月別アーカイブ / 2017年08月

この本は、2013年にアマゾン・ドットコムのCEOであるジェフ・べゾスが選ぶビジネス書12冊のうちの1冊になった本なのだが、やっと日本語版が発売された。
正に、今の時代のマーケティングの教科書となるような本だ。
特に、インターネット・マーケティングでのリスティング広告やディスプレイ広告に関して、各指標を使って最適化された具体的な企業の事例は、とてもわかりやすい。そして、ここで取り上げられている各種指標は、企業がインターネット・マーケティングを実施するのであれば、マーケティングの効果を測定するためには必須な指標であろう。
またデータ・ドリブン・マーケティング上級編のアジャイル・マーケティングの有効性や、解析マーケティングでの傾向分析モデルでの具体的なメレディス社の事例など、とても参考になった。また解析マーケティングの決定木分析のアースリンク社等の事例も、とても興味深いものだった。

『☆マーケティング格差
多くの企業は需要喚起を目的とした割引やプロモーションに予算の大半をかけ、その結果、利益を犠牲にして売上を伸ばしている。一方、勝ち組の企業はブランディングやカスタマー・エクイティへの投資を重視し、その結果、高い価格設定すなわち高い利益率を実現している。
価格競争は、利益を犠牲にせざるを得ないため、往々にして負け試合にしかならない。ウォルマートやデルといった限られた企業だけが、このやり方で成功を収めてきた。彼らがうまくいったのは、その卓越したサプライチェーン・マネジメント能力によって、コストを最低限に抑えることができるからにほかならない。もちろん、これらの企業のように、極めて優れたオペレーション効率が戦略の柱となっているならば、価格競争を仕掛けることも有力な選択肢として捉えるべきだ。しかし、そうではない多くの企業にとっては、優れたマーケティングを通じて利益を最大化していく方が、適切な戦略となるだろう。
☆最重要な15のマーケティング指標
①ブランド認知率、②試乗(お試し)、③解約(離反)率、④顧客満足度(CSAT)、⑤オファー応諾率、⑥利益、⑦正味現在価値(NPV)、⑧内部収益率(IRR)、⑨投資回収期間、⑩顧客生涯価値(CLTV)、⑪クリック単価(CPC)、⑫トランザクションコンバージョン率(TCR)、⑬広告費用対効果(ROAS)、⑭直帰率、⑮口コミ増幅係数(WOM)

☆投資リターンを示せ!
マーケティング担当者が財務系指標で語れなければ、経営陣の信頼は得られない。
●売上高よりも利益が、事業の継続性を担保する重要な指標だ。
●マーケティング投資収益率(ROMI)の財務系評価指標として最適なのは、正味現在価値(NPV)、内部収益率(IRR)、投資回収期間だ。
●財務ROMI分析はテンプレートに基づいて実施でき、かつ半数以上のマーケティング活動に適用可能な手法だ。具体的には、需要喚起マーケティングや新製品発売時のプロジェクトにおいて利用される。
●ROMI分析においては常に最良、最悪、通常の3つのケースを考え、また前提が変わったらどうなるかを意識することが肝要だ。

☆すべての顧客は等しく重要‥‥ではない。
平等至上主義のマーケティングと営業は理にかなっていない。上位数10%の顧客が、全体の売上の90%以上を占めている場合、この上位数10%の顧客の中から離脱が発生すれば、事業全体に甚大な影響が発生することは言うまでもないことだ。そして、このような80対20の法則に近いことは、ある程度どのような企業でも起こっていることなのだ。したがって、すべての顧客は平等ではないという現実に即した形でマーケティングおよび営業を組み立てる方が、明らかに理にかなっている。そして、その際に使う指標は、顧客生涯価値(CLTV)だ。
この顧客生涯価値(CLTV)とは、将来にわたって顧客が自社にもたらす価値を表す、非常に重要な指標である。
自社の顧客全体のCLTVを理解し、その最大化を図るのが新たなマーケティング戦略の手法だ。高価値セグメントに対しては維持および更なるアップセル、クロスセルを、中価値セグメントに対してはアップセルとクロスセルを通じたCLTVの向上を、そしてCLTVがマイナスの顧客層に対しては支出の最小化を図っていく。
マイナス価値の顧客が存在していても、顧客自体がマイナス価値なのではなく、ビジネス・プロセスや提供チャネルに欠陥があってマイナス価値が発生していると捉えるべきだ。
長期的なCLTVだけを見るのは全体観を欠く。企業としては短期的な収益と長期のCLTVをバランスよく管理していかなければならない。

