月別アーカイブ / 2017年09月


「THE INEVITABLE(不可避な)」がこの本の原題なのだが、やはりこの原題こそが著者の真意だろう。
デジタル化という止めようのない流れは、一体どのような流れなのか?そして、デジタル化がもたらしたコピー化とは?
著者は、インターネットは世界最大のコピーマシンだと主張する。インターネットは超伝導装置のようで、超伝導素材の電線に電気が流れるように、ひとたびコピーが生まれるとそれは永遠に流れ続けるのだとも言う。そして、そういうコピー化がもたらす流動化が、所有という概念をいずれ覆すと考えているようだ。
また、コピーによって引き起こされる物や事のコモディティー化によって、「経験」のみが希少性を持つと言う。
だが、もし、著者が述べているVR技術の進歩がこの先本当に実現するとしたら、人間の「経験」そのものの概念まで変えてしまいそうだ。
また、実際の実経験とそういったVRの技術上の疑似経験の境界があやふやになれば、「経験」の希少性までもが薄れていくのではないのか。
そうなると、「価値」があるものとして、人の人生に最後に残るのは何だろう?
そのうえ、人の一生のすべてがTRACKINGされ記録化されるようになるということは「記憶」と「記録」が同一化されるということだ。それが人の脳に一体どういった影響を及ぼすのだろう?
行き着く先すべてが未知過ぎて、想像さえつかない。
しかし、そういった事のすべては始まったばかりなのだろう。

『現在の生活の中のどんな目立った変化も、その中心には何らかのテクノロジーが絡んでいる。テクノロジーによって、われわれの作るものはどれも、何かに〈なっていく〉プロセスの途中にある。あらゆるものは、何か他のものになることで、可能性から現実へと攪拌される。すべては流れだ。完成品というものはないし、完了することもない。決して終わることのないこの変化が、現代社会の中心軸なのだ。
常に流れているということは、単に「物事が変化していく」以上の意味を持つ。つまり、流れの原動力であるプロセスの方が、そこから生み出される結果より重要なのだ。過去200年で最大の発明は、個別のガシェットや道具ではなく、科学的なプロセスそのものだ。
プロセスへと向かうこうした変化によって、われわれが作るすべてのものは、絶え間ない変化を運命づけられる。固定した名詞の世界から、流動的な動詞の世界に移動していく。今後30年でプロダクトはサービスやプロセスになっていくだろう。
この絶え間ない変化の上に、現代の破壊的進歩が成り立っている。それらの変化は、12の動詞に分類できる。それらは正確には動詞というよりも、文法的には現在進行形という、連続した行動として表現できるのかもしれない。
その12動詞を簡単に辿るなら、ネット化したデジタル世界は名詞(結果)ではなく動詞(プロセス)として生成し(1.BECOMING)、世界中が利用して人工知能(AI)を強化することでそれが電気のようなサービス価値を生じ(2.COGNIFYING)、自由にコピーを繰り返し流れ(3.FLOWING)、本などに固定化されることなく流動化して画面で読まれるようになり(4.SCREENING)、すべての製品がサービス化してリアルタイムにアクセスされ(5.ACCESSING)、シェアされることで所有という概念が時代遅れになり(6.SHARING)、コンテンツが増えすぎてフィルターしないと見つからなくなり(7.FILTERING)、サービス化した従来の産業やコンテンツが自由にリミックスして新しい形となり(8.REMIXING)、VRのような機能によって高いプレゼンスとインタラクションを実現して効果的に扱えるようになり(9.INTERACTING)、そうしたすべてを追跡する機能がサービスを向上させライフログ化を促し(10.TRACKING)、問題を解決する以上に新たな良い疑問を生み出し(11.QUESTIONING)、そしてついにはすべてが統合されホロスと呼ぶ次のデジタル環境へと進化していく(12.BEGINNING)という展開だ。


☆3.FLOWING デジタルメディアのいくつかでは流動化の四つの段階がすでに始まっているが、ほとんどにおいてわれわれはまだ最初の段階にいる。まだ液化していない日常の仕事やインフラは山ほどあるが、いずれは液化し、流動化していく、非物質化と脱中心化へと向かう着実で巨大な傾向が意味するのは、さらなる流れは不可避だということだ。
やがて、ソフトがハードを凌駕していく。知識が物質を支配するのだ。手に触れられない生成物が、フリーな世界の上に立ち上がる。流れていく世界だ。

