月別アーカイブ / 2017年11月

ベーシックインカムについては、前々から興味を持っていた。それが、この本を手に取ったきっかけなのだが、思いがけず「貧困」という根深いテーマに触れることになってしまった。
この本の前半は、ほぼ過去の「貧困」との闘いの歴史において、いかに今までの施策が思うような効果を上げてこなかったのかを述べている。そして、「貧困」に対して、本当に有効な対策はベーシックインカム制度なのだと強調している。
そして、後半では、今後ますます人間はAIとの激しい競争にさらされ、ますます「格差」という現実が待ち構えていると述べている。その結果「中流」という階層は崩壊し、貧富の差は有史上、もっとも広がると予測している。
そして、それに対する処方箋は、人々にただでお金を配るベーシックインカム制度と、週の労働時間を15時間にすること、そして国境線を開放することであると著者は結論づけている。それこそが、機械への『隷属なき道』となると述べているのだ。
しかし、その道が現段階では、まだまだ夢物語のように実現の可能性が見えていないことも著者は意識している。だが、2008年の世界金融危機、イギリスのEU離脱とトランプという新時代が幕を開けて以来、ますます多くの人が、ゼノフォビア(外国人嫌悪)と不平等に対する革新的な、本物の解毒剤を渇望するようになった。そして、全く新しい世界の地図、新しい希望の源、つまり、新しいユートピアを待ち望んでいると、著者は考えているのだ。

『☆過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
中世の世界から見れば現代はユートピアそのものだ。しかし手に入れた世界以上に良い世界を思い描くことができないので、新たな夢を見ることができずにいる。実際、富裕国の人々の大半は、子供たちは親世代より悪い時代を生きることになると信じている。
1952年から1993年までに行われた269件の研究を比較し、1990年代初期の北アメリカの平均的な子供は、1950年代初期の精神病患者よりも不安感が強いと結論づけた。世界保健機構(WHO)によると、現在、うつ病は10代の若者の最大の健康問題となっており、2030年には世界の病気の第一位になるという。
資本主義だけでは、現代の豊穣の地を維持することはできないのだ。進歩は経済的繁栄と同義になったが、21世紀に生きる私たちは、生活の質を上げる別の道を見つけなければならない。
☆福祉はいらない、直接お金を与えればいい。
「欠乏の心理」がもたらす悪影響は、そのメリットをしのぐ、欠乏はあなたの気持ちを、差し迫った不足に集中させる。今日の食事にありつけるかという心配、翌日に迫った支払いができない、などの不安や心配があれば、そこでは長期的な視野は完全に失われる。
実際に貧困による影響は教育にも顕著に現れる。それはIQが13から14ポイント下がるのに相当するのだ。
カナダで1970年代に世界最大規模のベーシックインカム実験ミンカムが行われた。1000世帯を対象とした実験結果から、町では入院期間が8.5%も減ったことが分かった。家庭内暴力も減少、メンタルヘルスの悩みも減った。先進国でヘルスケアにかかる公共支出の大きさを考えると、その財政的意味は大きい。また、現在、生活保護のような社会保障制度は、人々の安心感と誇りを促進すべきものだが、疑念と屈辱のシステムに成り下がっている。すべての人に公平に給付するというベーシックインカムのシステムは、よりよい妥協策となるだろう。
☆ケインズが予測した週15時間労働の時代。
1930年、経済学者ケインズは「2030年には人々の労働時間は週15時間になる。21世紀の最大の課題は増えすぎた余暇だ」と予言した。
第2次大戦後も余暇は着実に増え続けたが、1980年代、労働時間の減少は止まる。アメリカでは、むしろ労働時間が増え始めた。個人の労働時間に減少が見られた国々でも、家族単位では、ますます時間に追われるようになっていた。
世論調査では、日本からアメリカまで、労働者は貴重な購買力をいくらか手放してでも余暇を得たいと考えていることが分かっている。様々な社会問題を解決する労働時間の短縮。政策としてお金を時間に換え、教育に投資し、退職制度を柔軟にして、徐々に労働時間を減らしていくことが必要だ。
☆AIとの競争には勝てない。
未来学者のレイ・カーツワイルは、2029年までにコンピュータは人間と同等の知能を持つようになると確信している。そして、2045年にはコンピュータは全人類の脳の総計より10億倍、賢くなっている、と言う。
テクノロジの恩恵を手放したくないのであれば、残る選択肢はただ1つ、再分配だ。金銭、時間、課税、そしてロボットも再分配する。ベーシックインカム(金銭)と労働時間の短縮(時間)は、その具体的な方法なのだ。
☆国境を開くことで富は増大する。
世界の貧困を一掃する最良の方法は「開かれた国境」である。これが実現すれば、「世界総生産」における予想成長率は、世界的な労働市場の動きのレベルに応じて、67%から147%に及ぶと、異なる四つの研究が示している。そして、労働の国境を開けば65兆ドルの富が生み出される。
21世紀の真のエリートは望ましい国に生まれた人だ。豊穣の地の貧困線は、外の荒野の貧困線より17倍も高い位置にある。米国のフードスタンプ受給者の暮らしぶりさえ、世界で最も貧しい人々に比べると、王族のように見える。


