本書で、著者は、結論的には、ビットコインを初めとする仮想通貨は、長期的には「FX取引」(外国為替証拠金取引)と同様な位置付けになっていくのではないかと見ている。仮想通貨は将来的には「通貨」としてよりも「投資商品」として位置付けられるようになるのではと考えているのだ。つまり、将来的にみて通貨としての役割はとても限定的になるだろうと予測している。
そして、その理由は、仮想通貨には以下のような課題と問題点があると考えているからだ。
①、ダーティなイメージの広がりと信頼性の低下 ②、保有、採掘、取引構造の偏り ③、発行上限やリワード半減の仕組みの持つ弊害 ④、ブロックサイズ問題と分裂騒動 ⑤、仮想通貨に対する規制導入の動き ⑥、健全なコミュニティー作りの失敗 ⑦、バブル的な兆候、である。

著者である中島氏は、長らく日本銀行に勤務しかつ国際決済銀行(BIS)に出向していて、決済や通貨の研究に長く携わってきた経歴の人なので、通貨というものに対して現実的な観点からも、やや保守的になるのは当たり前のことであろう。また、著者自身が、仮想通貨の根底にあるリバタリアン的な発想には潜在的にも抵抗感が拭えないのかもしれない。
しかし、一方、中島氏は、ビットコインの中核技術である「ブロックチェーン」については「金融の仕組みを根底から覆すかもしれない潜在力を持っている」として、大きな期待を寄せている。
だが、ここでもブロックチェーンの持つリバタリアン的要素を薄めた形での、各種アレンジが加えられた現実的な姿でのブロックチェーンの利用を予測しているのだ。

☆第3章 ブロックチェーンこそ次世代のコア技術より
『このように考えると、金融分野に分散型台帳技術を導入する場合には、①参加者の範囲を絞りこむクローズド型とし、②合意形成は、取引の高速処理が可能な実用的ビザンチン・フォールト・トレランス(PBFT)系のアルゴリズムや当事者間による取引承認によって行い、③必要な場合には、ノードによって役割を分け、④トランザクションの検証・承認には特にリワードは与えず、⑤取引当事者以外には取引内容が見られないようにプライバシーの制限を行う、といった方向性が自ずと明らかになってきます。』
『このように予想されるブロックチェーンのアレンジメントは、ビットコインの使用からは大きく異なったものとなっています。ビットコインでは、誰もが当局に管理されることなく、世界中で自由に価値を移転できるようにするという、いわば「取引の自由」や「参加の自由」に重きを置いた設計思想になっていました。これに対して、今後、金融分野で導入されるとみられるブロックチェーンでは、「取引の安全性や信頼性」「取引のリアルタイム性」「早期の決済完了性(ファィナリティ)」などが重視されていくことになるものとみられます。』

事実、こういった金融分野でのブロックチェーンの実証実験も活発に行われている。
・リナックスが進める「ハイパーレッジャー・ファブリック」
・R3コンソーシアムが進める「コルダ」
・リップルが進める「インターレッジャー・プロトコル」
のような代表的なブロックチェーンの実証実験がすでに多数の金融機関が参加して行われている。

また、加えて、本書では、各国の中央銀行が、ブロックチェーン技術を使ってデジタル通貨の発行に踏み出す可能性やその実証実験についてにも詳しくページを割いて解説している。
それは、中央銀行が、「銀行券」(現金)と「中央銀行の当座預金」の2種類の中央銀行マネーの機能をデジタル通貨として、提供しようという試みのことだ。
更に、本書で、中島氏は、それ以外にも国際送金や証券決済の分野のような金融分野にもブロックチェーンの活用を予測しているが、それらもあくまで使い勝手やコスト面での優位性を主眼として、ブロックチェーン技術を次世代の技術としてとらえているからだ。

だから、
『管理主体も発行主体も存在していない仮想通貨と中央銀行という信頼される発行主体によるデジタル通貨のうち、人々はどちらの方を信用し、幅広く使っていくことになるのでしょうか。生き延びる通貨はどちらになっていくのでしょうか。筆者には、その答えは「言わずもがな」のように思えますが、読者の皆さんはどう考えるでしょうか。』
というように、あくまでも中央銀行が信用・信頼の最後の拠り所であるという前提に立った結論に至っている。これは、著者の立ち位置からしても、当然の結論であろう。

だが、その中央銀行がブロックチェーン技術を取り込むということさえ、ブロックチェーンにとってはそれが進化する過程の一部に過ぎないとしたらどうだろう。
そもそも、技術というものは、その技術が革新的であればあるほど、現在想定されている未来通りになるという保証はないのだ。
また、中央集権的な組織やシステムという方法でなくても、それらが保証していた「信用」という機能が得られる方法が存在するという事実に一旦気づいた人々は、それらの方法を発展させて行きたいと考えることはないのだろうか。
技術は、時として発想や思考までも変えてしまう可能性があるものだから。


「After Bitcoin 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者」  著 中島真志

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のんチャンネルより