2050年といえば、まだこれから30年以上も先の未来である。先日読んだ「シャルマの未来予測」のなかで著者であるルチル・シャルマは、20年以上先の未来の予測が的中することなどあり得ないと述べていた。
多分、予測が的中するかどうかという点では、その通りであろう。
しかし、
『長期的な視点でモノを考えると得るものが多い。本書はそんな発想から生まれた。2050年を予測することで、今後世界を形作るうえで核となる力は何か、ということが分かる。そのなかでもテクノロジーに注目したのが本書である。』
という、この著書の「今後世界を形作るうえで核となる力は何か」という視点は、大局的な視点として大事な視点ではないだろうか。

本文より抜き出し。
『☆テクノロジーの未来を予測する際に、目を向けるべきものは三つある。
・①過去の類似事例。②現在の限界的事例。③SFに描かれた未来。

☆第七の波。現在、第五の波であるビッグデータ、第六の波である「モノのインターネット(IoT)」が広がりつつある。一方、すでに第七の波が形成されつつある。それはAIだ。

☆なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか?
・農業革命の影響が完全に社会に及ぶまでには1000年、産業革命の場合は数百年かかったが、デジタル革命はわずか数十年である。われわれが不意打ちを食らって混乱しているのも無理はない。
・19世紀後半のイノベーション(電気、自動車、水道、現代医療)は、その後1世紀にわたる急速な生産性向上をもたらした。一方、ここ数十年にわたるデジタル革命では、便利な製品は次々と生み出されているものの、労働者の報酬は伸びず、先進国には閉塞感が漂っている。だが、新たなテクノロジーによる経済成長はこれから本番を迎える。
・電気や自動車などのイノベーションも、具体的に世界のあり方を変え、経済成長を押し上げるまでには、数十年単位の時間が必要だった。それゆえ、今日のテクノロジーが進化を発揮するまでにも、まだ時間がかかる。
・安価な労働力が増えると、企業が新たなテクノロジーを導入する必要性が低くなる。それを回避するためには、これまでと違う働き方の仕組みが必要だ。つまるところ、デジタル・テクノロジーによる生産性や生産量の伸びが期待ほどでなかったのは、19世紀と20世紀の社会制度の壁にぶっかっていたからだ。

☆宇宙エレベーターを生み出す方程式。
・今日、原子核物理学、材料科学、化学、そして工学の諸分野においては、実験をする代わりに適切な方程式を解けばよくなった。これは、20世紀を通じて主に量子力学の応用が劇的に進展した結果である。
・基礎物理学の方程式は、短いコンピュータ・プログラムとしてコード化できる。
・今日の化学、生物学、工学は、すべての電子がみな完全に等しいという交換可能性によって成立している。
・この世界で観測されることを説明したり予測したりする分には、一般相対性理論と量子力学があれば全く問題ない。
・物理学的に、光速を超える情報伝達、占星術的・超能力的な作用の実現はあり得ない。また、ワームホール、ワープ装置、タイムマシンも不可能だ。一方、摩擦のない鉄道輸送、宇宙エレベーター、量子コンピュータ、脳と同様の機能をもった“3D”コンピュータ、知覚中枢の拡張、没入型ツーリズムは実現できる。
・老化や疾病の問題は、物質の理解・監視・制御によって克服できる。
・だが、現代のテクノロジーには、核戦争、生態系の破壊、そして人工知能戦争という三つの故障モードのリスクがある。

☆政府が「脳」に侵入する。
・現在、米国防高等研究計画局(DARPA)は、デジタル装置を人間の大脳皮質につなげるプロジェクトに、6000万ドルを投じている。その神経インターフェースは「皮質モデム」と呼ばれる。
・病気になったり老化した組織は、3Dプリンターで作られた新品の組織と交換できるようになる。こうした再生医療の確立により、人類の寿命は大幅に伸びる。
・ゲノム編集により、まずは遺伝性の病気の根絶が目指される。その後、研究者はアルツハイマー病や様々な癌、心臓疾患のリスク抑制に取り組む。
・人間の脳はインターネットと直接つながる。脳と宇宙を隔てる壁は消え、様々な体験が可能になる。しかし、ウィルス攻撃やパスワード管理など、セキュリティ上の問題が浮上する。
・これからの30年で、生命を支えるすべての構成要素やシステムの関係性が明らかになっていく。
・酵素の研究によって、まだ存在しない材料が大量に見つかる。
・文字情報、写真、動画などのデジタルデータは、人類が知り得た最も高度かつ高密度な情報記憶媒体、DNAに保存されるようになる。磁気テープでいっぱいの巨大な倉庫は、角砂糖ほどの分量のDNAで置き換えられる。
・複雑な有機飼料を食べ、特定の燃料や化学物質を生み出す人工微生物が自律的ロボットに組み込まれ、製造業のあり方は根本的に変わる。

