔ワインレッド(レッドシャドー)という位置関係である。
K.JPG
いや、まだ分かりにくいので、絵具程度に大胆にすれば
赤(レッドビー)⇔紫(ウルトラタイガー)⇔青(レッドシャドー)くらい極端に例えた方が分かりやすいのかもしれない。
もはやこうなれば分離ではなく色覚(しきかく)の内容になってしまっているが、意外とすっきり理解できそうでもある。
異種間交雑によって一見不可能な事態が起こってしまうのも、改良品種としての醍醐味ではないだろうか。

多少雑多な説明でどんどん進めてしまい恐縮であるが、これくらいのペースで進めて行かないとこちらのブログ投稿の文字数をオーバーしてしまいそう・・・、かつ続く2つの項目にたどり着くまで興味ある方にも飽きられそう・・・
出来るだけ多くを説明したくなる筆者にとっては要点をまとめるいい訓練になりそうだ。。
本題に戻ろう。
ハイブリッドシュリンプ(交雑種)に懸念感を持たれていない方には、前述の2つの意味である分離の法則と中間色の絵具(混色)を合算して考えることでひらめきも生まれるだろう。
つまり、ウルトラタイガーのルビーレッド体色は不安定なポジションであるからこそ魅力的であると気づいていただきたい。

そしてウルトラタイガーの絶対数が市場で増えるにしたがって微妙な色合いについても理解されやすくなるだろう。
記事中の表現で言えば、紫は分かるが、そこから先の赤紫や青紫の理解の仕方である。
ウルトラタイガー同士(いわゆる純血と呼ぶ方が多くなるでしょう)の交配でもバーミリオン系とクリア系が出るということである。
誤解されて困るのは、色が薄い個体・・・という意味ではない。
再三の説明で諄いと思うが、質感(色質)の話である。
補足に言えば、ウルトラタイガー同士の交配でもファンシー(ビー)的な色やナナシー(シャドー)的な色の個体が出るが、それらをどう解釈するかということである。
以上を含めて選別交配を繰り返すことによる練度(狙いの個体の出現率)の向上はルビーレッドの項目よりも白の厚塗りの項目で説明したいので、ここでおしまい。
備考:残念ながら食用となる生物なら遺伝子情報も研究・解明される可能性もあるだろうが、それに比べてもちろんニッチな観賞用エビの世界では自力でチャレンジ・想像するくらいしかできない。だからこその趣味であり楽しみでもあり。解析よりも感受性の向上をもって発見を得ることも多いだろう。
D.JPG
② 体の模様(サイケデリックパターン)
紅白がバランスされた色彩は錦鯉や金魚を筆頭に、美しさの頂点として日本人の美意識に根付いている。レッドビーシュリンプはまさにこのアドバンスドシュリンプであり、世界のアクアシーンにも多大なる影響を与えた。
その後シュリンプシーンには様々な品種が登場し、多層なシュリンプファンを生み出した。
今回のウルトラタイガーはその集大成的な可能性を持っていると言えるだろう。
サイケデリックパターンの難度(柄)
A:ゼブラ柄を強く表現している個体はタイガーシュリンプの形質を含有している比率が高い。そして胴部のゼブラストライプが優先されると頭部は単一(柄なし)になりやすい。
多品種でイメージするのであれば、ナナシーシュリンプでゼブラストライプが多く入る個体では頭部にスポットが出にくい傾向に準ずる。
B:頭部のスポットを多く表現している個体はフラワービーの形質を含有している比率が高い。そして頭部に大柄の斑模様が優先されると胴部は単一(モスラ的)になりやすい。
ピントシュリンプで頭部にビッグスポットを表現する個体の傾向に準ずる。
サイケデリックパターンの難度(面積比率)
a:赤の面積が多い個体の傾向としてシャドー系のソリッド(単色)因子を含有している比率が高い。そしてルビーレッドの色彩や白地の濃さはそれによって安定しやすくなる。
シャドー系シュリンプが表現する白の色質は先天性で環境による影響を受けにくいことに準ずる。
b:白の面積が多い個体の傾向としてレッドビー系(フラワー的)因子を含有している比率が高い。そして白地は遺伝的な形質や外部要因により色彩が変化しやすくなる。
血統や遺伝子だけでなく飼育環境でも影響を受けやすい白の形質に準ずる。
・・・など、まとめただけで何となく点が線になりそうな方もいらっしゃるかもしれない。
要点としては、頭部のスポットを有しながら腹部のゼブラパターンを表現することは過去、相反する形質となっており、現在のウルトラタイガーはその困難な表現の融合、美徳を得ているのはまさに“ウルトラ”と愛称している所以である。
J.JPG
後発型表現
