アドテック東京2日目の基調講演。
P&Gマーケティング帝国の産みの親とも呼ばれている和田浩子氏が朝イチのセッションに登壇されました。
実際問題、いまやP&Gマフィアとでも呼べそうなほど、P&G出身の方々が日本のマーケティング業界を盛り上げているのは周知の事実ですが、そのP&Gも今の文化に変化する前に改革をした時期があったんだとか。
その改革をリードされた和田さんならではの盛りだくさんのプレゼンでした。

運良く質問もさせていただけたので、顧客よりも上司を重視しがちな文化をどう変えれば良いのか質問したのですが。
沖縄で伊東さんがおっしゃっていたのと同様、部下が自分に意見してきたときには、部下の方が顧客について詳しいからそこは最終的には部下の意見を尊重すると話されていたのが印象的でした。

速記メモを取ったので共有しておきます。
短時間に盛りだくさんのプレゼンで、色々メモが漏れてそうなので、参加された方は抜け漏れあればご指摘いただけると幸いです。

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■サステイナブルなブランドを育み、ブランドを育む人を育てるために
 Office Wada 和田浩子氏
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■This is the house that Jack built
 マザーグースの詩から
 
■The house that Ivory built
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 30年前にP&Gの150周年を称えられてAdvertising Ageで特集が組まれた
 この30年間大きな変化が起こっているが、P&Gは存在感を維持することができている

■そのP&Gの柱となっているのがこの2つ。
 ブランドマネジメント(Brand Management)
 人材育成(Human Resource Development)

 30年間、時代に合わせて途切れなく変化させて維持してきている。
 そのため危機には陥るけれども会社を継続することができる

■マーケティング?
 消費者のビヘイビアを変える(Change Consumer Behaviours)
 ・知らなかったことを知り、好きになる
 ・使わなかったものを使いたい
 ・買わなかったものを買う/買い続ける

Q:「知る」「買う」「使う」ではないのか?という質問が京都であった
 体験という機会があることを考えると「知る」「使いたいと思う」「買う」という順番で考える方が良いと感じている。顧客が何でも使わずに買ってくれると思いがちなのは、企業側の慣れで危ない。

■ブランドマネジメント
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・ブランドを育成する仕組み
・ブランド毎、売上・利益の責任
・全ての分野の戦略・立案

 営業が利益に責任を持つのではなく、ブランドマネージャーが利益に責任を持つ。
 だからこそ、ブランドマネージャーが全ての責任を持つ

■マルチファンクショナルチーム
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 ブランドが中心にあり、各組織はフラットに等しくそのために協力して動く
 広告代理店もパートナーとしてその1メンバーとみなす

 一般的に企業においては、営業が売っているという意識が強い。
 でもB2B2Cにおいては営業は売り場に商品を並べているだけで、消費者が買うところまではコミットしていない。消費者が買うところに責任を持つのがブランドマネージャーとなる。
 この組織構造と意識にするためには「改革」が必要


■「改革」というのは人の心を変えることだ(ワンピース歌舞伎より)
 改革は形だけだと機能しない
 組織構造だけだと営業が若いブランドマネージャーの話を聞かない。


■マーケティングの最初の一歩
・エンドユーザーを理解
・自社、他社製品を理解

 手法自体は時代によって変わるが、重要性は変わらない。
 手法の変化によって消費者も変化する点に注意

■ディマンドクリエーション
 他のブランドを使っているユーザーを自分のブランドに来てもらう
 ブランドを変えるに値する価値を提供

 ユーザーに自分の意思でこちらのブランドを選択してもらわないといけない。
 すでにユーザーは他のブランドで満足しているはず、そのビヘイビアを変えなければいけないという意識を持ってほしい。

■ポジショニングを決定
 買わざるを得ない人
 製品ベネフィット
 根拠
 ブランドイメージ

 ポジショニングは、私はここにしかいないという決意の表れ。
 同時に二つの場所にはいられない
 絞り込まないとマーケティングにならない
 最初からターゲットがエブリバディというのはあり得ない。
 買わざるを得ない人を見つけるのが重要。
 例えばダイソンにおいては、売れていない中でも買ってくれている人を分析し、花粉症で悩んでいる人が効果を実感していると分かった

■目的と戦略
 戦略はゴールに向かう地図
 どんなふうに進んでいくのか
 新しい、正しい、でも困難なことにチャレンジ
 みんなを同じ方向に向かわせる力

 戦略がないマーケティングはありえない
 アドテックにも戦略のセッションがないのは残念

■成功の鍵
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 エンドユーザーを理解
 製品を理解
 ポジショニング
 目的と戦略
 イノベーション
 その結果
 顧客満足度の向上

 こういった施策をすれば顧客満足度が向上する
 その後にまたそのエンドユーザーを理解するというプロセスを繰り返す
 老舗の企業で自分達のやり方は分かっているという企業に限って間違っている

■ブランドになる
 好意を持つ
 満足している
 優れている点やユニークな点を覚えている

 ブランドは企業の持ち物ではない。ブランドは消費者の頭の中にある者
 消費者の思いに寄り添った施策をしなければならない
 良いブランドになるには何十年もかかるが、信頼を失うのは1日。