☆食卓に並ぶ人造ステーキ。
・2050年には、世界の人口は100億人近くに達する。しかし、農畜産業の進歩により食糧難は起きず、一人あたりのカロリー摂取は今よりもむしろ増加する。
・窓のない建物の中で、水も栄養素も照明も徹底管理された都市型野菜工場が普及する。また、同じく都市の建物内でマグロなどの魚の養殖が行われることで、魚が動物性タンパク質の主要な供給源となるかもしれない。
・一方、生身の動物を一切必要としない、細胞培養による動物性食品の製造も進む。少なくとも、ステーキと牛乳は工場で大量生産されるようになる。
・アフリカなどの貧しい国々では、これまで先進国の農業で起きていたのと同じように、小規模自作農の統合が進む。

☆医療はこう変わる。
・医療分野におけるテクノロジーのライフサイクルは猛烈に加速している。だが、変化の主導権を握るのはテクノロジーではなく、患者だ。その結果、医療は徐々に他の産業に近づき、患者は顧客として扱われるようになる。
・医療界でAIによる破壊的な変化が起ころうとしている。診断から難易度の高い手術まで、現在人間がおこなっている作業は次第に学習能力をもった機械が担うようになる。
・幅広い疾患を幹細胞治療で直すという夢が実現する。患者の症状に合わせて、最適な幹細胞をオンデマンドで用意できるようになるだろう。
・癌や結核などを予防するためのワクチンの研究と実用化が進む。
・信頼性の高いゲノム配列の費用は安くなり、難病診断などの遺伝子検査が普及する。
・薬剤と遺伝子の相互作用を研究する、薬理ゲノミクスの市場は急拡大する。標的療法は今後の医薬品開発の中核となるだろう。
・糖尿病や肥満などの代謝疾患や、心疾患、癌などの幅広い慢性疾患の原因となっているエピゲノムの変化は、巻き戻せるかもしれない。
・CTスキャンやMRIで撮影された精密な画像は、細胞や特定の分子を撮影する「分子イメージング」と組み合わせることが一般的になる。

☆太陽光と風力で全エネルギーの三割。
・太陽光と風力発電の欠点は間欠的であることだが、これは蓄電技術の進歩で補える。中でも、リチウムイオン電池やフロー電池の改良・普及が有望だ。
・主にアメリカ・ヨーロッパ、ロシア、日本にある老朽化した200基近い原子炉は、これから20~30年で廃炉になる。一方、核分裂ではなく、核融合を使う、まったく別種の原子力発電が可能になるかもしれない。核融合では、高濃度の放射性廃棄物や原子炉メルトダウンの脅威なしに、安全に無限の電力を供給できる可能性をもっている。
・未来に待ち受けるのは、エネルギーが潤沢にあり、効率的に使われる世界である。

☆車は編まれ、住宅は印刷される。
・車は、炭素繊維を巨大な「織機」で編んで作られる。金属の部品をプレスしたり、溶接したりする必要はなく、従来のプロセスよりエネルギー消費は50%、水の消費は70%少ない。
・自らの形状を記憶して、自己修復したり、自ら部材に組み上がる「スマート材料」をはじめとした、様々な新材料が生まれる。また、昔からある材料も分子レベルで操作することで、性質を目的に合わせて変えられるようになる。
・「グラフェン」は、一原子層しかない「ナノ材料」で、シリコンの代替物として高性能チップや電池の製造に使えるかもしれない。
・これからの半世紀では、すべての家庭に3Dプリンターが普及することはまだないかもしれないが、製造業の大量生産の現場では、3D印刷は欠かせないツールになる。2016年にはその市場規模は67億ドルだったが、2040年には1兆1300億ドルへ成長する。
・大きなものでは住宅を含む建造物、小さなものではナノ材料と、非常に幅広い製品が3Dプリンターで印刷されるようになる。
・製造業においてリサイクルは必須となる。また、解体された電子機器や電気自動車、電池や家電などから金や銀などの貴重な材料を回収するアーバン・マイニングが一大産業となる。
・製品のカスタマイズ化が容易になり、単純作業のほとんどが自動化されるなかで、海外流出した製造業の多くは国内回帰する。

