マーケティングアジェンダ3日目は、P&Gの伊東さんとロクシタンの西口さんによる「様々なマーケティング課題についてP&Gが考えていること」。速記メモを書いたので共有しておきます。
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P&Gは外部に手法等を話さないことで有名で、このクラスの方が日本で講演するのはそれこそ20年ぶりじゃないかとかいうレベルなんだそうです。

なぜ、そこまでして伊東さんが今回日本でわざわざ講演することを選んだかという背景の1つは、やはりアドフラウドと呼ばれる不正広告問題。
米国ネット広告団体でのP&Gのプレゼンは、この20年で最高のスピーチとも称されているそうですが、ネット広告の50%がそもそもネットユーザーから見られない場所にあるのではという問題提起があるほどで、野放図にカオスな状態のまま拡張したネット広告業界の不正問題について、広告主はもっと怒りの声を上げて業界の不正を正さなければいけないという問題意識が強くあるようです。

最近、資生堂の音部さんやマクドナルドの足立さんをはじめとしたexP&Gの方々の追っかけと化している自分にとって、初日の足立さんのセッションとこの伊東さんのセッションだけでも、4日使って沖縄来た甲斐ありました。

なお、伊東さん、西口さんのお二人のどちらの発言かは書く余裕なく諦めました(汗)ご容赦ください。

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■様々なマーケティング課題についてP&Gが考えていること

スピーカー
 P&G 伊東さん
 ロクシタン 西口さん
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■マーケティングの役割
 Neil McElroyが1931に初めて定義した。

・ブランドマネージメント
 消費者マーケティングの責任者である「Brand Man」に売上・利益責任を持たせる

・Brand Building Framework
 WHO  この人を狙わないという定義もする
 WHAT  商品作りのことにかなり関わる。ブランドのエクイティも考える
 HOW  上記が決まって初めて手法の検討に入る。あくまでWHOとWHATが先。

・組織戦略 
 ・Brand as PL Unit
  1つの商品がPLの最小規模単位。商品別で損益分岐を分析している
 ・部署別採用 
  人材は部署別採用なのでマーケティングに入った人は一生マーケティング
 ・Promote from Within
  基本的に外部人材では無く社内で育てた人を昇進させる
  別の部署から異動してマーケティングに来る人間はアシスタントから始める

・P&Gはアップオアアウトで外に出てくるから業界に大勢いるように見える

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プロダクトマネジメントの起源と歴史 - 小さなごちそう
MindTheProductに米国のプロダクトマネジメントの起源と歴史が解説されている。 P&Gのニール・マッケロイ(Neil H. McElroy)が1931年にブランドマネージャーの職務定義に関する800語のメモを書く。徹底的なフィールド調査と顧客との交流を推奨。セールスからプロダクト、広告宣伝までを統括するブランド・マネジメントの礎を築く。 マッケロイが当時スタンフォードの学生だったHP創業者、ビル・ヒューレットとデビッド・パッカードに影響を与える。(HPは1939年創業) HPは大野耐一や豊田英二が戦後に築いたトヨタ生産方式(Toyota Production System)に影響を受…
tannomizuki.hatenablog.com

■Chif Brand Officerが発表したメディア透明性のアクションは日本でもとるのか?
P&Gが広告の透明性を強く業界に訴え、20年で最高のスピーチと絶賛される | 株式会社プリンシプル
2017年1月末広告業界の会合にて、P&Gの最高ブランド責任者であるMarc Pritchard氏がメディア業界全体の数字の不透明さや不正を批判しました。今後の透明性を強く求めるスピーチに注目が集まり、各方面から絶賛されています。Marc氏のスピーチの抄訳をお届けします。
www.principle-c.com
・50%の広告が見られていないというデータがあるなど、アドフラウドの問題は非常に大きい。
・P&Gとしてビューアビリティのスタンダードを入れてそれ以下のメディアにはお金を払わないと決めた。第三者機関のチェックも入れる。
 P&Gは1兆円以上のお金を広告費として使っていてデジタルだけでも結構な金額を投資している。
 個人的には、現在発表した基準では広告としてものが売れるレベルだとは思っていないぐらい低い基準だと思っている。
 数年後に振り返ったら、それ以下でもお金が払われていたことが笑い話になるレベルなのでは無いか。この問題は真剣に全ての広告主が考えるべき。

