月別アーカイブ / 2017年07月

この本を手に取ったのは、暗号通貨も流通し始めているなかでの、貨幣(現金)というものの未来に興味を持ったからだ。

著者は、暗号通貨そのものの可能性は否定していないが、暗号通貨が通貨の主流となった時には、政府という存在は、政府があくまで暗号通貨の流通の主導権を取れるように、ゲームのルールさえも変えてしまうのではと考えているようだ。
また、著者が主張するのはあくまで「レスキャッシュ社会」への移行であり、けっして「キャッシュレス社会」を主張しているのではないと繰り返し述べている。そして、高額紙幣の段階的な廃止は主張しているが、少額紙幣は半永久的に残すか大型硬貨に置き換えることも併せて主張している。
また、日本以上にレスキャッシュ社会に移行した時にメリットの大きい国はないとも述べている。
その理由として、第一は、日本の円はその大半が国内で保有されていること。第二に、日本が巨額の公的債務を抱えていること。この債務は、増税と歳出削減で解決するしかないが、高額紙幣を廃止することによっての脱税防止は債務負担を減らす効果的な対策となること。第三は、日本の紙幣発行高が並外れて多いことだ。日本は現金の発行残高は名目GDPの19%近くに達し、一人当たりでみると約77万円の現金が保有されているが、そのうち1万円札が9割も占めているのだ。これらの数字は、世界的にみても極めて高い水準にあり、日本は高額紙幣大国なのだ。そして最後に重要な理由は、レスキャッシュ社会に移行すれば、日本銀行は効果的なマイナス金利政策をとれるようになることなのだ。
ゼロ金利下限制約に縛られている限り、次に必ず来るであろう景気後退を乗り切る手段は限られている。その為には無制限なマイナス金利政策を考慮すべきと、著者は訴えている。しかし、マイナス金利は、国債から現金保有への乗り換えを促しかねない。そして、それを防ぐためには高額紙幣の段階的廃止というのも有効な選択肢になり得ると述べている。
マイナス金利についても、かなりのスペースを割いて丁寧に説明している。非常に参考になった。今後、マイナス金利政策というものが金融政策の選択肢のなかに入って来るのかもしれないが、その時の知識の土台になるような整理された主張だった。
私も、将来的には、現金というものは徐々にだが、廃止の方向に向かうのではないかと思っている。経済においても、利便性はそのシステムが普及する鍵だが、紙幣の利便性を上回るものが出て来ている以上、その方向性は変えられないだろう。今後、その利便性に安全性についての見直しや検討が加えられ、新しい通貨システムが出来上がっていくような気がする。もちろん暗号通貨も、その選択肢の一つになるだろう。そして、それはブロックチェーン技術の進展と歩みを同じくするような気がするのだ。

『☆現金の闇の部分
一般に政府はどれだけの紙幣を発行したか把握しており、大方の国の中央銀行は詳細な資料を公表している。だが、大量の紙幣をどこの誰が保有しているのかということになると、情報を見つけるのは困難なのだ。要するに財務省も中央銀行も知らないのである。企業と銀行で通貨流通高の5パーセントくらい、個人の保有は通貨流通高の5~10パーセント、ドルやユーロは国外保有量が50パーセントくらい。つまり、どうみても、世界に供給される現金、特に高額紙幣の多くが地下経済(極めて広い範囲の非合法な経済活動)で出回っていると推測されるのだ。取引の匿名性が保たれる高額紙幣が、地下経済で闇取引に用いられ、所得の隠匿手段となっているのだ。
それは、犯罪行為や汚職を除いて、脱税と規則違反の範囲に限ったとしても、地下経済規模が名目GDPに占める比率は非常に大きい。米国は7.1%と比較的低いが、日本9.2%、英国10.6%、ドイツ13.4%、ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャでは20%にまで達している。日本も決して地下経済とは無縁ではないのだ。
そして、地下経済に廻っている現金は、政府を悩ます脱税、汚職、色々な犯罪行為の温床となっているという現実があるのだ。