「進歩とは、ユートピアが次々と形になっていくことだ」と、その昔、オスカー・ワイルドは記した。週15時間労働、ユニバーサル・ベーシックインカム、そして国境のない世界……いずれも、荒唐無稽な夢にすぎない。だが、いつまでも夢のままであるとは限らない。
新しいアイデアが社会に広がるのには、一世代かかることもあるのだから、私たちは「ユートピア主義者になる勇気」を備えた忍耐強い思索家を必要としているのだ。また、アイデアは、どれほど途方のないものであっても、世界を変えてきたし、再び変えるだろう。「実際」、とケインズは記した。「アイデアの他に世界を支配するものはほとんどない」』

私がベーシックインカムに興味を持ち始めたのは、イーロン・マスクなどの人物がベーシックインカムに言及していたからなのだが、あくまで漠然とした印象しか持っていなかった。最近では、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグさえベーシックインカムに賛成を表明している。どちらかと言えば、イーロン・マスクはAIの脅威を強く認識している派で、マーク・ザッカーバーグのようなAIの脅威にやや楽観的な考え方には反対なのだが、ことベーシックインカムに関しては、両者は同意見のようだ。しかし、それだけAIが人間の仕事を侵食していくという未来に対する確実性は、もはや想定内のことになって来たのだろう。そうだとすれば、そういう革命的な事実に対処するためには、今までは実現しなかった革新的な方法が必要なのかもしれない。
逆に言えば、ベーシックインカム、労働時間の短縮、国境線の開放、こういった今現在はまだ夢物語として語られるものにこそ、21世紀のAI革命を乗り切るヒントが隠されているのかもしれない。
とにかく、ベーシックインカムについての論議は、まだまだ緒に就いたばかりだろう。しかし、格差問題とも絡みあって、今後真剣に論議されるような気がする。
そして、また、若干29歳の著者が今後どう思索を深めていくのかについても興味があるのだ。

『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』 ルドガー・ブレグマン 著

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SPICEオンラインより

著者であるアンドレアス・ワイガンドは、ビックデータの世界的な専門家である。また、彼は、米Amazonの元チーフ・データサイエンティストとして、創業者ジェフ・ベゾスとともに今日のアマゾンの基礎を作り上げた人物としても知られている。

