受験シーズンだからですかね、ここ数日、SNSで「偏差値50以下の大学なんて潰してしまえばいい」というような趣旨の発言をみかける機会が多いです。

「偏差値50以下の大学を潰す」というのが、日本語と成立していない(偏差値の意味を理解していない)ので、やはり数学教育は大切だなぁと思いつつ、そう言えば、少し前に社内で話をしていたときに「偏差値にはマイナスもある」という話をしたところ「はじめて知った」という人が多かったので、日本でこれだけ一般的に使われている学力指標の偏差値ですが、偏差値の意味となると、ほとんどの人が理解していないのだなーと思ったのを思い出しまして。




偏差値の計算方法について紹介してみましょう。




<< 偏差値の計算方法 >>

偏差値を決めるためには3つの情報が必要です。
  1. 偏差値を決めたい対象の値
  2. 対象となる集合の平均値(加算平均)
  3. 対象となる集合の標準偏差
学校のテストで言うと、「自分の点数」「テストの平均点」「標準偏差」の3つになります。標準偏差というのは、一般的には馴染みがない指標ですが、「どのぐらい値にバラツキがあるか」を表す指標です。

さてさて、具体的な計算方法です。


偏差値 T = 50 + 10 × (x - μ) / σ 
※xは得点、μは平均点、σは標準偏差 

となります。

さすがに平均点μの出し方がわかららない人は、ほとんどいないと思うので、標準偏差σの出し方だけ解説しておきましょう。


標準偏差 σ^2 = (1/N) × Σ{(Xi - μ)^2} {i=1→N}


こんな計算式になります。

ちょっと複雑ですが、日本語で表現すると、『標準偏差の二乗は「得点と平均点の差を二乗」したものの平均』になります。




<< 具体的に計算してみる >>

ちょっと複雑なので、5人の人にテストを実施したとして、偏差値を計算してみたいと思います。5人の得点を10点、30点、50点、70点、90点としたいと思います。平均点は50点です。(μ = 50)

標準偏差は、


σ^2 = {(50 - 10)^2 + (50 - 30)^2 + (50 - 50)^2 + (50 - 70)^2 + (50 - 90)^2} ÷ 5

σ = √800 ≒28.3

となります。


したがって、

10点の人の偏差値は、

50 + 10 × (10 - 50) / 28.3 = 35.8

42.9となります。


90点の人の偏差値は、

50 + 10 × (90 - 50) / 28.3 = 64.1


となります。


このクラスで一番偏差値の低い子は35.8で、一番偏差値の高い子が64です。良く偏差値は25から75までみたいに言われることがありますが、なんとなくそういう一般常識から言ってもも、クラスで一番できることと出来ない子比較したらこんなものかなーとなるわけです。







ところで。






ここまでの計算式を見たらわかると思うのですが、平均や二乗平均などを使うことから、


偏差値は相対評価


であることがわかると思います。




これによって、「偏差値50以下の大学を潰す」という表現が意味をなさないことが証明されました。どういうことかと言うと、いまある大学の中から偏差値50以下の大学をなくすと起こることは、それまで偏差値50以上だった大学が偏差値50以下になるということなのです。

大学数が1になったとき偏差値が最後に50になるので、残る大学は0になります。





仮に、「偏差値が50未満の大学を潰す」と言い換えたとしても、それは「日本で1番の大学だけ残す」ということと意味が同じになります。





ついでに、振り返って見てもらって、偏差値の定義を見てもらうと、比較的単純な式で決まっているので、非常に対象の数が多い(試験なら受験者が多い)状況で、極端に平均点が高いのに一人だけ低い得点という状況や、その逆が起きれば、偏差値がマイナスになったり100以上になったりすることもあることは、感覚的にわかると思います





大学受験の模擬試験なんかで100点満点のテストが実施されたとして、十分に受験者が多く(10000人以上とか)に対して、平均点が20点ぐらいで、100点が数人(1桁人数)とかなら、偏差値は100ぐらいになると思います。逆の状況ならマイナスですかね(笑)

実際の大学受験なら、平均点が非常に低く、逆に極端な高得点を取る人もいるような科目である数学、物理などでは、実際に100以上の偏差値というのは出現します。






ところで。






偏差値というのは、あくまでも学校の試験の点数のような客観的な評価のつけやすいものに対する指標にすぎません。例えば、芸術(絵画、音楽などなど)のようなものを点数化することは困難です。国語の試験の点数はつけられるでしょうが、文学作品の優劣なんていうのは点数化できないと思います。

偏差値はあくまでも目安にすぎません。勉強したい人がいるのなら、そのための大学はあってもよいのではないかと思います。

一方で、大学だけが勉強の場ではないことも、また事実です。そういう意味で偏差値偏重にはあまりなって欲しくないなと思います。




2月ということで、本格的な受験シーズンです。受験生のみなさんは頑張って下さいね。行きたい大学に入ることも大切ですが、合格出来た大学で一生懸命勉強するのも、それはそれで良いものですよ。