■成功が持続しないのはなぜか
 成功が持続するように仕組まれていないから
 その場限りのことになる
 成功の持続を可能にする人材や仕組みがないから

 成功を持続させたくない人は別として、本来は成功を持続させる仕組みを作れない人は50点

■成功を持続するための必要条件
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 勝つための戦略
 優れたリーダーシップ
 優れた人材
 優れたシステム/仕組み
 一貫したプリンシプル(行動規範)

 もっとも不可欠なのは人材


■必要なスキル
・リーダーシップ
・戦略的思考
・コミュニケーション
・分析力と問題解決力
・イノベーション/リスクを負う
・実行力
・勝利への情熱

 育成しなければならないのはマーケティングだけではない
 全ての組織の人材が戦略的思考ができ、コミュニケーションが取れ、リスクをおえる必要がある


■人材育成の仕組み
・全マネージャーの責任
・業務と人材育成が一体化
・「業績」と「能力開発」両方評価
・失敗からも学ぶ
・明確なキャリアステップ
・社内研修
・幹部候補生育成システム

 業務と教育は同時に実施する必要がある
 売上が上がってないから、教育をしている余裕はないというのは良くない
 研修プランを丸投げするのはダメ。社内にいる人がカスタムで作るべき。
 P&Gでは講師は全て社内 
 教えることによってマネージャーのスキルも上がる

■持続的人材育成システム
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 教える人を増やすことが大事
 優秀な人が教えてくれるとは限らないが、優秀な人を抜擢するだけでなく、優秀な人が教える仕組みを作っていくことが非常に重要。


■成功は成功を生み出すわけではない
 成功から学ぶと成功を生み出す

 失敗は成功を生み出さない
 失敗から学ぶと成功を生み出す


Q:デジタルによって何か変わることがあるか?
・デジタルは重要だけれども顧客を見る方が大事
・人が人を見る
 人数を増やせば良いという話ではない

Q:人材はどう見つけるか?
 マーケターは、感じることができる人でないといけない
 人間味のある人を見つけていく
 人は変わっていない
 大勢採用すれば、誰かがあたるというものではない。 

Q:年功序列で上司を重視しがちな企業の文化を、どうやって顧客重視、顧客と接しているブランドマネージャー中心に変えていくのか?
 P&Gでは、会議で上司が間違っていたら平気で部下が間違いを指摘する
 年功序列には一定の意味はあるが、歳を取っていても勉強をしていない人を尊重することには意味は無い、
 流通の知見は営業が詳しいから営業に当然サポートしてもらうが、営業戦略を決めるのも営業ではなく、ブランドマネージャー
 そういう文化を創っていくために改革をしないといけない
 ブランドマネジメントは価値がある仕組み
 ブランドマネジメントがあればブランドがすくすく育つ
 全員の目が顧客に向けば、社内の競争にならない
 そこまで改革をして、会社の意識も変えることが重要。


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今日のアドテック東京初日最後の基調講演は、ほぼ日の糸井重里さんと、JR九州でななつ星を手がけた唐池さんという異色の組み合わせのセッションでした。
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楽しいがすべてを超える」というテーマだったので、一体何を議論するのかなと気になってたのですが、糸井さんがメインテーマとしてあげたのは「メディアを作る」とはどういうことかをあらためて考えるということ。
漫談的な軽妙なトークも交えつつ、いわゆるデジタルマーケ業界を支配しがちな「効率」という価値観に対し真逆の「手間をかける」ことの重要性を強調するという、糸井さんからアドテック参加者への問題提起という印象のあるセッションとなりました。

速記でメモを取ってみましたので、共有しておきます。参加された方は、間違いがあったらご指摘いただけると幸いです。

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テーマ:楽しいがすべてを超える

・ほぼ日 糸井重里
・JR九州 唐池恒二

■今日話したいことは「メディアを作る」ということについて
 メディアって言うと昔からのメディアを前提にして話すが、メディアというのは作るモノでは無いかと思っている。

■生活の楽しみ展(糸井)

・展覧会の形をした町づくり
・雑貨の展覧会をやろうと思ったが、それだけでなく趣味のものや絵の即売など、楽しみと呼ばれるものをみんな集めて実施した
・例えばモンベルの傘を傘の店として出してみるなどお店を編集する感覚
・ここに働くシンボルである軽トラックが飾られるような未来をイメージしている

■ななつ星(唐池)