☆マイナス金利
1970年代、80年代は各国の金融政策担当者はインフレ退治に格闘していただ。インフレ率は二桁に突入し、アメリカでは13%、日本とイギリスでは20%、を上回っていた。それが過去20年間に劇的に変化し、現在は金利がゼロ下限に近づき、「流動性の罠」と呼ばれる状態に陥りかかっている。
ゼロ金利下限が長らく問題になっている理由は三つあるの
第一で最大の理由は、インフレが消滅し、それとともにインフレ期待も消え失せたことだ。
第二の理由は、経済の変動性が大方の経済学者の予想を大きく上回ったこと。経済の変動性が大きくなるほど、急激な落ち込みに直面することになるので、中央銀行としては思い切った利下げをする必要に迫られる。そこでゼロ金利制約が一段と重くのしかかってくる。
第三の理由は、実質金利が大幅に下がり、短期的にはゼロ以下に、長期的にはおよそ1.5%になると見込まれることだ。長短いずれも「正常」な水準よりかなり低い。

また、ゼロ金利制約は、金融政策にとってどのように不都合なのだろうか。
通常の金融政策が景気後退に対して効果が乏しくなってきたなかで、いくつかの研究によれば、金融危機に見舞われ物価と算出高がともに落ち込む状況で中央銀行がとるべき正しい政策対応は、アメリカの場合は金利をマイナス4%か、5%まで引き下げることだという。大陸ヨーロッパやイギリスの場合にも、やはりマイナス金利が正常な政策対応になるという。現に、一部の中央銀行はすでにマイナス金利の領域に足を踏み入れている。スウェーデン、スイス、デンマーク、ユーロ圏、日本がそうだ。だがこれまでのところ、どの中央銀行も、マイナス0.75%を大幅に下回ることには慎重な姿勢を示している。国債から現金保有の乗り換えを促すことになることを恐れるからだ。もしそうなったら、金融政策がますます効かなくなるうえに、多額の現金保有という安全上の問題まで発生する。さらに、一部から頑強な抵抗にあうことも間違いない。日本銀行はわずか0.1%にしようとしただけで、面倒なことになった。
また、非伝統的な金融政策として量的緩和のほかフォワード・ガイダンス(時間軸政策)が挙げられるが、どちらも比較的新しい手法であるため、効果も経済に波及する経路もまだはっきりしていない。つまり伝統的な金融政策以上の効果を上げられるのかは未確定なのだ。
いずれ必ず新たな景気後退が起きるだろう。そうなった場合には、中央銀行としては通常の手段として大幅利下げをして経済を安定させ、失業率の上昇をなんとか食い止めたい。だがユーロ圏と日本の金利は、おそらくこれからしばらくずっとゼロに張り付いたままだろう。アメリカとイギリスにしても、それよりいくらかましと言う程度だ。となれば、マイナス金利政策を効果的に実行する方策を考えない限り、利下げ余地はほとんどないことになる。
解決すべきさまざまな問題点はあるものの、適切に設定されたマイナス金利政策は望ましいと考える。中央銀行が無制限に金利をマイナス領域に設定する選択肢を持ち合わせているなら、経済を短期間でデフレスパイラルから脱出させ、深刻な金融危機後の信用収縮を食い止める政策手段の範囲が大幅に拡がることになる。もちろん紙幣廃止以外の方法でもマイナス金利を可能にする方法はある。それらの実行可能な選択肢を組み合わせることも概ね可能なのだ。

☆デジタル通貨
分散型台帳技術が保証する先端的なセキュリティや暗号通貨に埋め込まれた天才的なアルゴリズムは、掛値なしにすばらしい。それは十分に認めるが、ビットコインを始めとする暗号通貨が近い将来ドルに取って代わると考えるのは、単純すぎる。通貨革命を起こそうとした人々が過去千年間で学んだのは、このゲームで恒久的に政府を打ち負かすのはまず無理だということである。というのもこれは、政府が勝つまでルールを変えられるゲームだからだ。だから、もし暗号通貨がもう止められないとわかったら、勝者(たとえばビットコイン3・0)は結局、政府が管理する暗号通貨の露払いで終わるだろう。
しかし、もし政府が介入しないと仮定すれば、ビットコインのような暗号通貨は、本物の通貨になりうるだろう。ビットコインあるいは今後登場する類似の暗号通貨は、政府の後ろ盾があろうとなかろうと、価値の尺度や交換手段などとして、通貨本来の役割を果たすことができる。いやそれどころか、多くの意味で、複雑な取引や契約に従来の通貨よりはるかにうまく対応できると考えられる。』