☆6.SHARING これからの30年を考えると、最大の富の源泉はこのSHARINGの延長線上にある。2050年に最も大きく、最速で成長し、一番稼いでいる会社は、いまはまだ目に見えず評価もされていない新しいシェアの形を見つけた会社だろう。シェア可能なもの―思想や感情、金銭、健康、時間―は何でも、正しい条件が整い、ちゃんとした恩恵があればシェアされる。シェア可能なものは何でも、もっと上手く、もっと速く、もっと簡単に、もっと長く、いまより何万通りもの違うやり方でシェアできるようになっていくだろう。

☆7.FILTERING  安価なものに溢れた時代には大きな問いが残される。―本当に価値があるのは何か?―コモディティーに対する我々のアテンションには大して価値がない。潤沢な社会において残された希少性とは、コモディティーに由来するものでも、それにフォーカスしたしたものでもないアテンションだ。すべてがゼロに向かっていく中で、唯一コストが増加しているのは人間の経験だ―これはコピーできない。それ以外のものは、コモディティー化しフィルターをかけられるようになる。

☆8.REMIXING リミックスする―既存の素材を再構成したり再利用したりする―ことは、伝統的な財産や所有という概念に大混乱を引き起こす。われわれの法体系のほとんどはまだ農耕時代の原理原則で動いており、所有物には実体があることが前提となっている。つまりデジタル時代に追いついていないのだ。それは努力が足りないのではなく、所有することが以前ほど重要でなくなった時代に、所有がどう機能するかを明確にできていないせいだ。

☆10.TRACKING 日常的に行われているトラッキングの一覧を見れば、これから50年間で起きることを想像するのは難しくない。以前には計測できなかったものが、定量化され、デジタル化され、追跡可能になっている。企業や政府はもっとトラッキングの度合いを高めるだろう。
ビットは複製され、増殖し、リンクされたがるので、情報爆発やSFのようなトラッキングを止めるものはない。われわれ人類はデータのストリームからあまりに多くの利便性を引き出そうと切望している。われわれが直面している大きな選択は、どういう種類の包括的トラッキングを望んでいるのかというものだ。全展望監視のように、彼らはわれわれの事を知っているがわれわれは相手のことを知らない一方向なものなのか、あるいは見ている人もまた見られているような相互に透明な「共監視」なのか。前者は地獄で後者なら扱いやすい。』


知的な興奮感を味わうこと、それこそ本を読む醍醐味だろう。そういう醍醐味を味わえる著作だった。

「〈インターネット〉の次に来るもの」 著 ケヴィン・ケリー より

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NB Press Online より

良いアイデアが浮かばないとか、問題解決への思考が行き詰まったり、考えが同じところを堂々巡りするようなことはよくあることだ。
この本は、そういう迷路から抜け出すための手助けとなる。

特に、知らず知らずのうちに「固着」してしまったパターン的思考は、とても厄介なものであり、そこから抜け出せる手立てが、もしあるとすれば、それを試してみて損はないのだ。

『脳と知性の間には、はっきりとした違いがある。
脳が経験を吸収する受け身のハードウェアであるのに対して、知性は注意をどこに向けるかを指示する能動的なソフトウェアなのだ。しかも単なるソフトウェアではなく、ハードウェアの配線を作り直すことができる知的ソフトウェアなのだ。