☆クリックからバリューへ(インターネット・マーケティングの重要指標)
従来のリスティング広告では、キャンペーンごとにキーワードを購入する形式を利用しており、ここにインターネット・マーケティング予算の50%が費やされてきた。
リスティング広告に使用する重要指標は、クリック単価(CPC)、トランザクションコンバージョン率(TCR)、広告費用対効果(ROAS)となるが、これにクリックスルー率を合わせた4つの指標を使用し、リスティング広告キャンペーンを最適化することが可能だ。
※トランザクションコンバージョン率(TCR)とは、広告をクリックしてウェブサイトに遷移したユーザーが商品を購入した割合。
●リスティング広告を最適化する3つのステップ
1.費用対効果の高い媒体を特定する。2.媒体内で改善の必要があるキャンペーンを特定する。3.KPI(Key Performance Indicators)を計算する。
※直帰率とは滞在5秒未満で離脱してしまうユーザーの割合
●直帰率を他のインターネット関連の指標と組み合わせることで、ウェブサイトのコンテンツがユーザーのニーズに応えているのか、どのくらいマーケティング・チャネル(検索、e-mail、ディスプレイ広告)がうまくいっているかを知ることができる。
●ディスプレイ広告のクリック率は、非常に低い(0.2%以下)が、クリックされなくても、ユーザーが目にすることで、オファー応諾率を上げることが可能だ。
アトリビューション分析は、検索キーワード及びディスプレイ広告関連の追跡を可能にする。
●口コミ増幅係数(WOM)では、インターネット上における「友人に勧めたいと思いますか?」という質問を数値化する。口コミはソーシャルメディア・マーケティングに増幅効果をもたらし、クリック及びインプレッションの価値を口コミ増幅係数(WOM)倍にする。

☆アジャイル・マーケティング(失敗するなら、早く失敗しろ)
アジャイル・マーケティングでは、データ収集をキャンペーン実施期間中に行い、データがキャンペーンの不成功を示唆していた場合、キャンペーンの軌道修正を行うか、場合によっては中止する。
反対に、キャンペーンがうまくいっている場合、さらに大きく成功するためには、うまくいっている部分を積極的に拡大・拡張する必要がある。しかしそのためには、どのデータをどのように収集するか、収集したデータに基づき、どのようにアクションをとるかを事前に計画することが必要である。
つまり、キャンペーン実行計画の中には必ず意思決定ポイントを設定しておき、各ステージの意思決定ポイントで軌道修正できるように準備しておくことが必要なのだ。

☆「適切なタイミングで、適切なターゲット顧客に、適切な商品を」を実現するデータ分析
①、傾向分析モデルで購入可能性を予測する。②、アソシエーション分析ですぐに活用可能なアソシエーションルールを生成する(この商品を購入した顧客は他に何を購入するか?などという問いに答えられるようにする)。
③、決定木アプローチにより、イベントや顧客の特徴を変数とした動的セグメンテーションを行う。
※決定木分析とは、データをふるいにかけて、ふるいを通過するグループと通過しないグループに分けていく方法だ。元の集合体より「純粋」な、つまりより明確に定義された特徴を持つサブグループに連続的に分割していくのが決定木分析なのだ。』

