日本の株式市場で株に携わった経験のある人ならだれでも、日本の株式市場が外国人投資家次第であることを知っている。
しかし、その外国人投資家といっても、政府系のソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)のような巨大な資産を運用するアセット・オーナーからヘッジファンドまで様々だし、その真の姿はごく曖昧なイメージだ。
また、現場で直接投資運用するマネーの代理人たちの生身の姿は映画やドラマでしかなかなかお目にかからない。
私は、そういった現場でのマネーの代理人たちの生々しい姿に興味があった。
筆者は、まず、日本のマスコミで働き、その後、外資系金融機関に転職し、日本株の投資運用や調査に携わった経歴を持つ。
主に外資系金融機関ではニューヨークとボストンの職場で働き、キャリア的には「リサーチ・アナリスト」という「セル・サイド」側のスタートラインからキャリアを始め、実際に日本株を動かしている生身の現場運用担当者に混じって仕事をしていた人だ。だから、本書で、ウオール街等での現場の生々しい状況を知ることができると思ったのだ。
そして、本書では、その点に関して期待した通りに、筆者は活き活きと、かつ、分かりやすくその現場を描写してくれていた。とにかく、読みやすい本であった。
次に、ウオール街で日本株というものが一体どう扱われているのかという点についても興味があったのだが、本書のなかでは、多分、私がこうなのではと予測していた通りの日本株の扱いだった。が、しかし、不思議とそれらもなるほど当然だろうという感想しか湧いてこなかった。
それは、投資運用において資本効率の指標だけが絶対的な指標ではないが、資本効率からかけ離れたような日本の企業の閉鎖性や保守性は、海外から見ると不思議で理解しずらいのは当然だろうと思っているからだ。
また、『日本株は、下落相場では特に敏感に世界市場と下方に連動してしまう「ハイ・ベータ」資産であり、過去のトレンドからは、日本株は金利敏感で、世界の景気が良くなって金利がマイルドに上昇する局面では、米国に代表されるグローバル市場にアウトパフォームしやすい。』という筆者の指摘にも納得するところだ。
筆者は、本書の最後で、どうしても短期的な利益の追求に走りがちな、投資家を動かす「恐怖(fear)」と「欲(greed)」というインセンティブに変わる新しいインセンティブのひとつとして、ESG投資を強調している。

このESG投資とは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の三つの言葉の頭文字をとったもので、これらの要素に着目して企業に投資するのがESG投資である。
その真意は、これからは投資の世界においても、資本効率一辺倒の発想からサスティナビリティ(持続性)という指標にもウエイトを置くべきだという思考なのだ。
また、市場では年々HFTというAIによる超高速取引が主流になりつつある。いずれ、取引だけではなく投資運用の全般をAIが担う時代がやって来るのかも知れない。
やがて、投資という現場は更に大きく変容するだろう。
そうなると現実には更に大きな変革が必要になるかも知れない。
投資市場の小手先の変革ではなく、格差社会や資本主義の修正といった社会制度にまで踏み込むくらいの変革が起こるとすれば。


「マネーの代理人たち」 著 小出・フイッシヤー・美奈

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Medical DOCより