私たちは、1日に何回もGoogleで検索する。Amazonのサイトを見て回りそしてレビューを読み、最後にクリックして自分用に商品を購入したり、プレゼントとして相手に送っている。
スマホのアプリを利用して電車の路線を乗り換え、目的地までの道案内を地図アプリに頼っている。また、Twitterでちょっとしたことを呟き、Facebookで友達の近況を確認し、Instagramにタグを付けて、行った場所や何かの集まり(誰かの誕生日会や友人との飲み会や各種交流会)や趣味の写真を載せている。そして、こうしたブログも書いている。
こうしたソーシャルデータは、18ヶ月ごとに倍増していると言われている。2000年に丸一年かけて生み出されたのと同じ量のデータが、今ではたった1日で生み出されているというのだ。
そして、こういったビックデータを解析するためのAIのアルゴリズムも、急速に進化している。
しかし、Amazonでちょっと探し物をしただけで、その後も執拗にそれに類した広告が画面に現れるのにはうんざりする。また、ニュースフィードに流されるニュースさえカスタマイズされることには、いつの間にか視界が塞がれていくような息苦しさを感じる。そのうえ、これからは、各種センサーによって、どこにいても誰かに見られているような居心地の悪い気分になるかもしれない。
だが、個人のデータを提供しなければ、生活を便利にする色々なサービスを享受することはできない。位置情報のデータ提出を拒否しては、道案内のサービスは受けられないのだ。
今の時代、すべてのデータから逃れて生活するということは、もはや現実的でなくなって来ているのだ。もはや、個人もデータというものに真剣に向き合うべき時代に来ているのだ。そして、単に、そういったデータに拒否反応を示すということではなく、また誰かにそういったデータの扱いの権限を一任することでもなく、データ社会に向き合う姿勢を自分で決めるためにも、まず知識を深めることから始める必要があると思っている。