「現金の呪い 紙幣をいつ廃止するか?」 ケネス・S・ロゴフ 著


京都.PNG
のん公式ブログより




『今世界はGゼロとなり主導国家がいない状態であり、世界経済の「最大の不安要素」はトランプ大統領である。イギリスのEU離脱もへたをすればEU崩壊の序章になる可能性もある。ロシア経済は、今は小康状態だが2000年以降経済そのものは低下傾向であることに変わりはない。中国は政治的な粛清の影響で国内の緊張が高まっている。ドイツは、難民問題やドイツ銀行の破たんという危惧を国内に抱えている。北朝鮮情勢は核実験やミサイル問題で不安定だ。ASEANは、中国に引き裂かれてラオスとカンボジアが分裂気味になっている。2050年に躍進するはずだったBRICSの成長はピークを越えてしまった。今世界は、どこの国・地域も混乱要因と不安材料に満ちて不安定化している。
アメリカは、トランプ大統領という不安要素は抱えながらも、今も、世界から人、企業、マネーが集まり続けている。しかし、人、企業、マネーが集まり続けているのは沿岸合衆国なのだ。つまり、アメリカは、沿岸合衆国と内陸合衆国という分断状態にあり『Divided States of America』、この2つの地域では状況は全く違ってきているのだ。
(沿岸合衆国とはシリコンバレーからサンフランシスコまでのベイエリアであり、内陸合衆国とはラストベルトをはじめとするロッキー山脈以東の南部を含む農業や重工業などの産業が中心の地域。)
☆「トランプ以降」の世界秩序
トランプ大統領の就任後(アフタートランプ)では、外交、経済政策を含め、世界秩序が大きく変わった。特にグローバル企業・製造業の企業経営は大転換期を迎えるかもしれない。つまり「世界最適化モデル」が成り立たなくなるかもしれないのだ。そうなると、グローバル企業等は、ひとつの国の中で事業を完結させる「個別市場立脚モデル」へのシフトを迫られかもしれない。
☆企業はシリコンバレーに学び、個人はハイパーインフレに備えよ。
日本の企業も、シリコンバレーの技術・プラットホームを利用する。シリコンバレー流の経営手法を取り入れる。場合によってはシリコンバレーの人脈・資金を取り込みながら、シリコンバレーを日本で再現するのではなく取り込む=プラグインする。さらに中小企業やベンチャー企業は、3つのクラウド(クラウドソーシング、クラウドコンピューティング、クラウドファンディング)を活用する。
個人は、ハイパーインフレに備える。約1000兆円の国家債務に対して歳出削減もできず、増税も嫌だとなればデフォルトの可能性は否定できない。日本国債がデフォルトとなれば、次はハイパーインフレが待っている。日本国債はほとんど自国で保有しているが、保有しているのは金融機関や日銀だ。金融機関は、いざとなれば資産を守るために、国債の売り逃げに転ずる可能性もなくはない。
個人は、キャッシュの所有からキャッシュを生む不動産や日常必需品株等へ資産を分散し、若い世代は「稼ぐ力」を磨くための自己投資・個人の能力への投資を加速し、リタイア世代はキャッシュフローを生む民泊サービス等のようなもので備える必要がある。』
「マネーはこれからどこへ向かうか」 大前研一 著

内容的にも読みやすい本だった。特に今世界を覆っているポピュリズムという嵐については同感するところが多かった。国民の欲求不満を煽って衆愚政治に陥らせる支配体制は悪だが、何よりもその当の国民に「知性」がなければ、それが衆愚政治であるということさえ気づかないのだ。今、本当の民主主義を守るために、国がすべきことは教育であるということもその通りだと思う。とすれば、大前氏の言うように、日本の最大の問題は教育にあるということも納得できる。今のような将来の予測が難しく「正解」がない時代には、「正解」をいかに早く覚えて再現するかという教育だけでは、生き残ってはいけないだろう。個性的または判断力のある人材。21世紀に必要な人材。その為には、個人の自分のスキルを磨く努力も必要だろう。
フェイクニュースも世界に蔓延しているが、その真偽を確認し、自分自身で考えるということができるかどうかは、つまり国民の知性なのだから。