・問題のように見えるものは、実際には問題ではない。
解決策のように見えるものは、実際には解決策ではない。
・不可能に見えるものは、実際には不可能ではない。

☆7つの「思考の欠陥」と解決策

欠陥① 結論を出し急いでしまう「飛躍」
「結論を出し急ぐ」という人間の習性は、人間の思考回路には「ファスト」と「スロー」という二つの思考回路があるからなのだ。
ファストが担うのは、日常的に発生する問題に対処するための自動的、無意識的、本能的で反応型のすばやい思考だ。一方スローが担うのは、複雑で非日常的な問題を解決するための理性的、意識的で努力を要する思考なのだ。
・解決策 フレームストーミング。
フレームストーミングで「疑問」をどんどん出す。フレームストーミングは、結論を出し急ぐという思考の欠陥を修正するための最良のツールになる。
フレームストーミングの三つのステップ。
ステップ①言語によるフレーミング。良いフレームは問いの形をとる。そして、その際の良い質問とは、1.なぜ?(Why?) 2.もし~だったら?(What if?) 3.どうすれば?(How?)の三つの段階をたどるという。
ステップ②できるだけ多くの問いを見つけ出す。
ステップ③その中で、最も良い問いを二つ選ぶ。 
そういう良質な問いから、結論を導き出す。

欠陥② パターン化された思考にこだわる「固着」
誰にも自分では意識していない確固たる思考パターンがあり、どんな課題に取り組むときにもそれが問題の見方に大きな影響を与える。その中で最も一般的なものが「固着」なのだ。
さまざまなパターンが結びついて記憶や認識が形成され、それが時間とともに強化されて「メンタルモデル」(物の見方や先入観、パラダイム)となる。このメンタルモデルのおかげで、人は物事を格段に効率良く処理できる。しかし、ある情報が既存のパターンの一部であると脳が認識したとたん、ファストの思考がスローの思考より優位になるということである。そうなるとほかの可能性は原則として排除され、固着がおきる。
・解決策 反転。
固定的な現在の枠組みからの転換。すなわち常識をひっくり返して従来とは異なる新たな考えを見出す。
反転の手法とは正反対の世界を考える手法。
ステップ①決定的属性をリストアップする。
ステップ②それぞれの要素の正反対なのものをリストアップする。
ステップ③正反対のものからフレームストーミング、ブレインストーミングする。

欠陥③ かえって物事を複雑にしてしまう「考えすぎ」
時として、分析しすぎてシンプルなはずの問題を複雑にしてしまうことがある。最小限な資源で問題を解決しょうとするのが、最良の道であることもある。
・解決策 プロトテスティング。
プロトテスティングで「仮説」を立て「実験」する。そして、仮説を明確にしたあとで、「誤りがあっては困る仮説」を問う。これによって、最も大きなリスクを伴う最も不確実な仮定事項、つまり、うっかり事実だと信じてしまいそうな仮定事項を特定できる。そして、それを排除する。

欠陥④ それなりに良い答えで納得してしまう「満足」
人間の認識能力には限界があり、時として多すぎる選択肢は人を混乱させる。
・解決策 合成。
「AかBか」ではなく「AもBも」と考える。統合思考。
合成の二つの方法「メリットを二倍にする」「分解する」。①一つ目の解決策が二つ目の解決策のメリットを生むような状況を探し出す。②二つの解決策のそれぞれを手直しなしで実行できるように問題を分解する。

欠陥⑤ できるはずがないと思ってしまう「過小評価」
・解決策 ジャンプスターティング。

欠陥⑥ 外部の意見ややり方を拒絶する「自前主義」
「専門知識」は偏見の温床になりやすい。専門知識があると、人は自己イメージと一体化した閉ざされた個人的、社会的領域を持つようになる。その領域を突き破る可能性のあるものを、自分の地位や身分、権力基盤に対する潜在的な脅威と受け止めてしまう。これが自前主義がしばしば社会集団や組織との関連で論じられる理由なのだ。
・解決策 社外で開発されたアイデアを堂々と採用する。
ハッカソンと知識のネットワーク 他人の才能を活用し、今よりも透過性のある境界を通じて彼らのアイデアを自分のレパートリーの中に取り込むことにより、生産性と商業的価値を高める。

欠陥⑦ 自分で自分のアイデアを握り潰してしまう「自己検閲」
・解決策 セルフディスタンシング。』


問題解決「脳」のつくり方  著 マシュー・E・メイ より

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のんチャンネル より

☆なぜ交渉しないのか?
▼社会のあらゆる問題や対立に交渉の知見が役立つ。一般的には交渉に適さないと思える場面でも交渉の余地があることも。
▼交渉する価値があるかどうかを判断するには慎重な評価が必要。たとえ交渉するチャンスが多数あるように思えても、交渉にまつわるコストがどれだけ発生するのか、慎重な検討が重要になる。

☆交渉の基本
▼交渉のゴールを明確にすること。
▼イエス・ノーを判断するために重要なのは、代替案の把握だ。それは、他に選択肢がないか?他のパートナーと交渉出来そうか?他のチャンスはないのか?
そういった代替案を把握しておけば、交渉において要求できる価値を増やせる。
▼代替案、リザベーション価格、アスピレーション価格の特定ができたら、次に交渉の論点や基本構造を確認すること。
交渉のタイプは、分配型、統合型、それとも調和型?