先に話した内容と重複するかもしれないが、ウルトラタイガーの表現は成長と共に変化に富む。結論から言ってしまうと、それは優劣が拮抗した状態である様々な表現が含まれている品種だからである。
レッドビーシュリンプの色彩美は生後間もないころから発達し、親サイズになるまでに退色するケースも多い。一方でシャドー、ピント、ギャラクシー系のシュリンプ(いわゆる艶のある体色)では成長と共に色彩が濃くなってゆくケースが多い。脚部の色味などは顕著で、レッドビーと対局の性質があると考えてもよいだろう。
つまり成熟するにしたがって脚部の色合いが強調されるケースが多い、なども分かりやすい特徴となる。
現状これを一括りに“タイガー系の特徴”と揶揄するのは短絡で、今後進化する品種によっての指標を待ちたい。
ウルトラタイガーはすなわちレッドビーの美的センスが重要とされつつも、それを構成している要素が複数あり、選別交配に対する考え方やポイントもブリーダーやショップによって様々となるだろう。今後増えてゆくスタイルに注目してゆきたい。
白の厚塗り(レッドビーシュリンプクォリティ)
H.JPG
過去にドイツの知人がレッドビーの白味を追求した結果、全身ほぼ白となるハイクォオリティのレッドビーを固定化させて楽しんでいた。ある種新鮮味があるその表現はややもすると日本ではスノーホワイトとして直視され、嫌煙されたかもしれない。
また、以前ののファンシータイガーは色彩が薄く、特に白味はまばらで透明な部分が目立つ結果、レッドビーの完成度には程遠い表現の個体が大半であった。
レッドビーの場合、赤の色彩を追求するか、白の濃さを優先するかによっても選別の仕方は違ってくる。
もちろんどちらも最高になるのが理想であるが、柄(日の丸やモスラなど)の重要性との相互関係で単純な話では終わらないのがレッドビーのやりがいのある一つの理由となった。
(それ以上の話はここでは割愛します)
F.JPG
話を戻すと、基本的にタイガー形質から引き込まれたルビーレッドは白の度合いに陰りが見えるが、そこで白味の面積が多く、白の色彩も濃いレッドビーを交配されるとどちらもショートカットとなり、いいとこどりの結果になる。
この場合は安打率にばらつきが出るが、もともと選別を行ってきたスタイルであれば、まだまだショートカットの効果は続いているはずだ。
半分は自分で頑張って固定率を上げてゆくプランと言えばわかりやすいだろうか。
そしてシャドーシュリンプ他(艶のある品種)の白味はどれも単層でクォリティにムラがない。ルビーレッドの形質が出現したとき同時に白の安定化も会得したものと考える。
過去に登場してきた品種からウルトラタイガーの立ち位置を想像いたときにナナシーシュリンプは良き先導役である。
ウルトラタイガーでは赤勝ちの個体に上品な白味の安定度が増すのはこの複合要素から考えると、理論に閃きがでるマニアもいるのではないだろうか。
白の厚塗りに項目に際して、ウルトラタイガーの深みを分かりやすく説明したかったのだが、誤解しかねない説明になりそうなので外周を回った形で終了としたい。
結論的には隠し味的な要素を感じ取るセンス、そしてそれを何事もなかったかのように固定できるブリーダーに人気が集まることになるだろう。
G.JPG
今後のポイント
たとえばレッドビーと交配した後、レッドビー柄でほぼ固定できた個体群はどう評価されるのか。
鑑賞を目的とした流通と、コンペティション要素を持つブランド個体では主体性が異なる。
前者であれば特に問題にならないが、後者の場合は複雑になるだろう。
ピュアなことが価値であったところにピュアな要素も価値になる世界ということだろう。
本来であればウルトラタイガーとビーシュリンプの交配、もしくはその他の品種、場合によってはワイルド種と混血の履歴が明白である場合、レッドビーの定説によってそれは“純血”ではなくなるのが当然。
しかしここには別の意味もあり、趣味の世界として“良いもの” への共通項が存在しているように思える。
ウルトラタイガーは過去にファンシー系シュリンプと総称された完成度が低い(当時はそれでも衝撃的)時代からレッドビーシュリンプに肉薄する色彩を得ようとしている。その理由としてはハイクオリティのレッドビーがもたらす恩恵があると認知されているが、ウルトラタイガーが一つのステータス(カリスマの意味ではない)を得るにはラインブリード上での安定化がポイントとなってくるだろう。
前述の赤の濃さ(ルビーレッド)、サイケデリックパターン、白の厚塗り、のトライアングルは3次元的に融合されており、安定した色彩美を維持する血統目指してブリーダーの手腕が問われる世界はさらなるブームの予感か・・・。
I.JPG
センス(理念)と相場(価格)の迷走はまだまだ続いてゆくだろう。