・ブランドセーフティに関しては決めたら当日から止めた
 日本でも正しいものはやるし、正しくないものはやらない
 難しいからやらないという考え方はない。

・P&Gではデジタル広告も売上に効いているかどうかで判断している。
 その視点で見ているとバナー広告は、P&Gのような製品ではほとんど効いてないのではないかと思っている
 ECサイトの中にある広告は効いている手応えはある。
 ただ今でも使いながら試行錯誤はしている。

・今P&Gがこれをいうのは、実はP&G社内でも知らない人が多かったからというのが正直なところ
 新CEOが調査を指示をしたら、想像以上に悪いことが分かったという順番のはず。
 これから日本企業の経営者にも同じ話が耳に入るようになるはず。
 それから対応するのでは遅い、今から業界全体で取り組むべき。

参考記事


■サプライヤー・代理店との取り組みをどう考えているか

・パートナー vs サプライヤー・代理店
 基本的にパートナーとして考えている
 一度お付き合いすると決めたら、ずっと付き合う前提で仕事をする。
 例えばファブリーズでは16年同じ人と仕事をしている。
 パートナーの人達には研修も一緒に参加してもらい議論する
 ABMカレッジというアシスタントブランドマネージャー向け研修は代理店の人にも受けてもらうし、ブランドマネージャー研修を受けてもらうこともある。

・「なぜこのパートナーを選ぶか?」
 ・スケール、経験・知識、コスト
  P&Gの製品ではウソのように世界で同じことがうまくいく
  そういう意味でスケールを重視するので、国毎に細かくしすぎるのも良くない
  一方でジョイのように国毎に変えた方が良いものは変えている
  当然、経験・知識・コストも重視する
 ・ブレークスルー
  どんな小さな会社でもやって欲しい
  Connect&Develop では会社の規模は気にせずパートナー探しをしている
  ファブリーズの皮膜技術はイタリアの小さな会社の技術だった。
www.pgconnectdevelop.com
 ・どちらもないのが一番いらない
 ・一方で事業部がサプライヤーとの利害関係を作らないために、サプライヤーの決定権は事業部にない。理由を説明して推奨することはできるが、購買部が決定権を持っている。

■マーケティングはサイエンスかアートか?
・そんなもん、両方に決まってる
 ・戦略整合性、分析、仮説検証がないのは素人
 ・See the things differently がないのは素人
 ・商売人なら勝てる確率を最大化してから投資する
 ・最後は「確信」と「勇気」
 ・具体的なセオリーやトレーニング内容は社外秘
 ・この2つの本を読むべし。
  ・なぜ戦略で差がつくのか
   P&Gで学んだ基本が全て書いてある本
なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる―
なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる―
www.amazon.co.jp

  ・USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?
   上の2つについて論理的に解説されている本
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)
USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか? (角川文庫)
www.amazon.co.jp
   
 ・ブレストは嫌い。大喜利は好き。
  面白いアイデアは意味があるけど、どうでもいいアイデアには意味が無い。
  面白いアイデアを考える、と意識すると、良いアイデアが出る。

・コンサルの方が戦略性に関しては上だと思うが、ブランドビジネスに関してはコンサルを使うことがほとんど無い
 ・ビジネスオーナーは仮説検証を自分達でできる。
 ・確信と勇気はコンサルでは持てない。
  ヒリヒリする感覚を持っていることが大事。
  (利益責任と、恥ずかしいことをしたくないから突き詰めていく感覚)

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■Eコマースの戦略は?