☆分配型の交渉
▼一方の得がもう一方の損になる状態を「ゼロサム」または「分配型」という。
▼交渉の論点が分配型のみという場合、価値の要求ができるのは両者の合意可能領域が重複する部分のみ。
▼複数の論点を交渉のテーブルに乗せると、「潜在的な合意の範囲」を飛躍的に広げることが可能になる。
▼異なる論点をまとめて交渉できるようになったら、論点ごとにリザベーション価格を決めるのではなく、交渉全体で一つのリザベーション価格を設定すること。
▼一つ目の論点での交渉の成果を活用できると、別の論点で発生しうるコストを相殺することが可能になる。

☆交渉の価値を創造する。
▼価値の創造には二種類ある。
①情報交換から価値が生み出される場合。
②各当事者が異なる価値評価をしている論点があったために、統合的な価値が生み出される場合。
▼価値創造の7つのポイント。
①大切なのは、拡大した価値を交渉でどれだけあなたが獲得できたか。
②情報交換の仕方によっては、価値要求をするときにハンデになることもある。
③統合型になりうる論点を見つけること。
④論点ごとよりパッケージ化して設定すること。
⑤双方の価値評価の違いを探る事。
⑥価値評価の違いにより交渉決裂に直面した時は、成功報酬型で合意できるか模索すること。
⑦成功報酬型は、「交換の当事者に、今後も続く関係性があるとき」「契約に透明性があること」「契約に執行力があること」という3つの条件が満たされたときのみ使うこと。

☆交渉のプランニングと準備
▼まず交渉で達成したいゴールを確認し、各論点を数値化する。次に相手が達成したいゴールを予測する。そして、交渉戦略を立案する
▼人間の行動心理、情報の非対称性に留意すること。

☆ファーストオファーについて。
▼自分からオファーするときは、相手が応ずるぎりぎりのところを狙って提案すること。
▼先にオファーする際、数字を細かく設定してキリのよい数字で出さないこと。
詳細な数字の方がアンカーとして機能しやすいから。
▼オファーをする際には、その理由を明確にすること。
▼ファーストオファーで合意するより、交渉相手から、カウンターオファーがある状況が、ベストの状況だと考えること。

☆交渉のマネジメント
▼交渉の準備の際には、・交渉相手の評判と交渉経験・将来同じ人との交渉する可能性・継続する関係性が予想される場合、その関係性がどうなりそうか、も考慮する。

☆譲歩すべきか?
▼交渉において譲歩を考える際には、「強迫」と「約束」の違いに留意すること。効果的な強迫の使い方とは、「相手の譲歩を引き出せる、可能な限り小さな脅し」ということになり、それは約束でも同じ。
というのは、実行するのに多大なコストがかかることは、実行されない可能性が大きいから。

☆交渉時の感情について
▼怒りの感情は、賢明に戦略的に使うこと。感情は伝染するもの。

『スタンフォード&ノースウ工スタン大学教授の交渉戦略教室』   著  マーガレット・アン・ニール  トーマス・ゼット・リース  より


交渉戦略と言うと、どうしてもゼロサム的な交渉を前提とした戦略と捉えられがちだが、「統合型」という、交渉から新たな価値を創造するタイプの交渉も存在するということは新鮮だ。
しかし、交渉に必要とされる、緻密な準備、論理的思考力、胆力、観察力、判断力、抑制力のどれが欠けても交渉を優位に進めることは難しいのだろう。
そして、こういう交渉力は、トレーニングの中で訓練して身につけて行くしかないのだ。

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DQMSL CMサイト より




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