・ななつ星もメディアではないか
・走り始めて4年になるが最初の年に日本PR大賞をもらった
・旅の始まりはラウンジ「金星」(一番星という趣旨)から始まる
(命名ルールとして全て星をつけている)
・沿道の方が手を振っている
 10万人の人が初日は沿道で応援してくれた
 沿道でななつ星の通過を10数秒みていた人たちの半分が涙するという出来事があった
・3泊4日の九州の旅の中で泣く人が多い
 関わった人達の思いや熱意が「気」となって詰まっているのでは無いか
 その「気」が感動のエネルギーになっているのではないか
・昔からあったローカル線の線路を使って新しい価値を提供している
 しかも出発したところに戻ってくると言う意味で移動はしていない
・湯布院では、こんな生活があったらいいなと思うものを提供している
(ディズニーランド的な非日常を提供しているのではなくて、こんな日常があったらいいな、を提供している)
・ななつ星も同じくこんな日常があったらいいなと思うものを提供している
 走るホテルではなく、走る街ではないか
・14組の顧客がいるが食事の時は同じダイニングカーに集まる。
 これは昔の長屋に近いはず。
・ななつ星は公正な抽選で選ばれている。
 王さんから連絡をいただいたときにも断った。
 その後、ななつ星に乗りたいと政治家や経済人から連絡があっても、王貞治を断っていると聞くと諦めてくれる。
・詳細は下記の本参照
■おいしい生活(糸井)
・ハレとケのケの部分が楽しくなることが大事という趣旨。
   「(よくある)非日常の提供」に対比しての「こんな生活・日常があったらいいな」という毎日あっても嫌じゃない・飽きないもの
・西武百貨店の打ち合わせで、堤さんがご飯を食べさせてくれた。
 その際提供されたのが、普通のご飯に味噌汁とポテトサラダみたいな、普通の料理だった。
・従来は仕事の興奮を重視していたが、ただの人としてどれぐらい素敵だったかとか、普段の生活が楽しくなることの方が大事なのではないかと思った。
・そういうことの方が大事な時代になるのではないかと思って、いろんなことをやってきた。
・例えば井戸を作ること自体もメディアかもしれない。 町内で犬を飼ってそれが話題になればそれもメディアかもしれない。
・メディアはコンテンツを呼び寄せるし、その事実がインターネットによって見えやすくなった。
・ある意味、ネット上にメディアを作るだけというのは、本質ではないのかもしれない。

■思いと時間をかけた掛け算の結果(糸井)
・実はななつ星を作る行為というのは労働集約型。
 デジタルによって何もかもが効率化されている一方で、本気で手をかけている労働集約型のななつ星のようなものに人が集まってくるという点が面白い。
・手編みのセーターのビジネスを手掛けたことがあるが、効率的に作れるようになったセーターをわざわざ手編みで編みたいという人があつまり、それを買いたいという人が集まってくる。
 これはどういうことなのかを、もっと考えるべきかも。
・手間をかけて手作業で手差しをしていた焼き鳥屋が、効率が悪いということで東南アジアからカットされた冷凍肉を輸入するようになった。(おそらく人件費のコストをカットするための判断だったと思われる。)
 でも、もはや家で作れるような料理を外で食べたくなる人はいない。自分では作れない手間のかかった料理を作ってくれるレストランにこそ行くのだと思う。
・ななつ星でも料理を決める際に、手間のかかった料理を出せる料理人を選ぶことにした。味は人によって好みがあるけれど、手間がかかった料理というのは必ず伝わる。顧客は手間に対して料金を払ってくれるのだと思う。
・ほぼ日もコンテンツを作るのに手間をかけている こだわって手間をかけるのと、ブラック企業にならないことのバランスを苦慮しているが、人が真面目に手間をかけることこそを読者は喜んでくれると思っている。
・人類が生まれてからこんなに人類が便利になったのはついこの数百年の話。人間自体はこの数百年でそんなに大きく進化していない。
 実は人間が喜びを感じる原点というのは、もっと人間の根本的なところにあるのではないか。

Q:手間をかけるときのポイントは?
・手間をかける方向を自分の好みに合わせて考える。わたしマーケティング。わたしは、わたしが喜ぶ方向でやります。自分は鉄道が実はあまり好きではないが、そんな自分がどうすれば鉄道の旅を好きになれるかどうかという視点で考えた。(唐池)
・珍しさが無いものはやはりダメではないか 珍しさと手間のかけ方の組み合わせではないか。
手間をかけること自体が珍しくなっているので、なんだろうと思って近づいてもらえる。そして、ああ、と共感してくれる。珍しさと共感が両立したときに感動してもらえるのだと思う。(糸井)


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これは面白い。
工場一筋トヨタ副社長が語る車づくりの真髄 | 自動車
「手作業こそ技能の原点だ」ーー中学校卒業後にトヨタ自動車の技能職養成校に入り、製造現場のたたき上げとして初めて役員まで上り詰めた河合満副社長。10月11日の夜、東京大学の講堂に詰めかけた500人以上の学生…
toyokeizai.net
トヨタの規模の会社で、副社長が「『おはよう』と言っても『おっす』と言われる。」って凄いことですよね。
それが心地いい、とサラッと言えるのもカッコいいですし。
トヨタの現場を大事にする文化が滲み出てる逸話と感じます。
今でこそトヨタも揺るがないトップ企業ですが、昔は日産自動車の方が1位だった時代があるんですよね。
トヨタの方に話を聞くと、本当にやるべきことをマジメに淡々とやってるだけで、特殊なことはやってないと言われるケースが多い印象なのですが、リーマンショックのくだりとか、その真髄を感じる逸話です。
個人的には工場の自動化が進んでも「手作業が技能の原点」という部分に、AIによってホワイトカラーが直面するであろう未来のヒントを感じます。
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