☆曲がる弾丸と戦争の未来。
・狙撃は、空中で軌道を調整できるフィン付きの弾丸によってさらなる進化を遂げる。これによってスナイパーは、標的との照準線上にいる必要がなくなる。
・ドローン、軽航空機、衛星のスパイ能力やミサイル誘導能力が高まるにつれて、非正規軍が山間部などに潜むことは難しくなり、都市部へ浸み出してくる。民間人の巻き添えを避けるため、狙撃手の重要性はますます高まる。
・陸海空において、人間の代わりに次第にロボットが使われるようになる。ドローン一つとっても、昆虫のように飛ぶスパイ用モデルから、落ち葉や木材を燃料にしながら何か月も稼働する補給用・攻撃用モデルまで、多くの種類が活躍する。
・ロボット技術がロケット技術と合わさることで、一段と「正確でスマートでステルスな」ミサイルが開発される。こうした武器は、国家以外の非正規軍の手にも渡り、自由主義世界は大きな脅威にさらされる。
・多くの国が衛星攻撃能力を保有するのにともない、緊急時に発射できる小型衛星が使われるようになる。また、宇宙から戦争を遂行するための、攻撃用兵器を備えた「バトルスター」も打ち上げられる。

☆ARを眼球に組み込む。
・街からは看板も信号も撤去される。現実世界をどの程度見たいかも自由に選べるようになり、見たくない人やモノを視界から消すことも可能になるだろう。
・スマートフォンの代わりに、誰もがARメガネを使うようになり、やがて、ARメガネもいずれはスマート・コンタクトレンズに変わっていく。その後は、簡単な手術によって「スマート水晶体」や「スマート眼球」をインプラントすることが普及するかもしれない。
・だが、こうしたテクノロジーは、監視社会の成立というトレードオフを免れない。デバイスのメーカーは、ユーザーの日々の活動はもちろん、首の動き、眼球の動き、刺激に対する反応まで、数々のデータを収集するようになるだろう。
・こうしたデータに、政府がアクセスを求めるのは間違いない。
・また、VRやARの業界を支配する会社の意に沿わないユーザーは、接続を遮断されてしまう。すると、ただの現実世界を一人漂流することになってしまう。

☆人工知能ができないこと。
・AIについての黙示録的ビジョンは捨ててよい。重大なリスクは、得体の知れない超知性の登場ではなく、私たちが自ら開発したデジタル・テクノロジーの使い方を誤り、人類の大半と地球全体に負の影響を及ぼすことである。
・AIによる変化の恩恵は万人で共有されるべきであり、また雇用の破壊などのコストは社会全体が引き受けなければならない。

☆プライバシーは富裕層だけの贅沢品に。
・ビッグデータから導き出されるパターンは膨大かつ曖昧なもので、人間の理解を超えている。社会は効率性の向上を手にするが、それと引き換えにシステムの背後にある因果関係の理解を諦めることに慣れていく。
・企業や個人の情報資産を預かる「データ銀行」が誕生する。
・フェイスブックやグーグルは、私たちが進んでデータを吐き出さなければ有料化する。また、プライバシーは飛行機のビジネスクラスや別荘のように、贅沢品となる。

☆テクノロジーは進化を止めない。
・蒸気機関から排出された二酸化炭素が、地球環境に思わぬ影響を与えたように、未来の技術も予期せぬ結果をもたらす可能性がある。例えば、テクノロジーと脳が密接に絡み合うようになったら、私たちの心はどうなるのだろうか。
・テクノロジーとは、すべて応急処置にすぎないことを理解する必要がある。テクノロジーはニーズを満たすと同時に、新たなニーズを生み出すのだ。
・テクノロジーによって何らかの問題が最終決着することもありえない。新たに挑戦すべきこと、解決しなければならない新たな頭痛の種は常に出てくる。また、数世紀に及ぶ絶え間ない技術変化が終わりを迎えることは決してない。』


「2050年の技術 英『エコノミスト』誌は予測する」  著 英『エコノミスト』編集部

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いわてスイーツフェアより