先週末はコミックマーケット 90に参加していました。

コミックマーケットは3日間開催で、そのうちはじめの2日間はスタッフとして、最後の日はサークルとして参加しました。コミックマーケットには2007年から欠かさず参加していますが、運営であるコミケット準備会はよく組織されたチームだと感じます。

なんせ一日20万人近くの参加者をさばくのです。並大抵のチームでは難しいでしょう。上京を機にスタッフ参加を始めてから、その思いはますます強くなっています。

スタッフを実際にやってみて気づいたことがあります。他のスタッフと趣味の話ができるとはいえ、設営や現場ってやっている事自体はただただ大変さしかないのです。

でも、こういうのが自然にできちゃうってやっぱりすごいと思うんですよね。

今回にしてみれば、諸事情により2日目の夜に企業ブースだったところを一夜で撤収し机を並べるという特殊な運用が行われました。
 

仕事に置き換えると早朝から働いた後にさらに夜間も働くということになり、それはやっぱりブラック企業なのでしょう。それでも当人たちにしてみれば「コミケのためにやってやったど!」という達成感があるだろうことは想像に難くありません。

その原動力に面白さや楽しさがあるとするならば、生産性を上げるためには当人の興味や関心が大事なんだなぁ、としみじみと感じさせられます。

さて、私はといえばスタッフの中でも会場にいらっしゃる方への案内と各種コミケット準備会販売物の販売を担う、受付販売と呼ばれる部署で業務をしていました。
 
受付販売の中でも特に受付部署においては、各地に配置されるインフォメーションで待機し、お困りの参加者の方のサポートを行います。案内の業務をやっているとブースを探している、グッズを探している、落し物を探している、稀にはコミケとは何のイベントなんだ、というものまで多種多様の問い合わせをいただきます。

基本的には、分かるものであれば正確に案内することができます。分からないものであっても、部署として知見があれば分かる方にヘルプをお願いすることで解決することも多々あります。

ただ実際にやってみると、その両者でもない、部署の誰も分からない問い合わせというものが結構少なくない確率で出てきます。

この場合は問い合わせいただいたものが解決できなかった旨を正直に伝えるしかないのですが、伝え方には細心の注意を払う必要があります。問い合わせされている方も不安な気持ちでいらしています。伝え方を誤ってしまうといらした方が感情的になったり激昂されたりしてしまい、問い合わせそのものがトラブルに発展してしまうのです。

このような一触即発のケースも含めて、案内業務にはコツがあると思っています。コツは手法としては至極シンプルなもので、基本は聞きに徹するのです。

相手の話を聞く。何か言いたいことがあっても、まずは相手の話したいことを全部聞く。はじめは感情的だった方も話している内に冷静さを取り戻されるケースも少なくありません。

ただ、最近思うのは単純に聞くという行為そのものは、そこまで重要ではないのではないかということです。大事なのは真摯に「相手の気持ちに立って」、でも冷静に問い合わせに対処することであって、聞く姿勢はあくまで表層的なものではなかろうかと思うのです。

不思議なもので、形だけ聞いているパターンや、気持ちの部分で他人事だと感じているパターンでは相手に伝わります。そして、一旦それが伝わってしまうと、火に油を注ぐように不安が爆発してしまう事態を招いてしまう、そんな不幸が待っている気がするのです。

であるから真剣に、相手の問題を理解しようと努める。問い合わせ窓口では、基本的に困っているのは相手で自分ではありません。その点で完全に同じ気持ちになれないのは仕方がありません。それでもなるべく、「相手の気持ちに立つ」。それが大事なのではないでしょうか。

では、どうしたら相手の気持ちに立てるのか。

相手の気持ちに立つ上では、自身の同様の体験、あるいは近しい経験から当時の心情を思い起こし、それをもって相手の気分を推察することがポイントだと考えます。いわゆる同情という行為です。

しかし、それにも限界があると思います。上記のような近しい経験を自分がしている場合は良いですが、自分が全く体験したことのないものであった場合、その気分を推察するのは非常に困難です。

自分が体験したことのない相手の問題にどう身を寄せるか。

個人的には、こればかりは「想像力」でカバーするしかないと思っています。相手が立たされている状態を自分の身に置き換えると、きっと自分だったらこう感じるだろう。では、相手だったらどう感じているか。

とにかく大事なのは、自分が持てる全てをもって、自分が体験したことのない問題に直面している相手の気持ちを想像することだと考えます。

そして、なるべく様々な角度から相手の気持ちを考えるために、自分自身の想像力を強化する、「想像力を養う」ということを常日頃から意識しないといけないのではないでしょうか。

ここまでは私の案内業務のノウハウとして紹介しましたが、実は「相手の気持に立つ」というのは仕事の上でも大事なことではないでしょうか。それも何も、直接お客様に向き合うカスタマーサポートや営業などの職種に限ったことではないと思います。

誰かとともに仕事を進める以上は自分があり、相手があります。例えそれが個人で作るサービスであっても、誰かに使ってもらってこそです。やはり相手が存在します。そう考えると、ほぼ全ての仕事において自分があり、相手があります。相手は必ずしも組織にとっての相手とは限らないのです。

人と人とのコミュニケーションの根底において、「相手の気持ちに立つ」ことが重要な場面は多々あります。そして、「相手の気持に立つ」ために「想像力を養う」ということが肝要な気がしてなりません。

さまざまな場面でこの「想像力」が必要なんだろうなぁと感じます。相手と自分、スタッフと一般参加者、あるいは一般参加者とスタッフ。想像力が欠けてしまった時にきっとちょっと前に話題になったようなことが起こってしまう、そう考えます。

何もコミケだけの話ではありません。仕事において、ラベルで相手を単純化してみていないか、たまには振り返ってみたいものです。

例えば、

  • 文系学部卒はこういうものだと、理系学部卒はこういうものだと決めつけていないか。
  • 営業、あるいはビジネスサイドはこういうものだと、エンジニアはこういうものだと決めつけていないか。
  • 学生はこうだ、社会人はこうだと決めつけていないか。

ラベリングは物事を単純化する際に便利なので、それ自体が悪いことであるとは思っていません。ただ、どんな立場に立っていたって結局は同じ目標に向かっている仲間であったり、フェアに取引をするビジネスパートナーであったりするはずで、同じ志こそ持てど対立する類のものではないはずです。

先ほどの例であっては、スタッフ参加者だろうと一般参加者だろうとコミケに関心を持ち、コミケに参加している参加者であったはずです。当事者でない外野がどうこう言える類の話でもないのですが、お互いに歩み寄りの余地があったのかもしれないな、そう感じるのです。

自分が苦しい思いをしているのは分かっている。であればして、相手も同様に苦しい思いをしているのかもしれない。コミュニケーションにおいても、のりしろのようなものを持ちたいと思う今日このごろです。

互いに気持ちよく過ごしていくためにも、想像力を養っていきたいものです。