「データ・ドリブン・マーケティング Data-Driven Marketing」 マーク・ジェフリー 著より

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LINE LIVE さしめし  より



HEAD=High Efficiency Analytic Decision-Making
この本の著者、フィリップ・マッドはCIAの元情報分析官(インテリジェンス・アナリスト)であり、FBIの国家保安部副部長、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のアナリストを歴任するなど、米国政府の情報関連部門で20年以上のキャリアを持った人物である。
だから当然、本書には具体的事例として、1998年のインドの核実験、2006年のイラクWMDプログラム、2001年の9.11同時多発テロやそれ以降のアルカイダへの掃討作戦が出てくる。そして、著者は、その当時のブッシュ大統領に直接ブリーフィングした経験もある最高レベルの元CIAアナリストなのだ。
しかし、この本に書かれている内容は衝撃的な事実に溢れている訳でも、かつ分析が目が覚めるほど特異でユニークな発想に満ちているという訳ではない。しかし、国家的な問題への対応に際して、いかに分析によってその不確実性を減らし、その意思決定に寄与するかというノウハウを長年かけてマニュアル化したことで、それを日常の生活への各種事態への意思決定への応用や「インテリジェンス・リテラシー」を涵養する為の助けにまで落とし込んだことは、一般人の日常の意思決定に際してのある種の手立てになるような気がする。
特に、分析の出発点での「問いの設定」の方法、データを分類しそれに具体的な評価尺度を設定する方法、評価を常に見直す柔軟性、各種バイアスを排除する必要があること等は、今後留意して、できれば私も活用していきたいやり方だ。

『「HEAD」の最も重要な点は、「後ろから考える」ことである。つまり、アナリストは、まず、意思決定(者)の視点に立つことから始めるべきであり、意思決定者のニーズを考えてからデータの分析を行うべきと説いている。それはつまり、アナリストと専門家との最大の相違点は、意思決定者のニーズに応える、意思決定者の意思決定に直結するインテリジェンス・プロダクトを提示するという一点にあるからだ。だから、提供したプロダクトを意思決定者がどのように活用するのか?ということを最初に考えて分析にあたるべきなのだ。そうしないと、むやみやたらにデータの山のなかで這いまわらなければならなくなる。
そして、それを自己の人生問題などに当てはめるとしたら、「自分の求めているものは何か」を考えることから始めるべきなのだ。それが「後ろから考える」ということだ。

具体的な「HEAD」の分析手順
①問いの設定 ②ドライバーの案出 ③ドライバーに評価尺度を設定 ④データをドライバーに振り分けて評価 ⑤評価の見直し となる。
「HEAD」の出発点となる、「問いの設定」には核心的で漏れのない「キークエスチョン」の設定が鍵となる。自分の知っている事ではなく、意思決定者が知る必要があることに焦点を合わせる必要があるのだ。
「ドライバー」とは分析の枠組みだ。これは問いを処理しやすい単位に分解することで分析を効率的にし、データを管理しやすくするためのものである。また、「ドライバー」に評価尺度を設定しておくことは、とても大切なことだ。
情報分析の要諦は変化を知ることだが、データが一過性のものか、それとも新たなトレンド(傾向)なのかを判断するためには、たとえ困難であろうとも、「ドライバー」に定量的尺度を設定する必要があるのだ。
次に、データを「ドライバー」に振り分ける際に注意すべきことは、「知っていること」「知らないこと」「考えていること」を混同しないことである。または「能力」と「意図」を確実に分けることも重要なことだ。そして、特に「意図」の評価には慎重になるべきである。
最後に、評価は定期的に見直す必要がある。状況の変化に評価は合わせるべきなのだから。
そして常に「私の知らないことは何か?」という問いと、毎日格闘すべきである。つまり分析プロセスの基礎段階として「欠落の分析」を習得する必要があるのだ。つまり、知識やデータに開いた穴について、常に謙虚であるべきなのだ。更に、「異例の分析」も必要である。ドライバーを設定してデータを複数(6個から10個)の構成要素に分解した後に、必ずどの構成要素にも合わないデータが出てくるものだからだ。そして、そういう時には、これらが潜在的な「坑道のカナリア」であり、何かが変化していることに対する警告かもしれないという認識を持つべきだ。だから、そういう時は、異例に注目して新たな判断や推測を試すべき時なのだ。
また、分析には、必ず非専門家という新鮮な視点を持つ人材を入れるべきことも忘れてならない。
更に、常に潜在的なバイアスについては最大限に気をつけていなくてはならない。自分の心にどれほど深くバイアスがかかっているのかを理解し、それについては謙虚であらねばならないのだ。』

「CIA極秘分析マニュアル「HEAD」 武器としてのインテリジェンス」  フィリップ・マッド 著 より

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のんちゃんねる より

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