2015年という年は、宇宙飛行事業者にとっては記念すべき年だ。
その年の11月にブルーオリジン社が打ち上げたニューシェパードのブースター(第1段ロケット)が着陸に初めて成功し、翌12月にはスペースX社のファルコン9のブースターも着陸に初めて成功したからだ。
これらによって、宇宙ロケットのブースターの再利用つまり宇宙飛行にかかるコストの大幅削減の見通しが立った。
というのも、打ち上げのコストの70%はブースターで占められている。だから、このブースターの再利用ができれば、打ち上げにかかるコストは大幅に削減されるのだ。
しかし何よりも、このロケットの着陸の映像は衝撃的だった。
私も、打ち上げられたファルコン9が、地上に垂直に降り立った映像を見た時、凄いと驚いた。また何か、その映像には美しささえも感じた。

スペースX社とブルーオリジン社と言えば、米国の宇宙飛行事業を代表する民間企業であり、その企業を率いているのが、それぞれイーロン・マスクとジェフ・ベゾスという希代な経営者であることは、皆知っている。更に、宇宙飛行に関しては、その両者が、日夜、ライバルとして火星やまた月への宇宙飛行計画において、切磋琢磨して張り合っているのも、よく知られている話だ。

両社のスローガンは、かなり異なっている。
スペースX社は、『突き進め、限界を打ち破れ』。
それに対して、ブルーオリジン社は、『ゆっくりはスムーズ、スムーズは速い』。
これは、この両社を率いているイーロン・マスクとジェフ・ベゾスの性格をそのまま表わしているようだ。
著者は、この両社を「ウサギと亀」に例えている。スペースX社が「ウサギ」であり、ブルーオリジン社が「亀」である。実際、ブルーオリジン社のブースターには、打ち上げのたびに自社のマスコットでもある亀が描き入れられている。
だが、何よりも違うのは、両社の宇宙飛行事業の目標だろう。
スペースX社は、火星移住計画に代表されるように、人類の宇宙への移住を最終目標としている。それに対して、ブルーオリジン社は、あくまで地球は「居住と軽工業の地域」として保全しておき、宇宙は重工業やエネルギー資源の採掘の場所にするという目標なのである。
本書は、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスの他にも、バート・ルータン、リチャード・ブランソン、ポール・アレン等の人物に関しても、宇宙飛行事業へのそれぞれの野心や憧れやそれぞれの興味深い出来事等も描いている。宇宙飛行に関心がある者にとっては、楽しく読み進められる本だった。

クリスチャン・ダベンポート 著
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のんたれ より