『☆情報は21世紀の石油
21世紀の最も重要な資源は情報だ。情報はいわば、新たな時代の石油である。
原油はそのままでは使えない。同じように生データ自体はあまり役に立たない。データに価値を付与するのは、データを統合、分析、比較、選別し、新たなデータ製品やサービスとして流通させるデータ精製会社である。石油が産業革命以後の社会を支えた装置の燃料となったように、精製されたデータはソーシャルデータ革命を支えるインフラの燃料となる。
幸い、データと石油には根本的な違いがある。地球上の石油は有限であり、残存量が減るにつれて掘削コストは上昇する。それに対して、データの生成量は飛躍的に増加する一方、その通信や処理に必要とされる技術のコストは低下している。そして、今われわれは情報という新たな資源を使って、どのような世界を作りたいのかという問いを突きつけられている。
☆プライバシーは幻想である
大手データ精製会社2社が「匿名化」されたソーシャルデータを研究者に提供した結果、デジタル痕跡では個人は特定できないという認識は完全に崩れ去った。
例えば、ネットフリックスの匿名レビューから個人を特定することも、他の公開されている映画レビューがあればそれを比較することで可能になる。Amazonで、あなたが女性用のシャツをギフトとして購入するとき、サイズを選ぶことによって相手の体格をAmazonと共有することになる。それが母の日の1~2週間前で、しかも送り先の苗字があなたと同じなら、Amazonのアルゴリズムはあなたと女性の関係を推測するかもしれない。一年後には母の日の贈り物を推奨するメールを送ってくるかもしれない。
また、あなたが積極的に関与しないところで、あなたの特性に関するデータが生成されることもあるだろう。たとえば、ネットに投稿される大量の写真がまさにその例だ。あなたを映したすべての写真をあなたが管理できるわけではないし、もちろんあなたに著作権があるわけでもない。あるイベント会場を歩いているところを誰かに撮影されたら、あっという間に写真が公開される。
Facebookの「ディープフェイス」は、人間が写真にタグ付けをすれば、アルゴリズムが同じ顔が映っていると思われる写真を見つけて、同じラベルを貼ることができる。写真の背景や状況を分析するためのソフトウェアの開発も進んでいる。被写体がいる場所が込み合った場所が多いのか、自然の中が多いのかによって、アルゴリズムはあなたの性格を分類しているかもしれない。
また、我々が残すデジタル痕跡の多くは、物理的端末を操作されることで生成される。そうした操作のかなりの部分に、個人を識別できるだけの特徴がある。ユーザーがスマホやタブレットを通じてウェブにアクセスする時間が増えるなか、多くのデータ会社は行動パターンをもとに、複数のデバイスを併用している個人を特定する方法の研究に相当な資金をつぎ込んでいる。
インストールしているフォント、同じ入力ミスの繰り返し、それの修正といったパターンや、また、デバイスそのものとの物理的接触も痕跡になる。イスラエルのバイオキャッチ社は、個人がどの様にコンピュータ、タブレット、スマホを扱うかといったデジタル・フィンガープリント(指紋)に注目する。「ユーザーの行動や癖を観察することで、本人確認を行う手段になる」と考えている。
タッチスクリーンを強く叩くか穏やかに触れるか。スマホを握っている時に、手はどのくらい震えているか。スクロールアップあるいはスクロールダウンする時に、画面のどこを触れるか。等だ。バイオキャッチ社の顧客には、利用者の本人確認の新たな方法を模索する金融機関などが含まれている。
Netflixは、特定のカテゴリーの映画に対するユーザーの興味を示すもっとも正直なシグナルは、視聴を中断する時間であることに気がついている。つまり何を推奨するかを決めるうえでは、作品の評価データより視聴データの方を参考にしているのだ。
☆信頼が新たな市場を生み出す
アルゴリズムは透明性を高め、ユーザーの本人確認や評価を確立するための新しい手段を提供することで、信頼関係を増やし、強めていくことができる。イーベイ、中国のオークション・ショッピングサイトの「タオバオ」、エアビーアンドビー、ウーバーなどの電子商取引プラットフォームでは、通常ユーザー同士は知り合いではなく、また取引相手の評価を尋ねられるような共通の友達もいない。データ会社は入手可能なデータ、あるいはユーザーから提供されたデータをもとに、信頼を構築していかなければならない。イーベイの売り手、エアビーアンドビーのホスト、ウーバーの運転手など特定のプラットフォームを頻繁に使う人は、必ず豊富なデータの痕跡を残す。一方、取引の相手方となる買い手、ゲスト、乗客は、一度しかサービスを使わないかもしれない。信頼性のあるエコシステム(生態系)をつくるため、エアビーアンドビーはさまざまなデータをもとに、ユーザーの身元や信頼性を確認している。そこには、検索、評価、レビュー、他のユーザーとの交信履歴、その他のフィードバックなどユーザー自身がサイト上で生み出すデータもあれば、外部のデータもある。