・自社サイトでの直販はほとんどしていない
 一部の国の一部の事業でテスト的に実施しているのみ
 ただ、世界的に見ると進んでいるとは思う。

・eコマースは90%がエクセキューション
 ・組織のカルチャーを変える
  一番大変だったのは社内の中に認識を増やすこと。
  社内の意識改革、マネジメントとメンバーの両方
  分かってないことをマネジメントに認めてもらうことに価値があった
  3ヶ月間2週間に1時間説明した結果、分からないと認めてくれた
  最初はeコマースの戦略を考える人を各事業部シンガポールに作ってしまった。
  本来は現場を増やすのが重要であって考える人を増やすのでは無く、現場を強化するべきだった。
  P&Gは人を増やすと責任が増えるため人を増やしたがらない風潮があり、そこを変えるのが大変だった。
  現場に権限を委譲することでスピードアップをはかった。
 ・Right People in Right Place
  縦割りの組織で、セクショナリズムがでるところを変えるのが大変だった。
  データ分析の変態みたいな人を必要なところに配属しようとすると人事面の心配をする人が出たりする。
  自分のチームの中では、営業の人間にマーケティングのコンテンツを作ることを覚えさせたり
 ・DO & LEARN (とにかくやってみる)
  新しいデジタルの分野に関しては学んでからやるより、やってから学んだ方が早い
 ・WHO did first vs Who did the best
 ・Shamelssly Reapply
  誰が最初にやったかというのを重視する文化があるが、誰が一番上手くやったかを重視するようにして、他人の真似をすることを恥じないように意識づけている。
  特にこの文化は伊藤さんが作ったアジアのチーム独特な取り組み。

・デジタルについて詳しくなれたのはなぜ?
 自分が詳しいと思ったらおしまいだと思っている
 どうすれば儲かるか、ということに必要なことだけを学ぶ
 そうすれば正しい質問をして、重要なことを学ぶことができる
 

■P&G卒業生がいろいろ活躍されているが何か秘密が?
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・集まる人に共通する3つの要素
 ・負けず嫌い
 ・天邪鬼
 ・好奇心
 バブルの時代にわざわざP&Gに入る時点で、普通の人ではない
 当時のP&Gを就職先に選ぶ時点で天邪鬼
 同じデータを見ている前提だと、出てくるデータを大喜利の視点でいかにひねくれてみるかが大事。

・企業が教育として実施してくれること
 ・考え方
 ・基礎のスキル
 ・責任の伴う経験

・P&Gの文化の特徴
 ・「目的は何?」と何をするにも必ず聞かれる
  常に聞かれると聞かれる前に自分で考えるようになる
  日本企業でやり過ぎると嫌われるのでは(by西口さん)
 ・「君はどう思う?」と必ず聞かれる
  代理店のプレゼンの後に若手から意見を聞かれる
  自分の考えを言う機会を常に与えられるところが大事
 ・スキル=型
 ・実践あるのみ
 ・育てる文化
  今も自分がP&Gにいるのはこれが大きい。
  教育をすること自体を俺の仕事ではないと言わない。

■Q&A
・配属された部署に適性が向いてないと感じた場合どうするか
 向いていない人は基本的に自分で出ていくことが多い
 こちらから異動を人事的に推奨することはしない
 P&Gの人は、自分が自分でキャリアを考えている傾向がつよいので、上司があまり考えてあげる必要はない

・P&Gにあえて弱点があるとすれば何か?
 ・スピードが遅い
  当然急成長を狙っているわけではないから当然かもしれないが、企業のサイズもあるがスピードは遅すぎる
 ・ブライドが高すぎる
  失敗を認めなかったり、失敗したのに良くそこまでポジティブに言えるなと思うことはある。

・どうやって教育しているのか
 来た人をちゃんと教育するのが基本
 この仕事できたからには、これができるようになって欲しいということを配属されたすぐに言う。
 
・現在のマーケティング上の課題は何か
 ・チームの中で消費者のインサイトを掘り下げる力が下がっている
  それをどう育てていくかが見えにくくなっている
 ・メディアに1円たりとも無駄なお金を使ってはいけないと思っているが、そのツールがまだない。