最初の登山経験は小学4年生の秋。
当時私は父の仕事の都合で福島に住んでおり、
河原で行われた芋煮会の企画のひとつとして近くの山に登った。
コーチに連れられ、所属していたバレーボール部のみんなと一緒に登った。
登っている最中のことはあんまり覚えていない。
頂上にいる時間が短かったこと。
街より(と言ってもかなり田舎だけれど)空気が冷たかったこと。
枯葉がいっぱい落ちていたこと。
降りてきてからお母さん方が作ってくれた芋煮がすごくおいしかったこと。
帰ってきてからも、教室の窓から見えるあの山に登ったんだな。
と授業中にじっと眺めていた。
それから東京に戻り、12歳で仕事を始めた。
たくさんの方に迷惑がかかるので日焼けをしたり
大きな怪我をするようなことはしなくなった。
大学生になってからはよくひとり旅をするようになった。
思いついたら即行動。けれど仕事があるので近場ばかり。
ある日、日光に行って精進料理を食べようと思ったら
知らないおばちゃん達と相席になり、話が弾み、
一緒にハイキングをして滝を見た。
お茶までして解散したけれど名前も知らないし、連絡先も知らない。
もちろんそれ以来会っていない。
多分自分はひとりが好きなんだと思う。
仕事の説明も難しいし、しゃべることも本来得意ではない。
けれど友達や理解者はほしい。
山で出会う人はその時限りなので
「ひとりは好きだけど寂しい」というわがままを包みこんでくれている気がする。
同時に伝えたいことをじっくり煮詰め、表現し、作品として残す。
「音楽」という職業もまた自分には合っている気がしている。
昨年事務所を辞めたことで26年生きてきて初めて自分の責任が自分のものになった。
このことも登山を始めるきっかけの一つになっている気がする。
周りからは「突然どうして登山なの?!」と驚かれるけれど、
もしかしたら元々好きだったのかもしれない。
まだ山は登り始めて日が浅いので分からないことも沢山あるし、
自分のことなんてもっとよく分からないけれど、
音楽も山登りも自分で目標を掲げて進んで行くことには変わりない。
天候やトラブルに冷静に対応して、安全に生きて帰る。
自分の力でやり遂げるということが多分好きなんだと思う。
清浦