顧客が信頼できる人物か評価するために、取引前や取引中にソーシャルグラフ・データを活用する組織は今後ますます増えるだろう。数年前、保険会社のオールステート(アメリカの世帯の10%が同社の保険に加入している)が、ソーシャル・ネットワークに虚偽の保険請求をしたことのある知り合いのある人は、同じように虚偽の請求をする可能性が高いという仮説を立てた。これは「同類性」の概念の応用例だ。同じような価値観を持つ人々は、友達同士である可能性が高い、というわけだ。そこで、オールステートは、データ販売会社のラップリーフが保有しているデータベース(そこには友達リストなどFacebookのデータ(Facebookから直接提供を受けたわけではない)も含まれている。)をもとに、加入者のうち誰と誰が友達であるかを洗い出した。そして顧客から保険請求があると、その友達の過去の行状を参考に、請求の妥当性をどこまで厳しく審査するかを決定した。
もちろんFacebook自身も、自社のソーシャルグラフ・データを収益化する方法を模索している。2010年には、フレンドスターからある特許を買収した。ソーシャルグラフ・データを使って、他のユーザーに関するコンテンツを選別する方法に関するものだった。しかし、2015年にFacebookが申請した特許の更新内容を見ると、その位置づけは完全に収益化のツールに変わっていた。
特許の文言はこうなっている。
個人が融資を申請すると、金融機関はその個人のソーシャル・ネットワークにつながっているメンバーの信用度を調べる。メンバーの信用度の平均値が少なくとも最低基準値を超えていれば、金融機関は融資の申請の処理手続きを続ける。そうでない場合は融資申請は却下される。
多様な人物が友達リストに含まれているために、あなたが保険や融資契約にふさわしくないと判断されるのは妥当だろうか。
データ会社はユーザーに対して、ユーザーが提供するデータは最終的にどのような形でユーザー自身に恩恵をもたらすのか、すなわち透明性と主体性という二つの目的を達成することにどのようにつながるかを説明しなければならない。
☆1兆個のセンサーがあなたを記録する
あなたが1日を過ごすなかで、ネットワークにつながったカメラ何台と遭遇し、データを取られているだろうか。職場、店、ATM、公共交通システムには大量の防犯カメラが設置されている。街中にも、車のダッシュボードにも。あなた自身、あるいは隣人が、玄関に防犯カメラを付けているかもしれない。貴重品やときには子供を見守るためのウェブカメラも付けているかもしれない。2011年、イギリスには、国民30人に1台の割合で設置されているという。これを世界全体に当てはめるとカメラの台数は約1億台になる。しかし、それですらスマホに搭載された10億台のカメラのほんの10分の1に過ぎない。これからの数年でネットワークにつながったカメラの台数は、地球の全人口に匹敵する数になるだろう。
続いて、スマホに搭載されている他のセンサーを考えてみよう。少なくともマイクが一つ。衛星の信号に基づき、あなたの居場所を把握するための地理情報受信機、地球の磁場の強さや方向に基づき、端末の方向を測るコンパスの役割を果たす磁気計。気圧をはかり、相対的高度を測る気圧計。端末の回転速度を測るジャイロスコープ。端末の移動を探知する加速度計。温度計、湿度計、光センサー、電話を顔に近づけたときにタッチスクリーンの動作を停止させる近接センサー。このようにスマホ1台あたり1ダースほどのセンサーが搭載されており、スマホだけで世界には100億個のセンサーがあることになる。それ以外にも自動車、時計、サーモスタット、電気メーターなど、おびただしい数のネットワークにつながった装置がある。
これからの10年であなたの人生を記録することになる1兆個のセンサーのなかには、金融機関、小売店、雇用主、学校、あるいは政府が所有するものもある。多種多様な個人情報を活用しようという機運は高まる一方だ。それはあなたが特定の時間にどこにいるかという位置情報にとどまらず、誰と一緒にいるのか、どのような気分なのか、何に集中しているのか(それが本来集中すべきものと合致しているのか)といったことまでが含まれる。しかし一番の問題は、どのような場合にあなたの状況を「すべて」共有するか、そしてそれを決める権限は誰にあるのか、である。
☆10年以内に所有物のほぼすべてに位置トラッカーが付く
10年以内に、われわれの所有物のほぼすべてに超小型の位置情報トラッカー(追跡装置)が付くようになると、テキサス大学のハンフレー工学教授は予測する。そうすればインターネットで情報を検索するのと同じように、持ち物がどこにあるかを検索できるようになる。