💀

エイリアンズ.PNG
のんInstgramより




の邦題は、あまり的確な邦題ではない。原題である「科学は戦争をなくすことができるのか?」というのが本書の邦題に、やはり相応しいように思う。
私が、本書に興味を持ったのは、著者の経歴からだった。
著者エヴァレット・カール・ドルマンは、大学を卒業して、まず、アメリカ陸軍に入隊して国家安全保障局でアナリストとして勤務した後に、アメリカ宇宙軍/北アメリカ航空宇宙防衛司令部勤務を経て、現在はアメリカ空軍大学先端航空宇宙学部の教授を勤めている人物なのだ。
こういう、科学者でもなく、思索家でもない、国際防衛のプロである人物が、現在そして未来の戦争というものをどのように捉えているのかに興味があったのだ。確かに、本書の中では、現在の兵器、またもう少し未来の兵器、またかなり未来の兵器についての記述はあるが、本書は、一貫して戦争との関係において科学と科学的思考に何ができ、何ができないかを問い続けている。

著者は、「科学は戦争をなくすことができるのか?」という問いに対しては、
『科学は戦争を根絶できない。科学が戦争になり、戦争が科学になってしまったからである。二つが切っても切り離せないのは、どこまでも求めようとするものが同じだからだ。科学と戦争は、今以上の知識、今以上の支配、今以上の権力をひたすら追求するのである。人間の感情が介入するために戦争から合理的な客観性が失われるが、闘う者が戦場で切に必要とするのはその合理的な客観性であり、それを科学はもたらしてくれる。平和時の科学は万人のものだが、戦時の科学は国のものになる。戦争を解決する道がもし見つかるとすれば、科学ではないところからくるに違いない。たとえば政治協定か政治的服従、さもなければ新宗教かモラル低下への憤りからか。なぜかと言えば、戦争は合理性で解決するものではないから、そして科学が不合理であるはずはないからだ。』という答えをだしている。
「21世紀の戦争テクノロジー CAN SCIENCE END WAR?」 エヴァレット・カール・ドルマン 著

☆警察と軍隊については、警察の目的は暴力を最小化することにあり、軍隊の目的は国際協定による制約の範囲内で暴力を最大化することにある為、二つの立場は相容れないものであるはずだ。しかし、科学が生んだ非致死性兵器テクノロジーは、この警察と軍隊の性格を曖昧にしてきている。
*非致死性兵器テクノロジー  視覚兵器、音響兵器、悪臭兵器、焼夷兵器、電磁兵器。
☆未来の戦争、兵器
プレデター型のRPV(遠隔操縦機)は音もなく上空を飛び、兵士は軌道上の衛星の遠隔操作固定センサーによって全ての動きを追跡され、遠隔操作ロボット車(RCRV)が人間のオペレーターによって交戦する。こういうテクノロジーの多くはすでに実戦で用いられているか、試作段階にある。次の段階は、3Dプリンターと超強化兵士によるオンデマンド戦争、ナノバイオテクノロジーによるミクロの戦争、軍用ロボットによるロボット戦争、ビックデータによる情報戦争だ。

☆しかし、究極の兵器は宇宙兵器だろう。
宇宙に配備されたレーザー兵器網は、防衛システムに大きな抑止力を付加できる。小型の低出力レーザーを数多く用意して、地球の周回軌道上にレーザー網を構築することで、航空機とミサイルを光の速さで迎撃できるのである。陸や空をベースにした迎撃機が迎撃できるのは照準線で捕捉できるミサイルに限られているが、宇宙配備の迎撃網はそれとは違って世界をカバーするので、他国に配置したり管理を任せたりする必要がない。より安く、より軽量で、より効率的なテクノロジーが発達するにつけて、より多くの目標を宇宙からほぼリアルタイムで確認して攻撃できる。宇宙が「究極の高地」と呼ばれるのは、地球の重力がはるかにおよばない、攻囲できない位置にあるからだ。高地を掌握した者にとっては、その高さが戦闘では絶対的に有利になるからだ。しかし、こうした強圧的な抑止力をもつことの最大の問題は、やはりこのようなおそろしい力を誰がコントロールするのかということなのだ。リベラルな国民国家か国際的な共同体が管理するのなら平和維持の基礎になりうるが、かならずそうなるとも限らない。科学と権力の関係は、未来もこうして続いていくのだ。

現実に、中国やインドやUAEが有人宇宙探査を検討し、ロシアは空軍を航空宇宙軍に改組している。アメリカも宇宙軍を創設することを予算草案で提案している。宇宙の覇権争いは、すでに始まっているのだ。また、宇宙の商業化と言う面でも、宇宙先進国になろうとする国々はすでに競い合っている。
しかし、宇宙には人類を一つに結んできた長い歴史があるのも事実だ。そして、そこに戦争という問題の解決の希望の光はあるのだろうか。

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