重さはペン1本分、大きさは切手1枚分の位置情報トラッカーというのは、SF世界の存在ではなく、すでに実在する。しかも硬貨1枚ほどの大きさの電池で1年は動く。これだけ軽量、小型、省エネルギーなのはビーコン(発信機)として設計されたからだ。
Facebookをはじめとするビックデータを収集する企業は、さまざまな組織に無料でビーコンを配り、普及させようと努力している。ばらまかれたビーコンによって、Facebookのアプリはユーザーが特定の場所に近づいてきたことを認識し、その周辺地域の情報を流したり、あるいはその行動パターンを記録することができる。
☆小売業者が無料WiFiを提供する理由
小売業者の多くが、無料WiFiスポットを提供するのは、あなたが店の中でどのように移動するのかを観察する手段でもある。性格な位置情報があれば、小売業者は顧客のいる場所に応じたお買い得情報を流すことができる。この場合の「顧客のいる場所」というのは、過剰な在庫を抱えた特定の支店のこともあれば、今顧客が歩いている通路のこともある。
☆10メートル先のカメラから虹彩をスキャンする
本人確認に使える一人ひとりに固有の生体指標は、指紋以外にもある。たとえば眼球の虹彩の色素形成のパターンだ。しかも虹彩は最大10メートル先のカメラでもスキャンや認識ができる。カーネギーメロン大学の生体認証の研究グループは、自動車のサイドミラーに映った顔、あるいは部屋の中を歩いている人物の虹彩のイメージをとらえ、保存されている画像と一致させることに成功した。10憶人の人口を抱えるインドをはじめ、政府の発行するIDカードの更新者全員に虹彩スキャンを実施している(あるいはそれを計画している)国もいくつかある。
☆「Amazon Echo」は常に聞き耳を立てている
ビックデータ会社は、家庭用センサーも開発している。こうした端末は、あなたが指示しないときでも、あなたの言ったことをすべて分析しているのだろう。少なくとも一部の端末は、そうしていると思ったほうがいい。ある企業に勤務する開発者が、内輪の場でそう認めたのだ。この開発者の会社では、特に会話が周囲のノイズで聞こえにくいような場面での音声認識ソフトの性能を高めるために、こうしたデータを使っている。家庭内の静かな環境の下では、音声分析によって家族一人ひとりの声紋を識別し、会話のパターンを把握することができる。Googleが家族以外の誰かが家に侵入したことを識別するには、普段家にいるメンバーの声を学習しておく必要がある。
☆センサーデータの悪用から身を守る方法はあるか?
地球上に存在する1兆個のセンサーが集めてくるデータは、われわれにはコントロールできないものだ。画像認識ソフトウェアによって、プライバシーとセキュリティ、そしてプライバシーと言論の自由のバランスは根本的に変化すると指摘されている。
さらに言えば、センサーデータの悪用からわれわれを守るための現在の三つの主要な手段は、いずれも不完全だ。一つめの暗号的保護は、Instagramで共有される写真など、共有されるデータの大部分には使えない。二つめはデータの適切な共有・使用にかかわる社会規範だが、悪意ある人々から身を守るのには役に立たない。そうなると、残るは規制や法律による保護である。しかし、技術的イノベーションが引き起こす変化に対して、法律の変化には時間がかかる。
☆データ会社を評価するための六つの権利
個人の特性、人間関係、置かれた状況について膨大なデータが入手できることから、データ会社は今後ますますわれわれのニーズを、われわれ自身がまだ自覚していないものも含めて正確に予測できるようになるだろう。ただコンピュータの性能がどれほど向上しても、コンピュータの推奨を拒否したり、あるいは推奨を導き出すプロセスに影響を与えたりする自由は人間の側にあるべきだ。そのためにはデータ会社がどのように推奨を導き出しているのかを理解するためのツールが必要だ。たとえばそこには精製会社のデフォルト設定や前提条件を変更する機能なども含まれる。

【データ会社の透明性を高めるための二つの権利】
1、自分のデータにアクセスする権利。
2、データ会社を調べる権利。これは以下の三つで構成される
a、データの安全性監査を確認する権利
b、プライバシー効率評価を確認する権利
c、「データへのリターン(見返り)」を確認する権利

【ユーザーの主体性を高めるための四つの権利】
3、データを修正する権利。
4、データをぼかす権利。
5、データの設定変更の権利。
6、データをポート(移す)権利。

『アマゾノミクス データ・サイエンティストはこう考える』 著 アンドレアス・ワイガンド

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スーパーヒーロー.jpg
のん公式サイトより

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